大規模修繕でベランダタイルはどうなる?費用負担・撤去と再施工の注意点

2025/09/30

マンションやビルの大規模修繕工事が近づくと、「ベランダに敷いているタイルはどうなるのか?」と不安に感じるオーナーや居住者は少なくありません。見た目を美しくし、掃除をしやすくするために導入されたベランダタイルですが、防水工事や外壁点検の妨げになるため、撤去を求められるケースが非常に多いのです。
さらに、撤去や再施工にかかる費用が「管理組合負担か、各住戸負担か」という点はトラブルになりやすいテーマです。特に投資用マンションを所有するオーナーにとっては、入居者が設置した場合の責任範囲も気になるところでしょう。
この記事では「大規模修繕 ベランダタイル」に関する費用負担の仕組みや撤去・再設置の注意点を詳しく解説します。これから修繕を控えるオーナーや居住者が、余計なトラブルを回避し、スムーズに工事を進めるための参考になる内容です。

目次

大規模修繕におけるベランダタイルの位置づけ

大規模修繕では、外壁塗装や防水工事、下地補修といった建物の寿命を延ばすための工事が行われます。その際に必ず対象になるのが「ベランダ」です。ベランダは雨風や直射日光を受けやすく、防水層の劣化が進みやすいため、修繕の重要ポイントとなります。

ベランダは「共用部分」だが「専用使用」される

マンションのベランダは法律上「共用部分」に分類されます。ただし、各住戸が日常的に使用するため「専用使用権付き共用部分」として扱われています。この位置づけが、大規模修繕時のトラブルの原因になるのです。

  • 共用部分:建物全体に属する部分で、本来は管理組合が維持管理する対象。
  • 専用使用部分:特定の区分所有者が独占的に利用できるが、基本的な維持責任は利用者にある。

つまり、ベランダの床や防水層は管理組合の管理対象ですが、そこに居住者が設置したタイルやウッドデッキは「私物」とみなされるため、工事に支障が出れば撤去する責任は設置者側にあります。

撤去が求められる理由

大規模修繕工事の際、施工会社や管理組合がベランダタイルの撤去を求める理由は次の通りです。

  • 防水層の点検・補修ができない:タイルがあると下地の劣化や亀裂を確認できず、適切な防水工事ができない。
  • ひび割れや漏水の発見が遅れる:タイルの下で雨水が回っていても気づけないため、工事後に漏水トラブルが再発する可能性がある。
  • タイル破損によるトラブル:工事中にタイルが割れた場合、責任の所在が曖昧になりやすい。

このように、ベランダタイルは工事の妨げとなるリスクが大きいため、ほとんどのケースで「撤去指示」が出されます。

マンションベランダタイル撤去の費用負担

では、ベランダタイルの撤去にかかる費用は誰が負担するのでしょうか。結論から言えば、設置した人(オーナーまたは入居者)が負担するのが原則です。

多くのマンションの管理規約には「専用使用部分に設置した私物は自己責任で管理し、大規模修繕時には撤去を行うこと」と明記されています。そのため、管理組合や施工会社が費用を負担するケースはほとんどありません。

撤去費用の目安

撤去費用はタイルの種類・施工方法・ベランダの広さによって変わりますが、1㎡あたり数千円〜1万円程度が一般的です。
例として、10㎡のベランダに敷き詰めている場合、3万〜10万円前後の費用が発生することになります。

所有形態別の負担整理

以下の表は、所有形態ごとに誰が費用を負担するかを整理したものです。

所有形態ベランダタイルの扱い撤去費用の負担注意点
分譲マンション居住者私物扱い自己負担工事説明会で撤去時期・方法を確認
分譲マンション投資オーナー入居者設置:入居者負担
オーナー設置:オーナー負担
原則、設置者が負担契約書に明記がないとトラブルになりやすい
一棟所有マンション・ビルオーナー共用部管理責任者オーナー負担住戸数が多いと撤去費用が高額化する

トラブルになりやすいケース

  • 入居者が無断で設置していた場合、撤去時に費用負担をめぐって揉める。
  • オーナーが設置したが入居者が使用しており、責任の所在が不明確になる。
  • 撤去を拒否した場合、管理組合や施工会社が強制撤去を行い、その費用を請求されるケースもある。

このように、ベランダタイルの撤去費用は「原則自己負担」であることを理解し、事前に管理規約と賃貸契約書を確認しておくことが重要です。

大規模修繕後のベランダタイル再施工について

大規模修繕が終わった後、「ベランダタイルをまた敷いていいのか?」という疑問を持つオーナーや居住者は多いです。基本的には再施工は可能ですが、いくつかの条件や制約があるため注意が必要です。

まず確認すべきは 管理規約と工事会社の指示 です。修繕後の防水層を保護する観点から、ベランダタイルの再設置を禁止しているマンションもあります。理由は、タイルがあると将来の点検が難しくなり、防水保証の対象外になるリスクがあるためです。

再設置を許可している場合でも、以下のような条件がつけられることがあります。

  • 軽量で取り外し可能なタイプを使用すること
  • ベランダの排水溝周辺はタイルを敷かないこと
  • 隙間のない施工は避け、通気性を確保すること

再施工の費用は当然ながら自己負担です。1㎡あたり5,000〜1万円程度が目安となり、デザイン性の高い製品や施工方法を選ぶと費用はさらに上がります。

大規模修繕時にベランダタイルを放置するとどうなる?

大規模修繕時に「撤去せずそのままにしておく」という選択は、非常にリスクが高い行為です。

  1. 工事妨害による強制撤去
    施工会社が作業を進められない場合、強制的に撤去され、費用を後から請求されることがあります。
  2. 防水不良による漏水リスク
    タイルの下で防水層の劣化が進んでいても見えないため、修繕工事が不十分になり、数年後に漏水トラブルにつながる可能性があります。
  3. 保証の対象外になる
    大規模修繕後は工事保証がつくことが多いですが、ベランダタイルを放置していた場合、保証が受けられなくなるケースがあります。

このように、「撤去しない選択」は将来の大きなリスクを抱えることになり、結果的に費用が膨らむ恐れがあるのです。

ベランダタイルの撤去や再施工の際の注意点

ベランダタイルの撤去や再施工をめぐるトラブルを避けるためには、事前準備と情報収集が不可欠です。オーナーや居住者が意識すべき注意点を整理しました。

工事説明会で必ず確認する

大規模修繕前に開催される説明会で、ベランダタイルの扱いについて必ず質問しましょう。管理規約や施工会社の方針に基づいた明確な回答を得ておくことで、後々のトラブルを防げます。

写真を撮って記録しておく

撤去前にベランダタイルの状態を写真に残しておけば、再施工時の参考になります。また、破損や紛失があった場合の証拠にもなります。

DIYは避け、専門業者へ依頼する

DIYでの撤去や再設置は見た目上は可能ですが、防水層を傷つけたり排水機能を妨げたりするリスクが高いです。専門業者に依頼することで、安全かつ確実に作業を進められます。

再設置しない選択も検討する

工事後に再びタイルを敷くかどうかは慎重に検討すべきです。最近は軽量で防水性の高いマットや人工芝など、タイル以外の選択肢も増えています。メンテナンス性や将来の修繕を考えると「敷かない」選択が合理的な場合もあります。

施工事例|8階建てマンションの大規模修繕工事

築17年の8階建てマンションにおける、管理組合主導による大規模修繕工事の一部始終をご紹介します。
「予算オーバーを避けたい」「融資は極力使いたくない」といった現実的な課題を抱える中で、新東亜工業がどのように提案し、信頼を築きながら工事を完遂したのか──。
理事会への説明から近隣対応、完成後のフォローまで、実際のやり取りを交えてリアルにお伝えします。

大規模修繕・防水工事・外壁塗装のご依頼やご相談は、メール・お電話からお受け致しております。

ご相談内容

築17年が経過し、管理組合では以前から大規模修繕の検討がされていましたが、資材高騰などにより予算が合わず延期されていた背景があります。「融資は避けたい」「必要な部分に絞って実施したい」といった要望の中、数社に見積り依頼をされていた中で弊社にご相談をいただきました。

担当者:お問い合わせありがとうございます。ご予算に合わせて施工範囲を調整することも可能です。弊社は子会社で材料問屋を持っているため、同じ工事でも他社様より価格を抑えるご提案が可能です。
お客様:なるべく費用を抑えたいので、ぜひ現地調査をお願いします。図面などもご用意します。
担当者:ありがとうございます。図面と、屋上に鍵があるようであればご用意をお願いします。

工事の概要|工事金額と期間

大規模修繕 施工前

大規模修繕 施工後

項目 内容
建物種別 分譲マンション(8階建て)
所在地 東京都内(詳細非公開)
工事内容 大規模修繕工事(外壁補修・塗装・防水・シーリング・長尺シート他)
工法 足場設置のうえ全面修繕/ウレタン塗膜防水(密着工法)他
その他特記事項 理事会へのプレゼンあり、工事中の騒音・近隣対策対応あり

工事金額:2,430万円 期間:約2カ月間

現地調査で判明した劣化症状

現地調査では、屋上の防水層や外壁のシーリング、タイル目地などに劣化が見られました。既存のアスファルトシート防水はまだ機能していたものの、再施工のタイミングとしては適切であり、ウレタン塗膜防水による上塗りを推奨しました。また、タイルの一部には硬化不良が確認され、慎重な撤去作業が必要な状態でした。

担当者:屋上はアスファルトシート防水ですね。状態は悪くないので、ウレタン塗膜防水の密着工法が適しています。
お客様:それでお願いします。あとベランダは見た目を良くしたいので、長尺シートも検討したいです。
担当者:シートは費用が倍近くかかるので、ウレタンの方が予算には優しいですね。
お客様:でも可能ならシートにしたいので、そちらで見積りお願いします。

施工中のやり取りと配慮

工事期間中は、騒音や近隣への影響を最小限に抑える配慮を行いました。作業工程や騒音の案内は掲示板やホワイトボードで事前に周知し、近隣住民や管理人との連携も徹底。足場設置やメッシュシートの風対策も含め、安全対策も万全に対応しました。また、アスベスト調査も事前に実施し、含有なしを確認済みです。

お客様:日曜に音がしたって苦情が来たのですが…。
担当者:調べたところ、隣の工事のものでした。担当者に周知のお願いはしておきました。
お客様:ありがとうございます。トラブルにならなくてよかったです。

引き渡し時のご感想

工事完了後、お客様からは「タイルもまったく違和感がない」「すごく綺麗になった」と高い評価をいただきました。タイルの保管方法や施工写真・保証書を含めた竣工図書の提出も行い、今後のメンテナンスにも役立てていただける内容でお渡ししました。

お客様:どこを張り替えたかわからないくらい自然ですね。
担当者:窯焼きで色を合わせたので、かなり近く再現できています。必要があればいつでもご連絡ください。
お客様:ありがとうございます。次は廊下の床や照明をまとめて検討したいと思います。

今回の工事では、以下のような成果が得られました。

  • ご予算に合わせた柔軟な工事範囲調整
  • 自社施工・材料問屋からの直接仕入れでコストダウンを実現
  • 理事会での丁寧なプレゼンと近隣配慮で信頼を構築
  • 施工中の進捗報告や打ち合わせで透明性を確保
  • 外観と防水性が向上し、物件価値の維持につながった

新東亜工業では、お客様の状況に合わせた提案と対応を徹底しております。

大規模修繕に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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大規模修繕に関するベランダタイルのよくある質問(FAQ)

大規模修繕に関するベランダタイルのよくある質問を紹介します。

Q1. 大規模修繕でベランダタイルは必ず撤去しなければなりませんか?

多くの場合、撤去が求められます。防水工事や下地補修の妨げになるため、施工会社や管理組合から「撤去してください」と指示されるのが一般的です。管理規約に従わない場合は、強制撤去となり費用請求されるケースもあるので注意が必要です。

Q2. ベランダタイルの撤去費用はいくらかかりますか?

タイルの種類や施工状況によりますが、1㎡あたり数千円〜1万円程度が目安です。例えば10㎡のベランダなら3万〜10万円前後かかる可能性があります。施工業者に依頼するのが一般的で、DIYは防水層を傷つけるリスクがあるためおすすめできません。

Q3. 撤去費用は管理組合が負担してくれることもありますか?

原則として、設置した本人(オーナーや居住者)の負担です。管理組合や施工会社が費用を出すことはほとんどありません。ただし、管理規約によって例外的にサポートがある場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。

Q4. 大規模修繕後にベランダタイルを再施工してもいいですか?

再施工は可能な場合もありますが、管理規約や工事会社の指示によって制限されることがあります。防水保証の対象外となることもあるため、軽量で取り外しやすいタイルを選ぶ排水口周りは敷かないといったルールを守ることが重要です。

Q5. ベランダタイルを撤去せずに放置するとどうなりますか?

撤去を怠ると、防水工事が十分に行えず、将来的に漏水トラブルが発生するリスクが高まります。また、工事後の保証対象外になることもあり、結果的に修繕費用が膨らむ可能性があります。トラブル防止のため、必ず撤去対応するのが賢明です。

大規模修繕におけるベランダタイルの注意点まとめ

大規模修繕におけるベランダタイルは、原則として撤去が必要であり、費用もオーナーや居住者の自己負担になるケースがほとんどです。撤去を怠ると工事に支障をきたし、強制撤去や保証対象外などのリスクを抱えることになります。
修繕後に再施工する場合も、管理規約や工事会社のルールに従う必要があります。近年はタイル以外にも軽量で扱いやすい床材が登場しており、再設置しない選択も合理的です。
オーナーは「大規模修繕 ベランダタイル」の扱いを正しく理解し、事前に管理組合や施工会社と確認を重ねることで、余計なトラブルや無駄な費用を防げます。計画的な準備と情報収集が、安心して大規模修繕を乗り切る鍵となるでしょう。

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