マンションの大規模修繕でよくあるトラブルとその対策ガイド
2025/07/24
マンションの大規模修繕は、建物の資産価値を維持し、居住環境を整えるために欠かせない重要なプロジェクトです。
外壁の補修・防水工事・配管の更新など、多岐にわたる作業を行うことで、建物全体の性能や安全性を向上させることができます。
しかし、その一方で多くの関係者が関与するため、さまざまなトラブルが発生しやすいという側面も持ち合わせています。
この記事では、実際に起こりやすいトラブルの種類・背景・未然に防ぐための実践的な対策を詳しく解説します。
管理組合や理事会はもちろん、居住者一人ひとりが正しい知識を持つきっかけとして、ぜひご覧ください。
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目次
マンション大規模修繕工事で起こりやすい主なトラブル
マンションの大規模修繕工事では、多くの人が関与することから、予想外のトラブルが頻発します。
ここでは、現場でよく見られる代表的なトラブル事例を5つの視点から取り上げ、それぞれの背景と対処ポイントについても解説します。
騒音・振動による住民のストレス
大規模修繕工事では、足場の設置・外壁の削り取り・コンクリートの斫り(はつり)作業など、騒音や振動を伴う作業が数多くあります。
特に作業が長期間にわたる場合、精神的なストレスが蓄積し、住民からクレームが出ることも珍しくありません。
高齢者や在宅勤務者・小さなお子さんを育てる家庭では、生活リズムが乱れがちです。
工期の遅延・工程管理の不備
工事が計画どおりに進まない要因には、天候不良・資材の納品遅延・職人の人手不足・予期せぬ追加工事の発生などが挙げられます。
特に複数の工種が同時進行する現場では、1つの工程の遅れが全体に波及することもあり、住民の不満や不安を招く原因になります。
施工ミス・品質トラブル
施工ミスや仕上がりの粗さ、設計図との不一致といった品質に関する問題もよく発生します。
原因には、作業員の技術不足・下請け業者への過度な依存・現場管理者の目が行き届かないといった点が挙げられます。
最悪の場合、再施工が必要になり、コストやスケジュールにも悪影響を与えます。
業者との契約・見積もりトラブル
「見積もりが不明瞭」「追加工事の費用が想定より高額」「契約内容の認識違いによるトラブル」など、契約関連の問題も多く発生します。
こうしたトラブルは、事前のチェック不足や契約内容の曖昧さが原因となることが少なくありません。
管理組合と住民の意見対立
理事会や管理組合が進める計画に対して、住民の一部から「工事の必要性が感じられない」「説明不足で納得できない」といった反対の声が上がることもあります。
こうした意見の食い違いが長引くと、理事会の信頼が低下し、工事自体が停滞する恐れもあります。
マンションの大規模修繕でトラブルが起こる原因とその背景
大規模修繕工事に関わるトラブルは、偶発的なものだけではなく、計画段階での準備不足や情報共有の欠如が根本原因となることがほとんどです。
ここでは、典型的なトラブルの発生背景を4つの視点から掘り下げていきます。
情報共有不足と説明責任の欠如
管理組合や施工業者が工事計画や進行状況を住民に十分に説明しないと「聞いていない」「説明がない」といった不満が表面化します。
説明が不足することで誤解や不信感が生まれ、それが住民間の対立や業者とのトラブルにつながるケースが多く見られます。
施工会社選定の甘さ
施工会社を選ぶ際に価格重視で判断してしまうと、技術力や対応力に不安のある業者を選定してしまう恐れがあります。
結果として、施工ミスや遅延・不適切な対応などが発生しやすくなります。
近隣住民への配慮不足
マンションの工事は、敷地内で完結するとは限りません。
特に足場の設置や資材の搬出入などで道路を使用する場合、周囲の住宅や店舗にも騒音・振動・通行障害といった影響が及びます。
これらを放置すると、近隣住民からの苦情が増え、さらなるトラブルにつながる可能性があります。
理事会内の意思統一が図れていない
理事会の中で方針が統一されていなかったり、理事長の独断が目立ったりする場合には、住民への説明に一貫性がなくなりがちです。
これは、混乱や不信感を招く原因になります。
また、理事会内での意見対立が表面化すると、工事そのものの進行にも悪影響を及ぼしかねません。
マンションの大規模修繕で管理組合が行うべき予防策・準備とは
大規模修繕工事におけるトラブルの多くは、管理組合が主体的に対応することで予防可能です。
特に理事会を中心に計画性をもって進行することで、住民の理解と協力を得やすくなり、工事もスムーズに進行します。
以下では、管理組合が実施すべき具体的な対策を紹介します。
工事説明会の実施と議事録の配布
工事開始前に、必ず全体説明会を実施しましょう。
説明会では、工事のスケジュール・内容・使用する材料・騒音や立ち入り制限などについて詳細に説明します。
説明会には施工業者や設計監理者も同席させると、住民からの質問にその場で回答でき、信頼性が高まります。
また、説明会の内容は議事録として記録し、参加できなかった住民にも配布または掲示板で共有します。
これにより情報の行き違いや「聞いていない」といったクレームを防ぐことができます。
見積書の比較・精査ポイント
施工会社を決める際には、複数の業者から見積書を取り寄せて比較検討することが基本です。
見積書の内容は価格だけでなく、項目の明確さや単価の妥当性、工期や保証内容などもチェックポイントとなります。
また、項目が「一式」と記載されているだけの見積書は、あとからトラブルになる可能性があるため避けるべきです。
建築士や外部コンサルタントに、見積書のチェックを依頼するのも有効な方法です。
管理規約・使用細則の見直し
大規模修繕にあたっては、共用部分の使用制限やバルコニーの立ち入りなど、住民生活に影響を与える事項が多く含まれます。
そのため、あらかじめ管理規約や使用細則を確認し、必要であれば一時的な規約変更を検討することが望ましいです。
たとえば、「ベランダへの立ち入りは事前通知をもって実施」や「工事期間中は布団の外干し禁止」といった細則を一時的に設けることで、トラブルを未然に防げます。
住民アンケートや事前ヒアリングの活用
住民の意向を把握するために、工事前にアンケートやヒアリングを実施することも効果的です。
住民の不安や希望・工事に対する要望を把握しておくことで、計画の調整や説明内容の充実につながります。
また、こうした事前の働きかけによって「自分の声が反映されている」と住民が感じることができれば、トラブルへの不満も大幅に減少します。
マンション大規模修繕で住民が押さえておきたいポイントと協力のコツ
工事の成功には、住民一人ひとりの協力も不可欠です。
生活に直接影響を与える工事だからこそ、住民側も一定の理解と準備が求められます。
ここでは、住民として意識しておきたいポイントを整理します。
工事中の生活ルールを守る
工事期間中は、工事車両の通行や足場の設置・作業員の往来が増えるため、通常の生活とは異なる制約が生じます。
共用部での通行規制や立ち入り禁止区域など、管理組合が示すルールを遵守することが必要です。
また、特定の時間帯における騒音作業などについても、スケジュールを確認し、在宅時間を調整するなどの工夫が求められます。
バルコニー・共用部の使用制限への対応
大規模修繕中は、バルコニーや廊下・階段などの共用部に制限がかかることがあります。
洗濯物や植木鉢の撤去?エアコン室外機の取り外しなど、指示された対応を怠ると、作業の遅れや品質の低下にもつながります。
工事開始前にはスケジュールを確認し、余裕を持って準備を進めることが大切です。
また、高齢者や体の不自由な住民には、家族や理事会がサポートする体制づくりも重要です。
小さなお子様・ペットがいる家庭への注意
騒音や振動が大きくなる工事期間中は、小さなお子様やペットへの影響にも配慮が必要です。
工事エリアへの立ち入り禁止・ベビーカーやペットの移動ルートの確保・安全な通路の設定など、生活動線の見直しも検討しましょう。
また、騒音が激しい時間帯には、外出を計画したり、窓を閉めたりするなどの対策を行うことで、ストレスを軽減できます。
掲示物やデジタル通知の確認習慣
マンション内の掲示板やエレベーター内の掲示物、またはメールといったデジタル通知は、工事の最新情報を得る重要な手段です。
見逃しがトラブルにつながることもあるため、日々の確認を習慣化することが大切です。
最近では、専用アプリを導入する管理組合も増えており、双方向のコミュニケーションが取りやすくなっています。
情報を受け取るだけでなく、質問や意見を投稿できる仕組みも積極的に活用しましょう。
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
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マンション大規模修繕でトラブルを回避するための業者選びとは?
マンション大規模修繕において、施工業者の選定は最も重要な工程の一つです。
業者選びの段階で判断を誤ると、工事中や完成後に多くのトラブルが発生するリスクが格段に高まり、修繕全体の質にも大きな影響を与えてしまいます。
ここでは、信頼できる業者を選ぶためにチェックすべき代表的なポイントを、より詳細に解説していきます。
明細付きの見積書が出せるか
まず最も基本的かつ重要な確認ポイントが、見積書の明細性です。
提出される見積書において、工事項目が「一式」とまとめられている場合、具体的な作業内容やその金額の妥当性を評価することができません。
材料費・労務費・仮設費・管理費など、それぞれの項目が細かく記載されており、数量や単価・計算根拠が明確に示されているかを必ず確認しましょう。
また、万が一不明点や不自然な点が見つかった場合は、遠慮せずに業者へ質問し、書面での回答をもらうことが大切です。
信頼できる業者は、こうした問い合わせにも丁寧に応じてくれます。
見積書は工事内容の可視化と合意形成にかかせない書類なため、比較検討段階から精度の高いものを取得する意識が重要です。
過去の実績と口コミ・評判の確認
施工業者の信頼性を判断する材料として、その会社が過去にどのような修繕工事を行ってきたかは非常に重要な指標です。
同規模・同種のマンションでの大規模修繕経験があるかどうか、工事実績として公開されている写真や完成後の評価・施主の声などを確認しましょう。
管理組合としては、可能であれば過去の施工現場を見学させてもらうと、より具体的なイメージが掴めます。
また、インターネット上での口コミを参考にするのも良いでしょう。
ただし、あくまで一意見として客観的に受け止め、複数の情報を組み合わせて評価することが大切です。
悪い評判があればその理由を確認し、必要に応じて業者側に質問することで、透明性を高めることができます。
工事中の連絡体制と現場管理の体制
工事が始まると、現場の状況は日々変化していきます。
そのなかで情報伝達が滞れば、住民からの不満が高まり、トラブルの原因になりかねません。
そのため、施工業者がどのような連絡体制・管理体制を取っているかを事前に確認しておくが重要です。
具体的には、以下のような項目に注目しましょう。
- 日々の進捗報告の方法(紙媒体/デジタル)
- 緊急時の連絡体制(休日・夜間含む)
- 住民対応の窓口となる担当者の有無
- 現場代理人の常駐有無
- 下請け管理と品質管理のルール
また、施工管理が外注されていないか、自社でしっかりと対応しているかの確認も欠かせません。
工事期間中は、管理組合・理事会との定期打ち合わせ(週1回など)を設けることで、情報共有と信頼性を高められるでしょう。
保証制度やアフターサポートの有無
大規模修繕は、施工が終わればそれで完了というわけではありません。
工事後に万が一の不具合や不備が発生した際に、どこまで対応してもらえるのかを事前に確認することが極めて重要です。
特に防水工事や外壁塗装などの分野では、工事完了後しばらく経ってからトラブルが顕在化することもあります。
- 保証書の発行有無とその内容(年数・対象工事)
- 定期点検スケジュールの有無
- 補修が必要になった際の対応条件(無償/有償)
- アフターサポート窓口の連絡先と対応時間
このような内容が契約書に記載されているか、口頭ではなく書面で確認・保管しておくことが大切です。
マンション大規模修繕に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、マンションの大規模修繕のトラブルについてよくある質問をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
Q1. 大規模修繕の前に何を準備すればよいですか?
A. まずは長期修繕計画の確認と、現時点での修繕積立金の残高や今後の資金計画を把握することが重要です。
そのうえで、専門家(コンサルタントや設計事務所など)への相談・住民への説明会準備、総会での議決・工事内容の明文化など、段階的に進めるべき準備が数多くあります。
Q2. 騒音がひどいときはどう対処すればよいですか?
A. 騒音が生活に支障をきたすほどであれば、管理組合または施工業者に速やかに連絡を取りましょう。
施工時間の調整や一部作業の変更など、可能な範囲での対策を求めることができます。
記録を取りながら、冷静に伝えることが改善につながります。
Q3. 工事の遅延があった場合、補償はあるのでしょうか?
A. 契約書の内容によりますが、あらかじめ工期延長が発生した場合の対応や、天候などやむを得ない事情による遅延の規定を明記しておくと安心です。
遅延によって追加費用が発生するケースもあるため、契約前に明文化しておくことが望ましいです。
Q4. 施工ミスが見つかった場合、どうすればいいですか?
A. 管理組合が業者に速やかに指摘し、対応方針を確認することが第一です。
写真などで証拠を残しておくと、やりとりがスムーズになります。
また必要に応じて、第三者機関(設計事務所・検査会社など)に依頼し、客観的な立場からの是正指示を受けることも有効です。
Q5. 理事会の決定に不満がある場合、どうすべきですか?
A. マンションの運営は、住民全体の合意に基づいて行われるべきです。
不満がある場合は総会の場で発言する・書面で要望を提出する・意見交換会の開催を提案するなど、正規のルートで意思を伝えることが重要です。
Q6. 業者とのトラブルはどこに相談すればよいですか?
A. 地方自治体の建築指導課やマンション管理センター・消費生活センターなどで相談を受け付けています。
また、管理会社が中立的な立場で調整に入ってくれるケースもあるため、まずは管理組合での相談体制を整えておきましょう。
まとめ
マンション大規模修繕工事は、居住者の生活に大きな影響を及ぼす一大プロジェクトであると同時に、将来の資産価値を維持・向上させるための非常に重要な取り組みでもあります。
その成否は、準備段階での対応力と、関係者全体の対話力に大きく左右されます。
トラブルを未然に防ぐためには、計画立案から施工会社選定・工事中の対応・アフターケアまで、一つひとつの段階で丁寧かつ慎重な判断が求められます。
そして、管理組合の主体的な取り組みと、住民の理解と協力体制が整えば、スムーズで質の高い修繕工事を実現することが可能です。
この記事で紹介したようなチェックポイントや対応策をもとに、将来を見据えた持続可能なマンション運営を目指し、トラブルのない修繕を進めていきましょう。