
マンションの外壁タイルは小規模修繕で対応できる?劣化のサインや工法の種類を押さえよう
2025/10/02
マンションの外壁タイルは、美観を保つだけでなく、建物の安全性や耐久性に直結する重要な要素です。
しかし経年劣化によってタイルが浮いたり剥がれたりすると、落下事故や雨漏りにつながる危険があります。こうしたリスクを回避するためには、大規模修繕を待たずに「小規模修繕」で外壁タイルを補修することが欠かせません。
本記事では、マンションの小規模修繕における外壁タイルについて、劣化症状、補修工法、費用相場、管理組合での対応まで詳しく解説し、マンションの資産価値維持に役立つ情報を提供します。
目次
マンションの小規模修繕工事とは
マンションにおける小規模修繕とは、大規模修繕を行うまでの間に発生する部分的な不具合や劣化に対応する工事のことです。特に外壁タイルの補修は、見た目の美しさだけでなく、落下事故を防ぎ居住者の安全を守るために欠かせないものとなります。
ここでは、小規模修繕の定義や目的、そして大規模修繕との違いについて解説します。
小規模修繕の定義と目的
マンションの小規模修繕は、建物の一部に限定した補修工事を指します。例えば外壁タイルの浮きや欠け、ひび割れなどは、大規模修繕を待たずに部分的に補修する必要があります。
その目的は、建物全体の寿命を延ばすことや、居住者の安心・安全を確保することです。特に外壁タイルは放置すると大規模な剥落につながるため、早めの小規模修繕で対応することが重要です。
大規模修繕との違い
大規模修繕は12〜15年ごとに実施され、足場を組んで建物全体を改修する大掛かりな工事です。一方、小規模修繕は必要に応じて随時行われる部分補修で、費用や工期を抑えながら建物の劣化を防ぐことができます。
外壁タイルに関しては、浮きや欠けといった軽微な劣化を小規模修繕で対応することで、大規模修繕時の負担を軽減できます。
小規模修繕と大規模修繕との比較表
項目 | 小規模修繕 | 大規模修繕 |
---|---|---|
実施時期 | 必要に応じて随時 | おおむね12〜15年周期 |
対応範囲 | 外壁タイルなど部分的補修 | 建物全体を対象にした全面改修 |
費用規模 | 数十万円〜数百万円程度 | 数千万円規模になることも多い |
工期 | 数日〜数週間 | 数か月に及ぶ場合もある |
メリット | コストを抑えられ、早期対応で事故防止 | 建物全体の長寿命化、計画的な資産価値維持 |
デメリット | 範囲が限定的で再工事の可能性あり | 費用と工期の負担が大きい |
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
お問い合わせや工事のお見積もり無料!まずはメール・お電話からご相談ください!
マンションの外壁タイルに見られる劣化症状|小規模修繕が必要なサインを見逃さない
外壁タイルは見た目の美観を維持するだけでなく、雨水や紫外線から建物を守る役割も果たしています。しかしマンションでは築年数が経つにつれ、タイルの浮きやひび割れ、目地の劣化などが進行しやすくなります。
ここでは、マンションでよく見られる外壁タイルの劣化症状について紹介します。
タイルの浮き・剥離
外壁タイルの浮きや剥離は、接着剤やモルタルが長年の風雨や温度変化によって劣化することで発生します。初期の段階では目に見えにくいものの、時間が経つにつれて音の違いや微細な隙間から異常を察知できるようになります。
この状態を放置するとタイルが落下し、居住者や通行人に危険を及ぼす可能性が高まります。特に人通りの多いマンションのエントランスや低層部分では重大な事故につながる恐れがあるため、早期の対処が不可欠です。
小規模修繕ではピンニング工法や樹脂注入工法を用いて、部分的に補修するのが一般的で、これにより大規模な工事を回避しつつ安全性を確保できます。さらに補修後は定期的な点検を行うことで、同じ症状の再発防止にもつながります。
ひび割れ・欠け
地震や経年劣化によってタイルがひび割れたり欠けたりするケースも多く見られます。損傷したタイルは美観を損なうだけでなく、ひびから雨水が浸入して躯体の鉄筋を腐食させるリスクもあります。さらに鉄筋の腐食は内部からコンクリートを押し出し、剥離や爆裂といった二次被害を引き起こすこともあり、放置するほど修繕コストは増加していきます。
小規模修繕では、損傷したタイルを部分的に張り替えることで、美観と防水性能を取り戻すことが可能です。張り替えの際には周囲のタイルとの色調や質感を合わせることが重要で、施工業者の技術力によって仕上がりの自然さが大きく左右されます。加えて、補修範囲が広い場合には模様や目地の通りを考慮した施工が求められ、適切な工法選択や経験豊富な職人の関与が欠かせません。
目地の劣化
タイルとタイルの隙間を埋めるシーリング材が劣化すると、防水機能が低下し、雨水が内部に浸入する恐れがあります。初期症状としては目地のひび割れや硬化が見られ、これを放置すると内部まで劣化が進行し、最終的にはタイル全体の剥落や内部鉄筋の腐食といった深刻な被害につながることもあります。
小規模修繕ではシーリングの打ち替えを行い、防水性能を回復させるのが一般的で、適切な材料と施工技術を選ぶことで耐久性が向上します。さらに施工後には定期的な点検やメンテナンスを行うことで、再劣化の兆候を早期に発見でき、長期的な修繕コストの抑制にも役立ちます。
白華現象
白華現象とは、タイルの表面に白い粉のような物質が浮き出る現象です。これは内部に浸入した水分が溶け出すことで発生し、美観を大きく損ないます。特に雨水が多く当たる外壁や北側の日当たりが悪い部分に現れやすく、放置すると壁面全体に広がってしまうこともあります。軽度であれば高圧洗浄や専用洗剤による清掃だけで改善しますが、繰り返し発生する場合は下地や防水層に問題がある可能性が高いです。
小規模修繕では洗浄や補修を行うことで見た目を改善できるだけでなく、タイルの健全性を確かめる契機にもなります。さらに必要に応じて防水工事と組み合わせることで根本的な再発防止につながり、建物全体の耐久性向上や資産価値の維持にも貢献します。
マンションの小規模修繕として用いられる外壁タイルの補修方法
外壁タイルの劣化が軽度の段階であれば、大規模修繕を待たずに小規模修繕で対処することが可能です。小規模修繕では部分的な補修や補強を行うことで、コストを抑えつつ建物の安全性と美観を維持できます。
ここでは、小規模修繕で実際に採用される外壁タイルの補修方法について解説します。
部分張り替え工法
タイルの欠けやひび割れといった損傷がある場合、その部分のみを張り替える工法です。周囲のタイルとの色や質感を合わせる必要があり、職人の技術力が仕上がりを左右します。小規模修繕で最も一般的に行われる方法であり、短期間で施工できるのが特徴です。
さらに、施工時には下地の状態を確認し補修するため、単なる張り替え以上に耐久性を高める効果も期待できます。部分補修であっても正確な施工を行うことで、大規模修繕までの期間を延ばすことにつながります。
樹脂注入工法
浮いたタイルの隙間に樹脂を注入し、再び接着させる工法です。比較的軽度の浮きであれば効果的に補修でき、落下事故を防止します。
大掛かりな足場を組む必要がなく、コストを抑えられる点もメリットです。注入樹脂には種類があり、柔軟性の高いものを使用することで地震や温度変化に伴う動きにも追従でき、長期的な安全性を確保できます。小規模修繕として実施する場合、施工範囲を限定できるため居住者への負担も少なく済みます。
ピンニング工法
広範囲でタイルの浮きが見られる場合に用いられる工法で、アンカーピンを打ち込み内部から固定します。部分張り替えや樹脂注入では対応しきれないケースに適しており、再発防止効果も高いのが特徴です。
また、ピンニングによって構造体とタイルの一体性を強めることができ、外壁全体の耐久性向上に寄与します。工期はやや長くなりますが、事故リスクを根本から抑える効果が期待できます。
シーリング補修
タイルとタイルの間に充填されているシーリング材が劣化した場合に行う工法です。打ち替えによって防水性能を回復させ、雨水の浸入を防ぎます。シーリング補修は外壁タイルの劣化進行を抑える上で欠かせない工程です。
近年では高耐候性シーリング材の採用が進んでおり、適切に施工すれば10年以上の耐久性を持たせることも可能です。また、シーリング工事は外壁全体の印象を整える効果もあり、見た目の美観を回復する付加価値も期待できます。
外壁タイルの小規模修繕における費用相場
小規模修繕にかかる費用は、工法や劣化の範囲、施工条件によって大きく異なります。
ここでは代表的な工法ごとの費用相場を表にまとめ、目安として紹介します。実際の見積もりを依頼する際の参考にしてください。
外壁タイル小規模修繕の費用相場|工法別
工法 | 費用相場 | 適用範囲 | 耐用年数 |
---|---|---|---|
タイル部分補修 | 5,000〜8,000円/㎡ | 欠け・ひび割れ | 約10年 |
樹脂注入工法 | 3,000〜6,000円/㎡ | 浮き補修 | 約8年 |
ピンニング工法 | 6,000〜10,000円/㎡ | 広範囲の浮き | 約12年 |
シーリング補修 | 800〜1,500円/m | 目地補修 | 約7〜10年 |
費用に影響する要因
費用は劣化の範囲だけでなく、施工面積や足場の有無、使用する材料の種類によって変動します。また高所作業や特殊なデザインタイルの場合は追加費用がかかることもあります。さらに、施工する季節や天候条件も費用や工期に影響を与えることがあり、雨の多い時期は工事が長引き人件費が増えることもあります。
材料選びでは耐久性の高い製品を使うことで初期費用は上がりますが、長期的には再修繕の頻度を減らせるため結果的にコスト削減につながる場合があります。複数業者に見積もりを依頼し、費用と施工内容を比較検討することが重要です。地域ごとの施工実績や評判を確認することも費用を適正化する判断材料になります。
見積もりを確認する際のポイント
見積もりでは「工事項目ごとの単価」「使用材料」「保証内容」の3点を特に確認しましょう。外壁タイルの小規模修繕は一見同じに見えても、施工精度や材料の品質によって耐久性に差が出ます。
加えて、保証期間がどの程度設定されているか、アフターサービスが充実しているかも重要な比較ポイントです。信頼できる業者を選ぶことで、長期的なコスト削減につながります。
マンション小規模修繕での外壁タイルに関するよくある質問(FAQ)
外壁タイルの小規模修繕を検討する際、管理組合や居住者からはさまざまな疑問が寄せられます。
ここでは、特によくある質問を取り上げ、わかりやすく回答します。
Q1.タイルが1〜2枚剥がれただけでも修繕は必要?
A.はい。わずかな剥がれでも落下事故のリスクがあるため、小規模修繕で早めに対応することが望ましいです。タイル1枚の剥落がきっかけで周囲に連鎖的な劣化が広がることもあり、軽視はできません。
さらに、見た目は軽度でも内部の下地や防水層に影響が出ている場合があり、想定以上の範囲で修繕が必要となるケースもあります。そのため、定期的な点検と早期の対応が重要です。
Q2.外壁タイルの浮きはどうやって見つける?
A.専門業者が行う打診調査や赤外線調査で発見できます。素人では判断が難しいため、定期点検を依頼するのが安全です。
調査結果を記録しておくことで、次回以降の点検にも役立ちます。加えて、浮きの程度を早期に把握することで、補修工法の選択や工事計画の立案が効率的に行えます。
Q3.小規模修繕の費用は積立金から出せる?
A.原則として修繕積立金から支出します。不足時は臨時徴収が必要になることもあり、場合によっては保険の適用も検討可能です。長期修繕計画と合わせて資金計画を見直すことが重要です。
さらに、積立金の運用状況を定期的に確認することで突発的な出費にも備えやすくなり、計画的な資金確保が可能となります。
Q4.大規模修繕と同時にやるべき?
A.症状が軽度であれば小規模修繕で十分ですが、劣化が広範囲に及んでいる場合は大規模修繕に合わせて行う方が効率的です。診断結果に応じて使い分けるのが理想です。
小規模修繕と大規模修繕を適切に組み合わせることで、コストと効果のバランスを最大限に高めることができます。
Q5.足場なしでできる工事はある?
A.高所作業車を利用できる場合や低層階の工事では足場を組まずに施工可能な場合もあります。ただし安全性を確保するため、状況に応じた判断が必要です。
場合によっては安全確保のために簡易足場を設けることもあり、工事の規模や環境に合わせた柔軟な判断が求められます。
Q6.外壁タイル修繕に補助金はある?
A.自治体によっては省エネ改修や耐震改修と組み合わせることで補助金を利用できる場合があります。最新の制度を確認し、活用することで費用負担を軽減できます。
さらに、補助金を上手に活用することで修繕費用だけでなく、建物の性能向上や居住環境改善にもつながり、長期的な価値を高める効果が期待できます。
マンションの小規模修繕では外壁タイルの確認も忘れずに|まとめ
マンションの外壁タイル修繕は、軽微な症状であれば小規模修繕で十分に対応可能です。早めの補修によって事故を防止し、建物の資産価値を維持できます。さらに、早期の対応は劣化の進行を食い止め、将来的に大規模修繕へ発展するリスクを軽減する効果もあります。
工法や費用相場を理解するとともに、管理組合での合意形成と居住者への配慮を徹底することで、安心して工事を進めることができます。また、修繕後の定期点検やアフターメンテナンスを組み込むことで長期的な安心につながり、マンション全体のブランド価値や入居者満足度を高める結果にも結びつきます。