マンションを管理していく上で、外せないのが長期修繕計画です。
しかし「長期修繕計画って必ず立てないといけないの?」「そもそも長期修繕計画って何?」と疑問に思っているかたも多いようです。
そこでこの記事では、長期修繕計画とは何か、どんな目的で行なわれるのか、といったことについて解説していきます。
これから長期修繕計画の立案を検討しているかたも、ぜひ参考にしてみてください。
目次
長期修繕計画とは
長期修繕計画とは、マンションを長期に渡ってメンテナンスしてくための計画のこと。
今後25~30年後までにどんな修繕をするか、どのくらい費用がかかるのか、といったことをまとめた計画表です。
将来どんな修繕が必要なのかを予測し、工事内容や時期などを検討し、マンション住人が快適に暮らしていけるように計画します。
長期修繕計画ではマンション住人から、いくら修繕積立金を徴収すれば良いのか、といったことも検討する必要があるでしょう。
長期修繕計画があれば、マンション住人も納得して修繕積立金を出してくれやすくなりますよ。
コンクリートの建物は100年持つと言われていますが、実際にはもっと早く劣化していきます。
マンションを良い状態で保つには、定期的に修繕を行なうことが必要です。
長期修繕計画の目的は?
長期修繕計画は、次のような目的で行なわれます。
修繕積立金の額の根拠にするため
長期修繕計画を立てることで、マンション住人から修繕積立金を集めやすくなります。
修繕積立金の額の根拠になりますからね。
一方で、未納が多く費用が不足すると計画的に修繕できなくなります。
定期的に一定の額を徴収していくことが大切です。
いざという時の備えにするため
マンションは徐々に劣化していくので、予想していなかった不具合が起こることも考えらえます。
例えば始めは小さなひび割れだったとしても、放置することで大きく劣化し、構造部分までダメージを受ける可能性があります。
しかし事前に計画していなければ、急に補修することは難しいでしょう。
特に大きなタワーマンションなどは、場合によっては修繕費用が億単位になることもあります。
大規模修繕工事をスムーズに行なうため
大規模修繕工事をスムーズに行なうためにも、長期修繕計画は大切です。
マンションの大規模修繕には数か月の期間を要します。
工事期間中は、工事業者がマンションに出入りしたり騒音が発生したり。
マンション住人の生活も不便になりやすいので、前々からマンション住人と情報共有しておくことが重要です。
長期修繕計画の項目は?
長期修繕計画は、作成者によって様式が異なるのが一般的ですが、国土交通省のガイドラインでは、以下のような項目で作成することを基本としています。
- マンションの建物や設備の概要など
- 調査・診断の内容
- 長期修繕計画の内容
- 修繕積立金の設定
長期修繕計画では、工事の計画と資金の計画の2つが特に重要です。
ちなみに長期修繕計画は、管理会社や設計事務所などに作成してもらうのが一般的ですよ。
長期修繕計画を見直すタイミングは?
長期修繕計画は、一定期間ごとに内容を見直す必要があります。
建物は計画通りに劣化していくわけではありませんからね。
管理組合の義務と法律で「見直しをしなければならない」と定められているので、必ず行なう必要があります。
少なくとも5年に1回は長期修繕計画を見直しましょう。
ちなみに見直しには1~2年ほどかかる場合が多いので、見直しも計画的に行なう必要がありますね。
修繕積立金の額もしっかりと見直しましょう。
長期修繕計画の注意点
長期修繕計画を行なう際は、以下のことに注意する必要があります。
必ずしも計画通りにはいかない
長期修繕計画は、あくまでも計画です。
長期修繕計画を立てたからといって、工事がスムーズにいかない場合もあります。
特に多いのが修繕積立金の不足です。
修繕積立金が未払いのマンション住人が増える可能性もありますし、予想以上にマンションの劣化が激しく、当初の予定よりも修繕費用が増えてしまうことも考えられます。
資金が足りない場合は修繕積立金を値上げしたり、追加で一時金を徴収したり、金融機関から借り入れを行なったりする必要が出てくるかも知れません。
できるだけ計画と実際の工事とのギャップが少なくなるように、定期的に長期修繕計画の見直しを行なうことが大切です。
小規模なマンションでは長期修繕計画が必要ない場合もある
すべのマンションに長期修繕計画があるわけではありません。
特に小規模なマンションでは修繕する箇所が少なく修繕する面積も小さいので、そもそも長期修繕計画を立てる必要性がない場合もあります。
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査」という資料によると、長期修繕計画を作成しているマンションは90.9%だという結果が出ています。
つまり9%ほどマンションでは、長期修繕計画を立てていません。
小規模なマンションでは不具合が発生する度に、その都度修繕工事を行なうケースが多いです。
マンション住人は修繕積立金を支払う必要がないので楽ですが、オーナーは突発的な修繕のために資金を確保しておく必要があるでしょう。
築30年以上のマンションでは専有部分の給排水管の更新も検討する
長期修繕計画では、専有部分の修繕内容を検討することが多いです。
専有部分は個人の自己責任ということになっているのですが、この点も注意が必要です。
経済的な事情により、個人で給排水管の工事を行なえない場合が多いのです。
しかしマンション側が専有部分の水漏れが原因で損害賠償を請求されたり、ご近所トラブルに発展する恐れもあります。
給排水管の問題を放置すると、結局は管理組合が関わらざるを得なくなるでしょう。
こうした事情により、専有部分の給排水管の更新についても、場合によっては長期修繕計画に入れておく必要が出てきます。
まとめ
最後に、今回の記事の内容を簡単にまとめていきます。
- 長期修繕計画は、マンションの長期的なメンテナンスに必要
- 修繕計画を立てることで、修繕積立金を集めやすくなる
- 将来見込まれる工事内容を計画しておくと、いざという時に対応しやすい
- 長期修繕計画は、作成者によって様式が異なる
- 5年ごとの見直しが必要
- 必ずしも計画通りにはいかない
- 小規模マンションでは計画が必要ない場合も
- 築30年以上のマンションでは、専有部分の給排水管の更新も検討する
長期修繕計画の作成は、長い期間がかかることが多いです。
最低でも1~2年前から計画を立てておくことと、建物の思わぬ傷みにも対処できるでしょう。
これを機会に、ぜひ長期修繕計画の立案や見直しを行なってみてくださいね。