マンションの外壁タイル浮きはなぜ起こる?補修方法・費用・調査方法について紹介

2025/07/24

マンションの外壁におけるタイルの「浮き」は、見過ごされがちな初期症状の一つですが、放置すると剥落事故や修繕費の高騰といった大きなトラブルに発展する可能性があります。

本記事では、マンション外壁タイルの浮きについて、原因から補修方法・調査方法・費用相場・管理組合の対応まで、具体的な注意点を交えながらわかりやすく解説します。

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目次

マンション外壁タイルの浮きについて

タイルが浮いている状態というのは、なんとなくイメージがつくものの、具体的な状態や発生しやすい場所・放置したらどうなるのかといった詳細をご存じない方も多いでしょう。
ここでは、外壁タイルの浮きに関する概要について詳しく紹介します。

外壁タイルの浮きとは?

タイルと下地の間に隙間が生じ、タイルが壁面から浮いた状態を指します。
タイル自体は壁にくっついて見えても、実は接着力が失われており、わずかな振動や風雨の影響で剥がれ落ちるリスクが高まっている状態です。
これは主に、接着材の経年劣化や下地の損傷などによって生じる現象です。
なお浮きタイルは、見た目にはほとんど変化がないため、住民が気づくのは難しいです。
しかし、打診棒やハンマーで軽く叩くと、健全なタイルとは異なる「ボコボコ」とした鈍い音(空洞音)が返ってくることがあります。
この音の違いを頼りに、専門業者が異常の有無を判断します。
浮きの進行状況によっては、タイル表面のわずかな盛り上がりや目地の割れなど、微細な変化が現れることもあります。

マンションで外壁タイルの浮きが発生しやすい場所と原因の初期兆候

タイルの浮きは、外壁全体のどこにでも起こり得ますが、特に以下のような場所では発生頻度が高くなります。

  • 雨風が直接当たる角地や突き出た部分の外壁
  • 日射による温度差が激しい南面・西面
  • 開口部(窓や玄関)周辺など、構造が複雑な部分
  • 異なる素材との接合部(タイルとモルタルの境目など)

初期段階では、タイルの表面が不自然に反っていたり、目地にヘアクラック(細かいひび割れ)が入っていたりすることがあります。
こうした変化は住民が発見できる最初のサインであり、早期対応のきっかけとなります。
マンション管理組合は、こうした兆候を住民が気軽に報告できる体制づくりも重要です。

放置が引き起こす剥落事故・法的リスクと修繕責任

浮いたタイルを放置すると、剥落による物損や人的被害の可能性が高まり、大きな社会的・法的責任を問われる事態にもなりかねません。
特に通行人にタイルが落下してけがをさせた場合、マンション管理組合や所有者が損害賠償責任を負うリスクがあります。
さらにタイルの浮きが進行すると、そこから雨水が浸入し、下地モルタルや構造体の鉄筋を腐食させる原因となります。
その結果、建物の耐久性が低下し、将来的には全面改修が必要になるケースもあります。
浮きの段階で発見・補修すれば数十万円で済んだものが、長期放置により数百万円〜数千万円の出費になることもあるため、早期発見・早期対応が極めて重要です。

マンション外壁タイルの浮きが起こる主な原因とは

外壁タイルの浮きは、ひとつの要因だけでなく、複数の要素が複雑に絡み合って発生します。
構造的な問題・気候条件・施工の質など、あらゆる要素が影響するため、原因を正確に把握することが補修・予防の第一歩です。

経年劣化による接着力低下と温度変化の影響

築年数が経過するにつれて、タイルを貼り付けているモルタルや接着剤が劣化し、硬化・収縮・剥離などの症状が現れます。
さらに、夏と冬・昼と夜で繰り返される温度変化によって、外壁全体が膨張・収縮することも浮きの原因となります。
これにより、タイルと下地の間に微細な隙間ができ、接着力が失われていきます。

特に日当たりのよい南面や西面は、日射による温度上昇が激しく、浮きの進行が早まる傾向にあります。
こうした環境的な要因に加え、通風の少ない面で湿気がたまり、下地材が湿潤状態になるも接着力低下の要因として挙げられます。

地震や振動による目地部の亀裂と浮きの進行

日本のマンションでは、地震や強風による振動の蓄積が、タイルの浮きに大きく影響を与えます。
特にタイルの目地部分に微細なひび割れが生じると、そこから雨水が入り込み、接着面が劣化しやすくなります。
微細なクラックは初期の段階ではほとんど目立ちませんが、やがてタイルの浮き、そして剥落へとつながっていきます。

また、交通量の多い幹線道路沿いのマンションなどでは、日常的な車両の振動も浮きを促進する要因のひとつです。
構造そのものに問題がなくても、振動により下地が少しずつ動かされ、接着面に負荷がかかることで、タイルが徐々に浮いていくことがあります。

新築・改修時の施工不良と建材の相性問題

外壁タイルの浮きには、施工段階での不具合も大きく関係しています。
特に新築や改修時に以下のような施工ミスがあった場合、浮きが早期に発生することがあります。

  • 接着モルタルの混練が不十分
  • 塗布ムラや塗布量の不足
  • 下地の含水率が高すぎる状態で施工
  • タイルの圧着不足による空隙発生

また、使用される建材同士の相性が悪い場合にも、接着力の低下を引き起こすことがあります。
たとえば、吸水性の高いタイルを使用しながら、速乾性の接着材を使用した場合、均等に接着できず浮きが発生しやすくなります。
これらの施工不良は、見た目では判断できないことが多いため、完成直後は問題がなくても、数年以内に浮きが顕在化するケースも少なくありません。
施工業者選びの段階で、経験豊富な会社かどうか、施工管理体制が整っているかを慎重に見極めることが重要です。

マンション外壁タイルの浮きを調査する方法

タイルの浮きは目視では判別しづらく、見落としやすいため、専門的な調査を実施することが推奨されます。
ここでは、実際の現場でよく用いられている代表的な調査方法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

打診調査のやり方と判断基準

打診調査は、タイル面を打診棒で軽く叩き、その反響音をもとに浮きの有無を判断する手法です。
広範囲の調査が可能で、経験豊富な調査員が行えば高い精度が期待できます。具体的には以下のような音の違いがあります。

  • 健全なタイル:硬く、金属的な高音の反響
  • 浮きタイル:鈍く、こもったような低音

この音の違いを頼りに、浮きの範囲や深刻度を判断します。
調査は足場を組んで行うケースが多く、外壁全体の実態把握に有効です。
ただし、騒音や足場設置の手間があるため、居住者への配慮が必要となります。

赤外線サーモグラフィーを活用した調査

赤外線サーモグラフィーによる調査は、外壁表面の温度分布を撮影・解析し、浮きがある箇所を特定する方法です。
浮いている部分は熱伝導率が異なるため、周囲と異なる温度パターンが現れます。
この方法は足場を組まずに遠隔から調査ができ、作業効率が非常に高いという利点があります。
とくに中高層マンションでの予備調査に有効であり、浮きの可能性があるエリアを短時間で抽出できます。
ただし、気温や日射量の影響を受けるため、天候や調査時刻によって精度が左右される点には注意が必要です。

定期点検と大規模修繕時の浮き診断の違い

マンションでは長期修繕計画に基づき、定期的に外壁診断が実施されます。
一般的には、以下の2パターンが存在します。

  • 定期点検(3〜5年周期):簡易的な打診や目視により表面の異常を確認。
    高所作業は限定的。
  • 大規模修繕前診断(10〜12年周期):足場を組んで全面的に調査。
    赤外線や全面打診などを組み合わせる。

定期点検ではサンプル的に一部の箇所しか調査できないことが多く、精度に限界があります。
一方、大規模修繕時には全体的な浮きの状況を正確に把握できるため、そのタイミングでの詳細調査が非常に重要です。
調査結果は補修計画・予算編成にも直結するため、管理組合としても調査内容の理解と把握が求められます。

マンション外壁タイル浮きの補修方法

マンションの外壁タイルに浮きが確認された場合、状況に応じて適切な補修工法を選定することが非常に重要です。
症状が軽度であれば部分的な補修で対応できますが、範囲が広かったり複数箇所にまたがっていたりする場合は、全面張替えが必要になるケースもあります。
以下では、浮きに対する主な補修方法と、それぞれの工法が適用される条件、施工の流れについて詳しく解説します。

エポキシ樹脂注入工法

浮きが局所的な場合には「エポキシ樹脂注入工法」が広く用いられます。
この方法は、タイルの浮いている部分に微細な穴を開け、そこからエポキシ樹脂を注入することで、タイルと下地の接着力を回復させるものです。
主なメリットは、以下の通りです。

  • タイルを撤去せずに補修できるため、美観を維持しやすい
  • 工期が短く、作業音や粉塵も少ないため住民への影響が少ない
  • 補修費用が比較的安価で済む

ただし、以下のような制限もあるため注意しましょう。

  • 浮きの範囲が広い場合は対応できない
  • 下地モルタルが著しく劣化していると効果が得られにくい
  • 内部の構造劣化を根本的に解決できない場合がある

調査で浮きの範囲や下地の状態を正確に把握したうえで、エポキシ注入が適切かどうかを判断する必要があります。

タイル全面張替え

浮きの範囲が広範囲に及ぶ、もしくは複数の箇所で同時に確認される場合には、部分補修では対応しきれないことがあります。
このようなケースでは、「タイル全面張替え工法」が推奨されます。
この工法では、問題のある箇所だけでなく、周囲のタイルも含めた一定範囲をすべて撤去し、下地処理からやり直したうえで新たにタイルを張り直します。

以下は、具体的な施工ステップです。

ステップ1. 既存タイルの撤去

まずは、浮きや劣化が見られる既存タイルを撤去します。
このとき、下地の状態も確認しながら、慎重に作業を行います。破片や粉塵の飛散を防ぐために、周辺の養生もしっかり行います。

ステップ2. 下地モルタルの補修または全面打ち直し

撤去後の下地が亀裂・欠損している場合は、補修または全面的な打ち直しを行います。
ここで下地の安定性を確保しなければ、新しいタイルもすぐに浮いてしまう可能性があるため、非常に重要な工程です。
プライマーの塗布や吸水調整などの下地処理も併用されます。

ステップ3. 新規タイルの張付けと目地詰め

下地が乾燥・安定したことを確認後、接着剤または圧着モルタルでタイルを貼り付けます。
配置のバランスや目地幅を均等に保ち、美観と耐久性を両立させます。
最後に目地材を充填し、仕上げ拭きで施工完了となります。

この工法は、工期が長くなりやすく、足場の設置が必要なため費用もかかりますが、再発リスクの低減と耐久性の向上という観点からは、長期的に見てコストパフォーマンスが良好です。

浮き再発を防ぐ接着力強化工法と下地処理技術

タイルの浮きは、一度補修しても再発する可能性があります。
そこで近年では、再発を防ぐための補助的な工法や技術が採用されるようになっています。

  • 下地処理剤の使用…吸水を抑えるプライマーやシーラーを下地に塗布し、接着剤の効果を高めます。
  • 繊維補強モルタル…下地全体に補強材を加えたモルタルを施工し、地震や振動への耐性を向上させます。
  • 柔軟性のある接着剤の採用…温度変化や外力に追従できる可とう性接着剤を使用し、剥がれを防ぎます。
  • 撥水コートの施工…施工後に外壁表面に撥水材を塗布し、雨水の浸入を防ぎます。

これらの工法を適切に組み合わせることで、タイル浮きの再発防止と長期耐久性の向上を両立することが可能になります。
特に築年数が経過したマンションでは、こうした付加対策が今後の修繕コスト削減にもつながります。

マンション外壁タイル浮きの補修費用

工事費用は、補修方法に応じて大きく異なります。
ここでは、主な工法ごとの費用相場と見積もり時に注目すべきポイントを紹介します。

部分補修の費用目安と費用を抑える工夫

エポキシ樹脂注入工法を用いた場合、以下のような費用が想定されます。

  • 打診調査+部分補修…30〜50万円(30m²以下)
  • 足場が不要な場合…20万円前後で完結することも
  • 足場設置が必要な場合…プラス15〜30万円程度

浮き箇所が複数ある場合でも、同時施工によりコストを抑えられる可能性が高まります。
また、赤外線調査と併用することで、無駄な施工を避け、必要最小限の補修で済ませる工夫も有効です。

タイル全面補修や大規模修繕時のコスト感

全面的な張替えを行う場合、規模や階数によって費用が大きく変動します。

  • タイル全面張替え:1,000〜2,500万円(100〜200m²)
  • 足場仮設費:300〜600万円(建物高さ・立地により変動)
  • 総合補修費(下地調整・防水含む):2,500〜3,500万円以上

このような高額工事は、単独で行うよりも防水工事や塗装工事などとあわせた大規模修繕の一環として実施した方が効率的です。
工事期間中の居住者配慮も必要となるため、事前の説明会の実施も忘れずに行いましょう。

マンション外壁タイル浮きに対して管理組合・オーナーが取るべき行動

マンションの外壁タイルに浮きが見つかった場合、放置せずに速やかに対応することが求められます。
対応が遅れることで、事故や損害賠償リスクが発生するだけでなく、補修費用が高額化するおそれもあるため、管理組合や所有者は明確な対応フローを持っておくことが大切です。

住民通報からの初期対応と調査の手配

外壁タイルの異常は、最初に住民の気づきから報告されることが多いです。
管理組合や管理会社は、通報を受けたら迅速に現場確認を行い、必要であれば建物調査の専門業者に診断を依頼します。
初期調査では、打診や目視・ドローンや赤外線カメラを用いた診断を活用し、問題の範囲を的確に把握することが重要です。
調査の結果、浮きが確認された場合は、その範囲や深刻度に応じて対応策を判断します。
小規模であれば部分補修、大規模であれば大規模修繕計画への組み込みが必要です。

浮き対策を長期修繕計画に組み込む

築年数が10年以上経過したマンションでは、外壁の劣化やタイルの浮きは避けられない課題です。
そのため、あらかじめ長期修繕計画の中に外壁補修やタイル改修を組み込んでおくことがリスク回避につながります。
修繕計画の策定にあたっては、建物診断結果をもとに補修の優先度や時期を設定し、予算配分を行います。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、外壁補修の周期は概ね12年ごととされており、このタイミングでタイルの浮き調査・補修を同時に進めるのが理想です。
また、突発的な補修にも対応できるよう、予備費や緊急対応資金の確保も重要です。
これにより、住民の安全を守ると同時に、不要なトラブルやコストの増加を防ぐことができます。

マンション外壁の浮きを修理したい!信頼できる業者選定と見積もり取得のポイント

外壁タイルの補修工事は、専門性が高く、工法や下地処理の選定によって耐久性に大きな差が出ます。
そのため、信頼できる専門業者を選ぶことが成功のカギを握ります。

業者選定の際には、以下の点を確認しましょう。

  • マンション外壁補修の実績があるか
  • 建設業許可や防水施工技能士などの資格保有者が在籍しているか
  • 保証制度やアフターサポートが明記されているか
  • 劣化診断・報告書の質や提案力が高いか

また複数の業者から相見積もりを取り、工事内容や数量・費用の内訳を比較検討することも大切です。
見積もりが極端に安い場合は、下地処理や再発防止対策が不十分な可能性もあるため注意が必要です。

マンション外壁タイルの浮きに関するよくある質問(FAQ)

「マンション外壁タイルの浮きをどうにかしたいものの、不安がありすぎてなかなか行動できない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、多くの人が不安や疑問を抱いている点を質問形式で紹介しますので、ぜひご覧ください。

Q1. 浮きタイルはどのタイミングで補修すべきですか?

浮きが見つかった時点で、早期に補修するのが望ましいです。
放置すると剥落リスクが高まり、補修費用も増大します。
点検での指摘や住民からの通報があった場合は、速やかに対応しましょう。

Q2. 浮きが自分の部屋の前にあるだけでも全体補修になりますか?

原則として、範囲が限定されている場合は部分補修が可能です。
ただし、他にも浮きが発生している可能性がある場合は、全面的な調査と補修が必要になることもあります。

Q3. 外壁診断はどのくらいの頻度で行うべきですか?

一般的には12年ごとの大規模修繕前に詳細な外壁診断を行います。
また、3〜5年おきの簡易点検も推奨されており、異常の早期発見につながります。

Q4. 補修費用は住戸ごとに請求されるのですか?

通常は修繕積立金から支出され、住戸ごとの負担はありません。
ただし、専有部分に起因する損傷(例:バルコニーの排水不良による漏水など)の場合は、個人負担になるケースもあります。

Q5. 火災保険や瑕疵担保で補修費用はカバーできますか?

自然災害や施工不良に起因するものであれば、火災保険や瑕疵担保保険が適用されることがあります。
事前に保険会社や施工業者に確認し、書類の整備を行っておきましょう。

Q6. タイルから塗装仕上げに変更することは可能ですか?

A. 可能ですが、外観の変化や資産価値への影響を考慮する必要があります。
また、下地処理の方法や使用塗料によって耐久性が左右されるため、十分な検討と設計が必要です。

マンションの外壁タイル浮きを見つけたらすぐ対処しよう|まとめ

マンションの外壁タイル浮きは、見逃されがちな初期症状である一方、剥落事故や高額な修繕費用といった深刻な問題に発展するリスクも抱えています。
管理組合や所有者は、定期的な診断と早期補修・信頼できる業者との連携、そして長期的な修繕計画の策定により、建物の安全性と資産価値を守ることができます。

特に、調査・工事・費用計画の3つをバランスよく設計することが、住民全体の安心にもつながります。
小さな浮きだからと軽視せず、継続的なメンテナンスを通じて、大切なマンションを長く安全に維持していきましょう。