新耐震基準の適応はいつから?改正の詳細や旧耐震基準との違いから確認方法まで解説

2025/10/10

地震大国である日本では、住宅購入や建築を検討する際に「この建物は地震に耐えられるのか」という不安を抱く方が非常に多くいらっしゃいます。

特に近年、能登半島地震や南海トラフ巨大地震の発生確率引き上げなどのニュースが多いため気になっている方はもいるでしょう。

ご自身やご家族の安全を守るために、建物の耐震性についてしっかりと理解しておきたいとお考えになるのは当然のことです。

住宅の耐震性を判断する上で最も重要な基準が「新耐震基準」です。

この記事では新耐震基準について、いつから適用されたのか、旧耐震基準とは何が違うのかなど、分かりやすくお届けします。

住宅購入前に必ず知っておくべき知識から、具体的な確認方法、旧耐震の建物への対応策まで、あなたの不安を解消し、自信を持って住まい選びができるよう、丁寧に解説してまいります。

目次

新耐震基準はいつから適用されたのか?

新耐震基準が施行されたのは、1981年(昭和56年)6月1日です。

この日を境に、日本の建築物の耐震性能は大きく向上しました。

この改正は、1978年6月12日に発生した宮城県沖地震(マグニチュード7.4、最大震度5)の被害を教訓に行われたものです。

この地震では、死者28名、負傷者約1,300名という大きな被害が発生し、特にブロック塀の倒壊や建物の構造的な問題が多く見られました。

これを受けて、建築基準法が抜本的に見直され、より厳格な耐震基準が設けられることになったのです。

重要なポイントは、新耐震基準が適用されるかどうかは「建築確認日」で判断されるという点です。

「建築確認日」とは?
各自治体の役所で建築確認申請が受理され、確認済証が交付された日のことを指します。

つまり、建物の完成日(竣工日)が1981年6月1日以降であっても、建築確認申請が1981年5月31日以前に受理されていた場合は、その建物は旧耐震基準で建てられていることになります。

旧耐震基準建築確認日が1981年5月31日以前
新耐震基準建築確認日が1981年6月1日以降

特にマンションのような大規模建築物の場合、建築確認から竣工までに1年以上かかることも珍しくありません。

そのため、1982年や1983年に完成した建物であっても、旧耐震基準である可能性があるのです。

築年数から大まかな目安を知ることもできます。2025年10月時点で考えると、築44年以内の建物であれば新耐震基準で建てられている可能性が高いといえます。

建物種別工期の目安新耐震の可能性が高い
木造一戸建て約3〜6ヶ月1981年9月以降竣工
マンション
(大規模建築)
約1〜2年1983年以降竣工
全般の目安築44年以内(1981年6月以降の建築確認)

※建物種別ごとの目安(2025年10月時点)

ただし、前述のように建築確認日と竣工日にはタイムラグがあるため、正確に確認したい場合は後述する方法で建築確認日を調べることをおすすめします。

1981年9月以降に完成した木造住宅であれば、新耐震基準である可能性が非常に高いでしょう。

一方、マンションの場合は規模によって異なりますが、1年~2年程度の工事期間が必要となるため、1983年以降に竣工した物件であれば、より確実に新耐震基準といえます。

旧耐震基準と新耐震基準の違いとは?

旧耐震基準と新耐震基準では、建物に求められる耐震性能に大きな違いがあります。

この違いを正しく理解することで、検討している物件の安全性をより的確に判断できるようになります。

想定する地震の強さの違い|震度5 vs 震度6強~7

旧耐震基準と新耐震基準の最も大きな違いは、想定する地震の強さです。

旧耐震基準(1950年~1981年5月31日)では、震度5強程度の中規模地震で建物が倒壊・崩壊しないことを基準としていました。

数十年に一度発生する程度の地震を想定した基準であり、それより大きな地震については明確な規定がありませんでした。

これに対して新耐震基準(1981年6月1日以降)では、想定する地震の強さが大幅に引き上げられました。新耐震基準では以下の2段階の基準が設けられています。

地震の規模震度旧耐震基準新耐震基準
中規模地震震度5強程度倒壊・崩壊しないほとんど損傷しない
(軽微なひび割れ程度)
大規模地震震度6強~7程度規定なし倒壊・崩壊しない
(人命を保護できる)

この表から分かるように、新耐震基準では中規模地震に対してより高い性能を求めるとともに、数百年に一度発生する可能性のある大規模地震についても、建物が倒壊せず人命を守れるレベルの耐震性が義務付けられました。

ただし、ここで注意していただきたいのは、新耐震基準は「人命を守ること」を最優先の目的としているという点です。

震度6強~7の大地震が発生した場合、建物自体は倒壊を免れても、大きな損傷を受ける可能性があります。

つまり、地震後もそのまま住み続けられることを保証するものではなく、あくまでも避難する時間を確保し、命を守るための基準なのです。

設計手法の違い|一次設計・二次設計の導入

新耐震基準では、想定する地震の強さが変わっただけでなく、設計手法そのものが大きく進化しました。

旧耐震基準では、中規模地震(震度5強程度)に対する検証のみが行われていました。

これを「一次設計」と呼びますが、当時はこの一段階のチェックのみで建築が認められていたのです。

新耐震基準では、より安全性を高めるために二段階の設計検証が導入されました。

一次設計(許容応力度計算)とは?

中規模地震(震度5強程度)に対して、柱や梁などの構造部材が許容できる応力度(耐えられる力)を超えないことを確認します。

建物がほとんど損傷を受けず、機能を維持できることを目指した設計です。

二次設計(保有水平耐力計算)とは?

大規模地震(震度6強~7程度)に対して、建物が保有する水平方向の耐力を計算し、倒壊・崩壊しないことを確認します。

多少の損傷は許容しつつも、構造が粘り強く耐え、人命を保護できることを目指した設計です。

この二段階の検証により、新耐震基準の建物は様々な強さの地震に対して適切な性能を発揮できるよう設計されています。

さらに、新耐震基準では建物の高さや建設地の地盤の性質などによる地震荷重の違いも考慮されるようになりました。

また、建物のねじれを防ぐため、耐震壁などをバランスよく配置することも求められるようになりました。

▶参考元:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について

新耐震基準と2000年基準(現行耐震基準)との違いは?

新耐震基準が1981年に導入された後も、日本は大きな地震を経験してきました。

特に1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準で建てられた建物の多くは倒壊を免れましたが、一部の木造住宅には被害が見られました。

この教訓を踏まえ、2000年6月に建築基準法が再度改正され、より厳格な基準が設けられました。

これが「2000年基準」または「現行耐震基準」と呼ばれるものです。

2000年6月の建築基準法改正で何が変わったか

2000年6月1日に施行された建築基準法の改正は、主に木造住宅の耐震性向上を目的としたものでした。

1981年の新耐震基準導入時には、主に鉄筋コンクリート造の建物を中心に基準が強化されましたが、木造住宅については一部に曖昧な部分が残されていました。

例えば、接合部に使用する金物については「釘その他の金物で緊結する」という抽象的な表現にとどまっており、具体的な仕様は明確に定められていませんでした。

阪神・淡路大震災の被害調査では、新耐震基準の木造住宅であっても、柱が土台から抜ける「柱脚の抜け」や、接合部の破壊により倒壊した事例が確認されました。

この原因の多くは、接合部の金物が不十分であったことや、耐力壁の配置にバランスの悪さがあったことでした。

こうした問題を解決するため、2000年の改正では木造住宅の構造に関する規定が大幅に詳細化され、法的拘束力が強化されました

これにより、2000年6月1日以降に建築確認を受けた木造住宅は、1981年~2000年5月の新耐震基準の建物と比較して、さらに高い耐震性を持つことになったのです。

2000年基準で変更されたこと|木造住宅における3つの強化ポイント

2000年基準では、木造住宅の耐震性を向上させるために、以下の3つの重要な項目が明確化されました。

1.地盤に応じた基礎設計の義務化

それまで任意とされていた地盤調査が事実上義務化され、地盤の強さ(地耐力)に応じた適切な基礎構造を選択することが求められるようになりました。

地盤が弱い場合はベタ基礎や杭基礎を採用するなど、地盤の状況に合わせた基礎設計が必須となり、不同沈下(建物が傾くこと)や地震時の被害を防ぐ対策が強化されました。

2.接合金物の仕様明確化

柱と梁、柱と土台、筋交いの端部など、構造上重要な接合部に使用する金物の種類と仕様が具体的に指定されました。

特に、地震時に柱が抜けるのを防ぐ「ホールダウン金物」の設置基準が明確化され、壁の強さ(壁倍率)に応じて必要な金物が細かく規定されました。

これにより、接合部の強度が大幅に向上しています。

3.耐力壁のバランス配置規定

建物に横からかかる力に抵抗する「耐力壁」の配置について、単に必要な量を確保するだけでなく、建物全体でバランスよく配置することが義務付けられました。

具体的には、建物を平面的に4分割し、各エリアに適切な量の耐力壁を配置する「四分割法」などの計算が必要になりました。

これにより、地震時に建物がねじれて倒壊するリスクが大幅に減少しました。

これら3つの強化ポイントにより、2000年基準の木造住宅は構造的なバランスと強度が大きく向上し、より高い耐震性能を持つようになりました。

新耐震基準と2000年基準のどちらが安全?

結論から申し上げると、2000年基準の建物の方がより高い耐震性を持っています

ただし、これは1981年~2000年5月の新耐震基準の建物が危険であるという意味ではありません。

新耐震基準で建てられた建物も、大地震に対して一定の耐震性を有しており、阪神・淡路大震災や東日本大震災においても多くの建物が倒壊を免れています。

特に鉄筋コンクリート造のマンションについては、1981年の新耐震基準導入時に構造規定が大幅に強化されており、2000年の改正ではほとんど変更がありませんでした。

そのため、マンションの場合は1981年6月以降に建築確認を受けた物件であれば、十分な耐震性を期待できます。

一方、木造住宅については2000年基準で大きな強化が図られたため、1981年~2000年5月に建てられた木造住宅は「新耐震・旧基準」などと呼ばれ、2000年基準の建物と区別されることがあります。

この期間の木造住宅を購入される場合は、接合部の金物や耐力壁のバランスなどについて、専門家による耐震診断を受けることをおすすめします。

新耐震基準かどうか確認する方法

中古住宅やマンションの購入を検討する際、その物件が新耐震基準で建てられているかどうかを正確に確認することは非常に重要です。

前述のように、建築確認日が1981年6月1日以降であれば新耐震基準が適用されています。

ここでは、具体的な確認方法を4つご紹介します。

1.建築確認済証で確認する方法

建築確認済証とは、建築確認申請が受理され、建築基準法に適合していることが確認された際に交付される書類です。

この書類には「確認済証交付年月日」が明記されており、この日付が1981年6月1日以降であれば新耐震基準、それ以前であれば旧耐震基準で建てられていることが確定します。

建築確認済証は、通常一戸建ての場合は所有者が保管しています。マンションの場合は、管理組合または管理会社が保管していることが一般的です。

中古物件の購入を検討している場合は、売主や不動産会社に建築確認済証の提示を依頼しましょう。

2.建築計画概要書・建築確認台帳記載事項証明書で確認する方法

建築確認済証が手元にない場合は、建築計画概要書または建築確認台帳記載事項証明書を取得する方法があります。

建築計画概要書は、建築確認申請時に提出された書類の概要をまとめたもので、建築確認日や建物の基本情報が記載されています。

この書類は、建物の所在地を管轄する特定行政庁(市役所や区役所の建築指導課など)で閲覧または写しの交付を受けることができます。

手数料は自治体によって異なりますが、1件あたり300円~500円程度が一般的です。

建築確認台帳記載事項証明書は、建築確認の記録が台帳に記載されていることを証明する書類で、建築確認日や建築主、建築場所などの情報が記載されています。

こちらも特定行政庁で交付を受けることができ、手数料は300円~500円程度です。

これらの書類を取得する際は、建物の所在地(住居表示または地番)が分かる資料を持参すると手続きがスムーズです。

3.登記簿謄本(全部事項証明書)で確認する方法

登記簿謄本(全部事項証明書)から、おおよその建築時期を推測することも可能です。

登記簿謄本には「新築年月日」または「表題登記の日付」が記載されています。

この日付は建物が完成した時期を示すものですが、前述のように建築確認日と竣工日にはタイムラグがあるため、完全に正確な判断はできません。

一般的な目安としては、木造一戸建ての場合、新築年月日が1981年9月以降であれば新耐震基準である可能性が高いといえます。

マンションの場合は工事期間が長いため、1983年以降の新築年月日であれば、より確実に新耐震基準と判断できます。

登記簿謄本は、法務局の窓口またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得できます。

窓口での取得の場合は1通600円、オンラインの場合は480円~500円程度の手数料がかかります。

不動産の地番が分かれば、誰でも取得することが可能です。

ただし、登記簿謄本だけでは建築確認日を正確に把握できないため、あくまで参考情報として捉え、正確な確認が必要な場合は前述の建築確認済証や建築計画概要書を確認することをおすすめします。

4.不動産会社や管理会社に問い合わせる方法

中古物件の購入を検討している場合、不動産会社や管理会社に直接問い合わせるのも有効な方法です。

不動産会社は物件の重要事項説明を行う際、建物の建築年や耐震基準に関する情報を調査する義務があります。

物件の内覧時や購入相談時に、「この物件は新耐震基準ですか」「建築確認日を教えていただけますか」と尋ねてみましょう。

マンションの場合は、管理会社に問い合わせることで、建築確認日や設計図書などの情報を確認できることがあります。

特に大規模な修繕工事や耐震診断を実施しているマンションの場合、詳細な建物情報が管理組合に保管されている可能性が高いです。

これら4つの方法を状況に応じて使い分けることで、検討している物件の耐震基準を正確に把握することができます。

特に高額な買い物である住宅購入においては、時間をかけてでもしっかりと確認することが、将来の安心につながります。

旧耐震基準の建物を購入する場合の対応策

立地や価格、間取りなどの条件が理想的であっても、建物が旧耐震基準である場合、購入を躊躇される方も多いでしょう。

しかし、旧耐震基準の建物だからといって、必ずしも購入を諦める必要はありません。適切な対応策を講じることで、安全性を高めることが可能です。

ここでは、旧耐震基準の建物を購入する際に検討すべき4つの対応策をご紹介します。

1.耐震診断を受ける

旧耐震基準の建物を購入する際、まず実施すべきなのが耐震診断です。

耐震診断とは、専門家が建物の図面や現地調査をもとに、現在の建物がどの程度の地震に耐えられるかを評価する調査のことです。

建物の構造形式、耐力壁の配置、劣化状況などを総合的に判断し、「上部構造評点」という数値で耐震性能を示します。

上部構造評点は以下のように評価されます。

上部構造評点評価意味
1.5以上倒壊しない一応安全(耐震性能が高い)
1.0以上1.5未満一応倒壊しないおおむね安全
0.7以上1.0未満倒壊する可能性があるやや危険
0.7未満倒壊する可能性が高い危険

耐震診断の費用は、木造一戸建ての場合で10万円~30万円程度、マンションの場合は規模にもよりますが100万円~300万円程度が目安です。

自治体によっては耐震診断費用の一部を補助する制度を設けているところもありますので、購入前に確認しておくとよいでしょう。

2.耐震補強工事を実施する

耐震診断の結果、耐震性能が不足していると判断された場合は、耐震補強工事を実施することで安全性を高めることができます。

耐震補強工事には、建物の構造や劣化状況に応じて様々な方法があります。

木造一戸建ての場合、主な補強方法には以下のようなものがあります。

  • 筋交いや構造用合板を追加し、横からの力に対する抵抗力を高める
  • 柱と梁、柱と土台の接合部にホールダウン金物などを追加する
  • 既存の基礎にコンクリートや鉄筋を追加して、強度を高める
  • 重い瓦屋根をスレートや金属屋根に替えて、軽量化を図る

これらの工事を組み合わせることで、上部構造評点を1.0以上、場合によっては1.5以上まで引き上げることが可能です。

耐震補強工事の費用は、建物の状態や補強内容によって大きく異なりますが、木造一戸建ての場合で100万円~400万円程度が一般的な相場です。

大規模な補強が必要な場合や、リフォームと同時に行う場合は、さらに費用がかかることもあります。

マンションの場合は規模や補強方法により数百万円から数千万円の費用がかかることもあり、所有者全員の合意形成が必要となります。

3.補助金制度を活用する

耐震診断や耐震補強工事には相応の費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を活用することで、負担を大幅に軽減できる場合があります。

多くの自治体では、旧耐震基準の木造住宅を対象に、耐震診断費用や耐震補強工事費用の一部を補助する制度を設けています。

補助金の内容は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような内容です。

補助対象補助率上限額
耐震診断費用の補助費用の2分の1~3分の2程度5万円~10万円程度
耐震補強設計費用の補助費用の2分の1~3分の2程度10万円~20万円程度
耐震補強工事費用の補助費用の2分の1~5分の4程度100万円~150万円程度

補助金を受けるためには、対象となる建物の条件(築年数、構造、用途など)や申請手続きの流れを事前に確認する必要があります。

多くの場合、工事着工前に申請が必要であり、事前に自治体の耐震診断を受けることが条件となっています。

また、耐震補強工事を行った場合、所得税の控除や固定資産税の減額といった税制優遇措置を受けられることもあります。

耐震改修にかかった費用の10%相当額(上限62.5万円)が所得税から控除される「住宅耐震改修特別控除」や、工事完了後一定期間、固定資産税が2分の1に減額される制度などがあります。

補助金や税制優遇制度の詳細は、お住まいの自治体の建築指導課や都市計画課に問い合わせることで確認できます。

参考元:国土交通省「災害に強い住宅・建築物の整備
参考元:東京都耐震ポータルサイト「耐震化助成制度
参考元:東京都マンションポータルサイト「マンション耐震化促進事業(助成制度等)

4.施工事例を参考にする

実際に耐震補強工事を実施した施工事例を参考にすることで、工事の内容やイメージを具体的に把握することができます。

多くの建設会社やリフォーム会社のウェブサイトでは、耐震補強工事の施工事例が写真付きで紹介されています。

これらの事例からは、以下のような情報を得ることができます。

  • どのような建物にどのような補強が行われたか
  • 工事前後で上部構造評点がどの程度向上したか
  • 工事期間はどのくらいかかったか
  • 実際にかかった費用の概算
  • 居住しながら工事ができたか、一時的な転居が必要だったか

施工事例を見る際は、自分が検討している建物と似た条件(築年数、構造、規模など)の事例を探すと、より参考になります。

また、実際に耐震補強工事を依頼する業者を選ぶ際も、施工実績が豊富で、過去の事例を具体的に提示できる業者を選ぶことが重要です。

複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することをおすすめします。

旧耐震基準の建物であっても、これらの対応策を適切に講じることで、安心して住み続けられる住まいにすることが可能です。

購入前にしっかりと情報収集し、専門家のアドバイスを受けながら、最適な選択をしていただければと思います。

新耐震基準に関するよくある質問【FAQ】

新耐震基準について、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。住宅購入や耐震性の判断に役立てていただければ幸いです。

Q.新耐震基準なら地震で絶対に倒壊しませんか?

残念ながら、「絶対に倒壊しない」とは言い切れません。

新耐震基準は、震度6強~7程度の大地震が発生した場合でも「倒壊・崩壊しない」ことを目標としていますが、これはあくまでも人命を守るための最低基準です。

建物自体は大きな損傷を受ける可能性があり、地震後に継続して住み続けられることを保証するものではありません。

また、想定を超える規模の地震や、繰り返し発生する余震、地盤の液状化、隣接建物の倒壊による巻き添えなど、様々な要因によって被害が生じる可能性があります。

さらに、経年劣化やシロアリ被害、雨漏りなどによって建物の強度が低下している場合は、新耐震基準で建てられた当初の性能を維持できていない可能性もあります。

Q.築年数だけで新耐震かどうか判断できますか?

築年数はあくまで目安であり、正確な判断には建築確認日の確認が必要です。

新耐震基準が適用されるかどうかは、建物の完成日(竣工日)ではなく、建築確認申請が受理された日で判断されます。

建築確認日が1981年6月1日以降であれば新耐震基準、それ以前であれば旧耐震基準です。

特にマンションのような大規模建築物の場合、建築確認から竣工までに1年~2年以上かかることも珍しくありません。

そのため、1982年や1983年に完成したマンションであっても、建築確認が1981年5月以前に行われていれば、旧耐震基準で建てられていることになります。

一般的な目安としては、2025年10月時点で築44年以内(1981年以降の竣工)であれば新耐震基準の可能性が高いですが、購入を検討する際は必ず建築確認日を確認することをおすすめします。

Q.1982年竣工の建物は新耐震基準ですか?

1982年に竣工した建物の場合、新耐震基準である可能性は高いですが、確実ではありません。

木造一戸建ての場合、建築確認から竣工までの期間は通常3~6ヶ月程度ですので、1982年に完成した木造住宅であれば、新耐震基準で建てられている可能性が非常に高いといえます。

しかし、マンションの場合は工事期間が長く、規模によっては1年半~2年程度かかることもあります。

そのため、1982年竣工のマンションの場合、建築確認が1981年5月以前に行われている可能性もあり、その場合は旧耐震基準ということになります。

正確に判断するためには、建築確認済証、建築計画概要書、または建築確認台帳記載事項証明書で建築確認日を確認する必要があります。

Q.新耐震基準と耐震等級の違いは何ですか?

新耐震基準と耐震等級は、どちらも建物の耐震性能を示すものですが、その性質と位置づけが異なります。

新耐震基準は、建築基準法で定められた法的な最低基準であり、すべての建物が満たさなければならない義務的な基準です。

1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物は、必ずこの基準を満たしています。

一方、耐震等級は、住宅品質確保促進法(品確法)に基づく「住宅性能表示制度」の中で定められた任意の評価指標です。

耐震等級は1~3の3段階に分かれており、以下のように定義されています。

耐震等級耐震性能
耐震等級1建築基準法で定められた最低限の耐震性能(新耐震基準相当)
耐震等級2等級1の1.25倍の耐震性能(学校や病院などの公共建築物相当)
耐震等級3等級1の1.5倍の耐震性能(消防署や警察署などの防災拠点相当)

新耐震基準を満たしている建物は自動的に耐震等級1に相当しますが、耐震等級2や3を取得するには、第三者機関による評価を受ける必要があります。

耐震等級が高いほど、より大きな地震に対しても安全性が高くなります。

Q.旧耐震の建物は購入しない方がいいですか?

旧耐震基準の建物だからといって、一概に購入を避けるべきとは言えません。

確かに、旧耐震基準の建物は新耐震基準の建物と比べて耐震性能が劣る可能性が高く、大地震時の倒壊リスクは相対的に高くなります。

購入を検討する場合は、必ず耐震診断を実施し、現在の建物の耐震性能を正確に把握することが重要です。

そのうえで、必要な補強工事の内容と費用を見積もり、補助金制度の活用可能性も含めて総合的に判断しましょう。

また、住宅ローンを利用する場合、金融機関によっては旧耐震基準の建物に対して融資条件が厳しくなったり、地震保険についても、旧耐震基準の建物は保険料が割高になる傾向があります。

これらの点も含めて、トータルでの費用対効果を慎重に検討することをおすすめします。

まとめ

新耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日から施行された耐震基準であり、震度6強~7程度の大地震でも倒壊・崩壊しないことを目標とした、現在の耐震設計の基礎となる重要な基準です。

この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。

・新耐震基準の適用は建物完成日ではなく建築確認日で判断される
・1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が新耐震基準に該当する
・旧基準は震度5強を想定し、新基準は震度6強~7でも倒壊しない設計
・新耐震基準では一次設計と二次設計の二段階検証が導入された
・2000年6月の改正で、木造住宅の接合金物や地盤調査が義務化された
・建築確認日は建築確認済証や建築計画概要書で確認できる
・建築確認台帳記載事項証明書や登記簿謄本も確認に有効
・旧耐震建物を購入する際は耐震診断と補強工事を行いましょう
・国や自治体の補助制度を利用すれば費用負担を軽減できる

住宅購入は人生における大きな決断です。地震への備えは、ご自身とご家族の命を守るための最も重要な要素のひとつです。

この記事でお伝えした知識をもとに、建物の耐震性能をしっかりと確認し、必要な対策を講じることで、安心して暮らせる住まいを手に入れていただきたいと思います。

新耐震基準は大きな安心材料ではありますが、それだけに頼るのではなく、定期的なメンテナンスや、専門家による診断を受けることも大切です。

また、地震保険への加入や、家具の転倒防止、非常用品の備蓄など、総合的な地震対策を行うことで、さらに安全性を高めることができます。

不明な点や不安なことがあれば、建築士や不動産の専門家、自治体の担当窓口などに相談することをおすすめします。