エレベーターピットの防水工事を知りたい人
エレベーターピットの防水工事にかかる費用はいくら?
エレベーターピットに防水工事は必要?エレベーターピットとは?
エレベーターピット(EVピット)は、エレベーターの最下部にある重要な空間ですが、水の侵入に弱い箇所でもあります。ピット内の浸水は、エレベーターの機能や建物全体の安全性に影響を及ぼす可能性があり、マンションやビルのオーナーにとって重要な問題です。
本記事では、エレベーターピットの防水に関する漏水の原因や対策、効果的な防水工事の方法や費用について解説します。さらに塗膜防水や防水モルタル・パラテックスなどの防水方法についてもそれぞれの仕様や適用場面について説明します。
建物の長期的な維持管理を考える上で、エレベーターピットの適切な防水は欠かせません。ぜひ最後までお読みください。
目次
エレベーターピットとは
エレベーターピットは、エレベーターの最下部、地面よりもさらに下に設けられたスペースのことを指します。この空間は、エレベーターが最下階に停止した際に、カウンターウェイトや緩衝装置(バッファー)が収まるためのスペースとして必要です。また、緊急時にエレベーターが行き過ぎた際の安全対策としての役割も果たします。ピット内のメンテナンスは、安全性と機能を維持するために定期的に行われます。
エレベーターピットに漏水が起こる仕組み・原因|防水工事の重要性
エレベーターピットに漏水が発生する主な原因は、地下水や雨水が建物の構造を通じてピット内に浸入することです。以下は、漏水が起こる具体的な仕組みと原因です。
- 地下水の上昇
地下水位が上昇すると、建物の基礎を通じて水がエレベーターピットに浸入することがあります。 - 防水処理の劣化
ピット周辺の防水層が経年劣化や損傷すると、雨水や地下水が浸入しやすくなります。 - 配管の破損
給排水管の破損や漏れによって、ピット内に水が流れ込むこともあります。 - 建物の歪み
地震や地盤沈下によって建物が歪むと、コンクリートのひび割れから水が浸入することがあります。
エレベーターピットの漏水は、エレベーターの機能に影響を与えるだけでなく、設備の腐食や故障を引き起こす可能性があるため、早急な対応が必要です。
地下に溜まった水は蒸発することもなく、年を追うごとに増していきます。そしてこのまま放置しておくと、さまざまな被害が起きてくるのです。
なおエレベーターには定期点検が法律で義務付けられており、その際に検査員が漏水を発見することが多いです。
漏水で起こるエレベーターピットへの被害
エレベーターピットに漏水があると、どのような被害があるのでしょうか。
エレベーターピット漏水によるエレベーターの故障
漏水した水は年々増していきます。そして水位が20センチほどになると、エレベーターピット内に設置された機器に水が到達してエレベーターが故障したり、機器が錆びてきたりします。最近では、機械室レスのエレベーターが増えており、この場合、以前なら機械室にあった機器が、エレベーターピットに設置されることとなり、漏水が起きるとエレベーターが故障する原因ともなります。
エレベーターピットからの漏電
エレベーターの昇降路内には多くの電気関連の器具が設置されています。エレベーターピットで漏水が起きると、その電気器具が水に濡れてしまい漏電が発生する恐れがあるのです。エレベーターに乗車している人がいる時に漏電が起きると、復旧するまでエレベーター内に閉じ込められたままになってしまう可能性があります。
異臭や害虫などがエレベーターピット内で発生
水が溜まり、湿度が高い状態が続くとバクテリアが発生して悪臭がしたり、害虫発生の原因となります。衛生環境が非常に悪い状況を生み出してしまいます。
エレベーターピット内で漏水が起こった際の処理方法|止水工事
エレベーターピットで漏水が起きた場合に、どのような影響が出るのかは前章で説明した通りで、さまざまな悪影響があります。この状況を改善するためには「止水工事」をおこなう必要があります。
エレベーターピットの止水工事とは
エレベーターピットに漏水が起きた場合の止水工事では、溜まった水の排水と汚れを流し、最後に止水剤を施すといった流れで行われます。
漏水の原因となった部分(劣化している部分)には、徹底して止水作業をおこない、その上から防水剤などを塗って、強い防水効果が得られるような工法を施します。
ただ単に漏水の応急処置ではなく、今後、このような漏水が起きにくくするために、防水性、耐久性に重きを置いた工事となります。
エレベーターピット止水工事の流れ
主な止水工事の流れは以下のとおりです。
1 | 乾燥・漏水場所特定 | まず、漏水した部分を特定させるためにエレベーターピットに溜まっている水をポンプで排水して乾燥させます。乾燥後は、エレベーターピット内の状況を把握し、漏水した部分を確認します。 |
2 | 樹脂注入準備 | 漏水した部分や入隅した部分など、樹脂を注入する場所をマーキングして、穴を開けていきます。 |
3 | 樹脂注入 | 穴を開けた部分に樹脂を注入していきます。樹脂注入が終わったら、穴を開けた部分を埋め戻します。 |
4 | 引渡し | 全作業工程が終了したら、引渡しとなります。 |
エレベーターピット止水工事にかかる日数・費用
止水工事にかかる日数や費用、気になるところです。特に工事中は、エレベーターが使用できなくなるため、利用する方へ、復旧のめどとなる日数は、事前に告知が必要となります。
止水工事にかかる日数
朝から夕方まで工事を行った場合、2~3日で完了します。ただ、場合によっては前後します。工事中は、エレベーターは使用できませんが、工事を行っていない時間(夜や明け方など)は、使用できます。
止水工事にかかる費用
通常40~50万円といったところです。ただ、状況等によって変わります。
エレベーターピットの防水工事
エレベーターピットの止水工事が完了すると、防水工事をおこなっておくのがよいでしょう。
エレベーターピット内の漏水部分の補強は終えましたが、今後、100%漏水が起きないとはいえません。再度、漏水が起きた場合、コンクリートがさらに劣化していって悪影響が懸念されます。通常、新築工事の際に防水は行われているでしょうが、小規模のマンションやビルの場合だと施されていない場合があります。
そして防水工事をおこなう際、コンクリートの表面を平らにして、ひび割れなどがある場合は、補修する効果がある下地調整をする場合があります。
エレベーターピットに最適な防水工法|現場で異なる防水工事
エレベーターピット防水工事に最適な工法は以下の2種類です。それぞれ見ていきましょう。
GR工法
エレベーターピットの防水工事に最適な工法の1つ目は「GR工法」です。
GR工法の最大の特徴は、ピット内のコンクリート養生部分の乾燥がおこなわれた後に、表面が濡れてしまっている状態であっても施工が可能と、効率性が抜群な面です。これは、オール水系エマルジョンタイプの防水材なので実現できます。
そしてこの防水材は溶剤特有の強いにおいが発生しないので、作業にも影響がありません。さらには柔軟性と強さを併せ持っており、日頃起きる振動やコンクリートの劣化などでひび割れが起きても、防水面に影響がないのです。
バリュー工法
そして、もう1つの工法が「バリュー工法」です。
バリュー工法の特徴は、以下の3つです。
- 工事期間の短縮、施工費用の削減
- コンクリートの中まで浸透して、確実に漏水が止まる
- サビごと閉じ込め、更なる腐食を防止する
バリュー工法では、エレベーターピット内の水を抜いた後、ゴミや大きなサビを取り、ミラクルプライマーを塗ります。油や水分が残っていても施工が可能なため、工期がおおむね4日と短めとなります。そして漏水箇所を止め、設備部分も空気と水分を遮断するので、腐食を防止するのです。これで工事費が120万円は高くはないでしょう。
エレベーターピットの防水工事にはウレタン防水は向かない
エレベーターピットの防水工事には、それに適合する防水材を使用する必要があります。
エレベーターピットという特殊な場所での作業といったことも勘案し、換気のない密閉空間で作業をおこなう作業員への「安全性」が高く、湿度の高いエレベーターピット内でも効率よい工事ができる「作業性」も高く、狭い空間での作業となるため「納まり」の良い素材が適合要件となってきます。
この条件に適合する素材となると、塗膜防水ということになり、となるとウレタン塗膜防水が適するのではないかと思われる方が多いかもしれません。
しかし、ウレタン防水は湿気の高い環境では施工できず、また大半が有機溶剤系となるため、強烈なにおいにも見舞われることから、エレベーターピットの防水工事には不向きであるといえます。
そして最適なのは、ポリマーセメント系の塗膜防止材となるでしょう。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
エレベーターピットでの防水工事についてまとめ
今回は、エレベーターピットでの防水工事についてお話してきました。
エレベーターピットには、さまざまな要因で水が溜まる可能性があります。その水が溜まりすぎると、さまざまな悪影響をおよぼすのです。この状態を改善するためには止水工事や防水工事が必要となってきます。これらの工事は状況改善のみならず、補強効果があります。最適な工法を紹介しましたので、参考にしていただければ思います。
そして、防水工事は新築工事の際に行っておくと大きな効果があるので、それも合わせてご検討ください。