自治会長って何をするの?仕事内容や報酬・任期・断る方法などを解説

2025/10/31

「自治会長をお願いできませんか?」突然そう言われて、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。

自治会長という役職は、地域によっては輪番制で回ってきたり、推薦されたりと、自分の意志とは関係なく任されることも少なくありません。

実際に自治会長になると、「具体的に何をすればいいの?」「報酬はもらえるの?」「どうしても引き受けられない場合はどうすればいい?」といった疑問や不安が次々と浮かんでくるものです。

この記事では、自治会長の役割や具体的な仕事内容、報酬の相場、任期、そして断る方法まで、これから自治会長になる方、すでになってしまった方に役立つ情報を分かりやすくまとめました。

実践的なアドバイスもお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

自治会長って何をするの?

自治会長とは、地域住民が安心して暮らせるようにサポートする、自治会のリーダー的存在です。

ここでは、自治会長の基本的な役割と、よく混同される町内会長との違いについて解説します。

自治会長の基本的な役割

地域のリーダーとして、住民が安心・安全に生活できるように活動することが最も重要な役割となります。

具体的には、住民とのコミュニケーションを大切にしながら、地域の意見や要望を取りまとめ、必要に応じて市区町村などの行政機関に伝える役割を担います。

また、自治会で行われる事業の最高責任者として、防犯パトロールや防災訓練、地域清掃などの活動を統括します。

自治会長には特別な資格は必要ありませんが、役員や部長・委員、組長・班長といったメンバーをまとめる調整力が求められます。

リーダーシップがある人物像を思い描くかもしれませんが、実際には周囲と協力しながら活動を進めることが何より大切です。

町内会長との違いは?

「自治会長」と「町内会長」は、基本的には同じもので呼び名が違うだけです。

どちらも地域住民による自治組織の代表者を指します。

地域によっては、町内単位で組織されている場合は「町内会」、マンションなどの集合住宅では「自治会」と呼ばれることがあります。

総務省の調査によると、日本全国で「自治会」が41.1%、「町内会」が22.8%となっており、自治会という呼称の方がやや多く使われています。

そのほか、地域によっては「区」「部落会」「町会」など、さまざまな呼び方がありますが、いずれも地域コミュニティを運営する組織であり、その代表者の役割に大きな違いはありません。

自治会長の具体的な仕事内容

自治会長の仕事は多岐にわたります。

ここでは、実際に自治会長が担当する主な業務について、具体的に解説していきます。

定例会議の開催と運営

自治会長は、毎月または定期的に定例会議を開催し、地域の課題やイベントについて話し合いを進めます。

会議では、自治会長が議長として司会・進行を務め、出席してもらう役員の招集も行います。

年度初めには事業計画や予算案の審議、年度末には決算報告などを行う総会も開催します。会議の内容によっては、役員や部長・委員だけでなく、組長・班長も参加することがあります。

議事録を作成して記録に残しておくと、後から確認しやすく、次期会長への引き継ぎもスムーズになります。

地域行事の企画・運営

夏祭りや餅つき大会、防災訓練、清掃活動など、地域で行われる行事の企画・運営も自治会長の重要な仕事です。

伝統行事や地元の神社で行われる例祭の運営に協力することもあります。

行事の開会時には、自治会長が挨拶を行う場面も多く、事前に挨拶内容を準備しておく必要があります。

地域企業や個人に協賛金を募ることもあり、住民同士のコミュニケーションを促進する貴重な機会となります。

地区連合会への参加

自治会長は、周辺地域の自治会長が集まる地区連合会(自治連合会、町内会連合会など)に参加します。

地区連合会は通常、毎月開催され、各地域の活動報告や課題の共有、合同イベントの企画などを行います。

市区町村の担当者、消防署、警察署、学校関係者なども参加することがあり、行政との連携を強化する場としても機能します。

「信号機を設置してほしい」「通学路に危険な箇所がある」といった要望を直接伝えることができ、地域の声を行政に届ける重要なパイプ役となります。

回覧板・掲示板の管理

地区連合会で受け取った資料や自治会からのお知らせを、回覧板を使って住民に配布するのも自治会長の仕事です。行政が作成したポスターがある場合は、掲示板に掲示します。

最近では、若い世代が多い地域を中心に、紙の資料ではなくLINEやブログなどを使って情報を伝える自治会も増えています。

ただし、スマートフォンの操作に不慣れな高齢者向けには、紙の資料も併用する必要があり、両方の手段を使い分けることが求められます。

住民の声を行政に届ける

自治会長は、地域の代表として住民からの要望を行政に伝え、改善をお願いする役割も担います。

公園の整備、ゴミ捨て場の改善、街灯の増設、信号機や横断歩道の設置など、さまざまな要望があります。

住民が個人で行政に要望を伝えることもできますが、自治会長を通じて伝えると地域全体の要望として扱われるため、要望が受け入れられやすくなります。

地区連合会で行政の担当者と顔見知りになることで、影響力も大きくなっていきます。

防災対策と備え

大規模災害を想定して、自治会で防災訓練を開催したり、防災用品の備蓄や避難場所の確認を行います。

災害時には、自治会長がリーダーとなって地域をまとめる必要があるため、日頃からの備えが重要です。

自治会独自の防災訓練を実施するところもあれば、地区連合会が主催する訓練に参加する形をとるところもあります。

防災マップの作成や高齢者世帯の把握など、地域の実情に応じた対策を進めることが求められます。

新規会員の募集

新しく引っ越してきた住民に自治会について説明し、できるだけ入会してもらえるように働きかけます。

自治会への加入は任意ですが、地域のつながりを維持するためには新規会員の獲得が欠かせません。

組長や班長が新規住民への説明を担当する場合もありますが、最終的には自治会長に入会の報告が届く仕組みになっています。

これまで自治会に参加していない人への声がけは難しい面もありますが、タイミングを見て入会を呼びかけることも大切な仕事です。

自治会長の報酬はどのくらい?

自治会長の仕事は多岐にわたり、時間も労力もかかりますが、報酬はどのくらいもらえるのでしょうか。

ここでは、報酬の有無や相場、税金の扱いについて解説します。

報酬の有無は自治会によって異なる

市区町村のアンケート調査によると、報酬がある自治会とない自治会の割合は地域によってさまざまです。

周南市(山口県)では報酬ありが61.2%、龍ケ崎市(茨城県)では77.2%と、報酬を支払っている自治会が多い地域もあります。

しかし一方で、尾張旭市(愛知県)では報酬なしが62.0%と、無報酬で活動している自治会が多い地域もあります。

昔からの慣例や自治会の財政状況によって、報酬の有無が決まっているようです。

自治会長の報酬相場

報酬がある場合、自治会長の年間報酬は3万円前後が一般的です。

ただし、地域による差は大きく、年間1万円未満のところもあれば、100万円を超える自治会も存在します。

各種アンケート調査を見ると、「1万円以上5万円未満」「5万円以上10万円未満」がそれぞれ約30%を占め、「10万円以上」が20%程度となっています。

副会長や会計などの役員の報酬は、年間1万円前後が相場です。

報酬は世帯数に応じて変動するケースもあり、「世帯数×500円」のような計算方法を採用している自治会もあります。

報酬に対する税金の扱い

自治会長の報酬は、基本的に「雑所得」として確定申告が必要です。

ただし、給与所得がある人の場合、雑所得などのその他の収入が20万円以下であれば確定申告は不要となります。

移動に使った交通費などの費用弁償(実費弁償)は、確定申告の対象にはなりません。

なお、税理士によっては自治会長の報酬を給与所得と考える場合もあり、その場合は源泉徴収の対象となります。

報酬の扱いについて不安な場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。

自治会長になってしまった方へのアドバイス

突然自治会長になってしまい、不安を感じている方も多いでしょう。

ここでは、自治会長を務める上で役立つ実践的なアドバイスをお伝えします。

完璧を目指さず、引き継ぎ資料をよく読む

自治会長に就任したばかりの頃は、「すべてを完璧にやらなければ」と気負ってしまいがちです。

しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。前任者から受け取った引き継ぎ資料や過去の議事録をじっくり読み込むことから始めましょう。

年間のスケジュール、定例業務の流れ、過去のトラブル事例など、資料には貴重な情報が詰まっています。

分からないことがあれば、前任者に質問したり、副会長や他の役員に相談したりすることで、徐々に業務を理解していくことができます。

完璧を目指すよりも、着実に一歩ずつ進むことを心がけましょう。

すべてを一人で抱え込まない

自治会長という立場になると、「会長なのだから全部自分でやらなければ」と思い込んでしまう方がいますが、それは大きな間違いです。

自治会の運営は、副会長や会計、組長・班長など、多くの人の協力があってこそ成り立ちます。

困ったことがあれば、遠慮せずに周囲に相談しましょう。「助けてください」と声をかけることで、かえって周囲との距離が縮まり、協力体制が生まれます。

役割を分担し、得意な人に任せることで、自治会全体の動きもスムーズになります。一人で背負うのではなく、チームで乗り越えるという意識が大切です。

行事や会議は”記録”として残す

定例会議や地域行事を開催した際は、必ず記録を残すようにしましょう。

日付、場所、参加者の氏名、話し合った内容、決定事項、次の課題などをまとめた議事録を作成することで、後から確認しやすくなります。

記録を残しておくと、同じような問題が起きたときに過去の対応を参考にできますし、次期会長への引き継ぎもスムーズになります。

デジタルツールを使って記録を保存しておけば、検索も簡単にでき、情報の共有も容易になります。

記録を残すことは、自分自身のためだけでなく、地域全体の財産となります。

トラブル対応では”感情よりルール”を優先する

自治会長をしていると、住民からの苦情や要望、役員同士の意見の対立など、さまざまなトラブルに直面することがあります。

そのようなときは、感情的にならず、自治会の規約やルールに基づいて冷静に対応することが重要です。

感情に流されて対応すると、公平性を欠いたり、後から問題が大きくなったりする恐れがあります。

ルールが明確でない場合は、役員全員で話し合って方針を決め、その方針を住民に説明することで、納得感のある解決につながります。

感情よりもルールを優先することが、信頼される自治会長への第一歩です。

デジタルツールを活用する

紙の回覧板や手書きの出欠表は、時間と手間がかかります。

LINEグループやGoogleフォームなどのデジタルツールを活用することで、情報伝達や出欠確認がスムーズになり、業務の効率化が図れます。

高齢者にはデジタルツールが難しいという懸念もありますが、紙と併用しながら徐々に浸透させることで、若い世帯や共働き世帯から「助かる」という声が上がります。

クラウドで資料を保存・共有すれば、次期会長への引き継ぎも簡単になります。すべてを一気にデジタル化する必要はなく、できる範囲から始めることがポイントです。

自治会長の断り方

どうしても自治会長を引き受けることができない事情がある場合、どのように断ればよいのでしょうか。ここでは、円満に断るための方法を紹介します。

やむを得ない事情を正直に伝える

仕事や家庭の事情で自治会長を務めることが難しい場合は、その理由を正直に伝えることが大切です。

単身赴任中、海外出張の予定がある、親の介護をしている、小さな子どもがいるなど、具体的な事情を説明することで、理解を得やすくなります。

ただし、「嫌だから」「面倒だから」という理由だけで断ると、地域の方との関係が悪化する可能性があります。

やむを得ない事情があることを丁寧に説明し、「今は難しいが、状況が変わったら協力したい」という前向きな姿勢を示すことで、円満に断ることができます。

自治会を退会する

自治会への加入は任意であるため、どうしても自治会長を引き受けられない場合は、自治会そのものを退会するという選択肢もあります。

ただし、退会すると地域の情報が入りにくくなったり、ゴミ捨て場の利用に制限が生じたりするなど、デメリットもあります。

退会を検討する前に、まずは自治会の役員や他の住民と話し合い、別の解決策がないか探ることをおすすめします。退会は最後の手段と考え、慎重に判断しましょう。

代案や代わりの方を用意する

自分が自治会長を務めることが難しい場合、他の役員や近所の方にお願いして、代わりに自治会長を引き受けてもらうことで、自分の順番を後回しにしてもらえる可能性があります。

代わりの方を自分で探して提案することで、自治会側の負担も減ります。

一時金(共益費や協力金)を支払う

一時金(共益費や協力金)を支払うことで、自治会の役員の仕事を免除してもらえる制度がある自治会もあります。

自治会の規約を確認し、どのような選択肢があるのかを把握した上で、最適な方法を選びましょう。

自治会長に関するよくある質問(FAQ)

自治会長について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

Q.自治会長は何歳くらいの人がなるの?

自治会長のほとんどが60代から70代の方で、高齢化が進んでいます。

各種アンケート調査を見ても、自治会長の年齢構成は60代以上が大半を占めており、若い世代の参加が課題となっています。

働き盛りの40代や50代は仕事で忙しく、自治会活動に参加する時間が取りにくいという事情があります。

一方で、定年退職後の60代以降は時間に余裕があるため、自治会長を引き受けるケースが多くなっています。今後は、若い世代が参加しやすい仕組みづくりが求められています。

Q.自治会長の任期はどのくらい?

自治会長の任期は、1年から2年が一般的です。

輪番制やくじ引きで選ばれる自治会では、1年で交代するケースが多く、推薦や立候補で選ばれる場合は2年以上務めることもあります。

任期が短いと一人あたりの負担は軽くなりますが、経験を活かせないまま交代してしまうというデメリットがあります。

逆に、任期が長いと経験が蓄積されて運営がスムーズになる一方、負担が大きくなりすぎるという問題もあります。地域の実情に応じて、適切な任期が設定されています。

Q.自治会長を断ることはできる?

自治会長を断ることは可能ですが、正当な理由が必要です。

仕事や家庭の事情、健康上の理由など、やむを得ない事情がある場合は、その旨を正直に伝えることで理解を得られます。

また、一時金を支払う制度や順番を後回しにしてもらう方法など、自治会によってはさまざまな選択肢が用意されている場合もあるため、まずは自治会の規約を確認し、役員に相談してみることをおすすめします。

Q.女性でも自治会長になれる?

女性でも自治会長になることはできますが、実際に女性が自治会長を務める割合は非常に低いのが現状です。

内閣府のデータによれば、2019年時点で自治会長に占める女性の割合はわずか5.9%にとどまっています。

近年は女性の社会進出が進み、自治会運営においても女性の視点が重視されるようになってきました。

子育て世代や高齢者の視点を活かした活動ができるという意味でも、今後は女性の自治会長が増えていくことが期待されています。

まとめ

この記事では、自治会長の役割から具体的な仕事内容、報酬、そして断り方まで、幅広く解説してきました。

最後に、重要なポイントをまとめておきます。

  • 自治会長は地域住民の安心・安全な生活を守る代表者
  • 具体的な仕事は定例会議の運営、地域行事の企画、行政との連携など多岐にわたる
  • 報酬は地域差が大きいが年間3万円前後が一般的で、基本的にはボランティア
  • 完璧を目指さず、周囲を頼りながらチームで取り組むことが大切
  • やむを得ない事情がある場合は、正直に伝えることで円満に断ることも可能
  • 記録を残し、デジタルツールを活用することで業務を効率化できる
  • 任期は1~2年が一般的で、60代以上の方が中心となっている

すべてを一人で抱え込む必要はありません。副会長や役員、そして住民の皆さんと協力しながら、あなたらしいやり方で地域のために活動していただければと思います。

地域コミュニティは、そこに暮らす一人ひとりの小さな協力の積み重ねで成り立っています。

自治会長という役割を通じて、地域のつながりをより強いものにしていっていただけることを願っています。

不安や疑問があれば、遠慮せずに周囲に相談し、共に支え合いながら前に進んでいきましょう。

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