
大規模修繕工事の保証とは?対象工事や条件からトラブル回避法までわかりやすく解説
2025/07/24
大規模修繕工事を行う際、見積もりや工事内容に注目する方は多いですが、意外と見落とされがちなのが「保証」の存在です。保証があるかどうかで、工事後に発生する不具合への対応や、追加費用の有無が大きく変わってきます。
適切な保証が付いていれば、雨漏りや外壁の不具合といったトラブルが生じた場合でも、業者の責任で対応してもらえるため安心です。一方、保証内容を十分に理解していないと「対象外です」と言われ、余計な出費を強いられるケースもあります。
本記事では、大規模修繕の保証内容や対象工事、期間の目安、保証を有効に活用する方法、トラブル事例と回避策までを徹底解説します。
目次
大規模修繕とは?
大規模修繕とは、建物の安全性・快適性・美観を維持するために、一定の周期で行われる大規模な改修工事のことです。外壁の塗装や防水工事、鉄部の補修、屋上やベランダの防水など、建物全体の劣化を補修・改善する工事を総称して「大規模修繕」と呼びます。
特にマンションやビルでは、10〜15年ごとに行われるのが一般的で、資産価値を守るうえでも欠かせない取り組みです。計画的に実施することで、大きな故障や事故を防ぎ、長期的な維持管理コストを抑える効果も期待できます。
大規模修繕工事における保証の基本
大規模修繕工事を検討する際、費用や工事範囲ばかりに注目が集まりがちですが、同じくらい重要なのが「保証」です。保証の有無や内容によって、施工後に万が一不具合が生じたときの対応が大きく変わります。
保証がしっかりしていれば、管理組合やオーナーは安心して工事を任せられますが、保証内容が不明確だとトラブルに発展しかねません。ここでは、まず大規模修繕における保証の基本的な考え方を解説します。
大規模修繕における保証の役割と必要性
保証の最大の役割は、施工後に発生するかもしれない不具合や施工不良から建物を守ることです。
大規模修繕は数千万円規模に及ぶこともあり、施工後に不具合が見つかると再工事に大きな費用が発生します。保証があることで、一定期間は業者の責任で対応してもらえるため、予期せぬ出費を防ぐことができます。
また、保証の存在は業者の施工品質への自信の表れともいえるため、信頼できる業者選びの基準にもなります。
瑕疵担保責任とアフターサービス保証の違い
大規模修繕における保証には、大きく分けて「瑕疵担保責任」と「アフターサービス保証」の2種類があります。瑕疵担保責任とは、工事の瑕疵(欠陥)が発見された場合に施工業者が修補責任を負う法的な義務のことを指します。
一方、アフターサービス保証は、業者独自の保証制度で、定期点検や補修対応を一定期間無償で行う仕組みです。この2つを正しく理解しておくことで、契約時にどの範囲まで安心できるかを把握できます。
保証の対象になる大規模修繕の工事項目
大規模修繕工事と一口に言っても、外壁や屋上防水、鉄部の補修など多岐にわたります。それぞれの工事によって保証の対象範囲が異なり、また業者によっても対応内容に差があります。
以下では、代表的な工事項目と保証対象について表にまとめました。
保証の対象になる大規模修繕の工事項目一覧表
工事項目 | 保証対象となる不具合例 | 保証期間の目安 | 備考 |
---|---|---|---|
外壁塗装・シーリング工事 | 塗膜の剥がれ、ひび割れ、シーリング材の早期劣化 | 5〜7年(塗装)約5年(シーリング) | 塗料の種類により保証期間が変動 |
屋上・ベランダ防水工事 | 防水層のひび割れ、剥がれ、雨漏り | 10〜12年程度 | 防水工法(ウレタン・シート・アスファルト)によって異なる |
鉄部・金属部の補修工事 | 塗膜の剥離、錆の発生、構造的不具合 | 3〜5年程度 | 立地条件や環境要因で劣化速度に差が出る |
保証対象外のケース | 自然災害による損傷、居住者の改造による不具合、管理不備 | ― | 契約書で明記されるため要確認 |
万が一の自体に備えて工事前に保証内容について十分確認しておくことはもちろん、不明な点は業者に質問しクリアにしておく必要があります。
大規模修繕における保証期間の目安
大規模修繕の保証期間は、工事項目によって異なります。ここでは代表的な工事ごとの保証期間の目安をまとめます。工事の品質を守る上で非常に重要な要素であるため、契約前にしっかり把握しておきましょう。
大規模修繕における保証期間の目安一覧|工事項目別
工事項目 | 一般的な耐用年数 | 保証期間の目安 |
---|---|---|
塗装工事 | 10〜20年以上(塗料種類による) | 5〜10年程度 |
防水工事 | 12〜20年(工法による) | 10〜12年程度 |
シーリング工事 | 約5〜7年 | 約5年 |
以下で、それぞれの工事における保証期間の特徴を紹介します。
塗装工事の保証期間
塗装工事は5〜7年程度が一般的な保証期間です。耐用年数自体は塗料の種類によって10年以上持つケースもありますが、保証としては劣化が目立ち始める時期に合わせて設定されています。特にシリコン系やフッ素系など高耐久塗料を使用した場合は保証期間が長めに設定されることもあります。
さらに、近年では無機塗料など20年近くの耐用年数を持つものも登場しており、それに伴って保証期間を10年に延ばすケースも増えています。気候条件や建物の立地環境によっても耐久性は左右され、日当たりが強い南面や海風の当たる沿岸部では劣化が早まるため、保証期間を短めに設定する業者もあります。
防水工事の保証期間
防水工事は建物を守る最も重要な工事の一つであり、保証期間も長めです。一般的に10〜12年の保証が付き、施工後しばらくは安心して過ごせます。さらに、施工業者によっては定期的な点検サービスを含めた保証プランを設けている場合もあり、長期的な維持管理の観点からも安心材料となります。
ただし、防水層の種類(ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水など)や施工方法によって年数に違いが出るため、契約時に具体的に確認しておきましょう。また、地域の気候条件や建物の立地によっても耐用年数は変動し、海沿いの塩害地域や豪雨の多い地域では劣化が早まるケースもあります。
シーリング工事の保証期間
シーリング工事は外壁の目地部分に行われるため、劣化が早く5年程度が保証期間の目安です。環境条件によってはさらに短い期間で不具合が出ることもあるため、定期的な点検と補修が欠かせません。特に日当たりの強い南面や風雨にさらされやすい角部屋では劣化が加速する傾向があります。
使用されるシーリング材の品質によっても寿命は変わり、高耐久タイプを選べば7年程度持つこともあります。保証が切れるタイミングを意識して、早めの再補修を計画することが重要であり、長期修繕計画と連動させて実施することで費用の効率化や工事の重複防止にもつながります。
大規模修繕後に保証を受けるための条件
保証は契約すれば自動的に適用されるものではなく、発注者や管理組合が一定の条件を守ることによって初めて有効になります。条件を怠ると保証が無効となるケースもあるため注意が必要です。
ここでは、大規模修繕の保証を受けるための条件について紹介します。
大規模修繕後に保証を受けるための条件|定期点検の実施
多くの業者では、施工後1年・3年・5年といった定期点検を義務付けています。点検は建物の健康診断とも言えるもので、劣化の早期発見や小規模補修によって大きな修繕を防ぐ役割も担います。
点検を受けないと保証が打ち切られる可能性があるため、必ずスケジュール通りに対応することが求められます。さらに、点検時の記録を写真や書面で残すことで、後に保証を請求する際の根拠資料となり、発注者側の立場を守ることにもつながります。
大規模修繕後に保証を受けるための条件|適切な維持管理
日常の維持管理も重要です。排水口の清掃を怠ったり、外壁や防水層に過剰な負担をかけると保証が適用されないことがあります。例えば、ベランダの排水溝を塞いだまま放置した結果、雨水が逆流して内部に漏水した場合は「管理不備」と判断され、保証が受けられない可能性が高いです。
小さな不具合でも放置せず、早めに対応する姿勢が保証を活かすうえで不可欠です。定期清掃や巡回点検を管理組合でルール化するなど、維持管理の仕組みを整えると効果的です。
大規模修繕後に保証を受けるための条件|改造・リフォームの影響
入居者や所有者が独自に改造やリフォームを行った場合、その部分に起因する不具合は保証の対象外となります。例えば、バルコニーにタイルを後付けで敷いたことが原因で防水層に不具合が出た場合、保証の対象にはなりません。
追加工事を行う際は必ず施工業者や管理組合に相談し、保証が失効しないよう注意が必要です。また、業者に記録を残してもらうことで、保証の範囲を明確にしておくことが可能になります。
保証を受けるための主な条件一覧
条件項目 | 内容 | 注意点・補足 |
---|---|---|
定期点検を受けているか | 施工後1年・3年・5年などのスケジュールで点検を義務化。点検を受けないと保証失効の可能性。 | 点検記録を写真・報告書で保存しておくと保証請求がスムーズ |
適切に維持管理されているか | 排水口の清掃や外壁・防水層の負担軽減など日常管理が必要。放置は「管理不備」とされる。 | 定期清掃や巡回点検をルール化すると効果的 |
独自の改造・リフォームをしていないか | 居住者が独自で行う改造・リフォームに起因する不具合は保証対象外。 | 追加工事時は業者や管理組合に相談し、記録を残すことが重要 |
保証に関するよくあるトラブルと信頼できる業者を見極めるポイント
保証が存在しない、あるいは不十分な業者に発注すると、工事後のトラブルが大きな損失につながる可能性があります。数百万円から数千万円規模の再工事費用が発生することもあるため、保証の有無を軽視するのは非常に危険です。
ここでは、保証がない場合に起こり得るトラブルやリスクを防ぐための業者選びについて紹介します。
保証が不十分な場合によくあるトラブル
保証が不十分な場合に発生しやすいトラブルには、以下のようなものがあります。
- 工事後すぐに塗膜の剥がれやひび割れが発生しても、保証対象外とされ追加費用が発生する。
- 防水工事後の雨漏りが「自然災害」として扱われ、保証対応されない。
- 鉄部補修後の錆の再発について、業者が経年劣化と主張し対応しない。
- 点検を受けていないことを理由に保証が無効とされる。
信頼できる大規模修繕業者を見極めるポイント
保証の有無や内容を明示しているか、過去の施工実績に保証対応の事例があるかを確認しましょう。信頼できる業者は保証についても透明性を持って説明し、発注者に安心感を与えます。
さらに、口コミや評判を調べることで、実際に保証が機能しているかを確認できます。見積書段階で保証項目をしっかり記載しているかどうかも重要な判断材料となります。保証制度の整備は業者の誠実さや責任感を示すものでもあり、安心して依頼できるかどうかの分岐点となります。
大規模修繕の保証トラブルを回避するためのポイント
保証をめぐるトラブルは、事前の準備や確認不足から起こるケースが多くあります。適切に対応すれば未然に防ぐことが可能です。
ここでは、よくあるトラブルを回避するための具体的なポイントを詳しく解説します。
契約書・保証書を細かく確認する
保証内容を曖昧に理解したまま契約を進めると、工事後に「対象外だった」という問題に直結します。対象工事、保証期間、免責事項がすべて明文化されているかを契約前に確認することが不可欠です。特に小さな文字で書かれた但し書きや例外条件を見落とさないよう注意しましょう。
また、契約書や保証書は複数部数を保管し、理事会や修繕委員会でも共有しておくことが望ましいです。これにより、担当者が交代しても保証内容の確認が容易になり、認識の食い違いを防げます。
定期点検と記録の徹底
保証を維持するには、業者が指定する定期点検を必ず受け、報告書や写真を保存しておくことが重要です。記録がないと「適切な維持管理が行われていない」と判断される恐れがあるため、点検履歴をファイル化して残す習慣をつけましょう。
さらに、写真だけでなく点検日や内容を一覧化した台帳を作ると便利です。将来的に別の業者に依頼する場合でも、過去の点検履歴を共有できるため、建物の状態を正確に把握してもらいやすくなります。
追加工事・改修の相談を怠らない
居住者が独自にベランダタイルを敷く、設備を設置するといった行為は、保証失効の原因になります。追加工事や改修を行う際は必ず施工業者や管理組合に相談し、記録を残すことで保証対象外とされるリスクを減らせます。
特に専有部分と共用部分が絡む工事では、事前協議が不可欠です。安易なDIY工事や設備の設置は、思わぬトラブルを招くことがあるため、必ず専門家に確認を取ることをおすすめします。
瑕疵保険や第三者調査を活用する
業者の保証だけに依存せず、瑕疵保険や第三者調査機関を利用することでリスクを分散できます。保険があれば業者が倒産した場合でも一定の補償を受けられるため、長期的な安心につながります。
第三者調査を併用することで、施工の質を客観的に評価でき、保証が適切に履行される環境を整えられます。これにより、業者と発注者の信頼関係を補強することにもつながります。
大規模修繕の保証内容を比較する際のチェックポイント
複数の業者から見積もりを取る場合、価格だけでなく保証内容を比較することが非常に重要です。以
下の点を必ず確認し、条件を総合的に判断しましょう。
- 保証期間は十分に確保されているか(塗装で5〜7年、防水で10年以上など)
- 保証対象の工事範囲が明確に示されているか
- 自然災害や経年劣化への対応条件がどうなっているか
- 保証が切れる条件や免責事項が具体的に記載されているか
- 保証とアフターサービスの違いが明確に説明されているか
- 契約解除や業者倒産時の対応について定めがあるか
これらを確認することで、見積金額が多少高くても保証が充実している業者を選ぶ価値があるかどうかを判断できます。長期的に見れば、保証が整備されている業者に依頼する方が結果的にコストを抑えられるケースも少なくありません。
実録!新東亜工業の施工事例|3階建てビルの大規模修繕工事
雨漏りの発生をきっかけにお問い合わせをいただいた、東京都内にある鉄骨造3階建ての日本語学校。
屋上には芝生や池があるという特殊な構造も含めて、外装・防水・鉄部まで建物全体の修繕を実施しました。
今回は、新東亜工業が実際に手がけたこの修繕工事の流れを、やり取りの一部とともにご紹介します。
ご相談内容
お客様はビルの雨漏りでお悩みでした。
お客様:「昭和46年築のビルを日本語学校として使っているのですが、1階と3階で雨漏りしているので修繕をお願いしたいです」
お客様:「屋上に芝生や池があって、防水も少し複雑で…」
担当者:「現地を拝見してから、最適な防水工法をご提案いたします。図面のご用意もお願いできますか?」
お客様:「はい、用意しておきます」
建物の構造や履歴、使用状況について詳しく共有いただいたことで、早急な現地調査が実現。
調査時には図面を確認しながら、屋上の構造や増築部も含めた幅広い劣化箇所の把握ができました。
工事の概要|工事金額と施工期間

大規模修繕 施工前

大規模修繕 施工後
屋上や外壁、床など広範囲にわたる施工を実施しました。
項目 | 内容 |
---|---|
建物種別 | 鉄骨造3階建て |
築年数 | 築50年以上(昭和46年建築・55年/61年に増築あり) |
施工内容 | ・雨漏り修繕・屋上防水(芝生・池のある特殊環境)・外壁塗装・タイル補修・鉄部塗装・シーリング工事・長尺シート貼替(階段含む)・波板撤去(追加対応)・屋根工事・溶接工事 |
工事金額:1,160万円
施工期間:60日間
現地調査で判明した劣化症状
現地調査を行ったことで判明した劣化の症状は、以下のとおりです。
- 1階・3階の天井からの雨漏り
- 芝生の下の防水層の劣化
- 鉄部のサビ・塗膜剥離
- 外壁の浮きタイル、ALC面の劣化
- シャッターや階段の老朽化
お客様:「社長のこだわりで、屋上に芝生や池を設置しているんですよ」
担当者:「これはなかなか見ない造りですね。芝生の下の防水層は、状態を見ながら通気緩衝工法で施工したいと思います」
お客様:「わかりました。池の端で見切って、あとは撤去してもらって大丈夫です」
劣化状況や使用環境に合わせ、防水層は通気緩衝工法+脱気筒設置や密着工法を併用することに。
そのほか、塗装やシーリング工事、階段や屋根の補修など建物全体を対象に提案をまとめました。
施工中のやり取りと配慮
工事中は以下のような対応が行われ、円滑な進行が実現しました。
- 色決めは見本帳を貸し出し、部位別にお客様へ確認依頼
- 自転車置き場・通学導線への影響を最小限に配慮し足場を設置
- 職員室上の波板撤去といった追加要望にも柔軟に対応
- 工事の進捗状況はメールや対面で逐次報告
お客様:「細かいことにも丁寧に対応してくれて、本当にありがたかったです」
担当者:「防水や塗装の仕上がりも丁寧に確認しています。気になるところは遠慮なくおっしゃってくださいね」
引き渡し時のご感想
建物の仕上がりにご満足いただけたことで、別棟のご依頼へとつながる結果となりました。
引き渡しの際は、ドレンの掃除方法や防水層の取り扱いについても説明し、今後の管理に向けたアドバイスも実施しました。
担当者:「本日をもって工事完了となります。完了報告書・保証書・請求書を郵送いたしますね」
お客様:「とてもきれいになって、社長も大変喜んでいました」
お客様:「実は2号館の防水と階段工事もお願いしたくて…またご相談してもよろしいですか?」
担当者:「もちろんです。改めて担当よりご連絡いたします」
今回の修繕工事では、雨漏りという課題を出発点に、建物全体の資産価値を高めるトータル改修が行われました。
特殊な屋上構造・用途に合わせて工事内容を調整、柔軟な現場対応と丁寧な進捗共有により、お客様との信頼関係を築きながら、安全かつ満足度の高い施工を実現できました。
大規模修繕の保証に関するよくある質問
大規模修繕工事における「保証」は、工事後の安心を左右する重要な要素です。しかし、実際には保証内容や条件について誤解が多く、契約後にトラブルに発展することも少なくありません。
ここでは、管理組合やオーナーからよく寄せられる質問を取り上げ、それぞれ詳しく回答します。
Q1. 大規模修繕の保証期間はどのくらいですか?
A.保証期間は工事項目によって異なります。一般的には外壁塗装で5〜7年、防水工事で10〜12年、シーリング工事で5年程度が目安です。近年では無機塗料や高耐久材料を使用した場合に保証期間が10年に延長されるケースも増えています。
ただし、保証期間は立地条件や施工方法によっても変動します。例えば海沿いの地域や日当たりが強い南面では劣化が早まり、保証期間が短く設定される場合があります。契約時に必ず具体的な保証年数を確認し、書面で残すことが重要です。
Q2. 保証対象になる工事と対象外の工事の違いは何ですか?
A.保証対象となる工事は、施工業者が手掛けた部分で、一定期間内に施工不良や早期劣化が発生した場合です。外壁塗装の剥がれや防水層の亀裂、鉄部の錆などが代表例です。
一方で、自然災害(地震・台風など)や居住者の管理不備、改造やリフォームによる不具合は対象外とされます。また、定期点検を受けなかった場合も保証が無効になる可能性があります。保証の適用範囲を明確に知るためには、契約書や保証書に記載されている「免責事項」を必ず確認することが大切です。
Q3. 保証を維持するために必要な条件は何ですか?
A.保証を維持するには、業者が定める条件を守ることが必須です。特に重要なのは定期点検を受けることです。施工後1年、3年、5年などの点検を実施し、その記録を残しておくことで保証が継続されます。また、日常的な維持管理も必要です。
例えば、排水口の清掃を怠ったり、ベランダに重量物を置いたりすることで防水層に負担がかかると、管理不備と判断され保証対象外となることがあります。さらに、改造やリフォームを行う場合には必ず業者や管理組合に相談し、保証が失効しないように注意することが大切です。
Q4. 保証とアフターサービスの違いは何ですか?
A.保証は「施工不良や早期劣化に対して業者が責任を負う仕組み」であり、法的責任や契約に基づくものです。一方、アフターサービスは「業者独自のサービス」であり、定期点検や簡易補修などを無償または低価格で提供することを指します。
保証は工事内容に法的裏付けがあるため、トラブル時に必ず対応してもらえるのに対し、アフターサービスは業者の善意や企業方針に依存する部分もあります。そのため、保証とアフターサービスを混同せず、契約時に両者の内容を正しく理解しておくことが重要です。
Q5. 業者が倒産した場合、保証はどうなりますか?
A.施工業者が倒産すると、その業者が発行した保証は基本的に無効になります。このリスクを避けるためには、国や自治体が提供する「瑕疵保険」に加入している業者を選ぶことが有効です。瑕疵保険に加入していれば、業者が倒産しても保険会社が一定の範囲で補償を行ってくれます。
また、第三者機関による検査や保証制度を併用することで、施工品質や保証の実効性を高めることも可能です。契約前には必ず業者が瑕疵保険に対応しているかを確認し、安心できる体制を整えておくことが大切です。
Q6. 保証を有効に活用するためのコツはありますか?
A.保証を有効に活用するには、まず契約前に保証内容を細かく確認し、書面で明記されているかを確認することが大前提です。次に、定期点検を欠かさず受け、記録を保存しておくことで、トラブル時にスムーズに対応してもらえます。
さらに、日常的な管理を怠らないことも重要です。小さなひび割れや水漏れを早期に発見して報告すれば、大規模な不具合に発展する前に対応できます。また、第三者の調査機関やコンサルタントを活用して工事品質を確認しておくことも、保証を安心して使える環境づくりにつながります。
まとめ
大規模修繕における保証は、工事後の安心を左右する非常に重要な要素です。保証内容を十分に理解せずに契約を進めてしまうと、工事後に思わぬ出費やトラブルが発生するリスクが高まります。
逆に、保証の範囲や条件をしっかり確認し、定期点検や維持管理を徹底すれば、保証は心強い味方となります。さらに、瑕疵保険や第三者機関の活用により、業者依存のリスクを下げることも可能です。
大規模修繕は数十年単位で建物の資産価値を守る大切な工事です。費用や工法だけでなく、保証制度を正しく理解・活用することが、将来のトラブルを防ぎ、安心して暮らせる環境を維持する最大のポイントとなります。保証を軽視せず、長期的な視点で管理組合や所有者が主体的に動くことが、建物の寿命を延ばし、住民全体の安心につながるのです。