マンション大規模修繕とクラック補修ガイド|原因・費用・防止策を徹底解説
2025/07/24
マンションの外壁に見られる「クラック(ひび割れ)」は、単なる美観の問題ではありません。
防水性能の低下やコンクリートの中性化、さらには鉄筋腐食へと発展し、構造に深刻なダメージを与える可能性があります。
特に築10年以上経過したマンションでは、クラックの発生率が高まり、大規模修繕時に補修対象となるケースが少なくありません。
本記事では、クラックの種類や発生原因・補修方法と費用・予防策・業者選びまでを詳しく解説します。安心・安全なマンション維持管理の一助となる情報を、プロの視点からお届けします。
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目次
マンションの大規模修繕工事におけるクラック補修とは?
マンションの大規模修繕工事では、建物全体の機能回復と資産価値の維持が目的となります。
その中でもクラック補修は、建物の安全性・防水性を守るうえで欠かせない工程のひとつです。
クラック補修の重要性
クラックは、外壁や天井・梁などのコンクリート構造物に発生するひび割れの総称です。
幅や深さによって危険度が異なり、放置することで雨水の浸入や鉄筋の腐食、さらにはコンクリートの剥離といった重大な問題につながります。
大規模修繕ではこれらのクラックを調査し、適切な工法で補修を行うことで、建物の寿命を延ばすことができます。
マンションの外壁にクラックができる4大原因
クラックは自然に発生するものではなく、建物の状態や施工環境により引き起こされるものです。
ここでは、特に多く見られる4つの原因について紹介します。
乾燥・収縮によるヘアクラック
新築から1~2年の間に発生することが多いヘアクラックは、コンクリートやモルタルの乾燥収縮によって、自然に生じる微細なひび割れです。
これらは幅0.2mm未満と非常に細く、肉眼では目立ちにくいですが、塗膜の下に潜んでいることがあり、美観や防水性に影響を与えることがあります。
乾燥により材料が収縮すると、表面にテンションがかかってクラックが発生します。
構造上の問題はないとされることが多いものの、ひびの密度が高い場合は雨水や汚れの浸入経路になる可能性があり、放置することで劣化が進行するおそれもあります。
とくに紫外線や風雨にさらされる外壁面では、経年とともにヘアクラックが広がりやすくなるため、定期的な点検と必要に応じた補修対応が求められます。
紫外線・経年劣化
外壁に紫外線や風雨が長期間あたることで、塗膜や素材そのものが徐々に劣化していきます。
この劣化に伴って生じるのが、経年劣化由来のクラックです。
特に太陽光の影響を強く受ける南向きの壁面や、風雨が直接当たりやすい屋上・バルコニー面では、塗装面の防水性能が弱まり、微細なクラックが徐々に発生していきます。
塗膜の耐用年数を超えたまま放置していると、塗装面のひび割れから水が浸入し、内部の躯体へ悪影響を及ぼすおそれがあります。
これらのクラックは、単なる美観の問題にとどまらず、躯体の中性化や鉄筋の腐食といった構造劣化の入り口となる場合もあるため注意が必要です。
定期的な塗装メンテナンスと耐候性の高い塗料の選定が、クラックの発生防止に有効です。
地震・地盤変動など構造的要因
地震や地盤沈下・不同沈下など、外力や地盤の変化によって建物がわずかに傾いたり、歪んだりすることで、構造クラックが発生するケースもあります。
これらは壁面全体を縦や斜めに貫通することが多く、幅が0.3mmを超えると、鉄筋の腐食や雨漏りを引き起こすリスクが高まります。
構造クラックは見た目以上に深刻な問題を内包しており、外壁仕上げ材の裏に隠れている場合は特に注意が必要です。
外力によるひび割れは補修しても再発しやすく、原因となる力が継続的に加わる限り、同じ箇所にクラックが再発するおそれもあります。
そのため、見つけた時点で専門業者による詳細な調査を依頼し、必要に応じて耐震補強や基礎の補修も含めた対応を検討することが、建物の長寿命化と安全確保につながります。
施工不良
建物の設計や、施工段階での不備によって起きるクラックも存在します。
たとえば、下地の乾燥不足・モルタルの配合ミス・コンクリートの打設不良など、さまざまな工程ミスがひび割れの原因となります。
これらは特に、新築間もないにもかかわらず外壁や天井にクラックが目立つ場合に疑われます。
施工不良に起因するクラックは、根本的な施工ミスを正さなければ再発リスクが高く、通常の補修だけでは完全な解決が難しいこともあります。
大規模修繕に際しては、過去の施工記録や仕様書を確認し、再発のリスクが高い箇所には重点的なチェックと補修を行うべきです。
また、信頼できる施工業者の選定や、第三者による工事監理体制の導入も、施工不良によるクラックを未然に防ぐ有効な手段となります。
マンションに起こるクラックの種類別・最適な補修方法
クラックには大小さまざまな種類があり、それぞれに適した補修方法を選ばなければ、再発や補修不良につながります。
ここでは、一般的な3分類に応じた補修方法を紹介します。
ヘアクラック(0.3mm未満)
幅0.3mm未満の細かいクラックは、基本的に構造への影響は少ないとされていますが、放置すれば雨水や湿気の浸入経路となり得ます。
このような場合、微細浸透型の補修材(エポキシ樹脂やポリマーセメント)を表面に塗布・擦り込むことで、見た目と機能の両面で修復できます。
幅0.3mm以上の構造クラック
構造クラックとされる0.3mm以上のひび割れには、表面補修では不十分な場合が多く、注入工法が適用されます。
専用のノズルを設置し、エポキシ樹脂を低圧で注入することで、ひび割れの奥深くまで補修材を行き渡らせます。
場合によっては、クラック周辺を「はつり」処理してから再成型する方法も併用されます。
再発性が高いクラックへの対処法
一度補修しても再発を繰り返すクラックには、補修と同時に原因そのもの(排水不良や歪み)への対策も必要です。
補修材の選定や補強材の埋設など、高度な施工判断が求められる場面では、施工実績の豊富な業者を選ぶことが重要です。
マンションに起こるクラック補修の費用相場(幅別・工法別)
クラック補修では、クラックの幅や深さ、施工方法によって費用が大きく変わります。
事前に目安を把握しておくことで、見積もり時の不安や業者選定の際の比較がしやすくなります。
クラックの補修費用
分類 | 施工方法 | 費用目安 |
---|---|---|
ヘアクラック(0.3mm未満) | 表面補修(エポキシ樹脂・ポリマーセメント等) | 1箇所あたり3,000〜5,000円 |
構造クラック(0.3mm以上) | 注入工法・断面修復工法 | 1箇所あたり10,000〜30,000円 |
全体補修(大規模修繕時) | 打診調査+足場+補修+美装仕上げ | 全体で500万〜1,000万円前後 |
幅0.3mm未満の微細なヘアクラックは、1箇所あたり3,000〜5,000円程度が相場です。
主に表面補修で対応可能なため、比較的安価に済むケースがほとんどです。
ただし、補修箇所が多数に及ぶ場合や、足場が必要になると全体の費用がかさむ場合もあるため、面積ベースでの見積もり提示があるか確認しましょう。
構造クラックの補修費用
幅0.3mm以上の構造クラックには、注入工法や断面修復工法が用いられるため、1箇所あたり10,000〜30,000円程度が目安となります。
加えて、既存の補修跡の撤去や下地処理が必要な場合は、追加費用が発生することもあります。
施工単価だけでなく、補修箇所数・施工条件・施工範囲のトータルで見積もることが重要です。
全体補修にかかる費用イメージ
大規模修繕において、建物全体で100箇所以上のクラックが確認されることも珍しくありません。
その場合、外壁調査・打診検査・足場仮設・補修施工・美装仕上げまで含めて、500万〜1,000万円前後かかることもあります。
特に補修後の再発防止策も同時に講じると、費用対効果の高い施工になります。
実録!新東亜工業の施工事例|8階建てマンションの大規模修繕工事
築17年の8階建てマンションにおける、管理組合主導による大規模修繕工事の一部始終をご紹介します。
「予算オーバーを避けたい」「融資は極力使いたくない」といった現実的な課題を抱える中で、新東亜工業がどのように提案し、信頼を築きながら工事を完遂したのか──。
理事会への説明から近隣対応、完成後のフォローまで、実際のやり取りを交えてリアルにお伝えします。
大規模修繕・防水工事・外壁塗装のご依頼やご相談は、メール・お電話からお受け致しております。

ご相談内容
築17年が経過し、管理組合では以前から大規模修繕の検討がされていましたが、資材高騰などにより予算が合わず延期されていた背景があります。「融資は避けたい」「必要な部分に絞って実施したい」といった要望の中、数社に見積り依頼をされていた中で弊社にご相談をいただきました。
担当者:お問い合わせありがとうございます。ご予算に合わせて施工範囲を調整することも可能です。弊社は子会社で材料問屋を持っているため、同じ工事でも他社様より価格を抑えるご提案が可能です。
お客様:なるべく費用を抑えたいので、ぜひ現地調査をお願いします。図面などもご用意します。
担当者:ありがとうございます。図面と、屋上に鍵があるようであればご用意をお願いします。
工事の概要|工事金額と期間


項目 | 内容 |
---|---|
建物種別 | 分譲マンション(8階建て) |
所在地 | 東京都内(詳細非公開) |
工事内容 | 大規模修繕工事(外壁補修・塗装・防水・シーリング・長尺シート他) |
工法 | 足場設置のうえ全面修繕/ウレタン塗膜防水(密着工法)他 |
その他特記事項 | 理事会へのプレゼンあり、工事中の騒音・近隣対策対応あり |
工事金額:2,430万円 期間:約2カ月間
現地調査で判明した劣化症状
現地調査では、屋上の防水層や外壁のシーリング、タイル目地などに劣化が見られました。既存のアスファルトシート防水はまだ機能していたものの、再施工のタイミングとしては適切であり、ウレタン塗膜防水による上塗りを推奨しました。また、タイルの一部には硬化不良が確認され、慎重な撤去作業が必要な状態でした。
担当者:屋上はアスファルトシート防水ですね。状態は悪くないので、ウレタン塗膜防水の密着工法が適しています。
お客様:それでお願いします。あとベランダは見た目を良くしたいので、長尺シートも検討したいです。
担当者:シートは費用が倍近くかかるので、ウレタンの方が予算には優しいですね。
お客様:でも可能ならシートにしたいので、そちらで見積りお願いします。
施工中のやり取りと配慮
工事期間中は、騒音や近隣への影響を最小限に抑える配慮を行いました。作業工程や騒音の案内は掲示板やホワイトボードで事前に周知し、近隣住民や管理人との連携も徹底。足場設置やメッシュシートの風対策も含め、安全対策も万全に対応しました。また、アスベスト調査も事前に実施し、含有なしを確認済みです。
お客様:日曜に音がしたって苦情が来たのですが…。
担当者:調べたところ、隣の工事のものでした。担当者に周知のお願いはしておきました。
お客様:ありがとうございます。トラブルにならなくてよかったです。
引き渡し時のご感想
工事完了後、お客様からは「タイルもまったく違和感がない」「すごく綺麗になった」と高い評価をいただきました。タイルの保管方法や施工写真・保証書を含めた竣工図書の提出も行い、今後のメンテナンスにも役立てていただける内容でお渡ししました。
お客様:どこを張り替えたかわからないくらい自然ですね。
担当者:窯焼きで色を合わせたので、かなり近く再現できています。必要があればいつでもご連絡ください。
お客様:ありがとうございます。次は廊下の床や照明をまとめて検討したいと思います。
今回の工事では、以下のような成果が得られました。
- ご予算に合わせた柔軟な工事範囲調整
- 自社施工・材料問屋からの直接仕入れでコストダウンを実現
- 理事会での丁寧なプレゼンと近隣配慮で信頼を構築
- 施工中の進捗報告や打ち合わせで透明性を確保
- 外観と防水性が向上し、物件価値の維持につながった
新東亜工業では、お客様の状況に合わせた提案と対応を徹底しております。大規模修繕に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
クラックの補修後に再発させない5つの予防策
クラックの補修はあくまで応急処置であり、根本原因にアプローチしなければ再発する可能性もあります。
ここでは、予防のために取るべき基本的な対策を紹介します。
①定期的な外壁点検を実施する
5年に1度を目安に、外壁点検を実施することで微細なクラックの早期発見が可能になります。
建物の劣化は目に見えない部分から進行することもあるため、建築士や外装診断士など、第三者による客観的な診断を受けるのがおすすめです。
②耐久性の高い仕上げ材を選ぶ
塗装や防水材を選ぶ際には、耐候性・柔軟性に優れた材料を選ぶことで、クラックの再発リスクを軽減できます。
特に紫外線に強い塗料や、ひび割れに追従する伸縮性のある下地材などを採用することで、外的要因への耐性が高まります。
③排水設備や地盤の環境を整える
排水不良や地盤の緩みによる建物の動きは、クラック発生の大きな要因です。
ベランダや屋上の排水溝を定期的に清掃したり、建物周囲の水はけを良好に保つことで、構造への負荷を減らせます。
④長期修繕計画に基づいた補修タイミング
大規模修繕は12〜15年周期が一般的ですが、クラックの発生状況や劣化の度合いに応じて、計画的に補修を前倒しすることも必要です。
修繕積立金の管理と連動させることで、予算面の調整も可能になります。
⑤信頼できる施工業者の選定
どれほど高品質な材料を用いても、施工技術が不十分であればクラックは再発してしまいます。
補修経験の豊富な業者を選び、実際の施工実績や保証内容を比較検討することが、最も確実な予防策といえるでしょう。
業者選定のポイント:「自社施工+透明価格」で選ぶ理由
クラック補修を含む大規模修繕では、業者選びが成功のカギを握ります。
とくに注目すべきは「施工体制」と「価格の明瞭さ」です。
一貫施工による品質管理の強み
自社施工の業者であれば、調査から施工・仕上げまでの工程が社内で完結するため、情報の伝達ミスが少なく、施工品質にも一貫性が保たれます。
下請け任せの業者と比べ、責任の所在が明確で、アフターフォローも充実している点がメリットです。
見積もりの明確化で安心
「一式」や「その他費用」といった曖昧な表記の見積もりではなく、クラック補修の範囲・単価・数量が明記された見積書を提示できる業者は、信頼性が高いと言えます。
また、見積書に加え、過去の施工実績や現地調査報告書なども合わせて提示してくれる業者であれば、判断材料が揃いやすくなります。
Q&A|大規模修繕とクラック補修に関するよくある質問
Q1. クラックがあると必ず補修しなければならないのでしょうか?
クラックの大きさや深さによります。幅0.3mm未満のヘアクラックは美観や軽微な防水性の問題のみですが、幅0.3mm以上の構造クラックでは、雨水の浸入や鉄筋腐食のリスクがあるため、早期補修が望まれます。点検結果をもとに補修の要否を判断しましょう。
Q2. クラック補修に保険や助成金は使えますか?
地震や自然災害による被害であれば、火災保険や地震保険の対象になる場合があります。また、自治体によってはマンションの修繕に対する助成制度があるケースもあるため、事前に調査しておくと良いでしょう。
Q3. 大規模修繕時にクラック以外も一緒に直せますか?
はい。外壁塗装・防水工事・タイルの浮き補修・鉄部塗装など、建物全体の改修を一括で行うのが大規模修繕の特長です。クラック補修はその一部として組み込まれますので、建物全体を意識した計画が必要です。
Q4. 補修後にまた同じ場所が割れたらどうすればいいですか?
補修後に同じ箇所で再発する場合は、根本的な原因が解決されていない可能性があります。排水や構造的な歪みなど、外部要因の見直しとあわせて、再施工や補強の検討が必要です。保証期間中であれば業者への連絡を忘れずに行いましょう。
Q5. クラックの検査だけ依頼することは可能ですか?
可能です。外壁診断や打診検査のみを専門に行う業者もあり、報告書付きで現状を把握することができます。施工と分離することで客観性を保った判断が可能になり、必要に応じて複数業者から見積もりを取る際にも役立ちます。
まとめ|安全で確実なクラック補修を成功させるために
クラックは見た目以上に、建物の寿命や安全性に深く関わる重要な劣化症状です。
特に大規模修繕工事では、クラックの調査・診断・補修を適切に行うことで、将来的なトラブルを未然に防ぎ、資産価値の維持につながります。
そのためには、まずクラックの発生原因を正確に把握し、種類に応じた工法を選定することが大切です。
また、費用相場を把握したうえで、過剰な見積もりや不適切な施工に注意し、信頼できる業者を選ぶ必要があります。
さらに、再発防止策として、耐久性の高い材料の選定や排水・地盤環境の整備、長期修繕計画の見直しなども重要です。
施工後も定期的な点検を怠らず、建物の健康状態を把握し続けることで、安心・安全な住環境を維持できます。
コンクリートに発生するクラックには、単なるひび割れでは済まない課題が潜んでいます。
本記事を参考に、計画的かつ効果的な補修と予防策を講じて、未来に向けたマンション管理を行っていきましょう。