
大規模修繕工事の保証期間はどれくらい?瑕疵保険とは?長さの目安などを解説
2025/07/24
マンションやビルの資産価値を保ち、長く安心して暮らすために欠かせないのが「大規模修繕工事」です。そして、その工事後の「保証期間」は、住まいの安全と維持費用に直結する非常に重要な要素となります。
この記事では、大規模修繕における保証期間の意味や役割、工事項目ごとの目安など、知っておくべき基本知識をわかりやすく解説します。
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目次
大規模修繕における保証期間とは?その意味と役割を解説
大規模修繕における「保証期間」とは、工事完了後に不具合(例:塗膜の剥がれ、雨漏り、ひび割れなど)が発生した場合に、施工業者が無償で補修対応を行うと定められた期間のことを指します。
「瑕疵担保責任」の観点からの保証
建設業法や民法に基づき、施工不良や設計ミスによって発生した「瑕疵(かし)」については、一定期間、施工業者に補修義務が課されます。これを「瑕疵担保責任」といい、大規模修繕にも適用されます。
ただし、その具体的な年数や範囲は工事項目や契約内容によって大きく異なります。保証が適用される条件や免責事項を明確にしておくことが、後のトラブル防止に大きく寄与します。
戸建てやリフォームとの違いは?
戸建て住宅や個人向けのリフォームと異なり、大規模修繕では管理組合が発注者となり、工事の規模・対象範囲も広範です。そのため保証制度もより複雑で、複数の工事項目ごとに異なる保証条件が設定されるのが一般的です。
大規模修繕の保証期間はどれくらい?工事項目ごとの目安と相場
大規模修繕における保証期間は一律ではなく、対象となる工事内容や使用材料、施工方法によって年数が異なります。以下では代表的な工事項目について、一般的な保証期間の目安を紹介します。
主な工事項目と保証期間の例
工事項目 | 一般的な保証期間(目安) |
---|---|
外壁塗装 | 5〜7年 |
屋上防水(アスファルト防水) | 10年 |
シーリング(目地材) | 5年 |
鉄部塗装 | 2〜3年 |
バルコニー防水 | 7〜10年 |
※あくまで目安であり、実際の保証年数は業者や仕様によって異なります。
10年保証と短期保証の違い
保証期間が「10年」と記載されている工事は、防水層など重要な部位に対して長期的な耐久性が求められるものです。一方、鉄部塗装やシーリングなどは、環境要因や経年劣化の影響を受けやすいため、保証期間が短めに設定される傾向があります。
「10年保証だから安心」と単純に考えるのではなく、その保証の中身(保証対象、免責事項、施工条件など)をしっかり確認することが重要です。
保証年数が短い=手抜き工事ではない
保証期間が3年や5年と比較的短いからといって、それが手抜き工事であるとは限りません。むしろ「適切な材料を使用し、適切な施工であるために、この範囲での保証」と説明されるケースも多く見られます。
保証期間は、部位ごとの劣化速度や、気象条件などを踏まえた設計上の判断でもあるため、「長さ」だけで工事の良し悪しを判断するのは避けるべきです。
なぜ大規模修繕の保証期間に差があるのか?工事別の保証内容と注意点
保証期間の違いは、施工対象の部位や使用される材料、施工方法、立地条件などの多様な要因によって生じます。各工事項目にはそれぞれ特有の耐久性や劣化の進行スピードがあるため、それに応じて適切な保証期間が設定されています。ここでは、代表的な工事項目ごとの保証内容の違いや、施工条件によって保証がどう変化するのかについて詳しく見ていきましょう。
工事項目別の保証内容の違い
- 防水工事(屋上・バルコニー):10年保証が一般的。漏水による建物の劣化や住民への被害を防ぐため、長期間の保証が設けられています。
- 外壁塗装:5〜7年が主流。塗膜の剥がれや退色が保証対象となり、美観維持と保護性能が焦点となります。
- シーリング工事:5年程度が目安。目地材の割れ・はがれ・硬化不良などに対応。紫外線や雨水の影響を受けやすいため保証年数は限定的です。
- 鉄部塗装・金物工事:2〜3年と短め。鉄部は外的環境の影響を強く受けるため、早期の錆びや塗膜剥離が起こるリスクがあります。
施工条件による保証内容の変化
・施工面積が狭い場合や補修工事の場合:建物全体を対象としない局所的な修繕では、保証期間が短縮される場合があります。全体改修と比べて耐久性が一貫せず、保証適用も限定的になる傾向があります。
・素材や塗料のグレード:安価な塗料や部材を使用した場合、経年劣化が早く進むため、保証期間も短く設定されることがあります。逆に、高機能塗料や高耐候性の素材を使用すれば、保証期間の延長が可能な場合もあります。
・立地条件や環境負荷:海沿いや風の強い地域、日照が極端な場所では、通常より劣化が早く進む傾向があります。環境要因を踏まえた保証内容が設定されているかを確認することが大切です。
免責事項に要注意
多くの保証書には、保証対象外とされる事象が明記されています。例として、次のようなケースは免責となる可能性が高いです:
- 台風や地震などの自然災害による損壊
- 第三者の不注意による破損
- 建物の構造的欠陥が原因となる不具合
- 保証対象範囲外の施工箇所に発生した問題
保証期間がいくら長くても、免責範囲が広ければ実際のカバー範囲は狭くなります。契約前に免責条項を細かく確認することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
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短い保証期間の大規模修繕は危険?契約前に確認すべきポイント
保証期間が短いからといって、必ずしも工事の質が低いわけではありません。部位や条件に応じて適正に設定された保証期間であることも多く、むしろ実態に即した契約と言えます。とはいえ、曖昧な説明や情報不足はトラブルの元になります。契約前には次のようなポイントを押さえておきましょう。
保証内容が不明確な場合は要注意
「保証あり」とだけ書かれていて、その詳細が記載されていないケースは特に注意が必要です。保証を信じて契約したにもかかわらず、実際には保証対象にならなかったという事例も少なくありません。以下の点は必ず事前に明文化されていることを確認しましょう:
- 対象となる工事項目と部位の範囲
- 保証年数(それぞれの工事項目に対する個別設定)
- 保証対象となる不具合の具体的内容(例:塗膜の剥がれ、漏水)
- 保証が適用される条件、発生時の補修方法とその範囲
- 免責事由や対象外項目の記載
保証書を発行してもらえるか?
保証の信頼性を裏付けるためには、書面での保証書が不可欠です。口頭のみで「何かあったら対応します」といった業者には要注意。契約締結時に正式な保証書が交付されるか、発行日・保証期間・署名・印があるかどうかを確認することが重要です。保管のしやすさを考慮して、電子ファイルでの発行に対応しているかも聞いておくとよいでしょう。
工事完了後のアフター対応体制
保証期間が設定されていても、万が一のトラブル時に対応してくれる体制が整っていなければ意味がありません。アフターサービスの質は、業者の誠実さと施工後の安心感を測るバロメーターとも言えます。
以下のような体制があるかを確認しましょう。
- トラブル時の連絡先が明示されている
- 対応窓口が迅速に稼働し、現地調査が即時に行える
- 報告書や改善提案が適切に提出される
- 必要に応じて再施工や材料交換などの対応がある
大規模修繕の保証期間にまつわるトラブル事例
保証書を交付されたにもかかわらず、いざ不具合が発生したときに「保証対象外」「免責」と判断されてしまう事例は少なくありません。こうしたトラブルは事前の確認不足や、保証内容の誤解から起こるケースがほとんどです。
トラブル事例1.保証期間内の雨漏りが免責対象に
あるマンションで屋上防水工事を実施し、業者から「10年保証」が提示されていました。ところが、工事完了後2年で雨漏りが発生。調査を依頼したところ、下地となる既存の防水層の劣化が原因と判明。保証書には「下地由来の不具合は免責」と記載されており、施工業者は「事前説明済み」と主張しました。管理組合側は納得できずトラブルに発展し、第三者機関に相談する事態となりました。
トラブル事例2.保証書の文面が曖昧で補修拒否
別の物件では、「外壁塗装5年保証」と記された保証書が交付されていました。しかし、3年後に外壁の一部に変色が発生。居住者からクレームが上がり、業者に連絡したところ「塗装の変色は経年変化であり、美観に関する軽微な現象は保証対象外」と説明されました。保証書には明確な保証内容の記載がなく、管理組合は消費者センターに相談しましたが、結果として補修は実現せず、追加費用で別業者に依頼することに。
トラブル事例3.業者の廃業で保証が無効に
大規模修繕を終えた数年後、雨漏りが再発。保証期間内のため補修を依頼しようとしたところ、施工業者がすでに廃業しており連絡が取れず。保証書はあったものの、第三者保証制度や保険への加入がなかったため、補償は一切受けられませんでした。結局、管理組合が全額負担して再施工を行う結果となりました。
信頼できる業者を選ぶための保証関連チェックリスト
このようなトラブルを未然に防ぐためには、契約前の段階で業者が提示する保証内容の妥当性と透明性を十分に確認しておくことが何よりも大切です。以下は、信頼できる業者を見極めるための具体的なチェックリストです。
保証書の明確さ
- 保証対象となる工事項目が部位別に細かく記載されているか
- 保証期間の起算日と終了日が明記されているか(例:引き渡し日から〇年)
- 保証対象となる不具合の例が具体的に列挙されているか(例:塗膜剥離、漏水、目地割れ等)
- 補修対応の範囲(再施工・材料提供など)と連絡方法、手続きフローが明文化されているか
- 免責事項が具体的に示されており、曖昧な表現がないか
第三者保証制度の有無
- 万が一、業者が倒産・廃業しても補償が継続される仕組みがあるか?
- 住宅瑕疵担保責任保険、全国建設業協会などの保証制度に加盟しているか?
- 契約書とは別に「第三者保証書」や「保険証書」が交付されるか?
アフターサービス体制
- 定期点検の実施スケジュール(例:施工後1年・3年・5年点検など)
- 不具合発生時の専用窓口や連絡体制が整備されているか
- 問い合わせから現地調査、対応完了までの所要日数の目安を提示しているか
- 過去のアフター対応件数や内容を実績として開示しているか
過去の保証実績と口コミ
- 過去の施工実績における保証対応件数とその対応の満足度
- 管理組合やオーナーからの推薦コメントや継続契約の有無
- 口コミサイトやSNSでの評判、トラブル時の対応評価
- 工事後のアフターサービスに関するレビューが具体的であるか
大規模修繕の保証期間に関するよくある質問(FAQ)
大規模修繕工事における保証期間については、管理組合の方や建物のオーナー様から多くの質問が寄せられます。「保証期間が長ければ安心?」「免責って何?」「どんな条件なら保証されるの?」など、制度そのものへの疑問や、契約前に確認すべき内容に対する関心は非常に高いものです。
ここでは、実際に寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。保証制度を正しく理解し、安心して大規模修繕を進めるための参考としてぜひご活用ください。
Q1. 保証期間が長い業者ほど信頼できますか?
A. 一概にそうとは言えません。保証期間の長さは魅力の一つですが、保証の対象や条件が不明確であれば意味を持ちません。むしろ、保証内容が具体的で透明性が高い業者のほうが信頼できます。
Q2. 保証があるのに免責になるのはなぜ?
A. 多くの保証書には「免責事項」が定められており、自然災害、使用者側の過失、保証対象外の範囲などは保証が適用されません。契約時に免責条項をよく読み、口頭説明だけでなく書面に残しておくことが重要です。
Q3. 保証対象を見極めるにはどうすればいい?
A. 保証書の中にある「保証の範囲」「対象となる不具合」「免責事項」を確認しましょう。不明な点は質問し、業者に書面で補足してもらうことで後々のトラブルを防げます。
Q4. 管理組合として保証に強い業者を選ぶポイントは?
A. 見積もりを複数社から取り、保証内容を比較するのは基本です。さらに、保証実績・過去の対応事例・業者の説明の丁寧さも加味して判断しましょう。過去に同様のマンションで修繕実績があるかもチェックすべきです。
Q5. 保証期間を延長する方法はありますか?
A. はい、一部の工事では、定期点検や有償メンテナンスを条件に保証期間の延長が可能です。例えば「初回点検で異常なし+有償トップコート再施工」で5年延長といったプランを提供している業者も存在します。
保証期間を「活かす」かどうかは契約内容次第|まとめ
大規模修繕における保証期間は、単なる“おまけ”ではなく、工事の品質と信頼性を示す重要な指標の一つです。しかしその価値を活かせるかどうかは、契約内容の理解と確認にかかっています。
保証書の記載内容、免責条件、第三者保証制度の有無、アフター体制、業者の対応力――これらを総合的に判断し、将来的なトラブルを防げるパートナーと契約することが成功の鍵です。
修繕工事は一度きりのイベントではなく、長期にわたり建物の資産価値と安全を守るための重要なプロセスです。だからこそ、「保証期間の長さ」ではなく「保証の質」に注目して、慎重に選ぶことをおすすめします。