大規模修繕と大規模模様替えの違いとは?費用・目的・施工内容を徹底比較
2025/07/24
マンションやビルなどの集合住宅や商業施設では、定期的な修繕や改修工事が不可欠です。
なかでも「大規模修繕」と「大規模模様替え」は、その規模や内容・目的において混同されがちな言葉です。
両者の違いを正しく理解することは、建物の健全な維持や資産価値の向上に直結します。
本記事では、それぞれの定義や目的・工事内容・費用、そして工事実施の最適なタイミングまでを詳しく解説します。
さらに比較表も交えながら、どちらを選択すべきか迷っている方にも役立つ情報を網羅的にお届けします。
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目次
大規模修繕とは?
大規模修繕とは、主に経年劣化によって生じた建物の機能低下を回復し、構造の安全性や快適な住環境を維持するために実施される計画的な修繕工事です。
対象範囲は非常に広く、外壁のタイル補修や塗装・屋上やバルコニーの防水工事・鉄部の錆び止め・塗装、給排水管の更新など、建物の構造体および共用部分全般に及びます。
また、外壁や床のひび割れの補修・排水溝や雨樋の交換・インターホンなど設備類の更新なども含まれることがあります。
これらは建物の見た目だけでなく、居住者の安全性や防水性能・衛生面に直結するため、定期的かつ綿密な計画が求められます。
法的背景と長期修繕計画との関係
マンションなどの共同住宅では、区分所有法やマンション管理適正化法に基づいて、管理組合が長期修繕計画を策定することが推奨されています。
この長期修繕計画は、概ね30年程度を見据えて修繕の内容や周期・必要な費用を見積もり・計画的に積立金を準備するための重要な資料です。
特に大規模修繕は、計画の要となる工事であり、一般的には12年から15年周期で実施されるのが通例です。
このタイミングを逃してしまうと劣化が進行し、工事範囲が拡大するだけでなく、住民の安全性や資産価値の低下にもつながる恐れがあります。
大規模模様替えとは?
大規模模様替えは、建物の用途変更や内部構造の再設計・設備のグレードアップなどを目的として行われる改修工事を指します。
大規模修繕と異なり、老朽化した部分の補修ではなく、意図的なリニューアルによって機能性・快適性を向上させることが目的です。
このような工事は、建物の資産価値を上げたい、入居者のニーズに合わせた最新の設備に変更したい、といった積極的な改修計画の一環として実施されるケースが多くなっています。
また、近年では高齢化やバリアフリーへの対応・省エネ性能の強化など社会的ニーズも反映された内容が求められるようになってきています。
「リフォーム」「リノベーション」との違い
「大規模模様替え」は、しばしば「リフォーム」や「リノベーション」と混同されますが、厳密には建築基準法において建築物の用途や構造に変更を加える一定規模以上の工事として分類されることがあります。
具体的には、住戸の間取りを変更したり、共用スペースを用途転換したりする場合が該当します。
たとえば、旧来の集合住宅の一部をシェアオフィスや店舗に用途変更する、あるいは従来のキッチンや浴室を最新のユニット設備に一新するなど、構造的・機能的に大きな変化を伴う工事は、大規模模様替えに含まれます。
資産価値向上や住環境改善の効果
大規模模様替えによって建物の外観や内装が刷新されることで、入居希望者の満足度や印象が大きく変わります。
たとえば、エントランスの照明やデザインを現代的なものに変更することで建物全体のグレード感が向上し、空室率の低下や賃料の上昇につながることもあります。
さらに、省エネ設備の導入やバリアフリー化・オートロックや監視カメラなどのセキュリティ強化も含めて実施すれば、居住者の安心感が高まり、建物のブランディングにもつながるため、結果として資産価値全体の底上げが可能となります。
大規模修繕と大規模模様替えを徹底比較!目的・工事内容・費用・タイミングの違い
それぞれの概要について説明してきたのの、違いについてはいまいち分からないという方が多いのではないでしょうか。
建物に必要なメンテナンスを行うためにも、目的や施工内容・タイミングなどにおける違いを把握しておきましょう。
以下に表としてまとめましたので、参考にしてみてください。
大規模修繕と大規模模様替えの違い
比較項目 | 大規模修繕 | 大規模模様替え |
---|---|---|
目的 | 建物の機能・性能を維持し、劣化を防ぐことが主眼。 | 快適性・利便性・美観性などを向上させ、付加価値を高めることが主眼。 |
工事の性質 | 劣化箇所を修繕・復旧する工事。 | 新しい価値を付加するための改修工事。 |
主な内容 | 防水工事、外壁補修、給排水管の更新、鉄部塗装、建具交換など「外回り・設備系」が中心。 | 内装の変更、共用部の意匠改修、最新設備への更新、レイアウト変更など「内装系」が中心。 |
建築申請 | 原則不要(構造・用途に変更がないため)。 | 建築確認申請が必要となる場合がある(構造や用途変更を伴う場合)。 |
判断基準 | 劣化の有無や長期修繕計画に基づく周期的判断。 | 住民ニーズや資産価値の向上を目的とした自主的判断。 |
実施時期 | 長期修繕計画に基づき12〜15年周期が目安。 | 住民・管理組合の希望や市場動向を踏まえて柔軟に設定。 |
動機 | 劣化防止・安全確保・現状維持のために必要に迫られて行うケースが多い。 | 快適性向上・空室対策・資産価値アップなど前向きな意図で実施されることが多い。 |
大規模修繕と大規模模様替えの実施前に押さえたい注意点と計画のポイント
大規模修繕や大規模模様替えの成功は、事前の準備と正確な判断にかかっています。
費用の規模や工期の長さ・関係者の多さなどを考えると、計画段階での失敗が全体に与える影響は非常に大きいです。
以下では、実施前に必ず確認すべき注意点と、計画を立てるうえでのポイントについて解説します。
事前調査と専門家の関与
まず必要となるのが、建物の状態を正確に把握するための事前調査です。
特に大規模修繕においては、建築士や診断士による「劣化診断」を実施し、どの部分がどれほど傷んでいるのかを明確にします。
これにより、修繕の優先順位や工事項目が具体化され、無駄のない見積もりが可能になります。
一方、大規模模様替えの場合は、設備やレイアウト変更の構想を具現化するために、建築設計士やインテリアコーディネーターの参画が有効です。
構造に手を加えるケースでは、構造設計の専門家や行政手続きに精通した建築士も必要になります。
住民説明会と合意形成の重要性
とくに分譲マンションなどの集合住宅では、工事に伴う費用負担や工事中の生活影響を懸念する住民も多くいます。
そこで欠かせないのが、住民への丁寧な説明と、合意形成のプロセスです。
定期的な住民説明会を開催し、工事の必要性・内容・費用・スケジュールなどをわかりやすく伝えることが大切です。
また、住民からの意見や懸念点に対して真摯に対応し、信頼関係を構築することで、工事中のトラブルを未然に防ぐことができます。
合意形成は、工事の成否を左右する最重要ポイントといえるでしょう。
予算・スケジュール・業者選定の注意点
大規模な工事には、高額な費用と長い工期が必要です。
予算については、長期修繕計画の積立金だけで賄えるか、追加の一時金や借入が必要かを事前に精査する必要があります。
費用負担の不公平感が生じないよう、支払い方法や分割案についても慎重に検討しましょう。
スケジュールは、季節や天候・周辺地域のイベントなども考慮しながら、できる限り居住者への影響を最小限に抑える工期を組むことが求められます。
また施工業者の選定においては、実績や技術力だけでなく、アフターサービスや住民対応力なども重要な評価項目です。
複数社の見積もりを比較検討し、信頼できるパートナーを選びましょう。
大規模修繕?大規模模様替え?どちらを行うべきか判断するためのポイント
「大規模修繕」か「大規模模様替え」か、どちらが適切かを見極めるには、建物の状況や住民のニーズ、そして将来の方向性を多角的に判断する必要があります。
以下に、チェックすべき主要なポイントをまとめました。
建物の劣化状況を正しく診断する
修繕が必要な場合は、経年劣化や機能低下が明確に見られる箇所があるかどうかが判断基準になります。
雨漏り・外壁の剥離・防水層のひび割れなどは、放置すると重大なトラブルに発展する可能性が高いため、修繕の優先度が高くなります。
一方、特に大きな劣化が見られず、建物全体としては機能しているものの「使い勝手が悪い」「古くさく感じる」などの意見が多い場合は、模様替えによる機能改善や意匠改修が適しているといえるでしょう。
住民ニーズと資産価値のバランスを取る
住民が求めるのは、単なる機能回復だけではありません。
「より便利で快適な生活空間にしたい」「資産価値を維持・向上させたい」というニーズに応えるには、修繕に加えて模様替えを組み合わせる選択も有効です。
また、管理組合としては、将来的な売却や賃貸を見据えたときに、魅力的な物件として評価されるかどうかも重要な判断材料となります。
過去の修繕履歴と合わせて、今後の方針を長期的に見直す機会としましょう。
修繕と模様替えを組み合わせるケースも
必ずしも、二者択一で考える必要はありません。
近年では、大規模修繕のタイミングに合わせて模様替え工事を同時に行うケースも増えています。
これにより、足場を共用したり工事期間をまとめたりすることで、コストと時間を大幅に削減することが可能です。
ただし、内容によっては設計変更や法的な申請手続きが必要になるため、工事計画は早い段階で立てる必要があります。
専門家の協力を得ながら、住民の合意を得て進めていくことが、円滑な工事の鍵となります。
新東亜工業の施工事例|13階建てマンションの大規模修繕工事
東京都内にある13階建てワンオーナーマンションにて、新東亜工業が実施した大規模修繕工事の事例をご紹介します。外壁タイルやシーリング、屋上防水など複数の劣化箇所を総合的に改修し、建物の資産価値を回復しました。
工事概要【工事金額・期間】

工事金額:6,098万円/工期:約5か月間(足場設置〜引き渡しまで)
屋上防水・外壁タイル補修・シーリング打ち替えを中心に、建物全体をバランスよく修繕。
建物全体にわたる一貫した施工により、見た目と性能の両立を実現しました。
建物の劣化とオーナー様のご相談内容
長年手を入れていなかったマンションの修繕を検討し始めたオーナー様から、初回のご相談をいただいたのがスタートでした。
相談のきっかけ
築20年以上が経過し、目視でも劣化が感じられるように。最初は「少し気になる」という段階でしたが、調査を通じて複数の問題が明らかになっていきます。
オーナー様「タイルの剥がれや屋上の汚れが気になっていて…」
担当者「まずは図面を拝見して、現地調査で状態を見ていきましょう」
調査で明らかになった劣化状況
現地での打診調査や目視検査によって、建物の各所に進行した劣化が確認されました。オーナー様も驚かれるほどの症状が浮き彫りに。
屋上防水の劣化
既存の通気緩衝工法によるウレタン防水は、広範囲に劣化や膨れが生じていました。
オーナー様「花火の時期には屋上に上るんです。きれいになると嬉しいな」
現地調査員「眺望も大事ですね。美観にも配慮して施工いたします」
外壁タイルの浮き・剥離
浮きタイルが多数見つかり、剥離の危険性も。劣化の進行度に応じて、張替えと樹脂注入を使い分けました。
担当者「打診調査で見えない内部の浮きも確認しました。対応が必要です」
シーリングの硬化不良
シーリング材は硬化しきって弾性を失い、手作業での撤去が必要なほどでした。
現場職人「カッターが入らないくらい硬くなってます。全部打ち替えですね」
オーナー様「そこまで傷んでたとは…早めにお願いしてよかったです」
工事の流れと透明な対応
調査結果をもとに明確な見積書と診断書を作成。オーナー様に工程を丁寧に説明し、工事中も報告を徹底しました。
診断報告と見積提示
写真付きの診断報告書と、内訳を明記した見積書を提出。工事内容をわかりやすく共有しました。
オーナー様「写真があると素人でもわかりやすいですね」
担当者「透明性を重視していますので、何でもご質問ください」
工事の実施(足場~防水まで)
工程は足場設置から高圧洗浄、下地補修、シーリング、塗装、屋上防水まで。報告写真とともに進捗共有を行いました。
担当者「毎週の報告で進捗をご確認いただけます」
オーナー様「離れてても工事の様子がわかって安心できました」
工事完了後のオーナー様の声
見た目だけでなく機能性も向上した建物に、オーナー様からは満足の声が寄せられました。
オーナー様「すっかりきれいになりましたね。やってよかったです」
担当者「大切な資産を守るお手伝いができて光栄です」
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大規模修繕と大規模模様替えに関するよくある質問(FAQ)
大規模修繕と大規模模様替えを検討する際に、多くの管理組合や居住者の方々が抱える疑問をQ&A形式でまとめました。
これから工事を計画する方は、ぜひ事前に確認しておきましょう。
Q1:大規模修繕と大規模模様替えを同時に行うことは可能ですか?
はい、可能です。
同時に実施することで足場設置などの共通作業が一度で済み、費用や工期の効率化が図れます。
ただし、模様替えには追加の設計や確認申請が必要な場合があるため、十分な計画と住民の合意形成が不可欠です。
Q2:大規模修繕の周期やタイミングの目安は?
一般的には、12〜15年周期が目安とされています。
これは防水層や外壁材の耐用年数に基づいており、建物の劣化診断を行ってから実施計画を立てるのが一般的です。
Q3:大規模模様替えには補助金や助成金の対象がありますか?
はい、バリアフリー改修や省エネ設備導入といった内容であれば、国や自治体の助成制度の対象になることがあります。
対象条件や申請手続きについては、各自治体に確認が必要です。
Q4:長期修繕計画に模様替え内容を組み込むことはできますか?
基本的には、修繕工事と模様替え工事は別扱いになります。
しかし、将来的に必要とされる改修を見越して、長期計画に参考情報として盛り込んでおくことは可能です。
特に共用部分の更新については、タイミングを合わせることで効率化が図れます。
Q5:修繕か模様替えか判断に迷った場合、どうすればよいですか?
まずは建物の現状を専門家に診断してもらい、劣化状態や改善の必要性を把握しましょう。
そのうえで、住民のニーズや資産価値の向上を視野に入れて、どちらを優先すべきか管理組合内で検討するのがよいでしょう。
Q6:住民合意を得るために有効な説明資料や方法は?
図解入りのプレゼン資料や、工事前後のイメージ画像・費用対効果を示した比較資料などを使って説明すると、理解が得やすくなります。
また、アンケートや個別面談を活用し、双方向のコミュニケーションを意識することも大切です。
大規模修繕と大規模模様替えの違いを理解して工事を成功させよう|まとめ
大規模修繕と大規模模様替えは、どちらも建物の安全性・快適性・資産価値に大きな影響を与える重要な工事です。
しかし、それぞれの目的や内容・タイミングには明確な違いがあります。
大規模修繕は現状を維持し、建物の寿命を延ばすことを目的とし、大規模模様替えは将来的な価値向上やニーズへの対応を目的としています。
重要なのは、建物の状態を正しく把握し、住民の意見を尊重したうえで、目的に合った工事を選択することです。
必要であれば専門家のアドバイスを受け、修繕と模様替えを組み合わせた柔軟なプランニングを行うことで、より理想に近づける工事が実現できるでしょう。