シンダーコンクリートとは?屋上防水で使われる軽量下地材の特徴と注意点を解説
2025/07/24
屋上防水工事や建物の改修で「シンダーコンクリート」という言葉を目にしたことはありませんか?
防水層の下地として使用されることの多いこの素材ですが、適切に理解していないと施工不良や劣化のリスクも伴います。
この記事では、シンダーコンクリートの基本構造、メリット・デメリット、他の防水保護層との違い、施工方法、費用相場までをわかりやすく解説します。施工を検討している方はもちろん、業者選定や予備知識を深めたい方にも役立つ情報が満載ですので最後までご覧ください。
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目次
シンダーコンクリートとは?意味・構造・用途について
まずは、シンダーコンクリートについて、構造・用途についてそれぞれ紹介していきます。
シンダー(軽量骨材)とは何か?
「シンダー」とは、石炭やコークスの燃焼後に残る軽量な骨材のことを指し、火山礫(パーライト)や人工軽量骨材(ALC)なども同様のカテゴリーに分類されます。
これらは気泡を多く含んでおり、非常に軽量であることが特徴です。構造物への荷重を抑えたい屋上や陸屋根などで、効率的に使用されています。
シンダーコンクリートの構造・成分と特性
シンダーコンクリートは、セメント・水・砂に加え、上記のシンダーを骨材として混合して作られるコンクリートです。
一般的な生コンに比べて比重が低く、多孔質な性質を持っているため断熱性・遮音性にも優れます。また、表面はややザラつきがあり、ウレタン防水材などの密着性を高める利点もあります。
シンダーコンクリートはどこに使われる?屋上・バルコニー・屋根などの施工例
- マンションやビルの屋上防水の押さえコンクリート層として
- 戸建て住宅のバルコニー床面の下地として
- 商業施設・工場などの陸屋根における仕上げ基層として
これらの用途では、防水層を保護しつつ断熱性と軽量化を両立させるために、シンダーコンクリートが非常に有効です。
また、施工後のメンテナンスやリフォーム時にも扱いやすく、再防水や上塗り工事のベースとしても選ばれています。
シンダーコンクリートのメリット【軽量・断熱・施工性】
シンダーコンクリートのメリットについて紹介します。
構造躯体への負担が少ない軽量性
通常のコンクリートの比重は約2.3〜2.4ですが、シンダーコンクリートは約1.6〜1.8と大幅に軽量化されています。
これにより、既存のRC構造や鉄骨構造の建物に対しても負荷が少なく、耐震性や耐久性の観点からも有利です。
特にリフォームや改修工事など、構造体の補強が難しいケースでは、安全性と施工性を両立できる重要な選択肢となります。
断熱性・防音性・仕上がりの良さ
シンダーの内部に含まれる無数の気泡によって、空気層が形成されやすく、これが優れた断熱性・防音性につながります。
夏場の直射日光による蓄熱を防ぎ、冬場は室内の熱を逃しにくいため、建物全体の省エネ性も向上します。
また、仕上げ材の食いつきが良く、金コテや木ゴテで整えれば平滑な表面が得られます。これにより、仕上げタイルや塗膜系防水材との相性も非常に良好です。
ウレタン防水との相性が良く施工性に優れる
柔軟性が高く、シンダー表面にもよく密着するウレタン防水材とは特に相性が良く、近年の防水工事では「シンダー+ウレタン」の組み合わせが主流になりつつあります。
加えて、シンダーコンクリートは表面研磨や不陸修正がしやすく、工期の短縮や施工コストの低減にも寄与します。
硬化後も必要に応じて表層を研磨・調整できるため、現場の条件に柔軟に対応できるのが強みです
シンダーコンクリートのデメリットと施工時の注意点
シンダーコンクリートのデメリットと施工時の注意点について解説します。
割れやすさ・振動への弱さ
シンダーコンクリートは多孔質ゆえに強度が下がる傾向にあり、通常のコンクリートと比較すると圧縮・曲げ強度ともにやや劣ります。
衝撃や過度な荷重が加わるとひび割れが生じやすく、施工時や完成後の使用環境には十分な配慮が必要です。
特に、施工中に重機や仮設足場を直接設置する場合、養生期間を適切に確保せずに荷重がかかると局所的な沈下や亀裂が発生しやすくなります。
吸水しやすく劣化リスクがある
吸水率が高いという特徴もあるため、未処理状態で長期間放置すると、雨水や湿気を吸収しやすくなり、内部からの凍害・中性化といった劣化が加速する可能性があります。
これを防ぐためには、硬化後なるべく早く防水層を施工する、または一時的に防水シートや養生フィルムで表面を保護するなどの対策が必要です。
また、含水率が高いまま防水材を塗布すると、膨れや剥離の原因となるため、適切な乾燥期間を設けることも重要です。
防水層との接着トラブルと剥離リスク
防水層との接着においては、以下のような施工不良が発生するリスクがあります:
- 含水率が高すぎる状態で防水材を塗布:水分が蒸発する際に気泡や膨れを引き起こす
- 表面の清掃不足:ホコリやレイタンス(セメント成分の白華)により接着不良
- 不適切なプライマーの使用:下地との相性を考慮しない材料選定
このような問題を防ぐためには、施工前に下地の清掃・乾燥を徹底し、接着剤やプライマーの仕様を守ることが基本です。特に高温多湿の時期や寒冷期など、季節要因による影響も念頭に置くべきです。
他の保護コンクリートとの違い【比較ポイント】
シンダーコンクリートは、数ある防水下地材の中でも軽量かつ断熱性に優れていることから、近年改修や新築の現場での採用が増えています。ここでは、モルタルやタイル仕上げ、その他の保護層との違いを多角的に比較し、用途や建物構造に応じた選択のヒントをご紹介します。
モルタル押さえ・タイル仕上げとの違い
モルタル押さえは、セメントと砂を主成分とした一般的な下地材であり、強度や施工実績の多さからも広く使用されています。ただし、密度が高く重いため、屋上やバルコニーのような重量制限のある箇所では、構造体への負担が大きくなるという課題があります。断熱性に関しても低いため、後から断熱材を追加する必要があることも。
タイル仕上げは美観性に優れ、意匠性を求められる建物には非常に適しています。ただし、目地部分に汚れが溜まりやすく、凍害による剥がれやひび割れが生じることもあるため、定期的なメンテナンスが不可欠です。
シンダーコンクリートはこれらと比較して軽量かつ断熱性能を備え、さらに表面が粗いため、防水材との接着性にも優れています。複数の特性をバランスよく備えているため、施工性や維持管理の面でも優位性があります。
ウレタン防水・FRP防水などとの比較
ウレタン防水やFRP防水は、シンダーコンクリートそのものではなく、その上に施工される防水層です。したがって用途は異なりますが、「下地と防水層の相性」という観点では非常に重要な比較対象です。
ウレタン防水は弾性と追従性に優れており、シンダーのように表面に微細な凹凸がある下地にも密着しやすいため、非常に相性が良いとされています。施工後の仕上がりも均一で、再施工時の重ね塗りにも対応できる利点があります。
一方、FRP防水は高い耐水性と強度を誇りますが、硬化時の収縮や温度変化に弱く、下地との剥離が生じやすい点がデメリットです。シンダーコンクリートとの相性では、プライマー選定や下地調整が成功の鍵を握ります。
シンダーコンクリートの施工手順と工期の目安
適切な施工を行うことで、シンダーコンクリートの持つポテンシャルを最大限に発揮できます。この章では、一般的な施工フローから、季節や気候に応じた注意点までを詳しく解説し、長持ちする防水下地を実現するための基礎知識を提供します。
施工工程の流れ(下地処理〜打設〜金ゴテ押さえ)
- 下地の清掃とプライマー処理:施工対象面からホコリ、油分、レイタンスを除去し、吸水調整材や密着性を高めるプライマーを塗布。
- シンダーコンクリートの練混ぜ:適切な比率で配合し、団子状にならないよう均一に練り上げる。現場での混練時間は5〜10分程度。
- 打設・敷均し作業:目地枠やレベルラインを基準に木鏝やレーキで敷きならし、均等な厚みに調整。
- 金ゴテ押さえ・仕上げ:硬化が始まるタイミングを見計らい、金ゴテで丁寧に表面を押さえて密実に仕上げる。
以上の工程を確実に行うことで、防水層との密着性が高まり、剥離や膨れといったトラブルを防ぐことが可能になります。
乾燥時間と養生期間の注意点
シンダーコンクリートの養生期間は、気温・湿度・風通しなどの外的要因によって変動します。一般的には中1日〜2日で歩行可能になりますが、完全乾燥には4〜5日以上必要な場合もあります。
初日は乾燥を遅らせる目的でビニールシートや湿潤シートでの覆い養生が推奨されており、特に夏場の直射日光や冬場の凍結には注意が必要です。乾燥が不十分なまま防水材を施工すると、密着不良や内部膨れの原因になります。
シンダーコンクリートの施工費用相場とコスト対策
費用面の見通しを立てることで、無駄のない施工計画が可能になります。このセクションでは、㎡あたりの施工単価やコストを左右する要因、さらには補助金の活用術まで、具体的にご紹介します。
1㎡あたりの費用目安と内訳
項目 | 費用目安(㎡あたり) |
---|---|
材料費(シンダー・セメント・骨材) | 1,500円〜2,500円 |
施工費(打設・仕上げ) | 2,000円〜4,000円 |
合計 | 3,500円〜6,500円 |
費用は、使用材料の品質や施工面積、職人の技術料、養生の手間などによって変動します。
100㎡を超える大型現場や、他工事とのパッケージ契約を結ぶ場合、単価はさらに低下することがあります。
他の防水下地との費用比較
下地種類 | 費用相場(㎡) | 特徴 |
---|---|---|
シンダーコンクリート | 約3,500〜6,500円 | 軽量・断熱性・施工性に優れる |
モルタル押さえ | 約4,000〜7,000円 | 高強度で仕上げの自由度が高い一方、重量が大きく構造に負荷がかかりやすい。また、断熱性には乏しく、後施工で断熱層を設ける必要があるケースも多い。 |
セメント系セルフレベリング材 | 約5,000〜8,000円 | 自然流動で平滑な仕上がりになるが、気温や下地に敏感で施工管理がシビア。コスト面も高めで、工期の制約がある現場では不向きなことも。 |
補助金・助成制度の活用方法
多くの自治体では、建物の省エネ化・耐久性向上を目的とした防水改修に対して補助金を用意しています。対象となる工事内容や上限金額は自治体により異なるため、早めの情報収集がカギとなります。
申請時には、施工内容が明記された見積書や平面図、現況写真の提出が求められるため、設計段階から業者と相談しておくのがベストです。
シンダーコンクリートの劣化症状と補修方法
下地として機能するシンダーコンクリートも、年数の経過や施工状況によって劣化が進行することがあります。この章では、劣化の初期兆候と補修方法、そして部分対応か全体更新かの判断基準を明示します。
シンダーコンクリートのよくあるトラブル(ひび割れ・浮き・剥がれ)
- ヘアクラック(細かなひび割れ):表面の乾燥収縮によって発生。防水性能に直ちに影響しないが、早期対応が望ましい。
- 浮き・膨れ:下地の含水過多や防水層との密着不良が主因。見た目に分かりにくくても、踏んだ時の音や弾力感で気付ける。
- 剥離・はがれ:下地の構造的破断や、プライマーの施工不良などが原因で発生。
いずれも早期発見と適切な補修が重要であり、放置すると防水層まで影響が及ぶ可能性があります。
シンダーコンクリートの部分補修と全体張替えの判断基準
- 軽度の劣化:表層の補修材や防水材の重ね塗りで対応可能。施工費も抑えられる。
- 中程度の劣化:劣化範囲を部分撤去し、新たにシンダーコンクリートを打設。既存部分との段差処理や連結補強がポイント。
- 重度の劣化:広範囲にわたる浮き・剥離が見られる場合、全体撤去・再施工が必要。費用はかさむが、安全性と長期耐用性を考慮すれば合理的な判断といえる。
施工前には、打診棒や赤外線サーモグラフィによる非破壊調査を実施し、下地の健全性を把握することが望ましいです。
実録!新東亜工業の施工事例|5階建てビルの外壁塗装・防水工事
「外壁が汚れてきた」「屋上の雨漏りが心配」とお悩みのビルオーナー様に向けて、今回は東京都板橋区の5階建てビルにて実施した外壁塗装および防水工事の実例をご紹介します。初回のお問い合わせから現地調査、見積り提出、ご契約、施工中のやり取り、そして引き渡しまで——。リアルな会話形式で一連の流れを完全公開します。
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ご相談内容
隣接する建物の解体工事を機に、外壁塗装と屋上防水工事を検討されたお客様からのご相談でした。新築工事が始まる前に工事を終えたいという明確なご要望があり、早急な対応が求められる案件でした。
お客様:お隣が解体されまして、新築が始まる前に外壁塗装を済ませたいんですが、見積りお願いできますか?
担当者:もちろんです。現地調査の日程として24日の13時はいかがでしょうか?
お客様:問題ないです!母が立ち会いますので、よろしくお願いします。
工事の概要|工事金額と期間


建物種別 | 5階建てビル |
---|---|
所在地 | 東京都板橋区 |
工事内容 | 外壁塗装・屋上防水工事 |
工法 | 砂骨仕上げ塗装、ウレタン密着工法、シーリング打ち替え 他 |
その他特記事項 | 隣地工事前の短期集中対応 |
工事金額:513万円
工期:40日間
現地調査で判明した劣化症状
現地調査の結果、屋上防水層の破断、外壁のひび割れ、タイルの浮きといった劣化が確認されました。特に雨漏りの懸念がある防水層については、優先的な対応が必要でした。
担当者:屋上の防水層が破れていたのと、外壁のひび割れが結構ありましたねぇ。
お客様:そうなんですねぇ…。やっぱり今のうちにやらないとですね。
施工中のやり取りと配慮
着工後の下地調査で、見積以上の劣化が確認されたため、追加補修をお客様にご相談。ご理解の上、フルスペックでの補修を実施。また、騒音・臭気などへの配慮や迅速な報告体制を徹底しました。
担当者:タイルなどは直さないと落ちてくる可能性があるので、予算はオーバーしますが、やった方がいいかと思います。
お客様:この際なので、追加分もお願いします。
担当者:ありがとうございます。明日から入らせていただきます!
引き渡し時のご感想
防水・塗装ともに完了し、最終検査後の是正も実施。仕上がりの品質にお客様も非常に満足され、保証書なども問題なくお渡しできました。
担当者:工事が完了となりました。本日をもって引き渡しとさせていただきます。
お客様:わかりました。本当に綺麗になって良かったです。ありがとうございました!
本工事では、隣地の新築工事が始まる前というタイトなスケジュールの中、外壁塗装と防水工事を高品質かつ確実に完了しました。現地調査での的確な劣化診断、丁寧な見積説明、細かな仕様打合せ、工事中のこまめな報告と柔軟な対応により、お客様との信頼関係を築くことができました。
シンダーコンクリートに関するよくある質問(FAQ)
シンダーコンクリートについて実際に多く寄せられる質問に対してわかりやすく解説します。
Q1:シンダーコンクリートは何年くらい持ちますか?
A:
シンダーコンクリート自体の耐用年数は、使用状況や施工環境によって異なりますが、適切に施工・保護されていれば20年以上は機能を維持できます。ただし、表面に防水層を設けている場合は10年程度を目安に点検・再施工を行うことが推奨されます。
Q2:シンダーコンクリートはDIYで施工できますか?
A:
DIYでの施工はあまり推奨されません。理由は、骨材の配合比や練り混ぜ、打設・金ゴテ仕上げなど、専門知識と技術が必要な工程が多いためです。特に防水層との相性を確保するためには経験豊富なプロによる施工が重要です。
Q3:雨が降る前に施工してしまった場合の影響は?
A:
施工直後に雨に打たれると、表面が洗い流されたり、含水による膨れや剥がれの原因になります。特に防水材との密着性に影響が出るため、施工直後1~2日は雨を避ける必要があります。天気予報の確認と適切な養生が重要です。
まとめ|シンダーコンクリートの特徴と適切な活用方法とは
シンダーコンクリートは、軽量・断熱・施工性に優れ、屋上防水やバルコニー床の下地材として非常に有用な建材です。ウレタン防水との相性も良く、設計の自由度やメンテナンス性にも貢献します。
一方で、吸水性や強度面での注意が必要であり、正しい施工・乾燥・防水処理を怠ると不具合が生じやすくなります。そのため、材料の理解に加え、経験豊富な業者の選定や適切な施工管理が非常に重要です。
建物の耐久性と快適性を両立させるために、シンダーコンクリートを適切に導入・管理していくことが、これからの建築・改修における鍵となるでしょう。