中規模修繕とは?大規模修繕との比較や費用・工事の進め方・分散方式などを徹底解説
2025/07/24
マンションの老朽化が進むなか、「大規模修繕をしたくても積立金が足りない」「全戸の合意形成が難しい」といった現実的な問題を抱える管理組合が増えています。そんな中、現実的かつ柔軟な選択肢として注目されているのが「中規模修繕」です。特に分散方式というアプローチが広がりを見せており、資金や人手が限られていても段階的に修繕が可能になるとして導入が進んでいます。
この記事では、「中規模修繕とは何か?」という基本から、主な工事項目や費用相場、成功させるための手順、分散方式のメリットまで、管理組合やオーナーにとって役立つ実践的な情報を詳しく解説していきます。
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目次
中規模修繕とは?|定義・規模・適用されるマンションの特徴
中規模修繕とは、マンションの劣化状況や管理体制、資金状況に応じて、大規模修繕のような一括実施ではなく、必要な工事項目を分けて実施していく修繕方法です。対象となるのは、30戸〜100戸規模の中小マンションが中心で、特に築年数が30年を超える建物において検討されるケースが増えています。
中規模修繕の定義と規模の目安
明確な法律上の定義はないものの、以下のような特徴を持つ修繕が「中規模修繕」として分類されることが一般的です。
- 戸数:30戸〜100戸程度のマンション
- 工事項目:外壁・屋上防水・鉄部塗装などの一部工事に限定される
- 工期:約1ヶ月〜4ヶ月程度
- 修繕費用:数千万円以内が多い
大規模修繕に比べて工事の範囲・予算がコンパクトであり、住民の負担を軽減しながら、必要最低限の機能回復を目指す工事です。
中規模修繕の対象となるマンションの特徴
以下のようなマンションでは中規模修繕が選ばれるケースが多くなっています。
- 築30年以上で、設備や外装に劣化が見られる
- 修繕積立金が十分に確保できていない
- 管理組合の合意形成が難しく、段階的な工事を希望している
- 専門コンサルタントや施工業者の支援を得て修繕計画を進めたい
中小規模マンションほど予算や人手の制約を受けやすく、柔軟な修繕アプローチが求められます。
大規模修繕との違い
項目 | 中規模修繕 | 大規模修繕 |
---|---|---|
戸数の目安 | 30〜100戸程度 | 100戸以上が多い |
工事項目 | 一部のみ(外壁・屋上防水など) | 全体(給排水・設備更新も含む) |
費用感 | 数百万円〜数千万円 | 数千万円〜1億円以上 |
工期 | 1〜4ヶ月 | 6ヶ月〜1年以上 |
合意形成 | 比較的スムーズ | 困難なケースも |
中規模修繕は、あくまで必要最小限の機能回復や美観維持にフォーカスした工事であり、将来的な建て替えや全面的な改修を見据えた「つなぎ」の修繕とも位置付けられます。
なぜ今「中規模修繕」が注目されているのか?
近年、中小規模マンションにおいて「大規模修繕を一括で行うのは現実的でない」という声が増加しています。その背景には、建物の老朽化に加えて、住民構成の変化や資金不足といった課題があります。中規模修繕は、それらの現実に即した柔軟な対処法として注目されています。
修繕積立金の不足
大規模修繕を行うためには多額の費用が必要ですが、修繕積立金の水準が計画に追いついていないマンションが多数存在します。中規模修繕であれば、限られた予算内で優先度の高い部分から着手することが可能です。
高額な一括修繕への懸念
高齢化が進む中で、住民の中には一括修繕による一時金の負担に不安を感じる方も少なくありません。中規模修繕は費用を段階的に分散できるため、心理的・金銭的なハードルを下げる効果があります。
合意形成のハードルと時代背景
住民の多様化や関心の低下により、合意形成が以前より難しくなっています。中規模修繕であれば、段階的な実施により議題を分けて提案できるため、住民の理解と協力を得やすくなります。
分散方式とは?中規模修繕を柔軟に進める新しい工事計画
分散方式とは、マンションの修繕工事を複数回に分けて実施する方法を指します。中規模修繕の多くはこの分散方式を採用しており、資金や合意形成の課題を乗り越える手段として有効です。
分散方式の仕組みと概要
例えば、外壁補修・屋上防水・鉄部塗装を3年に1回ずつ実施するような形で、予算と工期を分散することで、マンション全体の劣化対応が可能になります。
- 年度ごとに工事項目を分割
- 修繕積立金の状況に合わせて実施時期を調整
- 住民の負担を最小限に抑えながら計画的に進行
中長期修繕計画との関係
分散方式を成功させるためには、「長期修繕計画」をしっかり立てておくことが不可欠です。10年〜20年先を見据えた修繕スケジュールを作成し、どのタイミングでどの工事を実施するかをあらかじめ計画します。
- 年次別に分けた修繕メニュー
- 劣化診断に基づいた優先順位づけ
- 費用シミュレーションによる実現可能性の検証
長期修繕計画が明確であれば、分散方式でも修繕の質を落とさずに対応できます。
中規模修繕と大規模修繕との違い
従来の大規模修繕は、一度に全ての工事を完了させる「一括方式」が主流でした。一方、分散方式では以下のようなメリットがあります。
比較項目 | 一括方式(従来型) | 分散方式(中規模修繕) |
実施頻度 | 10〜15年に1回 | 3〜5年ごとに分割実施 |
費用負担 | 一時的に高額 | 費用を平準化できる |
工期 | 長期(6ヶ月以上) | 短期(1〜2ヶ月単位) |
合意形成 | 全工事項目に一括同意が必要 | 段階的に進められる |
分散方式は「現実的に修繕を進めるための知恵」として、今後ますます注目されると考えられます。
中規模修繕で対応する主な工事項目と費用の目安
中規模修繕では、マンションの築年数や立地条件、住民の生活状況などを総合的に考慮し、必要な工事を段階的かつ効率的に実施していきます。一括での大規模修繕に比べて、予算や理事会の合意形成の面で柔軟に対応できる点が最大の特徴です。
ここでは、中規模修繕で対応する主な工事項目とその概要、そして気になる費用相場について詳しく解説します。
主な修繕対象工事の具体例
- 外壁補修・塗装工事:建物の美観維持と雨水侵入の防止を目的とした工事。ひび割れの補修や浮き部の修復、塗装の塗り替えなどが含まれます。特に外観が気になるマンションでは、入居率や資産価値への影響も大きいため重要度が高くなります。
- 屋上・バルコニー防水:防水層が劣化したまま放置すると、雨水が構造部に浸透し、躯体劣化の原因になります。定期的な再防水処理や、通気緩衝工法・密着工法など、マンションの構造に合わせた手法を選ぶことが重要です。
- 鉄部塗装工事:手すりや玄関ドア、階段など鉄製部分の塗装は、錆の進行を抑えるメンテナンス。外観にも影響しやすいため、定期的な再塗装が必要です。
- 給排水管の更新・補修:水漏れや赤水の原因になる老朽管を交換。一部交換(更新)から全体的な配管の入れ替えまで、劣化状況に応じて対応します。
- 共用部設備の更新:照明のLED化、インターホンの交換、防犯カメラの増設など、住環境の利便性と安全性を高める更新も中規模修繕で取り組まれることが多いです。
工事項目ごとの費用相場(30〜50戸程度のマンション)
工事項目 | 概算費用(目安) | 備考 |
---|---|---|
外壁補修・塗装工事 | 約1,000万〜2,500万円 | 面積・劣化状況により増減 |
屋上・バルコニー防水 | 約500万〜1,500万円 | 工法により単価差あり |
鉄部塗装工事 | 約300万〜800万円 | 範囲により変動 |
給排水管更新・補修 | 約800万〜2,000万円 | 材質・交換範囲で変動大 |
共用設備の更新 | 約300万〜1,000万円 | 機器の性能・数量次第 |
※実際の費用は、立地条件や施工業者、工事内容の詳細により異なります。
中規模修繕を成功に導く進め方と実践ポイント
中規模修繕を円滑に進めるには、段取りと合意形成が極めて重要です。特に住民の理解を得ながら、実効性のある工事計画を策定することが求められます。以下では、一般的な進め方の流れと、トラブルを防ぐための実践的なポイントを紹介します。
中規模修繕の進め方(全体の流れ)
- 現況調査・劣化診断
- 建物の状態を把握するため、専門業者による調査を実施。
- 外壁・屋上・鉄部・配管・設備など各部位をチェックし、劣化状況をレポート化。
- 修繕対象の選定と優先順位づけ
- 全体改修ではなく、緊急性や影響度の高い部分から着手。
- 数年単位で修繕を分散することで予算負担も軽減。
- 概算見積の取得と費用検討
- 2〜3社の施工業者に見積依頼。
- 修繕積立金とのバランスや、将来の資金計画も考慮。
- 住民説明会・合意形成の徹底
- 丁寧な資料作成とプレゼンで不安や疑問を解消。
- 高齢者や不在所有者にも配慮した周知手段を確保。
- 施工業者の選定と契約締結
- 実績・資格・保証内容・近隣対応力などを比較。
- 修繕コンサルタントの活用も有効。
- 工事実施と進捗・品質管理
- 工程表の提示と共有、定例会議での情報開示。
- 騒音・安全対策など住民配慮も徹底。
中規模修繕を成功させるコツとは?
- 段階的な実施で無理なく進行:一度にすべての修繕を行うのではなく、3〜5年程度の期間で段階的に分けて工事を実施することで、資金面・住民理解ともに負担を軽減できます。
- 修繕の目的を明確にする:単に見た目を整えるのか、安全性を強化するのか、賃貸用住戸の入居率改善を狙うのか——目的を明確にすることで、関係者の納得感が高まりやすくなります。
- 実績ある業者・コンサルの選定:経験豊富な専門家による助言は、中規模修繕の成否を分けます。複数社比較と実績確認は怠らずに行いましょう。
実録!新東亜工業の施工事例|7階建てマンションの大規模修繕工事
今回は、東京都墨田区にある7階建てマンションで実施された大規模修繕工事の実例をご紹介します。色選びの失敗を繰り返したくないというオーナー様のご相談から始まり、現地調査、丁寧な工程説明、施工後の満足の声まで、実際の会話を交えながら施工の流れをわかりやすくお届けします。
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ご相談内容
お問い合わせ時点で、オーナー様は過去の色選びの失敗と屋上防水の要否にお悩みでした。
お客様:「前に外壁の修繕をやったとき、色で失敗してしまって…。今回はちゃんと満足できるものにしたいんです」
お客様:「屋上防水もやるべきか迷っていて…実は5年前に他業者でやってるんですが、そのまま使えますか?」
現地調査の結果、屋上防水の状態は良好と判断。防水あり/なしの2パターンで見積を提示し、「防水なしプラン」でのご契約となりました。
工事の概要|工事金額と施工期間


今回の工事では、外壁塗装、シーリング打ち替え、鉄部塗装、足場など複数の工事項目を含めて施工。屋上防水は状態良好につき除外となりました。
工事項目 | 内容 |
---|---|
外壁塗装 | シリコン塗装仕上げ |
シーリング | 全箇所撤去・打ち替え |
鉄部塗装 | 玄関扉・バルコニー手すりなど |
足場 | 全面架設 |
工事金額:約852万円(税込)
施工期間:約50日間
お客様:「複数パターンで見積を出してくれたので比較しやすかったですね。説明もわかりやすくて納得できました」
担当者:「屋上防水は前回の状態が良好でしたので、今回は必要ありませんでした。余計な費用がかからないよう判断させていただきました」
現地調査で判明した劣化症状
現地調査では、以下のような劣化症状が確認されました。
- シーリングの硬化・亀裂:経年劣化により弾性を失い、ひび割れ多数
- シーリングの「増し打ち」による施工不良:旧シールを撤去せず重ねていたことで剥離が発生
- 外壁塗装の色あせ・汚れ:前回塗装の退色が進行し、日陰部に黒ずみ
- バルコニー床のトップコート剥離:防水機能は残るものの、表面劣化あり
担当者:「古いものを撤去せず上から足してあるだけだったので、耐久性が落ちてました。今回はすべて撤去して打ち直します」
お客様:「やっぱり、見えないところもきちんと確認してもらえると安心できますね」
施工中のやり取りと配慮
工事中は毎回担当者が進捗を報告。外壁色や長尺シートの見本を見て決定しながら進められ、工程ごとに確認しやすい体制を整えました。
担当者:「今日は3階バルコニーのシーリングを打ち替えていきます。既存シールはすべて撤去済みです」
お客様:「毎回進捗を伝えてくれるので、こちらも安心して見守れます」
担当者:「色見本の実物板を5種類ほど持ってきましたが、どれがよさそうですか?」
お客様:「これがいいですね!」

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引き渡し時のご感想
引渡し時には、オーナー様とお母様にも仕上がりをご確認いただき、ご満足の声をいただきました。
お客様:「本当イメージ通りの色でよかったです。ありがとうございます。母も喜びますわ!」
お客様:「領収書の件も丁寧に対応してくださって助かりました。最初から最後まで信頼できました」
中規模修繕のよくある質問(FAQ)
Q1:中規模修繕と大規模修繕の違いは?
A:中規模修繕は、劣化の進行度や予算状況に応じて、工事項目を絞り込んで実施するスタイルです。一方、大規模修繕は足場を組んで一括で多くの工事を行う全面改修が基本です。
Q2:中規模修繕は何年ごとに必要?
A:一律の目安はありませんが、築15年〜30年の間に数年おきに段階的な中規模修繕を行うケースが多いです。建物診断の結果によって最適なタイミングを判断しましょう。
Q3:分散方式にすると費用が割高になりませんか?
A:一部の仮設費用が繰り返しかかる場合はありますが、緊急度の高い部分を優先できるため、全体コストを抑える工夫も可能です。また、積立金の計画的活用にも向いています。
Q4:中規模修繕に助成金や補助金は使えますか?
A:自治体によっては防水工事や外壁改修に対して助成金制度が用意されているケースもあります。早めに自治体窓口へ相談しましょう。
中規模修繕は柔軟かつ現実的な選択肢|まとめ
中規模修繕は、大規模修繕に比べてコストや計画面での柔軟性が高く、管理組合や住民の負担を抑えながら、建物の価値維持や住環境の改善を図る手段として非常に有効です。
- 「今すぐすべてを直す必要はないが、部分的に気になる箇所がある」
- 「修繕積立金の余裕が限られている」
- 「住民の合意形成を段階的に進めたい」
そんな課題に直面している場合、中規模修繕はまさに現実的な解決策となるでしょう。
また、分散方式による中期的な修繕戦略を立てることで、資金計画・劣化対応・住民満足のバランスを取ることができます。専門業者やコンサルタントの力も借りながら、自分たちのマンションに最適な修繕計画を立てていきましょう。