倉庫防水工事の費用と工期まとめ|工法別の特徴と業者選びのコツ

2025/09/25

倉庫は、企業にとって大切な商品や資材を保管する拠点です。しかし一度でも雨漏りや漏水が発生すると、在庫の損失・出荷の遅延・取引先への信用低下など、経営に直結するリスクを抱えることになります。特に日本は台風や集中豪雨が多く、さらに倉庫は屋根面積が広いため、わずかな劣化でも被害が大きくなりやすいのが特徴です。そのため定期的な点検と防水工事の実施は、倉庫運営を安定させる上で欠かせません。
本記事では、倉庫防水工事が必要な理由、採用される主な工法、そして工法ごとの特徴について詳しく解説します。これから防水工事を検討している企業担当者やオーナーの方にとって、意思決定の参考となる情報をまとめました。

倉庫に防水工事が必要な理由

倉庫は一般住宅やマンションと比べて規模が大きく、屋根や外壁の面積も広いため、少しの劣化でも大きなダメージに直結します。ここでは防水工事が不可欠とされる理由を整理します。

在庫の損失を防ぐ

倉庫の最大の役割は「商品や資材を安全に保管すること」です。屋根や外壁から雨水が浸入すると、段ボールやパレットが濡れ、商品の破損やカビ発生につながります。特に食品・衣類・精密機器を扱う倉庫では、数百万円〜数千万円規模の損害に発展するケースもあります。

建物自体の寿命を延ばす

雨漏りを放置すると、コンクリートや鉄骨が腐食・劣化し、建物全体の耐久性が低下します。鉄筋コンクリート造の倉庫であっても、水分が侵入すれば中性化や鉄筋腐食が進行し、大規模補修が必要になる可能性があります。防水工事は建物の寿命を守るための投資でもあります。

事業継続リスクを抑える

倉庫は物流・供給の要です。雨漏りや浸水によって一時的に使用できなくなると、出荷遅延や業務停止が発生し、顧客や取引先に大きな影響を与えます。計画的な防水工事により、稼働を止めずに長期的な運営を支えることができます。

倉庫の種類によるリスクの違い

  • 一般倉庫:段ボールやパレットが多く、少しの雨漏りでも被害が拡大しやすい。
  • 冷蔵・冷凍倉庫:断熱材と防水層が密接に関わり、結露や温度変化による劣化が発生しやすい。
  • 工場兼倉庫:機械設備や製造ラインも併設されているため、浸水すると操業停止リスクが非常に高い。

こうした種類別のリスクを考慮して、防水工事の優先度を判断する必要があります。

防水工事のタイミング

防水工事は、築年数や劣化症状を見極めて行うことが大切です。

  • 築10〜15年を過ぎた倉庫
  • 屋根や外壁にひび割れ・浮き・剥がれが見られる
  • 天井にシミやカビが発生している
    これらの兆候があれば、早めの点検と防水工事の検討が必要です。

倉庫防水工事の主な工法

倉庫に採用される防水工事にはいくつかの工法があります。規模や屋根形状、コスト、耐用年数によって最適な方法は異なります。ここでは代表的な工法を解説し、倉庫に向くかどうかを整理します。

ウレタン防水

液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。

  • メリット:複雑な形状や配管周りにも対応可能。比較的低コストで改修工事と相性が良い。
  • デメリット:職人の技術に仕上がりが左右されやすく、厚みが均一でないと耐久性が落ちる。
  • 費用目安:4,500〜6,500円/㎡
  • 倉庫での適性:小〜中規模倉庫や部分補修に適する。

シート防水(塩ビシート・ゴムシート)

シート状の防水材を貼り付けて施工する工法です。

  • メリット:均一な厚みを確保でき、広面積を短期間で施工可能。
  • デメリット:複雑な形状には不向き。端部処理に注意が必要。
  • 費用目安:4,000〜6,000円/㎡
  • 倉庫での適性:大規模倉庫の屋根や屋上に最適。

アスファルト防水

アスファルトを溶かして複数層を積み重ねる伝統的な工法です。

  • メリット:耐久性が非常に高く、耐用年数は20年以上。
  • デメリット:施工に熱工法を伴うため、工期やコストがかかりやすい。
  • 費用目安:6,000〜8,500円/㎡
  • 倉庫での適性:長寿命を求める大規模倉庫に向いている。

FRP防水

ガラス繊維で補強した樹脂を塗布する工法です。

  • メリット:硬化後は非常に強靭で耐摩耗性に優れる。
  • デメリット:広面積には不向きで、紫外線劣化が早い。
  • 費用目安:5,500〜7,500円/㎡
  • 倉庫での適性:小規模スペースや部分補修向け。

倉庫の防水工法別比較表

工法耐用年数㎡単価目安特徴倉庫での適性
ウレタン防水10〜12年4,500〜6,500円複雑形状に対応、改修向き小〜中規模倉庫
シート防水12〜15年4,000〜6,000円広面積を短期施工可能中〜大規模倉庫
アスファルト防水20年以上6,000〜8,500円耐久性が非常に高い大規模倉庫
FRP防水8〜10年5,500〜7,500円強靭だが広面積不向き部分補修、小規模

倉庫防水工事の費用相場と目安

倉庫の防水工事費用は「㎡単価」「倉庫の規模」「工法の種類」によって大きく変動します。住宅やマンションよりも広い面積を持つ倉庫では、同じ㎡単価でも総額は数百万円〜数千万円規模になるのが一般的です。ここでは、相場の目安と費用に影響する要素を詳しく解説します。

工法別の㎡単価目安

倉庫防水工事に使われる主な工法と㎡単価の目安は以下の通りです。

  • ウレタン防水:4,500〜6,500円/㎡
  • シート防水(塩ビ・ゴム):4,000〜6,000円/㎡
  • アスファルト防水:6,000〜8,500円/㎡
  • FRP防水:5,500〜7,500円/㎡

耐用年数を考慮すると、単価だけではなく「ライフサイクルコスト(長期的な維持費)」で比較することが重要です。

倉庫規模別の費用イメージ

倉庫の大きさによって費用総額は大きく変わります。

  • 小型倉庫(〜500㎡):250万〜350万円前後
  • 中型倉庫(1,000〜2,000㎡):500万〜1,200万円前後
  • 大型倉庫(5,000㎡以上):2,000万円〜数千万円規模になることもある

特に大型倉庫は足場や仮設工事費用の割合が高く、施工方法の選定が全体コストに直結します。

費用に影響する主な要因

倉庫防水工事の見積りは単純な㎡計算だけではなく、次のような要素によって変動します。

  • 下地の劣化状況:ひび割れ補修や下地調整が必要なら追加費用
  • 施工環境:高所作業・狭小スペース・資材搬入経路の制約
  • 付帯工事:排水ドレン・外壁シーリング・屋根板金との取り合い
  • 保証年数:10年保証と15年保証では採用する材料が異なる場合がある

倉庫防水工事の費用相場比較表

倉庫規模面積目安ウレタン防水シート防水アスファルト防水FRP防水
小型倉庫〜500㎡250〜350万円200〜300万円300〜400万円280〜350万円
中型倉庫1,000〜2,000㎡500〜900万円450〜800万円700〜1,200万円600〜1,000万円
大型倉庫5,000㎡以上2,500万円〜2,000万円〜3,000万円〜不向き

この表を参考に、自社倉庫の規模や予算に合った工法を検討することが可能です。

倉庫防水工事の工期目安とスケジュール管理

倉庫の防水工事を計画する際に、最も気になるのが「どれくらいの期間で工事が終わるのか」という点です。倉庫は商品保管や物流の拠点であり、工事による稼働停止は直接的な損害や遅延につながります。そのため、工期の目安を把握し、稼働スケジュールと照らし合わせて計画を立てることが欠かせません。

倉庫規模別の工期目安

倉庫の大きさによって必要な工期は大きく異なります。

  • 小型倉庫(〜500㎡):3日〜1週間程度
     →部分的な補修や小規模な防水工事は短期間で完了することが多いです。
  • 中型倉庫(1,000〜2,000㎡):1〜2週間程度
     →物流拠点や地域配送拠点に多い規模で、出荷業務と並行するため施工計画が重要。
  • 大型倉庫(5,000㎡以上):2〜4週間程度
     →工事面積が広いため分割施工が前提。長期の工期を見越し、事業計画に組み込む必要があります。

工法ごとの工期の違い

倉庫防水工事では選ぶ工法によっても工期が変動します。

  • シート防水:シートを貼り付ける工法で、広面積を効率的に施工できるため短期間で仕上がる
  • アスファルト防水:複数層を重ねるため施工時間が長く、工期が延びやすい
  • ウレタン防水:塗布した後の硬化に時間がかかるため、天候に左右されやすい
  • FRP防水:部分補修向けで、施工自体は短期間で完了するが広面積には不向き

天候による影響と計画の工夫

工期は天候にも大きく左右されます。

  • 梅雨や台風シーズン:降雨による中断で工期延長リスクが高い
  • 真夏:高温で材料の硬化が早まり、施工品質に影響する場合がある
  • 冬季:気温が低く硬化が遅れるため、ウレタン防水などは注意が必要

そのため、多くの企業は 春や秋など比較的天候が安定した季節 に工事を計画します。

倉庫防水工事中に必要な配慮と注意点

倉庫は稼働を完全に止められないことが多いため、防水工事は「物流を維持しながら進める」ための配慮が不可欠です。

稼働を維持するための施工方法

  • 夜間施工・休日施工:日中は荷捌きや出荷を優先し、工事は夜間や休日に実施
  • ゾーニング施工(分割施工):倉庫を複数区画に分け、区画ごとに施工することで稼働を止めない
  • 仮設通路の確保:フォークリフトや人の動線を妨げないよう仮設ルートを設定

在庫や荷物の養生対策

  • ブルーシートや防塵カバーで商品を保護
  • 仮設カーテンや間仕切りを設置し、粉塵や臭気の拡散を防ぐ
  • 高価商品や精密機器は一時移動や専用シェルターでの保管を検討

安全管理と作業環境の確保

  • 動線確保:フォークリフト走行路や従業員通路を塞がない
  • 安全柵や標識:高所作業や資材搬入時に事故を防止
  • 騒音・臭気対策:アスファルト防水では加熱臭、ウレタン防水では溶剤臭が発生するため換気や作業時間に工夫が必要

倉庫防水工事を成功させるポイント

工事をスムーズに進め、費用と工期を抑えるためには、発注者側にも準備と工夫が求められます。

  1. 複数業者に相見積もりを依頼する
     →工法・工期・保証内容を比較して選定。価格だけで判断しないことが重要。
  2. 倉庫の稼働スケジュールを共有する
     →出荷繁忙期や繁忙時間帯を伝えることで、現実的な施工計画を立てられる。
  3. 保証書と施工記録を必ず受け取る
     →工事後のメンテナンスや将来の売却時に必要な資料となり、資産価値を守る。

倉庫防水工事で失敗しない業者選び

倉庫の防水工事は金額も大きく、工期中の影響も甚大です。業者選びを誤ると、品質不足や保証トラブルに直結します。

業者を選ぶ際のチェックポイント

  • 施工実績:倉庫や工場の施工事例があるか
  • 施工体制:自社施工か下請け任せか
  • 安全管理ノウハウ:大型施設特有のリスクに対応できるか
  • 見積書の明確さ:工法・材料・保証年数・付帯工事が具体的に記載されているか

相見積もりで比較する重要性

  • 最低でも3社以上から見積もりを取り、価格だけでなく 内容・保証・アフターフォロー を比較する
  • 「安さ」で選ぶのではなく、「総合的なコストパフォーマンス」で判断する

倉庫防水工事に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 倉庫防水工事は何年ごとに行うべきですか?
A. 一般的には10〜15年ごとに大規模な改修が必要です。ただし劣化が早い場所は部分補修を随時行うと安心です。

Q2. 倉庫が稼働中でも工事は可能ですか?
A. 可能です。夜間や休日施工、ゾーニング施工を組み合わせることで出荷や保管業務に影響を最小化できます。

Q3. 工事中の在庫はどうすれば良いですか?
A. 業者が養生を行いますが、特に精密機器や食品は一時移動や仮設シェルターでの保管を検討してください。

Q4. 防水工事に補助金や助成金は使えますか?
A. 自治体によっては省エネ改修や耐震改修と組み合わせて補助を受けられる場合があります。事前に確認することが重要です。

Q5. 部分補修と全面改修はどう判断すればいいですか?
A. 範囲が限定的なら部分補修で対応可能ですが、屋根全体の劣化が進んでいる場合は全面改修を推奨します。

Q6. 保証年数はどのくらいが一般的ですか?
A. 10年保証が標準ですが、大規模倉庫では15年保証を付けるケースもあります。

Q7. 工期を短縮する方法はありますか?
A. シート防水の採用や、稼働状況に応じたゾーニング施工で効率化できます。

倉庫防水工事についてのまとめ

倉庫防水工事は、単なる建物の維持管理にとどまらず「在庫の安全」「事業継続」「資産価値維持」を支える重要な工事です。費用は規模や工法によって数百万円〜数千万円と幅広く、工期も1週間から1か月以上に及ぶことがあります。

そのため、防水工事を成功させるには以下が重要です。

  • 倉庫や工場など大型施設の施工実績が豊富な業者を選ぶ
  • 相見積もりを取り、工法・保証・費用を比較する
  • 稼働状況や物流計画に合わせた施工スケジュールを立てる

計画的に倉庫の防水工事を行うことで、長期的な安心と安定した運営を実現できます。

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