町内会に入らない割合は約3割!加入率低下の実態とメリット・デメリットを解説
2025/11/06
新しく家を購入したり引っ越したりする際、多くの人が悩むのが「町内会や自治会に加入するべきか」という問題です。
実は近年、町内会に入らない世帯が全国的に増加しており、2021年度の調査では約3割の世帯が未加入という状況になっています。
「入らなければいけないのか」「入らないとどうなるのか」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、町内会に入らない人の割合や加入率が低下している理由、加入・非加入それぞれのメリットとデメリットについて、信頼できるデータに基づいて詳しく解説します。
目次
町内会・自治会に入らない人の割合はどのくらい?
町内会や自治会への加入は任意であり、法的な義務はありません。
しかし実際には、どれくらいの人が加入しているのでしょうか。
ここでは、全国的な加入率の実態と地域による違いについて見ていきます。
全国平均の加入率は71.7%(2021年度) 約3割が未加入
総務省が実施した「地域コミュニティに関する研究会」の報告書によると、2021年度(令和2年度)における全国600市区町村の自治会等の加入率の平均は71.7%でした。
つまり、全国平均で約28%、およそ3割の世帯が町内会や自治会に加入していないという計算になります。
この数字は10年前の2010年度(平成22年度)には78.0%だったことを考えると、わずか10年間で6.3ポイントも低下していることになります。
この調査対象となった600団体のうち、加入率が減少した団体は530団体(88.3%)にも上り、全国的に加入率の低下が進行していることが明らかです。
さらに詳しく見ると、一部の地域では状況がより深刻です。東京都の2023年の調査では加入率が41.4%にとどまっており、6割近くの世帯が町内会に加入していない状況となっています。
東京23区に限って言えば、1970年頃にはすでに加入率が50%を切っていたという記録もあり、都市部での加入率低下は長年の課題となっています。
都市部ほど低い加入率の傾向
町内会の加入率には、地域の人口規模による明確な傾向があります。総務省の報告書によると、人口規模が大きい自治体ほど加入率が低くなる傾向が確認されています。
具体的には、人口1万人以下の小規模自治体では加入率が90%程度と高い水準を保っている一方で、人口50万人以上の大都市では加入率が60%程度にとどまっています。
この30ポイント近い差は、都市部と地方では町内会に対する意識や生活スタイルが大きく異なることを示しています。
都市部で加入率が低い理由としては、以下のような要因が考えられます。
- 転勤や進学などで短期間の居住を予定している人が多い
- 共働き世帯が多く活動に参加する時間が取りにくい
- 匿名性の高い集合住宅が多く近隣との交流が少ない
- 行政サービスが充実しており自治会の必要性を感じにくい
一方で地方では、古くからの地縁関係が残っており、町内会が地域社会の重要な役割を果たしているケースが多く見られます。
そのため加入が当然視される風土があり、加入率も高い水準を維持しているのです。
なぜ町内会に入らない人が増えているのか?5つの理由
全国的に町内会の加入率が低下している背景には、現代社会の変化や人々の価値観の多様化があります。
ここでは、多くの人が町内会への加入を見送る主な理由を5つに整理して解説します。
理由1: 加入するメリットが分からない
町内会に入らない理由として最も多く挙げられるのが、「加入するメリットが分からない」「加入しなくても困らない」という声です。
立川市が実施した自治会に関するアンケート調査でも、この理由が第一位となっています。
かつては町内会が地域の情報伝達や相互扶助の中心的な役割を果たしていましたが、現代ではインターネットやSNSで情報が簡単に入手できるようになりました。
また、行政サービスも充実しており、ゴミ収集や防災情報なども自治体から直接得られる環境が整っています。
特に若い世代にとっては、子どもの頃に地域の祭りや子ども会などで町内会の活動に触れる機会がなかった人も多く、町内会という存在自体がよく理解できないというケースも少なくありません。
「町内会って何をしているのか分からない」「自分の生活に関係がない」と感じる人が増えているのが実情です。
このように、自分のライフスタイルと町内会の活動内容が合わないと感じる人も多いのです。
理由2: 役員の負担や会費の支払いが重い
町内会に加入すると、多くの場合は輪番制で役員や班長などの当番が回ってきます。
この役員としての負担の大きさが、加入をためらう大きな理由となっています。
役員になると、月に数回の会合への出席、回覧板の取りまとめ、自治会費の集金、イベントの企画・運営など、多岐にわたる業務を担当することになります。
共働き世帯が増えている中、平日の日中や夜間に時間を割くことが難しいという声も多く聞かれます。
また、会費の負担も無視できません。地域によって金額は異なりますが、年間で数千円から1万円程度を支払う必要があります。
さらに、自治会費とは別に神社の維持費や各種募金などを求められるケースもあり、経済的な負担を感じる世帯も少なくありません。
特に問題視されているのが、会費の使途が不透明であるという点です。
会計報告が適切に行われていなかったり、役員の懇親会などに多額の費用が使われていたりするケースもあり、「自分たちに還元されていない」という不満も生まれています。
理由3: 集まりや活動に参加する時間がない
仕事や子育てで忙しい現代人にとって、町内会の活動に参加する時間を確保することが難しいというのも大きな理由です。
町内会の活動は、清掃活動、会合、祭りやイベントの準備・運営など、定期的に時間を割く必要があるものが多くあります。
特に清掃活動は早朝6時からというケースもあり、土日に仕事がある人や小さな子どもがいる家庭にとっては参加が困難です。
また、会合も夜間に開催されることが多く、子どもの世話や翌日の仕事に支障が出るという声もあります。会合の後に懇親会が設定されている場合は、さらに拘束時間が長くなります。
こうした時間的な制約から、「参加したくても参加できない」という状況に陥っている人も多いのです。
理由4: 人間関係のトラブルを避けたい
町内会に加入すると、様々な世代や価値観を持つ人々と関わることになります。
この人間関係の煩わしさやトラブルを避けたいという理由で加入しない人も増えています。
町内会の活動に関するアンケート調査では、「人間関係が面倒」というストレスを感じている人が多く見られます。
特に役員を同時期に務めることになった場合、苦手な人と頻繁に顔を合わせなければならず、大きなストレスとなります。
また、古くからの住民と新しく転入してきた住民との間で意識の違いがあり、溝が生まれることもあります。
現代社会では、プライベートを大切にしたい、必要以上に他人と関わりたくないという価値観を持つ人も増えています。
「職場や学校以外の人間関係を増やしたくない」「近所付き合いは最低限で良い」と考える人にとって、町内会への加入はメリットよりもデメリットの方が大きく感じられるのです。
理由5: 強制的な雰囲気に抵抗感がある
町内会への加入は法的には任意であるにもかかわらず、実質的に強制されているような雰囲気を感じ、それに抵抗を覚える人も少なくありません。
「加入しないという選択肢がないような雰囲気」に違和感を覚える人もいます。
また、加入後も「イベントには必ず参加すること」「若い人は率先して動くべき」といった同調圧力を感じることもあります。
特に若い世代や都市部から引っ越してきた人にとっては、このような地域の慣習や暗黙のルールが理解しにくく、「自分のライフスタイルを尊重してもらえない」と感じることもあります。
個人の自由を重視する価値観が広がる中、強制的な加入や参加を求める姿勢そのものが時代に合っていないという指摘もあります。
町内会・自治会に入らないメリット
町内会に加入しないことを選択した場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、未加入を選ぶ人が実感している4つの主要なメリットについて解説します。
会費の支払いが不要になる
町内会に加入しなければ、当然ながら会費を支払う必要はありません。これは経済的に大きなメリットと言えます。
町内会費は地域によって異なりますが、一般的には年間3,000円から10,000円程度が相場です。
さらに、自治会費とは別に、地域の神社やお寺の維持費、赤い羽根共同募金、その他の寄付金などを求められることもあります。
これらを合計すると、年間で1万円を超える出費となるケースも珍しくありません。
また、会費の使途に納得できないという不満を持つ人もいます。
実際に会計報告を見ると、一部の役員の飲食費に多額が使われていたり、必要性の低い物品購入に費用が充てられていたりすることもあります。
「自分たちには還元されていない」と感じる場合、会費を払わなくて済むことは大きなメリットとなります。
役員や当番などの負担から解放される
町内会に加入しない最大のメリットの一つが、役員や班長などの当番業務を担う必要がないという点です。
多くの町内会では輪番制を採用しており、数年に一度は必ず役員や班長が回ってきます。
役員になると、月に数回の会合への出席、イベントの企画・運営、各種書類の作成、会費の集金、回覧板の管理など、多くの業務をこなさなければなりません。
これらの業務は平日の夜や休日に行われることが多く、仕事や家庭との両立が困難になることもあります。
さらに、役員になると人間関係のストレスも増加します。意見の対立、責任の押し付け合い、一部の人だけが熱心で温度差があるなど、様々な問題が生じることもあります。
未加入であれば、こうした役員業務に伴う時間的・精神的な負担を一切負う必要がありません。
自分の時間を自由に使える
町内会の活動に参加しなくて済むため、休日や自由時間を自分の好きなことに使えるというメリットもあります。
町内会の活動には、早朝の清掃活動、夜間の会合、週末のイベント準備など、定期的に時間を割く必要があるものが多くあります。
特に子育て世代や共働き世帯にとっては、貴重な休日を地域活動に充てることは大きな負担です。
未加入であれば、その時間を家族との団らん、趣味、休養、副業など、自分や家族にとって本当に大切なことに使うことができます。
また、仕事の都合で土日に勤務がある人や介護などで時間の制約がある人にとっては、町内会の活動に参加すること自体が現実的に難しい場合もあります。
無理に加入して活動に参加できないことで周囲から白い目で見られるよりも、最初から加入しない方が精神的な負担が少ないという考え方もあります。
人間関係のストレスが軽減される
町内会に加入しないことで、地域での複雑な人間関係に巻き込まれるリスクを避けられるというメリットもあります。
特に、古くからの住民と新しく転入してきた住民との間で意識の違いがあったり、世代間で価値観が異なったりする場合、溝が生まれやすくなります。
「昔からのやり方」に固執する人と、「効率化や見直しが必要」と考える人との間で対立が起こることもあります。
また、町内会での人間関係のトラブルは、同じ地域に住み続ける限り避けられないという厄介さがあります。
職場の人間関係であれば転職や異動で解決できますが、地域の人間関係は簡単には切れません。
未加入であれば、こうした複雑な人間関係に深入りせず、必要最低限の近所付き合いだけで済ませることができます。
町内会・自治会に入らないデメリットと注意点
町内会に加入しないことにはメリットがある一方で、実生活において困難や不便が生じる可能性もあります。
ここでは、未加入の場合に直面しうる5つの主要なデメリットについて解説します。
ゴミ捨て場が使えない可能性がある
町内会に加入しない場合の最も大きなデメリットが、地域のゴミ集積所が使用できなくなる可能性があるという点です。これは多くの未加入者が直面する深刻な問題です。
国立研究開発法人国立環境研究所の調査によると、約7割の市町村で自治会未加入者によるゴミ集積所の利用が認められていないという結果が出ています。
法的には、家庭ゴミの収集・処理は廃棄物処理法に基づき自治体が責任を持つものであり、自治会への加入とゴミ出しは本来無関係です。
しかし現実には、「自治会員でなければゴミ集積所は使わせない」と言われるケースが全国で頻発しています。
もし町内会に加入せずにゴミ出しができない場合の対処法としては、以下の方法があります。
- 自治体の廃棄物担当窓口に相談する
- 自治体が指定する別のゴミ集積所を案内してもらう
- 最終的には個別収集を依頼する
ただし、これらの対応には時間がかかったり、追加費用が発生したりする可能性もあります。
地域情報が入手しにくくなる
町内会に加入していないと、地域で共有される重要な情報が入手しにくくなるというデメリットがあります。
町内会では回覧板を通じて、地域のイベント情報、防犯・防災に関するお知らせ、行政からの連絡事項、工事や交通規制の予定など、様々な情報が共有されています。
未加入の場合、これらの情報が自動的には届きません。
特に、不審者情報や地域での犯罪発生状況、防災訓練の日程、避難所の場所、災害時の支援体制など、安全に関わる情報を逃してしまう可能性があります。
また、道路工事や水道工事などで一時的に断水や通行止めが発生する場合も、事前に知らされないことで不便を被ることがあります。
もちろん、現代では自治体のホームページやメール配信サービス、SNSなどで情報を得ることも可能です。
しかし、地域に密着した細かな情報は町内会を通じてしか伝わらないことも多く、情報格差が生じる可能性は否定できません。
災害時の支援を受けにくい場合がある
大規模な災害が発生した際、町内会に加入していないと地域からの支援を受けにくくなる可能性があります。
多くの町内会では、災害時の安否確認体制を整えており、会員の名簿をもとに声かけや避難誘導を行います。
また、防災訓練や避難訓練も町内会主催で実施されることが多く、参加していないと避難経路や避難所の場所を十分に把握できないまま災害を迎えることになります。
特に高齢者や小さな子どもがいる世帯、障害のある方がいる世帯など、災害時に支援が必要な場合は、町内会とのつながりがより重要になります。
日頃から地域とのコミュニケーションを取っておくことが、いざという時の備えにもなるのです。
地域住民との関係が希薄になる
町内会に加入しないことで、近隣住民との関係が希薄になり、日常生活で孤立感を感じる可能性もあります。
祭りや運動会、清掃活動などを通じて、自然と顔見知りが増え、日常的な挨拶や立ち話ができる関係性が生まれます。
未加入の場合、こうした交流の機会がなくなり、「顔も名前も知らない」という状態が続きます。
特に子育て世代にとっては、地域に知り合いがいないことで孤独を感じたり、子どもの遊び相手や情報交換の機会が限られたりすることもあります。
また、何か困ったことがあったときに気軽に相談できる相手がいない、ちょっとした助けを求めにくいという状況にもなりがちです。
日常的な近所付き合いの中で生まれる信頼関係は、生活の質を高める重要な要素でもあります。
「ずるい」「非常識」と見られることも
町内会に加入しないことで、一部の地域住民から「ずるい」「非常識」といった否定的な目で見られる可能性があることも、心理的なデメリットの一つです。
町内会に加入し、会費を払い、当番や役員を務めている人たちの中には、「自分たちは負担を背負っているのに、加入していない人だけが恩恵を受けている」という不公平感を抱く人もいます。
実際、町内会に関するアンケート調査では、加入者の多くが「会費を払っていない世帯に対して不公平感を感じる」と回答しています。
こうした感情が、未加入者への冷ややかな態度や、時には露骨な嫌がらせにつながることもあります。
法的には町内会への加入は任意であり、加入しないことは何ら非難されるべきことではありません。
しかし、地域によっては「入って当然」という風土が根強く残っており、未加入であることが周囲との関係を悪化させる原因になることもあります。
町内会・自治会に加入するメリット
ここまで未加入のメリット・デメリットを見てきましたが、一方で町内会に加入することで得られる利点も多くあります。
加入を検討する際の判断材料として、主要な4つのメリットを確認しておきましょう。
防犯・防災面での安心感が得られる
町内会に加入する最大のメリットの一つが、防犯・防災面での安心感が得られるという点です。
多くの町内会では、定期的な防犯パトロールを実施しています。地域住民が交代で夜間や早朝にパトロールを行うことで、不審者の侵入を抑止し、犯罪の発生を未然に防ぐ効果があります。
実際に、防犯パトロールが活発な地域では犯罪発生率が低いというデータもあります。
また、防災面でも町内会の役割は重要です。
大規模災害が発生した際には、行政の支援が届くまでの間、地域住民同士の助け合いが生命線となります。日頃から顔の見える関係を築いておくことで、緊急時にスムーズな協力体制が取れるのです。
地域の情報をいち早く入手できる
町内会に加入していると、地域に密着した様々な情報をいち早く入手できるというメリットがあります。
回覧板や会合を通じて、行政からのお知らせ、地域イベントの案内、工事や交通規制の予定、不審者情報、ゴミ出しルールの変更など、生活に直結する情報が定期的に届きます。
これらの情報は、自治体のホームページでは掲載されていない、あるいは掲載されていても見つけにくいことも多く、町内会のネットワークを通じて初めて知るケースも少なくありません。
また、口コミで伝わる情報も貴重です。
「この地域で評判の良い病院はどこか」「子どもの習い事はどこがおすすめか」「近くに新しくできた店はどうか」といった生活に役立つ情報が、町内会のつながりの中で自然と共有されます。
子どもの見守りや地域イベントに参加できる
子育て世代にとっては、町内会を通じて子どもの見守り体制や地域イベントに参加できることが大きなメリットとなります。
地域の大人たちが交代で通学路に立ち、子どもたちの安全を見守ることで、交通事故や不審者による被害を防ぐ効果があります。
共働きやシングル家庭など、自分では毎日見守ることが難しい場合でも、地域全体で子どもを守る仕組みがあることは心強いものです。
また、夏祭り、運動会、餅つき大会、クリスマス会など、町内会主催のイベントは子どもたちにとって貴重な思い出となります。
地域の大人たちとの交流を通じて社会性を学び、同年代の友達を作る機会にもなります。親にとっても、同じ地域の保護者同士で情報交換や相談ができる場となり、子育ての孤立を防ぐ効果もあります。
ご近所との良好な関係が築ける
町内会に加入することで、自然とご近所との良好な関係を築くことができるというメリットもあります。
清掃活動やイベントの準備など、共同作業を通じて顔見知りが増え、日常的に挨拶を交わす関係が生まれます。
顔と名前が一致する関係性があると、ちょっとした困りごとを相談したり、助け合ったりすることが自然にできるようになります。
近所との良好な関係は、長く安心して暮らし続けるための基盤となります。
引っ越してきたばかりで地域に知り合いがいない場合、町内会への加入は地域に溶け込むための有効な手段となるでしょう。
【戸建て】町内会に入らないとゴミは出せない?
戸建て住宅を購入した際に多くの人が直面する問題が、「町内会に入らないとゴミを出せないのか」という疑問です。
ここでは、この問題の法的な位置づけと実態について詳しく解説します。
法的にはゴミ出しは可能だが現実は厳しい
結論から言えば、法的には町内会への加入とゴミ出しは無関係です。
廃棄物処理法に基づき、家庭ゴミの収集・処理は市区町村に義務があるため、自治会に加入していないことを理由にゴミ出しを禁止することは、法的根拠がありません。
しかし、法的には問題があるとされても、現実には多くの地域でゴミ出し問題が発生しています。
多くのゴミ集積所は自治会が設置・管理しており、清掃当番、カラスよけネットの購入、場所の確保などを自治会の会費と労力で賄っているためです。
「会費も払わず、当番もしないのにゴミ集積所だけ使うのはおかしい」という感情が、加入者の間に生まれるのも無理はありません。
もし町内会に加入せずにゴミ出しができない状況になった場合は、まず市区町村の廃棄物担当課に相談しましょう。
自治体によっては、別のゴミ集積所を案内してくれたり、新たな集積所の設置を検討してくれたりする場合もあります。また、最終的な手段として、自宅前での個別収集を依頼できるケースもあります。
約7割の自治体で未加入者のゴミ捨て制限がある
国立研究開発法人国立環境研究所が実施した調査によると、全国の約70%の市町村で、自治会未加入者によるゴミ集積所の利用が認められていないという実態が明らかになっています。
特に地方や郊外の住宅地では、ゴミ集積所の管理を完全に自治会に任せている自治体が多く、未加入者は実質的にゴミ出しができない状況に置かれています。
一方で、自治体側も対応に苦慮しているのが実情です。
法的にはゴミ出しを妨げることはできないものの、実際に自治会が管理しているゴミ集積所について、自治体が直接介入することは難しい側面があります。
そのため、「自治会と話し合ってください」という対応に終始してしまうケースも多いのです。
このような状況を踏まえると、戸建て住宅を購入する際には、事前に地域のゴミ出し事情を確認しておくことが重要です。
不動産会社に確認したり、実際に住んでいる人に話を聞いたりして、町内会とゴミ出しの関係を把握しておくことをおすすめします。
町内会・自治会への加入に関するよくある質問【FAQ】
町内会や自治会への加入について、多くの方が抱える疑問や不安があります。
ここでは、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
加入を検討する際の参考にしてください。
Q.町内会への加入は法律で義務付けられていますか?
いいえ、町内会や自治会への加入は法的な義務ではありません。
町内会は任意団体であり、加入するかどうかは個人の自由な意思に委ねられています。
地方自治法では「認可地縁団体制度」がありますが、その場合でも住民は加入・脱退を任意に行うことができます。
加入を強制されることはありませんし、入った後で退会する自由もあります。ただし、地域によっては加入が当然視される風土があることも事実です。
Q.町内会を途中で退会することはできますか?
はい、町内会や自治会は途中で退会することが可能です。加入が任意である以上、退会も自由に行えます。
一般的に町内会長や役員に退会の意思を伝えるだけで完了しますが、同じ地域に住み続ける以上、円滑な関係を保つために丁寧に意思を伝えることが望ましいでしょう。
ただし、退会後にゴミ捨て場の利用や地域情報の入手が難しくなる可能性があるため、事前に対策を考えておくことをお勧めします。
Q.町内会費の相場はどのくらいですか?
町内会費の相場は地域によって異なりますが、一般的には年間3,000円から10,000円程度が多いようです。
都市部では年間3,000円~5,000円程度、地方では年間6,000円~10,000円程度が相場となっています。
会費の使途は、防犯灯の電気代、清掃用具の購入、地域イベントの開催費用などが主なものです。
これとは別に神社の維持費や各種募金を求められることもあり、実質的な負担額はさらに増える場合もあります。
Q.賃貸住宅・マンションでも町内会に入る必要がありますか?
賃貸住宅にお住まいの場合でも、法的には町内会への加入義務はありません。
集合住宅の場合、建物全体が一括加入しているケースと各世帯が個別判断するケースがあります。戸建ての賃貸では個別に加入を求められることが多いでしょう。
大家さんや不動産会社から加入を勧められることもありますが、あくまで任意です。
ただし、ゴミ捨て場の使用など実生活に関わる問題もあるため、断る場合は事前にゴミ出し方法を確認しておくと安心です。
Q.役員や班長を断ることはできますか?
町内会の役員や班長は、多くの場合輪番制で回ってきますが、正当な理由があれば断ることは可能です。
健康上の理由、仕事の都合、乳幼児の育児中などが認められやすい理由です。
断る際は早めに連絡し、現状をしっかり伝え、相談の姿勢を見せることが大切です。
「今年度は難しいが来年度なら可能」といった代替案を提示すると相手も納得しやすくなります。
どうしても負担が大きい場合は、町内会を退会するという選択肢もあります。
Q.町内会に入らないと子どもが地域のイベントに参加できませんか?
これは地域によって対応が大きく異なります。
夏祭りや運動会などの大規模イベントは、地域全体に開かれている場合が多く、未加入でも参加できることが一般的です。
一方、子ども会の活動やラジオ体操などは会員の子どものみを対象としているケースもあります。
イベント参加を希望する場合は、イベントごとに参加費を支払えるか相談してみると良いでしょう。
町内会以外にも、自治体主催のイベントや習い事など、子どもが交流する機会は他にもあります。
Q.単身世帯でも町内会に加入するメリットはありますか?
単身世帯の場合、防犯・防災面でのメリットが特に大きいと言えます。
防犯パトロールによる地域の見守りや、災害時の安否確認体制があることは大きな安心材料です。
特に女性の一人暮らしや高齢者の単身世帯では、地域とのつながりが重要になります。また、孤立を防ぐという観点でも価値があります。
一方で、活動への参加が難しく会費を十分に活用できないと感じる人もいます。自分のライフスタイルや価値観に合わせて判断することが重要です。
まとめ
町内会や自治会への加入は法的には任意であり、加入しないことを選択する人も増えています。
この記事で見てきたように、全国平均で約3割の世帯が未加入という状況であり、特に都市部ではその割合はさらに高くなっています。
以下、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 2021年度の全国平均加入率は71.7%で、約3割が未加入
- 都市部ほど加入率が低く、東京都では41.4%にとどまる
- 未加入のメリットは会費・役員負担の回避、時間の自由
- 未加入のデメリットはゴミ出し制限、情報不足、孤立感
- 法的にはゴミ出し可能だが、約7割の自治体で制限がある
- 加入のメリットは防犯・防災面の安心、地域情報の入手
- 困ったときは自治体の担当窓口や専門家に相談する
町内会への加入を検討する際は、まず地域の実情を十分に把握することから始めましょう。
ゴミ出しのルール、会費の金額と使途、役員の負担内容、活動の頻度など、具体的な情報を事前に集めることが大切です。
逆に、加入しないことを選択する場合は、ゴミ出しをどうするか、地域情報をどう入手するか、近隣との最低限の関係性をどう保つかなど、デメリットへの対策を考えておくことが重要です。
どちらを選択するにせよ、地域社会の一員として、お互いに尊重し合う姿勢を持つことが大切です。
加入者は未加入者を一方的に非難せず、未加入者も地域への配慮を忘れない。そうした相互理解があってこそ、誰もが安心して暮らせる地域社会が実現するのではないでしょうか。
▼参考元
- 総務省「地域コミュニティに関する研究会 報告書」(令和4年4月)
- 産経新聞記事「自治会非加入でゴミ捨て場『出禁』は違法か」