仮設工事とは?主な項目や種類と費用相場について解説

2025/07/24

建設現場で行われるあらゆる工事の中でも、最初に行われるのが「仮設工事」です。足場の設置や養生、仮囲い、保安設備の設置など、工事の安全性や効率性、さらには近隣住民への配慮にも関わる重要な準備工事です。

仮設工事は一見すると補助的で目立たない存在かもしれませんが、その内容と重要性を正しく理解することで、施工の質や安全性、さらには費用の妥当性までも判断しやすくなります。特に外壁塗装や屋根修繕、大規模改修工事など、建物全体に関わる工事を計画する場合には、必ず仮設工事の工程が含まれています。

本記事では、「仮設工事とは何か?」という基本から、具体的な工事の種類、費用相場、安全上のポイントまで、建設や外装リフォームを考えている方にとって必要な情報をわかりやすく解説します。業者に依頼する前に知っておくことで、見積もりの不安やトラブルも防ぐことができます。適切な仮設工事は、工事全体の品質を支える“土台”とも言える存在なのです。

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目次

仮設工事とは何か?本工事との違いと位置づけ

仮設工事とは、建物そのものを施工する「本工事」に先立って行われる、準備・補助的な工事のことを指します。国土交通省の定義では、「工事の施工に必要な施設・設備・措置を仮設的に設ける工事」とされています。

この工程が不十分なまま工事を進めてしまうと、安全面でのリスクが高まるだけでなく、作業効率が落ちたり、近隣からのクレームを招いたりする可能性があります。仮設工事は、本工事の成否を左右する“縁の下の力持ち”的な役割を果たしています。

参考元:国土交通省 土木工事安全施工技術指針

本工事との違い

項目仮設工事本工事
目的工事の安全性・効率性・環境保護の確保建物・設備・構造物の恒久的な建設
実施時期工事の初期段階(着工直後)着工後の主要工程
存続期間工事期間中のみ(工事後に撤去される)恒久的に存在する建物・設備そのもの
設置対象例足場・仮囲い・仮設トイレ・養生シートなど建物の骨組み・外壁・屋根・電気・配管など

仮設工事は、外壁塗装・屋根工事・大規模修繕などの場面でも必須の工程です。安全性確保や工事品質向上だけでなく、周囲への配慮としても欠かせません。たとえば、足場やシートが適切でなければ作業員が転落する危険があるほか、塗料や粉じんが飛散して近隣から苦情が寄せられることもあります。

したがって、仮設工事は「単なる準備」ではなく、全体工事の円滑な進行とリスク回避の両面において極めて重要なポジションにあると言えるのです。

仮設工事が必要な理由とは?安全・品質・近隣配慮の3つの視点

仮設工事は、一見すると補助的な作業に思われがちですが、実際には建設現場全体の安全性・施工品質・周辺環境への配慮を実現するために不可欠な要素です。以下の3つの視点から、なぜ仮設工事が欠かせないのかを掘り下げて解説します。

仮設工事が必要な理由1.安全性の確保

高所作業や塗装作業において、安定した足場は職人の命を守る最重要項目です。仮囲いや保安設備は、現場内外の安全を確保し、通行人や車両との接触事故や落下物による被害を防ぐための最低限の対策です。

  • 労働安全衛生法では、2m以上の高所作業には足場・墜落防止措置が義務づけられています
  • 工事内容によっては、専任の作業主任者の選任や安全教育も必要となります

事故の発生は工期の遅れだけでなく、施主・近隣との信頼関係にも悪影響を及ぼすため、仮設工事による安全確保は絶対に欠かせません。

仮設工事が必要な理由2.工事品質の向上

安定した足場やしっかりとした養生は、職人が集中して作業できる環境づくりに貢献し、ひいては施工品質の向上につながります。

  • 雨風にさらされた作業環境では、塗料の定着や乾燥にムラが生じやすくなり、剥離などの不具合が起きやすい
  • 養生が不十分だと塗料が周囲に付着し、仕上がりが雑になるリスクも

そのため、仮設工事の精度は施工業者の技術力や現場管理力の指標ともいえます。

仮設工事が必要な理由3.近隣への配慮と信頼性

工事中に発生する騒音・粉じん・塗料の臭い・視界の妨げなどは、近隣住民にとって大きなストレス要因となります。

  • メッシュシートやブルーシートは、これらの問題を抑えるための第一の防波堤
  • 仮囲いに掲示された施工会社名や工程表、マナー標語なども、安心感を与える情報発信になります

仮設工事が丁寧な現場ほど、トラブルが少なくクレームも起きにくい傾向があります。それは工事全体に対する信頼感を高める要因にもなります。

仮設工事の種類と内容|足場・養生・仮囲い・保安設備などを分かりやすく解説

マンションやビルの外壁改修や大規模修繕で必ず行われるのが「仮設工事」です。これは、工事を安全かつ円滑に進めるための“準備作業”であり、見積書でも大きな項目として記載されます。

ここでは、代表的な仮設工事の種類とその役割について簡潔に解説します。

仮設工事の代表的な種類

種類内容と役割
足場工事職人の作業用通路を確保。高所作業に必要不可欠。工法は建物規模で選定。
養生塗料やホコリの飛散を防止。近隣や建物への被害を防ぐためにシートやテープを活用。
仮囲い工事現場の周囲を囲い、安全確保や防犯、景観対策に効果的。
設備仮設仮設トイレ・現場事務所・電源など作業環境を整える設備。
保安設備看板・標識・コーン・照明など。通行人や作業員の安全確保のために設置。

仮設工事の種類1.足場工事|すべての始まりは安全な足元から

足場は職人が高所で安全に作業するための構造物です。現場に合わせて「枠組足場(高層向け)」「単管足場(狭小向け)」「くさび式足場(戸建て向け)」などを使い分けます。

設置には労働安全衛生法に基づく基準があり、一定の高さを超える場合は作業主任者の選任が義務付けられています。

仮設工事の種類2.養生|近隣トラブルを防ぐ必須対策

塗料や粉じんが飛散して近隣住宅や車を汚すのを防ぐのが養生です。メッシュシート(飛散防止)、ブルーシート(地面保護)、マスキングテープ(サッシや設備保護)などを使い分け、丁寧に覆うことで作業後の清掃やトラブル対応の負担も軽減されます。

仮設工事の種類3.仮囲い|安全性と防犯性を確保する

仮囲いは現場全体をパネルやフェンスで囲う工事です。鋼製パネル型は防犯性と遮音性に優れ、メッシュフェンス型は視認性と通気性を兼ね備えています。

安全看板や標識を掲示し、工事中であることを周囲に明示することも重要です。

仮設工事の種類4.設備仮設|作業員が快適に働ける環境づくり

長期間の工事では、作業員が使用する仮設トイレや現場事務所、電動工具用の仮設電源などが必要です。これにより工事の進行がスムーズになり、職人の負担軽減や施工ミスの防止にもつながります。

仮設工事の種類5.保安設備|現場の安全管理に欠かせない存在

保安設備とは、通行人や作業員の事故を防ぐための標識や照明、カラーコーンなどを指します。設置ルールや数にも基準があり、安全管理体制の信頼性を左右する重要な要素です。

仮設工事は本体工事の“裏方”ではありますが、安全性や品質、近隣への配慮を支える土台です。工事内容や見積を検討する際には、これらの項目もきちんと確認し、納得できる施工につなげましょう。

設備が整っていることで、作業の効率化と職人の安全・快適な労働環境が保たれます。

仮設工事にかかる費用相場と内訳

仮設工事にかかる費用は、建物の規模や工事の種類、工期の長さ、施工場所の地域特性などによって大きく変動します。中でも足場の設置費用は全体の中でも大きな割合を占め、外壁塗装や屋根工事などの現場では必須項目となります。また、養生資材や仮囲い、仮設トイレなどの設備仮設、保安設備までを含めた総合的な費用を理解しておくことは、見積もり比較や適正価格の判断に非常に役立ちます。

ここでは代表的な仮設工事項目別に、参考となる単価や目安金額を具体的に紹介します。以下に代表的な仮設工事の種類ごとの相場と内訳を表形式でまとめました。

仮設工事費用一覧表(相場目安)

項目内容・説明単価・目安費用
足場設置費用搬入・設置・解体・撤去すべて含む600〜1,000円/㎡戸建:20〜30万円前後
飛散防止シート足場に張るメッシュシート300〜500円/㎡
養生テープ・ビニール類サッシや床、エアコンなどの保護1現場:数千円〜2万円
鋼製パネル式仮囲い防犯性・遮音性あり。標準仕様1枚あたり:1,000〜3,000円
メッシュフェンス型仮囲い軽量・通気性あり。短期現場向け1枚あたり:500〜1,500円
保安設備一式看板・照明・コーンなど。夜間工事では必須1現場:2万〜5万円
仮設トイレ簡易水洗式。搬入・管理費含む月額:8,000〜15,000円
現場事務所(プレハブ)空調・電源付きもあり。規模で変動月額:3万〜10万円
仮設電源設備分電盤・配線・照明など一式:3万〜10万円

仮設工事にかかる費用相場|足場設置費用

  • 単価相場:600〜1,000円/㎡(平米)
  • 戸建住宅(延べ床30坪程度)なら、外壁全面と屋根を囲むため約200㎡前後 → 20〜30万円程度が目安
  • 足場の種類(くさび式/単管/枠組みなど)や、3階建て以上の高所作業では追加費用が発生するケースもあります

足場には搬入・設置・解体・撤去の工程すべてが含まれており、職人の安全確保と作業効率に直結するため、工事費の中でも最も重要な部分です。

仮設工事にかかる費用相場|養生・シート関連費用

  • 飛散防止用メッシュシート:300〜500円/㎡前後(足場に取り付けて施工)
  • 養生テープやビニール、ブルーシート:1現場あたり数千円〜2万円程度
  • 細部マスキングや家具・床保護用資材も含めると、内容によってはさらに加算されることがあります

養生が適切に行われていないと、塗料の飛散や粉塵による近隣トラブルが発生するため、非常に重要な仮設項目です。

仮設工事にかかる費用相場|仮囲い・保安設備の費用

  • 鋼製パネル式仮囲い:1枚あたり1,000〜3,000円。必要枚数に応じて費用が算出
  • メッシュフェンス型の簡易仮囲い:1枚あたり500〜1,500円程度
  • 保安灯、三角コーン、標識類:現場1か所につき一式2万〜5万円前後

夜間工事や道路沿いでの施工では、特に保安設備の充実が求められ、規模によっては予算の5〜10%程度を占める場合もあります。

仮設工事にかかる費用相場|仮設トイレ・事務所・電源設備などの費用

  • 仮設トイレ:簡易水洗式で月額8,000〜15,000円(搬入・メンテナンス費込み)
  • 現場事務所(プレハブ型):月額3万円〜10万円(空調・電源設備を含む場合も)
  • 仮設電源工事:引き込み・分電盤設置・配線工事など込みで3万円〜10万円程度が目安

これらの費用は、工期が長くなればその分だけ加算されるため、1か月単位や工期総額での見積もりチェックが大切です。

注意点とアドバイス

  • 「仮設工事一式」とまとめて見積書に記載されることが多いため、内訳を明示してもらうことが重要です。
  • 足場や養生は職人の作業安全だけでなく、近隣トラブル防止の観点からも費用を惜しむべきではありません。
  • 工期が長引く場合は、仮設トイレや事務所の月額費用が積み重なるため、月単位での契約内容を確認しましょう。

仮設工事は本体工事を支える基盤であり、コスト管理と安全管理の両面で極めて重要な項目です。

仮設工事を依頼する際の注意点とチェックリスト

仮設工事を含む見積書や契約書を確認する際には、以下の点を事前にチェックしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。それぞれのポイントについても、簡単に補足を加えておきます。

  • 見積書に「仮設工事」の内訳が明記されているか
  • 足場の種類や設置面積・高さなどが明示されているか
  • 養生や仮囲い、保安設備の範囲が明確か
  • 仮設トイレや現場事務所、電源設備の有無が明記されているか
  • 工期に応じた仮設物の設置期間と撤去スケジュールが明示されているか
  • 近隣説明や敷地外への影響に関して業者の対応方針が記載されているか

詳しくみていきましょう。

仮設工事を依頼する際の注意点1.見積書に仮設工事の内訳が明記の有無

「仮設工事一式」とだけ記載されている場合、内容が不透明で比較検討が困難です。足場や養生、仮囲い、保安設備、仮設トイレなどの各項目ごとに金額が明記されているかを確認しましょう。内訳が明確であれば、不要な費用の発生や重複請求も防げます。

仮設工事を依頼する際の注意点2.足場の種類や設置面積・高さなどの明示の有無

足場設置の仕様が曖昧だと、施工に支障が出たり、追加費用が発生したりするリスクがあります。「くさび式」「単管」「枠組足場」などの種類や、設置面積、階数などの詳細が記載されているかを確認し、建物に適した足場かどうか判断しましょう。

仮設工事を依頼する際の注意点3.養生や仮囲い、保安設備の範囲が明確か

仮設の養生や仮囲いが不十分だと、塗料の飛散や粉じんによる近隣トラブルにつながる恐れがあります。どこまで養生するのか、仮囲いはどの範囲か、安全標識や照明の設置箇所はどこかなど、範囲や仕様を確認することが大切です。

仮設工事を依頼する際の注意点4.仮設トイレや現場事務所、電源設備の有無

労働環境に直接影響する仮設トイレや事務所、仮設電源などがきちんと準備されているかは、現場の安全性や作業効率にも関わります。設置の有無、仕様(月額料金や設備内容)を見積書や契約書でしっかり確認しましょう。

仮設工事を依頼する際の注意点5.工期に応じた仮設物の設置期間と撤去スケジュール

仮設工事の費用は工期に比例して増加するため、設置から撤去までの期間とタイミングの明示が不可欠です。工事期間より大幅に長く仮設物が設置される場合、不必要な費用がかかる可能性があるため注意が必要です。

仮設工事を依頼する際の注意点6.近隣説明や敷地外への影響に関する内容の明記

足場設置や作業中の騒音・振動は近隣トラブルの原因になりがちです。業者がどのように近隣へ説明し、苦情対応を行うのか、その方針が見積書や提案書に明記されているかを確認してください。対応内容が明確であれば、安心して工事を任せる判断材料になります。

仮設工事でよくあるトラブルと回避策

仮設工事は建設現場を支える重要な役割を果たしますが、事前の確認不足や業者の対応によって、さまざまなトラブルが発生することもあります。ここでは、実際によく起きるトラブル事例と、その防止方法について詳しく見ていきます。

仮設工事のトラブル対策|見積書に「仮設工事一式」とだけ書かれている

仮設工事の費用が一式表記だけの場合、内訳が不明瞭になり、相場以上の費用が含まれていても気付きにくくなります。足場・養生・保安設備など項目ごとの金額が分かるよう、見積書には内訳の記載を求めましょう。特に初めて依頼する業者の場合は慎重に確認することが重要です。

仮設工事のトラブル対策|足場の設置場所に関する近隣問題

足場を組む際に、敷地境界を越えて設置してしまうと、隣地所有者とのトラブルにつながります。こうした問題を避けるためには、事前に現地調査を行い、越境の可能性がある場合には隣地使用の許可を文書で得ることが効果的です。

仮設工事のトラブル対策|養生の不備による近隣建物や車両の汚損

塗料やホコリが近隣の家屋や車に付着してしまうと、補償問題に発展する可能性があります。特に風の強い日や高圧洗浄の工程では、飛散リスクが高くなります。飛散防止シートの徹底や、必要に応じた車両カバーなどの配慮を業者に依頼することが肝心です。

仮設工事のトラブル対策|設置場所や衛生面でのクレーム

仮設トイレの設置位置や見た目・においが原因で、近隣住民からの苦情につながることがあります。あらかじめ目立たない場所に設置し、清掃や消臭剤の使用を徹底するよう業者と取り決めておくと安心です。

仮設工事についてよくある質問(FAQ)

ここでは、仮設工事について良くある質問をQA形式でまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

Q1.仮設工事費はどのくらいの割合で発生しますか?

A1.工事全体に対して、仮設工事は10〜20%ほどの費用がかかるといわれています。特に足場設置や養生の規模が大きい場合、仮設費用だけで数十万円に達することも珍しくありません。

Q2.仮設工事の資材は再利用されているのですか?

A2.はい。足場やシートなどの仮設資材は基本的にリース品や再利用が前提です。実際に請求されるのは「設置・解体の手間賃」や「使用に伴う管理費」と考えると良いでしょう。

Q3.自分で仮設工事を準備して費用を抑えることは可能ですか?

A3.原則として不可です。足場設置や養生には安全基準や法的規制があり、専門の資格を持つ業者が施工しなければならないとされています。DIYでの対応は事故や違法行為のリスクがあるため避けましょう。

仮設工事とは?重要性を正しく理解しよう|まとめ

仮設工事は、建設現場における安全性の確保、施工品質の安定、そして近隣への配慮という3つの要素を支える、なくてはならない工程です。足場・養生・仮囲い・仮設トイレ・保安灯など、どれか一つでも欠けると施工全体に悪影響が出る可能性があります。

その重要性を正しく理解し、内訳が明確な見積書を確認すること、信頼できる業者を選ぶことが、満足度の高い工事につながります。仮設工事を単なる付帯工事と捉えるのではなく、工事成功のための前提条件として位置づけることが大切です。