マンションにおける防水工事の見積もり基礎知識

2025/07/24

マンションの防水工事は、建物の老朽化を防ぎ、資産価値を維持するために重要な工事です。しかし「費用がどれくらいかかるのか」「見積もり書の内容が分からない」といった不安を抱える方も少なくありません。

防水工事は頻繁に行うものではなく、管理組合や理事会の担当者、オーナー様にとっては初めてのケースも多いでしょう。そのため、相場感や工事内容、業者の選び方について知識が不足していると、不要なコストや施工トラブルを招くリスクもあります。

本記事では、マンションにおける防水工事の見積もり基本知識から、費用の内訳や工法別の相場・信頼できる業者の見極め方まで、初めてでも分かりやすいよう丁寧に解説します。

納得のいく見積もりを取得し、無駄なコストやトラブルを避け、安心できる防水工事を実現するために、ぜひ参考にしてください。

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目次

なぜマンション防水工事で見積もりが重要なのか?

防水工事は高額で専門性も高いため、見積もり書の内容次第で工事品質や支払い総額が大きく変わります。
ここでは、見積もりの重要性について、目的・予算管理・品質の観点から詳しく解説します。

防水工事の目的とマンションにおける重要性

マンションにおける防水工事は、建物内部への雨水の侵入を防ぐだけでなく、コンクリートや鉄筋の劣化を防止する役割もあります。防水層が劣化すれば、雨漏りや漏水のリスクが高まり、住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。さらに、劣化が放置されると修繕費用は膨らみ、大規模な補修工事を余儀なくされる可能性もあります。見積もりを正確に取得することで、必要な修繕箇所や工事範囲を明確にし、建物の長寿命化と資産価値の維持に貢献します。

予算計画と適正価格を判断するための「指標」としての役割

防水工事の見積もり書は、費用計画を立てるうえでの重要な資料となります。マンション管理組合では、修繕積立金とのバランスや長期修繕計画との整合性を図る必要があり、見積もりはその判断基準となります。また、複数業者からの見積もりを比較することで、価格の妥当性や工事内容の適正性を見極めることができます。適正な見積もりを取得していれば、予算オーバーや不要な工事の回避が可能になり、住民の合意形成にも役立ちます。透明性のある見積もりは、安心できる施工への第一歩です。

見積もりの違いで品質・保証・アフター対応も変わる

見積もり書には、単なる金額だけでなく、工事の品質や保証内容、使用される材料、施工体制などの情報が含まれています。業者によっては保証期間が短かったり、アフターサービスがなかったりする場合もあります。さらに、防水材のグレードや下地処理の有無、現場監督の配置状況など、工事の精度に直結する要素が見積もりに反映されることもあります。詳細な見積もりを確認することで、後々のトラブル回避や高品質な施工を実現するための判断が可能になります。価格だけで選ぶのではなく、見積もり書の「中身」をよく読むことが非常に重要です。

マンション防水工事の見積もりで確認すべき費用項目

見積もり書には、工事全体の費用構造を把握するための情報が詰まっています。見積もり書を読み解くことは、無駄な出費を防ぎ、適正な施工を実現する鍵になります。
ここでは、見積もりに含まれる主な項目とその役割・費用感を詳しく解説します。

仮設工事・共通仮設・現場管理費

仮設工事は足場や飛散防止ネット、安全対策設備などを設置する作業で、高所作業の多いマンションでは必須です。共通仮設費・現場管理費は、現場監督の人件費や通信費、安全管理など全体管理に関わる費用です。これらは総工費の10~15%を占めるのが一般的で、見積もり書に内訳が明示されていることが信頼性の判断材料となります。

下地処理・下地補修費

防水工事前には、コンクリートのひび割れや浮き・欠損などを補修する作業が不可欠です。下地の状態が悪いままでは防水材の密着性が落ち、工事の耐久性にも影響します。補修方法の有無や面積、使用材料が明記された見積もり書を確認することで、手抜き工事のリスクを防ぐことができます。

防水材・施工費(工法別)

使用する防水材や工法によって、㎡単価は大きく異なります。ウレタン・シート・アスファルト・FRPなどの選択に加え、密着工法か通気緩衝工法かでも価格差が出ます。見積もり書には工法名、使用製品の名称、単価の記載が必要で、これがなければ他社との比較が困難になります。

養生・清掃・産廃処理費

作業前後の養生や廃材処理・清掃などにかかる費用です。共有部が多いマンションでは、養生の質が居住者の満足度に直結します。搬出経路の養生や清掃の頻度・分別廃棄の体制など、丁寧な対応が求められます。

マンション防水工事の工法別費用相場と特徴

防水工法によって費用・耐久性・施工方法が異なります。見積もり金額にも直結するため、それぞれの工法の特徴と費用目安を理解することで、最適な選択がしやすくなります。

ウレタン防水の特徴

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して硬化させ、防水膜を形成する工法です。複雑な形状の屋上やベランダにも対応でき、仕上がりが美しい点が特徴です。費用は5,000~7,000円/㎡程度で、通気緩衝工法などを選ぶとさらに高くなります。耐用年数は10~12年ほどで、下地処理の丁寧さが寿命を左右します。

シート防水(塩ビ・ゴム)

シート防水は、工場で製造された防水シートを現場で貼り付ける工法です。塩ビシートやゴムシートなどの種類があり、施工ムラが出にくく一定の品質が保たれやすいのがメリットです。費用は6,000~8,000円/㎡前後で、耐用年数は15~20年と比較的長めです。ただし、複雑な形状には不向きで、シートのつなぎ目処理が施工の質を大きく左右します。

アスファルト防水

アスファルト防水は、熱で溶かしたアスファルトを塗布またはシート状に加工して貼り重ねる伝統的な防水工法です。耐久性に優れ、20年以上の寿命が期待できるものの、施工時に煙や臭気が発生するため、近隣への配慮が必要です。費用は7,000~9,000円/㎡前後で、施工には専門技術と設備を要するため、実績ある業者への依頼が望ましいです。

FRP防水の特徴

FRP(繊維強化プラスチック)防水は、ガラスマットと樹脂を重ねて硬化させることで、防水層を形成する工法です。耐摩耗性や耐衝撃性に優れ、バルコニーや陸屋根など、歩行頻度の高い場所に向いています。費用は6,000~8,500円/㎡ほどで、硬化が早く短工期での施工が可能です。ただし、下地が動く場所には適しておらず、定期的な点検とメンテナンスが重要です。

実録!新東亜工業の施工事例|3階建てマンションの屋上防水工事

築38年の3階建てRC造マンションにて、屋上の防水工事をご依頼いただいた事例をご紹介します。
「屋上の防水塗装が剥がれてきて不安…」「ベランダや排水溝も気になる箇所がある」
そんな不安を抱えたお客様からメールにてお問い合わせをいただき、現地調査・見積・契約・施工・引き渡しまでを実際のやり取りと共にご紹介します。
途中で工法の変更が発生した点も含め、リアルな工事の流れがわかる内容です。

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ご相談内容

お問い合わせはメールで始まりました。屋上やベランダの防水劣化、排水溝の錆、駐輪場のライン引きについてもご相談がありました。
お客様はメールでのやりとりを希望されており、現地調査と見積が無料であることを案内することで安心感を提供できました。

お客様:屋上やベランダの防水塗装が剥がれているようなので見積をお願いします。
通路の排水溝の金属蓋の交換もお願いしたいです。

担当者:現地調査・御見積は無料で行っておりますのでご安心ください。

お客様:12月12日 14時でお願いできますか? ついでに天窓と屋根の調査もお願いします。

工事の概要|工事金額と期間

屋上防水工事 施工前

屋上防水工事 施工後


建物種別 3階建てマンション(RC造)
所在地 東京都(詳細非公開)
工事内容 屋上・塔屋・庇の防水工事、排水溝蓋交換、駐輪場ライン引き
工法 通気緩衝工法(当初は密着工法予定)
その他特記事項 天窓・廊下清掃・駐輪場区画調整含む

工事金額:100万円

工期:5日間

 

現地調査で判明した劣化症状

屋上の防水層は部分的に切れ・膨れが見られ、塔屋屋根はより劣化が進んでいました。
一方でベランダや廊下の防水はまだ機能していると判断され、不要な工事は避ける形でご提案しました。

担当者:塔屋屋根の防水層は屋上よりも状態が悪く、以前の工事からかなり年数が経っていると思われます。

お客様:そうなんですね。やはり雨漏りしてからじゃ遅いので、防水お願いします。

担当者:防水層が生きている場所については、今回は工事しなくても大丈夫です。

施工中のやり取りと配慮

洗浄後の確認で、旧防水層の膨れが多数見つかり、急遽「通気緩衝工法」への変更を提案。
工法変更による追加費用やメリットを丁寧に説明し、納得を得て施工を進行。
室外機や物干し台の取り扱い、駐輪場ライン引きのスケジュールも調整されました。

担当者:古い防水層の膨れがあり、通気緩衝工法への変更をおすすめします。

お客様:金額によりますが、効果があるならお願いしたいです。

担当者:費用追加で対応可能です。支払いは完工時で結構です。

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引き渡し時のご感想

駐輪場のライン引きを含めた全工程が完了。お客様には仕上がりをご確認いただき、満足のご感想をいただきました。
今後のトラブル時対応についても案内し、信頼関係を築いてお引き渡しとなりました。

担当者:駐輪場のライン引きも終わり、全ての工事が完了しました。

お客様:ありがとうございます。線がとてもきれいで満足です。

担当者:今後なにかあればいつでもご連絡ください。

本工事では、お客様のご要望を丁寧にヒアリングし、メール主体のやり取りにも柔軟に対応しました。
現地調査により劣化の状態を正確に把握し、必要な工事だけをご提案。
施工中には想定外の劣化が発見されましたが、最適な工法へ変更し、お客様の納得を得て対応。
お引き渡し後もフォロー体制を伝えることで、長期的な信頼関係を築くことができました。

防水工事にかかる期間とスケジュールの目安

防水工事の期間は、規模や劣化状況・工法によって異なるため、余裕をもって計画することが大切です。
ここでは、主な工程と期間の目安を紹介します。

防水工事の主な工程と所要期間の目安

工事内容期間目安ポイント
現地調査・診断1~3日程度劣化状況の正確な把握が重要
足場設置・仮設工事2~5日程度安全面確保のため丁寧に実施
下地処理・補修3~7日程度補修範囲や劣化具合により変動
防水材施工5~14日程度工法や天候によって日数変動
養生・清掃・撤去1~3日程度仕上がりの品質に影響
合計約2週間~1ヶ月程度施工規模・条件で前後する

マンション防水工事の見積もり書でチェックすべきポイント

見積もり書を正しく読み解くことは、信頼できる業者選定と適正価格の把握に直結します。以下のポイントを確認することで、後からのトラブルや不明瞭な請求を避けることができます。

数量や単価の記載が明確か

見積もり書に記載されている数量や単価が明確であるかどうかは、価格の透明性を判断する基本です。たとえば「防水工事一式」とだけ記載されている場合、内訳が不明確で追加費用が発生する恐れがあります。項目ごとに㎡数や単価、材料名がしっかり明記されているかを確認しましょう。

「一式」表記が多すぎないか

「一式」と記載された項目が多すぎる場合、詳細が省略されていることが多く、価格の妥当性が判断できません。たとえば仮設工事・下地処理・材料費などすべてが「一式」では、見積もりの比較が困難になります。信頼性の高い業者ほど明細が細かく記載されています。

工法の記載と保証内容の確認

工法名や使用する材料名が見積もりに記載されているか、保証年数や範囲が明記されているかも確認ポイントです。たとえば「ウレタン防水(通気緩衝工法)」など、具体的な記述があるかどうかで業者の説明責任や施工精度に対する姿勢が見て取れます。また、保証の有無や内容が書かれていない場合は、トラブル発生時の責任の所在が不明確になるため要注意です。

使用する防水材の製品名・仕様が明示されているか

見積もり書には、使用する防水材のメーカー名や製品名が明記されているのが理想です。「ウレタン系防水材」だけでは具体性に欠け、グレードの差が把握できません。グレードや仕様によって価格も性能も異なるため、製品名・型番の記載があるかをチェックしましょう。

信頼できるマンション防水工事業者の見極め方

防水工事を成功させるには、信頼できる業者選びが最も重要です。見積もり書の内容だけでなく、対応姿勢や実績、アフターサービスなども含めて総合的に評価することが求められます。
ここでは、信頼できる防水工事業者の見極め方について詳しく解説します。

見積もりの根拠を丁寧に説明してくれるか

良い業者は、見積もり内容の根拠を具体的に説明してくれます。単価の設定理由や施工範囲、材料選定の意図などを丁寧に説明してくれるかどうかで、誠実さやプロ意識が判断できます。逆に、質問に曖昧な対応をする業者は注意が必要です。

マンション施工実績と第三者監理の有無

マンションの防水工事には特有のノウハウが求められます。そのため、過去に同規模のマンションでの実績があるか、第三者機関による監理体制が整っているかを確認しましょう。建築士や施工管理技士の監修があると安心です。

保証書の有無とその期間

工事完了後に保証書を発行するか、またその内容や期間が明確かを必ず確認しましょう。一般的に5年~10年程度の保証が主流ですが、内容に「施工範囲」や「免責条件」が含まれているかどうかも重要なチェックポイントです。

アフター点検・定期メンテナンス対応

防水工事は施工後のメンテナンスによって耐久性が大きく変わります。工事完了後も定期点検やアフターサービスを実施してくれる業者は信頼性が高く、万が一のトラブルにも迅速に対応してくれます。

マンション防水工事の見積もり依頼の流れと準備ポイント

見積もりをスムーズに取得するには、依頼から確認までの流れを理解し、事前に必要な準備を整えることが大切です。管理組合やオーナーが把握すべき基本フローを紹介します。

事前調査・現地確認

まずは現場の状況を正確に把握するため、業者による現地調査が必要です。立地条件や施工面積、既存の劣化状況などを踏まえた上で、正確な見積もりが提示されます。写真や図面を準備しておくと調査がスムーズになります。

理事会・総会での意思決定

マンションでは、管理組合の理事会や総会での合意が必要になるケースがほとんどです。見積もり取得後は、理事会で内容を検討し、総会で承認を得るという流れが一般的です。住民への情報共有も重要です。

相見積もりの取り方と注意点

1社だけの見積もりでは価格や内容の妥当性が判断できません。複数社(できれば3社以上)から相見積もりを取りましょう。その際は、同一条件・同一仕様で依頼することが比較の前提条件となります。記録を残しながら公平に評価することが大切です。

マンション防水工事の見積もりに関するよくある質問(Q&A)

Q1.見積もりの有効期限はどのくらい?

A.通常、見積もり書の有効期限は1か月〜3か月程度が一般的です。建材価格の変動や季節要因によっても異なるため、提出日と有効期限を必ず確認しましょう。

Q2.「無料見積もり」と記載されていても追加費用は発生する?

A.基本的に「無料見積もり」は調査・見積もり書作成までは費用がかからないことを意味しますが、詳細調査や遠方訪問などでは別途料金が発生する場合もあります。事前に確認を取りましょう。

Q3.防水工事に助成金や補助金は使えるの?

A.一部の自治体では、耐震化や省エネ対策とセットで防水工事にも補助が出るケースがあります。自治体の制度や条件を確認し、対応可能な業者に相談するのが賢明です。

まとめ|安心・納得のマンション防水工事には「見積もりの比較」が不可欠

マンションの防水工事を成功させるには、複数の業者から見積もりを取得し、単に価格だけでなく記載内容の明確さや使用する材料の品質・保証制度・アフターサポート体制など、多角的に比較することが重要です。こうした総合的な視点で比較することで、納得のいく判断ができるようになります。

また、見積もりを単なる価格比較の材料としてではなく、業者の信頼性を判断するための資料として活用しましょう。見積もり段階から工事完了までの一連の流れを理解し、適切なタイミングで準備や意思決定を進めることが、住民全体の満足度につながる工事の成功につながります。

さらに、業者の対応力や誠実さにも注目が必要です。小さな疑問にも丁寧に答えてくれるか、施工後のフォロー体制が整っているかどうかは、良いパートナーを選ぶうえで欠かせないポイントです。この記事で得た知識を活かし、安心して任せられる高品質な防水工事を実現してください。