
大規模修繕の自社施工(責任施工方式)とは?メリットやデメリット・設計監理方式との違いを解説
2025/09/11
マンションの大規模修繕工事を検討する際、「自社施工(責任施工方式)」と「設計監理方式」のどちらを選ぶべきか悩まれる管理組合様は少なくありません。
特に修繕積立金の限られた予算の中で、品質と費用のバランスを取りながら最適な選択をしたいとお考えの方も多いでしょう。
弊社はこれまで、多くの管理組合様・オーナー様の悩みや不安に寄り添ってまいりました。
その経験を基に本記事では、自社施工(責任施工方式)の具体的なメリットとデメリット、そして成功するための重要なポイントを解説いたします。
この記事を最後まで読んでいただければ、あなたのマンションにとって最適な修繕方式を自信を持って選択できるようになり、限られた予算で最大の効果を得る道筋が見えてくることでしょう。
目次
大規模修繕の自社施工(責任施工方式)とは?基本概要と仕組み
大規模修繕における自社施工、正式には「責任施工方式」と呼ばれるこの発注方式は、調査診断から設計、そして実際の工事まで、すべての工程を一つの施工会社に一括して依頼する方法です。
この方式では、管理組合が直接施工会社と工事請負契約を結び、その施工会社が建物の劣化診断、修繕計画の作成、工事の実施、品質管理までを一貫して担当します。
つまり、「設計と施工が一体化」している点が最大の特徴といえるでしょう。
責任施工方式の基本的な流れは、以下のようになります。
- 建物調査・診断▶︎ 施工会社による現況把握と劣化状況の確認
- 修繕計画・設計▶︎ 調査結果を基にした工事内容と仕様の決定
- 見積書提出▶︎ 設計内容に基づく詳細な費用算出
- 契約・着工▶︎ 管理組合との直接契約による工事開始
- 施工・品質管理▶︎ 自社による工事実施と品質チェック
このような一貫した体制により、窓口が施工会社一社に集約されるため、管理組合としては非常にシンプルで分かりやすい進行が可能になります。
一方で、第三者によるチェック機能が働きにくいという側面もあるため、信頼できる施工会社の選定が極めて重要になってくるのです。
国土交通省の令和3年度調査によると、マンション大規模修繕工事における責任施工方式の採用率は全体の12.6%です。
設計監理方式の80.1%と比べると少数派ではありますが、特に小規模マンションでは44.0%と高い採用率を示しています。
参照元:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
大規模修繕における自社施工(責任施工方式)のメリット
責任施工方式を選択する最大の理由は、その明確なメリットにあります。
弊社がサポートしてきた管理組合様からも高く評価されている、5つの主要なメリットを詳しくご説明いたします。
責任施工方式のメリット1:中間マージンカットによるコスト削減効果
自社施工の最も分かりやすいメリットは、何といっても中間マージンの削減による費用圧縮効果です。
通常の発注方式では「管理組合→元請け業者→下請け業者」という多層構造になりがちですが、責任施工方式では直接施工会社との契約となります。
この違いによる具体的なコスト削減効果を表で比較してみましょう。
項目 | 一般的な発注方式 | 責任施工方式 | 削減効果 |
---|---|---|---|
設計コンサルタント費用 | 工事費の5-10% | なし | 約500-1,000万円削減 (1億円工事の場合) |
中間マージン | 各業者で発生 | なし | 工事費の10-20%削減 |
調整・管理費用 | 複数業者間で必要 | 1社で完結 | 事務負担軽減 |
私が担当したある80戸のマンションでは、責任施工方式を選択することで、同規模の設計監理方式と比較して約15%のコスト削減を実現できました。
限られた修繕積立金を有効活用するという点で、この費用圧縮効果は管理組合にとって非常に大きなメリットといえるでしょう。
責任施工方式のメリット2:一貫体制による工期短縮
責任施工方式では、設計段階から施工を見据えた現実的な計画立案が可能になります。
同一会社内で設計と施工の調整が行われるため、無理のないスケジュール設定と工期の短縮が実現できるのです。
工期短縮のメリットは、以下の通りです。
- 居住者の負担軽減▶︎ 足場設置期間の短縮により生活への影響を最小限に
- 仮設費用の削減▶︎ 工期短縮により足場レンタル費用などを圧縮
- 近隣への配慮▶︎ 工事による騒音や振動の期間を短縮
- 管理組合業務の効率化▶︎ 長期間にわたる工事管理負担の軽減
これらの効果は、特に住みながらの大規模修繕工事において、居住者の満足度向上に直結します。
私の経験では、責任施工方式を選択したマンションの約8割で、当初予定よりも1~2ヶ月程度の工期短縮を実現しています。
責任施工方式のメリット3:責任の所在が明確(トラブル時の対応力向上)
設計から施工まで一社が担当する責任施工方式では、何か問題が発生した際の責任の所在が明確です。
これは、管理組合にとって非常に心強いメリットといえます。
責任の明確化がもたらす具体的なメリットは以下の通りです。
- 迅速な対応▶︎ 責任の押し付け合いがなく、スピーディーな問題解決が可能
- アフターサービスの充実▶︎ 施工会社が直接責任を負うため、手厚いフォローが期待できる
- 保証の一元化▶︎ 工事全体の保証を一社で対応できる安心感
実際に私が関わったケースでは、工事完了後に発見された軽微な不具合について、責任施工方式を選択していたマンションでは即日対応が実現できました。
複数の業者が関わる方式では、どこの責任かの確認だけで数日を要することも珍しくありません。
責任施工方式のメリット4:施工業者との密接なコミュニケーションが可能
責任施工方式では、管理組合と施工業者の距離が非常に近くなります。
この密接なコミュニケーションにより、管理組合の細かな要望や懸念点まで工事に反映させることが可能になるのです。
密接なコミュニケーションがもたらす効果を具体的に見てみましょう。
場面 | 従来方式 | 責任施工方式 |
---|---|---|
要望の伝達 | 管理組合→コンサル→施工業者 | 管理組合→施工業者(直接) |
進捗確認 | 複数の窓口で情報収集 | 施工業者一社で完結 |
変更対応 | 複数業者間の調整が必要 | 社内調整で迅速対応 |
クレーム対応 | 責任所在の確認が必要 | 即座に対応可能 |
このような直接的なコミュニケーションにより、「もう少し丁寧に仕上げてほしい」「この部分の色合いを調整したい」といった細かな要望まで、リアルタイムで工事に反映させることができます。
責任施工方式のメリット5:各社独自のノウハウと技術力による提案の多様性
責任施工方式では、各施工会社が自社の技術力や過去の経験を最大限活用した独自性の高い提案を受けることができます。
画一的な仕様書に縛られることなく、創意工夫に富んだ修繕プランを比較検討できるのです。
多様な提案から得られるメリットには以下のようなものがあります。
- 最新技術の導入▶︎ 各社が得意とする新工法や高性能材料の提案
- コストパフォーマンスの最適化▶︎ 予算に応じた柔軟な仕様調整
- 建物特性に応じた カスタマイズ▶︎ マンション固有の課題に対する専門的なソリューション
- 長期的視点での提案▶︎ 次回修繕までの耐久性を考慮した材料選択
あるマンションでは、海岸に近い立地条件を考慮して、通常より耐塩性の高い塗料と防水材を提案した施工会社があり、結果として次回修繕時期を2年延長できるという試算が得られました。
このような建物の個性に合わせた提案は、責任施工方式ならではの大きなメリットといえるでしょう。
大規模修繕における自社施工(責任施工方式)のデメリットと注意点
責任施工方式には多くのメリットがある一方で、慎重に検討すべきデメリットや注意点も存在します。
これらを事前に理解し、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えながら責任施工方式のメリットを最大限活用することが可能になります。
責任施工方式のデメリット1:第三者チェック体制の課題
責任施工方式の最も大きな課題は、第三者による客観的なチェック機能が働きにくいという点です。
設計監理方式では、コンサルタントが施工業者とは独立した立場で工事をチェックしますが、責任施工方式では基本的に施工業者の自己管理が中心となります。
第三者チェック不足により懸念される問題点は以下の通りです。
- 品質管理の甘さ▶︎ セルフチェックによる見落としのリスク
- 仕様変更の妥当性▶︎ コスト重視による仕様ダウンの可能性
- 工程管理の甘さ▶︎ スケジュール遅延への対応力不足
- 技術的判断の偏り▶︎ 自社技術に偏った解決策の提示
しかし、これらの課題は適切な対策により大幅に軽減することが可能です。
私がお勧めしている対策方法をご紹介しましょう。
第三者チェック機能を補完する具体的対策として、工事の要所で専門家によるスポット検査を導入する方法があります。
例えば、防水工事の下地処理完了時、外壁塗装の中塗り完了時など、重要な工程で建築士や施工管理技士による第三者検査を実施することで、品質担保と客観性確保の両立が図れます。
責任施工方式のデメリット2:業者選定の難しさと見極めポイント
責任施工方式では、最初に選定した施工会社にすべてを委ねることになるため、業者選定の成否が工事全体の結果を左右します。
適切な業者を選ぶためには、単純な価格比較だけでなく、総合的な評価が必要になります。
業者選定で陥りがちな問題と対策を整理してみましょう。
よくある問題 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
価格だけで判断してしまう | 分かりやすい比較指標に頼る | 技術提案力・実績・体制を総合評価 |
見積書の内容が理解できない | 専門知識の不足 | 複数社での詳細説明会の実施 |
過去実績の真偽が不明 | 情報の非対称性 | 実際の施工現場見学や管理組合への聞き取り |
アフターサービス体制が不透明 | 契約条件の曖昧さ | 保証内容と対応体制の明文化 |
私の経験では、最も重要な見極めポイントは「管理組合との相性」です。
技術力や価格も重要ですが、長期間にわたる工事を円滑に進めるためには、コミュニケーションの取りやすさや誠実な対応姿勢が不可欠だからです。
責任施工方式のデメリット3:管理組合の負担増加への対応策
責任施工方式では、設計監理方式でコンサルタントが担う役割の一部を管理組合自身が担う必要があります。
これは確かに負担増加を意味しますが、適切な準備と分担により、無理のない範囲で進めることが可能です。
管理組合の主な負担増加項目と効果的な対応策をご紹介します。
- 業者選定業務▶︎ 修繕委員会の設置と役割分担の明確化
- 工事内容の理解▶︎ 事前勉強会の開催と専門用語集の作成
- 進捗管理▶︎ 定期報告システムの構築と要点の可視化
- 品質チェック▶︎ チェックリストの活用と記録の徹底
- 近隣対応▶︎ 施工業者との連携体制の確立
これらの対応策を実施することで、管理組合の負担を適切な範囲に収めながら、責任施工方式のメリットを享受することができます。
特に、修繕委員会の中で「調査・選定担当」「工事監理担当」「近隣・広報担当」などの役割分担を明確にすることで、個人の負担を大幅に軽減できるでしょう。
設計監理方式とは?基本概念とメリット・デメリット
大規模修繕工事のもう一つの主要な発注方式である「設計監理方式」についても理解を深めることで、責任施工方式との違いをより明確に把握し、適切な選択判断ができるようになります。
設計監理方式とは、建物の調査診断や修繕設計、施工業者の選定、工事監理を設計事務所やコンサルタント会社に委託し、実際の工事は別途選定した施工会社が担当する「分離発注方式」です。
設計監理方式の基本的な流れは以下のようになります。
- コンサルタント選定▶︎ 設計事務所や管理会社への業務委託
- 建物調査・診断▶︎ コンサルタントによる現況調査と劣化診断
- 修繕設計・仕様書作成▶︎ 統一仕様書に基づく設計業務
- 施工業者選定支援▶︎ 入札や見積もり合わせのサポート
- 工事監理▶︎ 第三者による客観的な施工チェック
国土交通省の調査では、全体の80.1%のマンションがこの方式を採用しており、現在の主流となっています。
設計監理方式のメリット・デメリット
この方式における主要なメリットとデメリットを整理してみましょう。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
品質管理 | ・第三者による客観的チェック ・専門家の技術的サポート | ・過度な仕様指定によるコストアップ |
費用面 | ・競争入札による価格競争 ・仕様統一による比較しやすさ | ・コンサルタント費用が別途発生 (工事費の5-10%) |
管理組合負担 | ・専門業務をコンサルタントに委託 ・技術的判断のサポート充実 | ・2つの契約関係の管理 ・複雑な手続きとスケジュール |
責任体制 | ・公正・中立な立場での監理 ・問題発生時の調整機能 | ・責任の所在が複雑化する場合あり ・設計と施工の連携不足リスク |
設計監理方式は、特に大規模マンションや複雑な工事内容の場合に威力を発揮します。
専門的知識が豊富なコンサルタントによる技術的サポートにより、管理組合の負担を大幅に軽減しながら、客観的な品質管理を実現できるからです。
一方で、コンサルタント費用の発生と手続きの複雑さは避けられないデメリットといえるでしょう。
100戸以上の大規模マンションや、築30年を超えて劣化が複雑化しているマンションでは、設計監理方式の方が結果的に満足度が高いケースが多く見られます。
責任施工方式と設計監理方式の違い
大規模修繕工事を進める上で、責任施工方式と設計監理方式の根本的な違いを理解することは、適切な選択をするための重要な第一歩です。
最も大きな違いは、設計と施工を同じ会社が担うか、別々の会社が担うかという点にあります。
責任施工方式では一つの施工会社がすべてを一貫して行うのに対し、設計監理方式では設計・監理を行うコンサルタント会社と、実際の工事を行う施工会社が分離されています。
比較項目 | 責任施工方式 | 設計監理方式 |
---|---|---|
契約関係 | 管理組合 ↔ 施工会社(1契約) | 管理組合 ↔ コンサルタント 管理組合 ↔ 施工会社(2契約) |
設計・調査 | 施工会社が実施 | コンサルタントが実施 |
工事監理 | 施工会社の自己管理 | コンサルタントによる第三者監理 |
業者選定 | 管理組合が直接選定 | コンサルタントの支援で選定 |
責任体制 | 施工会社が一括責任 | 設計と施工で責任分離 |
責任施工方式が適しているケースとして、比較的シンプルな修繕内容で、管理組合に一定の知識や経験がある場合、また予算を重視したい場合などが挙げられます。
一方で設計監理方式が適しているケースは、複雑な劣化状況や大規模な工事、管理組合の負担を軽減したい場合などです。
どちらの方式を選択するかは、マンションの規模、管理組合の体制、予算状況、建物の状況などを総合的に検討して決定することが重要です。
単純にコストだけで判断するのではなく、長期的な視点での最適解を見つけることが、成功する大規模修繕への鍵となるでしょう。
大規模修繕における自社施工業者の失敗しない選び方
責任施工方式の成功は、何といっても信頼できるパートナーとなる施工業者の選定にかかっています。
これまで多くの管理組合様・オーナー様をサポートしてきた経験から、失敗しない業者選定のための具体的な方法をお伝えいたします。
技術力・施工実績の確認方法
施工業者の真の技術力を見極めるためには、表面的な情報だけでなく、実際の施工品質や対応力を多角的にチェックすることが重要です。
技術力確認のためのチェックポイントを優先順位順に整理しました。
- 施工実績の詳細確認▶︎ 同規模・同築年数のマンション施工経験の有無
- 技術者資格の保有状況▶︎ 1級建築施工管理技士、1級建築士等の在籍状況
- 施工体制の充実度▶︎ 自社職人と下請け業者のバランス
- 品質管理システム▶︎ ISO認証取得状況や独自品質基準の整備
- アフターサービス体制▶︎ 保証内容と緊急時対応システム
特に重要なのは、実際の施工現場を見学することです。
カタログや説明資料では分からない、現場での職人の技術力、整理整頓の状況、安全管理への取り組みなどを直接確認できます。
もし可能ならば、候補業者の施工中現場を1つ以上見学することをお勧めしています。
また、過去に施工したマンションの管理組合へのヒアリングも極めて有効です。
工事中の対応、アフターサービスの実態、満足度など、リアルな声を聞くことで、その業者の真の姿が見えてきます。
相見積もりと提案内容の比較評価
責任施工方式では各社が独自の提案をしてくるため、単純な価格比較だけでは適切な評価ができません。
提案内容を総合的に評価するための体系的なアプローチが必要です。
効果的な比較評価のための評価軸を以下に示します。
評価項目 | 重要度 | 確認ポイント | 配点例 |
---|---|---|---|
技術提案力 | 高 | 建物状況に応じた適切な工法・材料提案 | 25点 |
価格妥当性 | 高 | 内訳の詳細性と市場価格との比較 | 25点 |
施工実績 | 高 | 類似物件での成功事例と実績年数 | 20点 |
施工体制 | 中 | 現場管理体制と技術者配置計画 | 15点 |
アフター対応 | 中 | 保証内容と緊急時対応システム | 15点 |
このような評価軸を事前に設定し、複数の理事や修繕委員で評価を行うことで、客観的で公正な業者選定が可能になります。
相見積もりを取る際は、最低3社以上からの提案を求めることをお勧めします。
2社だけでは比較対象が不十分ですし、5社を超えると検討に要する時間と労力が過大になる傾向があります。
3~4社程度が最も効率的で実用的な比較検討を可能にします。
契約前に確認すべき重要ポイント
業者選定が完了し、いよいよ契約という段階で見落としがちな重要ポイントがあります。
契約後のトラブルを防ぐため、契約前の最終確認は極めて重要です。
契約前の必須確認項目を分野別に整理しました。
- 工事範囲・仕様の明確化▶︎ 曖昧な表現の排除と詳細仕様の文書化
- 追加工事の取り扱い▶︎ 発生条件、承認プロセス、単価設定の事前合意
- 工期・スケジュール▶︎ 各工程の具体的スケジュールと遅延時の対応
- 品質管理体制▶︎ 検査方法、記録保管、第三者検査の実施
- 保証・アフター対応▶︎ 保証期間、対象範囲、緊急時連絡体制
- 近隣対応▶︎ 挨拶回り、苦情対応、損害時の責任分担
これらの項目について、口約束ではなく必ず書面で確認し、契約書に明記することが重要です。
特に追加工事については、「想定外の劣化が発見された場合の対応」を具体的に定めておくことで、後々のトラブルを大幅に減らすことができます。
私の経験では、契約前の詳細確認に時間をかけた管理組合ほど、工事期間中の満足度が高く、完成後の評価も良好な傾向があります。
面倒に感じられるかもしれませんが、この段階での丁寧な確認作業こそが、成功する大規模修繕への最重要ステップなのです。
自社施工(責任施工方式)の大規模修繕に関するよくある質問【FAQ】
これまで多くの管理組合様・オーナー様からお受けしてきた、自社施工(責任施工方式)に関するご質問の中から、特に多いものをQ&A形式でまとめました。
皆様の疑問解決にお役立てください。
Q.自社施工と設計監理方式、どちらが費用を抑えられますか?
A:一般的には自社施工(責任施工方式)の方が費用を抑えられる傾向があります。
責任施工方式では設計コンサルタント費用(通常工事費の5-10%)が不要になり、中間マージンも削減されるためです。
ただし、これは適切な業者選定ができた場合の話であり、単純な価格比較だけで業者を選ぶと、後々の追加工事や品質問題で結果的に高くつくリスクもあります。
ただし、複雑な劣化状況や特殊な工事が必要な場合は、専門的なコンサルティングが受けられる設計監理方式の方が、長期的には経済的になるケースもあります。
Q.小規模マンションでも自社施工は選択できますか?
A:小規模マンションこそ自社施工方式のメリットを活用しやすいといえます。
国土交通省の調査データでも、20戸以下の小規模マンションでは44.0%が責任施工方式を採用しており、これは全体平均の12.6%を大きく上回っています。
小規模マンションの場合、以下の理由で責任施工方式が適しているのです。
- コンサルタント費用の負担が重い▶︎ 小規模工事でも一定の費用がかかるため負担率が高くなる
- シンプルな工事内容▶︎ 複雑でない工事であれば施工業者の判断で十分対応可能
- 意思決定の迅速さ▶︎ 少数の組合員での合意形成により柔軟な対応が可能
ただし、小規模マンションでは修繕積立金も限られているため、業者選定はより慎重に行う必要があります。
複数社からの見積もり取得と、過去実績の入念なチェックが成功の鍵となるでしょう。
Q.自社施工で品質に問題が生じた場合の対処法は?
A:事前の契約条件整備と、問題発生時の迅速な対応が重要です。
責任施工方式では施工業者が品質に全責任を負うため、問題が発生した場合の対処は基本的に施工業者が行います。
ただし、管理組合として以下の対策を事前に講じておくことが重要です。
予防策
- 詳細な品質基準の設定▶︎ 契約書に具体的な品質基準と検査方法を明記
- 第三者検査の導入▶︎ 重要工程でのスポット検査実施
- 瑕疵保険の加入▶︎ 万が一の場合の経済的保障
問題発生時の対処法
- 迅速な現状把握▶︎ 写真記録と専門家による状況確認
- 書面での対応要求▶︎ 口約束ではなく文書による改善要求
- 第三者専門家の活用▶︎ 必要に応じて建築士等による技術的判断
私の経験では、契約時に品質基準と対応方法を明確にしておいた場合、問題が発生しても迅速かつ適切な解決ができています。
Q.施工業者選定で最も重視すべきポイントは何ですか?
A:技術力、実績、そして管理組合との相性のバランスが最も重要です。
多くの管理組合様が価格を最重要視されがちですが、責任施工方式では長期的な視点での総合評価が成功の鍵となります。
第1優先:過去実績と技術力
同規模・同築年数のマンションでの施工実績があり、現場見学で確認できる技術品質
第2優先:コミュニケーション能力
管理組合の質問に対する分かりやすい説明力と、誠実な対応姿勢
第3優先:提案内容の妥当性
建物状況に応じた適切な工法・材料提案と、合理的な価格設定
判断基準 | 良い例 | 注意すべき例 |
---|---|---|
価格設定 | 内訳が詳細で説明が明確 | 極端に安い、または根拠不明 |
提案内容 | 建物に応じたカスタマイズ提案 | 画一的で汎用的な提案のみ |
対応姿勢 | 質問に対する丁寧で誠実な回答 | 曖昧な回答や売り込み優先 |
最終的には、「この会社となら安心して工事を任せられる」と管理組合の皆様が心から感じられる業者を選ぶことが、最も重要なポイントといえるでしょう。
まとめ|大規模修繕の自社施工で資産価値を守る賢い選択
大規模修繕における自社施工(責任施工方式)は、適切に活用することで大幅なコスト削減と効率的な工事進行を実現できる優れた選択肢です。
本記事でお伝えした内容を改めて整理すると、以下のポイントが重要です。
- 中間マージン削減による10~15%のコスト圧縮効果
- 一貫体制による工期短縮と居住者負担軽減
- 責任の所在明確化による迅速な問題解決
- 直接コミュニケーションによる要望反映
- 各社独自技術を活用した多様な提案
どの発注方式を選ぶかよりも、選んだ方式をいかに適切に運用するかが重要です。
責任施工方式は確かに管理組合の皆様にとって一定の負担を伴いますが、その分だけ主体的に工事に関わることができ、納得度の高い結果を得ることが可能になります。
大規模修繕は、マンションの資産価値を長期にわたって維持するための重要な投資です。
限られた修繕積立金を最大限有効活用し、住環境の向上と建物の長寿命化を両立するために、ぜひ本記事の内容を参考にして、あなたのマンションに最適な選択をしていただければと思います。
何かご不明な点やさらに詳しいご相談がございましたら、専門家としていつでもお手伝いさせていただきます。
皆様のマンションが、安全で快適な住まいとして長く愛され続けることを心から願っております。