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マンションの大規模修繕費は減価償却が可能?耐用年数・計算方法などを解説

マンションの大規模修繕費は減価償却が可能かどうかを知りたい人

マンションの大規模修繕費は減価償却が可能かどうかを知りたい人

マンションの大規模修繕でかかった修繕費は減価償却が’可能?
マンションの大規模修繕の経費計上は?
減価償却で必要な耐用年数が知りたい!
減価償却期間はどれくらい?

大規模修繕の節税対策として、大規模修繕の費用をマンション管理費として計上する方法が有効です。

マンションの大規模修繕を税務処理する場合、修繕にかかるお金を資本的資質として計上するのか、修繕費として計上するのかを確認しなければなりません。

法定耐用年数、減価償却費の計算方法について、詳しく確認しておくことが大切です。

そこで、資本的資質と修繕費を選択する際の注意点や、減価償却費の計算方法について解説します。

大規模修繕費における、税務上の取扱いを検討する際の参考にしてください。

マンションなどの大規模修繕費も減価償却が可能

大規模修繕費用の会計処理については、費用の性質に応じて「資本的支出」または「修繕費」として処理されます。

これにより、異なる会計処理が適用されるため、以下のポイントを考慮することが重要です。

マンションにかかる資本的支出とは

資本的な支出とは、建物の寿命を延ばしたり、資産価値を高めたりする工事にかかる費用のことです。

資本的経費として判断される大規模修繕工事としては、次の3つが挙げられます。

  • 防水性向上のための塗装工事
  • 防犯性を高める工事
  • 耐震改修工事

防水性向上工事とは、屋根や外壁の塗り直し、新たな防水層の形成工事を指します。

防犯性向上工事は、オートロック機能付きエントランスや玄関ドアの改修です。

居住者ニーズに対応した新規設備の導入やマンションの長寿命化工事は、基本費用として計上します。

資本的支出の具体例

  • 防水加工工事
  • 耐震補強工事
  • 外壁塗装に断熱材を追加
  • オール電化への移行
  • バリアフリー対応への改築
  • リフォームや増改築工事
  • 非常階段などを建物にあとから設置
  • 照明設備など10万円以上の設備の新設
  • 機械などの設備をグレードアップ

マンションにかかる修繕費とは

修繕費とは、建物の傷んだ部分を補修するために行う工事のことです。

簡単にいえば原状回復のための費用であり、修繕費として計上される工事の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 塗装が剥がれた際の補修
  • 雨漏り修理
  • 割れたガラスの交換

上記のように、簡単な補修工事は修繕費として処理されることが多いです。

大規模修繕における資本的支出と修繕費の区分のポイント

大規模修繕の費用を資本的支出と修繕費に区分する際の留意点は、以下の3点です。

  • 工事費用が20万円未満または60万円未満
  • 工事周期が3年未満
  • 取得価額が前回の決算時の10%以下

これらの留意点は国税庁の「第8節資本的支出と修繕費」に記されています。

前の大規模修繕から3年以内の工事は、金額を問わず修繕費です。

また、工事完了後3年以上経過していても、修繕費が20万円未満または60万円未満であれば修繕費となります。

さらに、工事費が前年度末の取得価額の10%未満の場合も修繕費として計上されます。

ここでいう取得価額とは、購入時にかかった建物の本体価格と、法人税や所得税などの費用を合算した金額を指します。

ただし、大規模修繕の平均的な費用は1戸あたり約80~100万円です。

仮に20戸のマンションがあったとしても、修繕費は1,600万円~2,000万円程度になるでしょう。

100万円を切る大規模修繕は珍しいといえるため、大規模修繕費用は一般的に資本的支出として計上されます。

大規模修繕の耐用年数に応じた減価償却費の計算方法

減価償却費の計算方法には2つありますが、税務上、マンションなどの建物の減価償却費は定額法で計算することが決められています。

定額法:毎年同額を減価償却費として計上する計算方法

定率法:一定の割合で減価償却費が減少していく計算方法

減価償却費を計算する際にポイントとなるのが、償却年数の計算の基礎となる「耐用年数」です。

マンションを含む建物の減価償却費は、定額法で計算するのが一般的です。

建物の耐用年数表

以下の表は、建物の耐用年数を構造別・用途別に表したものです。

各構造ごとに事務所用、店舗・住宅用、飲食店用と細分しています。

構造細目耐用年数
木造・合成樹脂造事務所用24年
店舗用・住宅用22年
飲食店用20年
木骨モルタル造事務所用22年
店舗用・住宅用20年
飲食店用19年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造事務所用50年
住宅用47年
飲食店用
※延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの
34年
店舗用39年
れんが造・石造・ブロック造事務所用41年
店舗用・住宅用・飲食店用38年
金属造のもの事務所用4㎜を超えるもの38年
3㎜を超え、4㎜以下のもの30年
3㎜以下のもの22年
店舗用・住宅用4㎜を超えるもの34年
3㎜を超え、4㎜以下のもの27年
3㎜以下のもの19年
飲食店用4㎜を超えるもの31年
3㎜を超え、4㎜以下のもの25年
3㎜以下のもの19年
参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

大規模修繕を資本的支出として計上した場合、その耐用年数は以下のようになります。

  1. 耐用年数は、建物の種類と構造によって決まる
    大規模修繕によって建物の種類や構造が変わらなければ、耐用年数は変わりません。
    例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションの場合、耐用年数は50年となります。

  2. 耐用年数は、一括償却ではなく減価償却で処理する
    耐用年数分の期間にわたって、毎年一定額を費用として計上することを減価償却といいます。
    仮に、耐用年数が50年の場合、毎年2%ずつ減価償却していきます。

  3. 耐用年数は、法令で定められている
    具体的な耐用年数は、法令で定められています。
    減価償却資産の耐用年数表(国税庁)を参照することができます。

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
参考:昭和四十年大蔵省令第十五号 減価償却資産の耐用年数等に関する省令|e-Gov

定額法の計算式

大規模修繕費を資本的支出として計上し、減価償却する場合、以下のように定額法の計算式で減価償却費を計算します。

計算式

減価償却費 = 支出した費用 × 償却率

償却率は、国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数表」を参照してください。

耐用年数に応じた数字が記載されています。

例:鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンション
  • 大規模修繕費:1,000万円
  • 耐用年数:50年
  • 償却率:0.020(定額法の場合)

計算式:減価償却費 = 1,000万円 × 0.020 = 20万円

つまり、毎年20万円を減価償却費として計上することができます。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
参考:昭和四十年大蔵省令第十五号 減価償却資産の耐用年数等に関する省令|e-Gov

定率法の計算式

定額法を使って減価償却する際の計算式は、以下のとおりです。

計算式

定率法の減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

上記の金額が償却保証額に満たなくなった年からは、以下の式での計算となります。

計算式

定率法の減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

参考:定額法と定率法による減価償却

軽微な修繕工事費は修繕費として費用計上する

軽微な修繕工事費は、修繕費として一括で費用計上することをおすすめします。

資本的支出として処理する場合は減価償却が可能ですが、工事費3,000万円に対して経費計上できるのは66万円です。

そのため、大きな節減効果は期待できないでしょう。

明らかに修繕費と認められる支出であれば問題ありません。

しかし、資本的支出か修繕費か分からない工事を実施する際には、可能な限り修繕費として処理できるように費用の調整をする必要があります。

マンション大規模修繕費が減価償却となるケースは?

大規模修繕工事の費用が資本的支出か修繕費かを判断するポイントは、工事が建物の性能や価値を向上させるのか、元の状態に戻すためのものかにあります。

マンションの価値や性能を向上させる工事は資本的支出に該当し、減価償却の対象となります。

しかし、資本的支出と修繕費の基準は明確でないことが多く、判断が難しい場合もあります。

最終的には税務法上の基準に従って判断する必要があります。

大規模修繕の節税に関する注意点

大規模修繕では、費用の処理方法や節税のみに注力しないことが大切です。

最後に、大規模修繕の節税についての注意点を紹介します。

適切に処理をする

大規模修繕費は、資本的支出と修繕費のどちらかで処理されます。

しかし、修繕費として処理すれば、資本的支出に比べ、その年の税金が大幅に安くなり、キャッシュフローが改善します。

修繕費をできるだけカバーできるように形式基準を把握し、見積もりを取る際には大規模修繕の計画から確定申告までの期間を考慮すると良いでしょう。

税務署に否認されないためには、基準に従って処理することが重要です。

長期的な視点で大規模修繕を考える

修繕費に該当する工事はできるだけ実施した方が節税になり、キャッシュフローも改善します。

しかし、節税に気を取られ、必要な工事を行わないと空室が増える可能性があります。

老朽化した間取りの改修や設備の更新などの工事を行うことで、物件の競争力が高まり、賃料の下落を防ぐことが可能です。

つまり、設備投資に該当する工事は、物件の質を向上させ、入居率アップにつながります。

長期的な経営を考えつつ、大規模修繕を計画し、必要な修繕は適切に行い、節税も視野に入れることがポイントです。

大規模修繕工事でよくある質問

Q

大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?

A

大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。

Q

工事中の生活にどんな影響がありますか?

A

足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。

Q

バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?

A

バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。

Q

工事期間中、エアコンは使えますか?

A

基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。

Q

大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?

A

塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。

Q

大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?

A

できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。

Q

修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?

A

築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。

まとめ

ここまで、大規模修繕の減価償却について解説してきました。

この記事のポイントは、以下のとおりです。

  • 大規模修繕費は、資本的支出と修繕費のどちらかで処理
    資本的支出:建物の寿命を延ばしたり、資産価値を高めたりする工事
    修繕費:建物の傷んだ部分を補修するための工事
  • 大規模修繕の費用を資本的支出と修繕費に区分するポイント
    工事費用:20万円未満または60万円未満
    工事周期:3年未満
    取得価額:前回の決算時の10%以下
  • 減価償却費の計算方法
    定額法:毎年同額を費用として計上
    計算式:減価償却費 = 支出した費用 × 償却率
  • 大規模修繕の節税に関する注意点
    1.基準に従って適切に処理することが重要
    2.節税だけでなく、長期的な視点で修繕計画を立てる

税務に関する情報は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

また、大規模修繕のタイミングや必要な工事に関することは、施工業者に相談した上で決めましょう。

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