
賃貸物件の小規模修繕とは?修繕範囲やルールを徹底解説
2025/07/24
賃貸物件での小規模修繕は、貸主・借主双方にとって避けては通れない重要なテーマです。「どこまでが借主の責任なのか?」「修繕費は誰が負担するのか?」「勝手に修理しても問題ないのか?」といった疑問は、日常的にトラブルの火種となりやすいポイントでもあります。特に修繕費用の負担区分や修繕の範囲について明確に理解していないと、思わぬ金銭的トラブルに巻き込まれる可能性があります。
本記事では「小規模修繕 賃貸」という視点から、修繕の定義や費用負担のルール、さらにトラブルを未然に防ぐための対応策まで、実務にも役立つ内容をわかりやすく解説します。
貸主・借主いずれの立場でも、安心して賃貸生活を送るためには、あらかじめ必要な知識を身につけておくことが大切です。
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目次
小規模修繕とは?賃貸で発生しやすい修繕内容と原状回復との違い
小規模修繕とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。まずはその定義を明確にし、原状回復との違いについて理解しておきましょう。
また、賃貸物件で発生しやすい代表的な修繕内容についても具体的に紹介します。
小規模修繕とは?原状回復との違いを解説
小規模修繕とは、建物や設備の機能維持や軽微な補修を目的とした作業を指します。例えば、水道のパッキン交換や電球の交換、網戸の破れ補修、クロスの一部剥がれの補修などが含まれます。
一方、「原状回復」とは、入居者が退去する際に入居時の状態に戻すことを意味し、借主の故意や過失による損傷がある場合などが対象となります。
この2つの違いを理解しておかないと、入居中のトラブルや退去時の費用請求時に誤解を招く原因になります。小規模修繕は主にオーナーの責任で行われることが多く、原状回復費用は借主の責任で発生するケースが多いという点を押さえておきましょう。
賃貸でよくある小規模修繕の具体例一覧
賃貸住宅では、生活の中でさまざまな小規模な不具合が発生します。以下に代表的な修繕事例を箇条書きで示します。
- 壁紙(クロス)の一部剥がれや汚れ
- ドアの建て付け不良や蝶番のきしみ
- 水道の蛇口からの水漏れ(パッキン劣化)
- 網戸の破れや窓の開閉不具合
- 電球の交換
- 室内の鍵のゆるみや不具合
これらの修繕は放置すると悪化し、より大きな工事が必要になる可能性もあるため、初期段階での対応が非常に重要です。
経年劣化と借主の過失の違い
修繕対象となるか否かは「経年劣化」か「借主の過失」かによって大きく異なります。たとえば、長年の使用によるクロスの色あせや水回りのゴムパッキンの劣化などは経年劣化と見なされ、原則として貸主の責任で修繕されます。
一方、ペットの爪とぎや家具の引きずり傷、タバコによる焦げ跡など、明らかに借主の使用方法に起因する損傷は借主側の負担となるケースが一般的です。入居時や退去時には、こうした違いを写真や記録で残しておくとトラブル防止につながります。
小規模修繕の費用負担は誰にある?貸主と借主の責任分担ルール
小規模修繕の多くは生活の中で発生しますが、その費用を誰が負担するかが争点になることが多いです。法律や契約書の規定をもとに、貸主と借主それぞれの責任範囲を明確にしておくことが重要です。
オーナー(貸主)が負担する修繕の条件と範囲
通常、建物の構造や設備の老朽化による不具合に関しては、貸主の責任で修繕を行うのが一般的です。例えば、水回りの配管からの漏水や給湯器の故障、天井の雨漏り、建具のゆがみによる開閉不良などが該当します。借主に過失がなければ、これらは貸主が修理対応すべき内容となります。これらは賃貸借契約において「使用収益させる義務」に基づく責任とされています。
入居者(借主)が修繕費を負担するケース
物をぶつけて壁に穴を開けたような故意や過失による破損、タバコのヤニやペット臭による著しい汚れや臭いの付着、さらに電球の交換や排水溝の詰まり掃除といった日常的に対応できる軽微な修繕は、借主が費用を負担するケースとされています。
特に国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の生活を超える使い方による損耗については、原則として借主負担であることが明記されています。
入居中と退去時で異なる修繕対応|賃貸における小規模修繕の注意点とは
賃貸住宅における修繕対応には、入居期間中と退去時で異なる考え方や判断基準が存在します。これらを混同してしまうと、貸主と借主の間で責任の所在をめぐるトラブルに発展するリスクが高まります。正しい対応を行うためには、それぞれの状況ごとにルールやガイドラインを理解し、契約書に基づいた行動が必要不可欠です。
ここでは、具体的な対応の流れとその際の注意点について詳しく見ていきます。
入居中に発生した修繕の流れと注意点
入居中には、電気設備や水回り・建具などにさまざまな不具合が生じる可能性があります。このような場合、入居者はまず不具合の内容を把握したうえで、できるだけ早く貸主または管理会社に連絡をとることが基本です。連絡の際には、写真や状況説明を添えると、対応がスムーズに進むことが多いです。特に漏水やガス機器の故障など安全面に関わる場合は迅速な報告が求められます。
また、入居者が自ら判断して業者に依頼し修繕を進めてしまうと、費用の負担や施工内容をめぐってトラブルになることがあります。よって、修繕が必要と判断した場合には、自己判断で行動せず、まずは必ず貸主側の承諾を得てから手配を進めることがトラブル回避につながります。修繕履歴の記録や連絡の履歴も残しておくと、後々の証拠にもなります。
退去時の修繕と原状回復費用の考え方
入居者が退去する際には、部屋を「原状回復」する義務があるとされる一方で、その範囲には法律やガイドラインで明確な区分があります。国土交通省の原状回復ガイドラインでは「通常使用による経年劣化」は貸主が負担するべきものであり「借主の故意・過失や特別な使用による損耗」は借主の負担となると明示されています。
たとえば、家具の配置による床のへこみや日焼けによるクロスの色あせは経年劣化として扱われますが、タバコのヤニによる壁の変色やペットによる傷などは借主の責任と判断される可能性があります。契約終了時には、入居時の状態と比較してこれらの損耗がどちらに該当するかを判断する必要があります。そのためには、入居時の写真記録や契約書の確認が非常に有効です。
修繕トラブルを防ぐための事前確認事項
入居者と貸主の間でスムーズな関係を築くには、トラブルが起こる前の段階でしっかりと準備をしておくことが大切です。入居時点での状態確認や契約内容の把握が、不必要な誤解や揉めごとを防ぐカギとなります。修繕トラブルを防ぐための事前確認事項は、以下の通りです。
- トラブルが起こる前に備える意識を持つ
- 入居時に室内の状態を写真で記録する
- チェックリストを活用し、貸主・借主で状態を確認
- 契約書の修繕負担に関する条項を事前に確認する
- 曖昧な点は書面で明確にしておく
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
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賃貸物件の小規模修繕で起こりやすいトラブル事例と対処法
日常生活の中で起こる小規模修繕は、軽微であるがゆえに放置されがちであり、結果として大きなトラブルへと発展することもあります。貸主と借主の間で起きたトラブル事例を知っておくことは、同じ失敗を繰り返さないための貴重なヒントになります。ここでは代表的な事例とその対処法、そして未然に防ぐためのポイントを解説します。
入居者が無断で修理をしたことで起きたトラブル
ある事例では、入居者がトイレの水漏れを発見した際に、貸主への連絡をせず独自に業者を手配し修理を依頼しました。その後、請求書を貸主に提出したものの「事前承諾がなかった」という理由で費用の負担を拒否され、トラブルに発展しました。こうした状況では、修理の必要性に関係なく、手配の順序が問題視されることが多いため、必ず貸主または管理会社の承認を得ることが不可欠です。
貸主の修繕対応が遅れたことで不満が生じたケース
別のケースでは、入居者が電気スイッチの故障を報告したにもかかわらず、貸主の対応が遅れたことで大きな不満が生まれました。対応の遅延がSNS等で共有され、物件の評判低下にまでつながったという事例もあります。オーナーや管理者としては、報告があった場合は遅くとも24〜48時間以内には何らかのアクションを取ることが信頼構築の基本です。特に対応が難しい場合も、経過報告や見通しの連絡を入居者に行うことで、トラブル回避につながります。
修繕費用をめぐる訴訟・紛争の実例とそこから学べること
実際の訴訟事例としては、契約書に修繕費の負担区分が明記されていなかったことから、クロスの張替え費用をめぐって借主と貸主が対立し、法的措置に発展したケースがあります。最終的には借主に過失がないと判断され、貸主の全額負担となりました。このような事例から学べるのは、契約書や重要事項説明書における明文化の重要性です。特に「具体的な事例に基づいた記載」があることで、双方の認識のズレを防ぐことが可能となります。
オーナーが知っておきたい小規模修繕の対応ポイントと賃貸管理体制の整備
信頼される物件管理を実現するためには、オーナー側が「何を・どのように・どのタイミングで」対応するかという点を明確にしておく必要があります。これは単なるトラブル対応にとどまらず、長期的な資産価値の維持や入居者満足度の向上、さらには空室リスクの低減にも直結します。
ここでは、オーナーが実践すべき修繕対応のポイントについて紹介します。
入居者に信頼される修繕対応体制をどう作るか
入居者からの信頼を得るためには、修繕依頼への対応スピードと対応品質が非常に重要です。連絡受付から修繕完了までのフローを整備し、対応マニュアルを用意することで、誰が対応しても一定の品質を保つことができます。あらかじめ「よくある修繕内容」と「対処方法」のリストをまとめておくと、対応の標準化にもつながり、トラブル発生時に慌てることなく対応が可能になります。
管理会社と連携して行う修繕対応の仕組みづくり
すべてのオーナーが日常的に物件を管理できるわけではありません。そのため、信頼できる管理会社との連携体制を築くことがカギになります。修繕内容の判断や業者選定、費用の管理、入居者との調整など、管理会社が代行する業務は多岐にわたります。明確な役割分担と定期的な情報共有を行い、修繕報告のフォーマットや連絡手順を整えておくと、誤解や見落としを防ぐことができます。
契約書・重要事項説明書で修繕範囲を明確に記載する方法
最も基本かつ重要な対応が「契約書」や「重要事項説明書」に修繕負担の範囲を具体的に記載することです。「電球や水道のパッキン交換は借主の負担」「給湯器や構造部材の不具合は貸主の負担」といった文言を事前に明文化することで、万が一のトラブル発生時にも契約内容に基づいた対応が可能となります。テンプレートに頼るだけでなく、自身の物件特性に合わせて条項を調整・追加しておくことが重要です。
賃貸物件の小規模修繕に関するよくある質問(FAQ)
賃貸物件の小規模修繕に関するよくある質問を紹介していきます。参考にしてみてください。
Q1:軽微な水漏れは貸主負担?借主負担?
A.水漏れがパッキンの劣化など経年劣化によるものであれば、基本的に貸主負担となります。ただし、借主の使い方に問題があった場合や、報告の遅れによって被害が拡大した場合には、借主に一部責任が問われることもあります。まずは速やかに管理会社へ連絡し、指示を仰ぐことが重要です。
Q2:クロスの一部剥がれでも修理費を請求される?
A.クロスの剥がれが通常の生活によるものであれば、経年劣化として貸主が負担するのが原則です。ただし、子どもが物をぶつけて破れた、家具をぶつけたなどの過失がある場合は、借主に請求される可能性があります。契約書とガイドラインを確認しましょう。
Q3:契約書に修繕についての記載がない場合はどうなる?
A.記載がない場合でも、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に準拠して判断されることが多いです。基本的には経年劣化は貸主、過失損耗は借主という区分が適用されます。疑義がある場合は、早めに専門家(管理会社・宅建士・弁護士など)に相談するのが無難です。
賃貸物件の小規模修繕は「ルールの明確化」でトラブルを防ぐ|まとめ
賃貸物件における小規模修繕は、オーナー・入居者の双方にとって非常に身近でありながら、対応を誤ると大きなトラブルにつながる可能性があります。修繕には、「経年劣化」と「故意・過失」による損傷の区別、入居中と退去時の責任の違い、契約書の記載内容、国交省のガイドライン、そして写真や書面による記録の重要性など、確認すべきポイントが数多くあります。
特に近年はSNSやクチコミによる風評の影響も大きいため、貸主側には早期対応と丁寧な説明、入居者側には報告・連絡・相談が求められます。トラブルを未然に防ぐためには、両者がルールと責任範囲を正しく理解し、合意形成を図っておくことが何よりも大切です。
この記事を参考に、契約時から退去時までを見据えた「修繕ルールの明確化」と「円滑なコミュニケーション」を意識して、安心できる賃貸運営・賃貸生活を実現してください。