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マンション大規模修繕に伴う開放廊下・ベランダの床の補修・改修工事を解説

マンションの大規模修繕では、主に共用部分の劣化や不具合を修繕します。

工事範囲は、建物内部の床、屋上、外壁、エレベーターなどの設備も含まれます。

なかでも「床」とは、各部屋の外壁と共用部分の床を指し、共用廊下、内部階段、バルコニー、の防水工事を行うことが一般的です。

そこで、マンションの大規模修繕に関わる床防水工事について、工事箇所の種類、どのような工事を行うのかを紹介します。

大規模修繕で床の防水工事を行うべき理由

マンションの床は、日々劣化しています。

予算の都合上、室内に水が漏れる可能性が低い床の工事は大規模修繕が必要になるまで先延ばしにしようとするケースは少なくありません。

しかし、床の防水工事を後回しにすることは、後悔につながるかもしれません。

ここでは、大規模修繕工事で床防水工事を行うべき理由を紹介します。

床から室内に水が漏れる可能性がある

床の表面がモルタルでできている場合、まずコンクリートが塗られ、その後防水モルタルが塗られます。

数年経つと床面に水がしみ込み、防水性が高いとはいえなくなるでしょう。

特に、ひび割れがある、コンクリートの施工が悪い場合は、室内に水が漏れる可能性が高いです。

建物のコンクリート内に浸入した水が、直下階のバルコニーの天井まで出てくれば、被害は洗濯物程度で済むでしょう。

しかし、内部の水路を通り、想定外の場所から水が漏れることもあります。

大規模な水漏れを止めるには、床を全面的に改修するしかありません。

一箇所だけ修繕しても、他の箇所にも修繕の必要が生じれば、対応に手間がかかります。

室内への水漏れを防ぐためにも、床の防水工事は欠かせないのです。

余計にお金がかかる

工事中に発生する一般的な管理費が余計にかかるだけではなく、ゴンドラの費用も大きいといえます。

ゴンドラの代わりに部分的に足場を組む場合でも、高額な費用がかかるためです。

また、部分的に足場を組む場合、安全のために壁の接続部分を通常より多くする必要があるかもしれません。

きれいな状態の壁に、たくさんの穴を開けることがデメリットだと感じる方もいるでしょう。

施工箇所別の床防水工事

床防水工事は、施工場所ごとに適した工法が異なります。

また、満足できる工事をするためのポイントもあります。

次は、大規模修繕工事で床防水工事をする具体的な場所、施工例をチェックしてみましょう。

各部屋のバルコニー

築年数にもよりますが、築10年以上のマンションでは、コンクリート打ち放し、モルタル防水、ウレタン防水塗装が主流でした。

現在は、防水ウレタン塗装や塩ビ滑り止めシート仕上げが一般的です。

まず、塩ビ滑り止めシートの周囲の水切り溝と野地板部分に防水ウレタン塗装を施し、数㎝巻いてから塩ビ滑り止めシートを貼ります。

従来のウレタン防水工法では、床面部分に汚れが溜まるため、下塗りから上塗りまで3回塗りが必要でした。

塩ビ滑り止めシートと比較して工程が多くなるため、階段や共用廊下など人が行き来する場所への施工には不向きです。

さらに、施工コストも割高になることから、現在では大規模修繕の主流は塩ビ滑り止めシートとなっています。

なお、色やデザインを選べる滑り止めシート仕上げに切り替えるマンションも多いです。

一般的には、すべり止めシートと排水溝の周囲をウレタン防水加工し、すべり止めシートを数センチ巻い(重ね)て貼ります。

共用部の内階段

内階段も廊下と同様、防水性能とデザイン性が求められるため、塩ビ製の滑り止めシートが使用されます。

滑り止めシートのデザインや色合いは廊下と同じですが、階段の配色やデザインが異なるマンションも多いです。

施工は廊下と同様に、溝や幅木にウレタン防水加工を施します。

共用部の廊下

マンションの共用部分である共用廊下の床を改修する場合、防水性能だけではなく、防滑シート工法も重視されます。

そのため、色やデザインのバリエーションが豊富な塩ビ製の滑り止めシート仕上げを大規模改修に採用するマンションが多いです。

工法はバルコニーと同じで、雨樋や幅木にウレタン防水加工を施し、滑り止めシートを巻いて覆います。

歩行音の抑制や転倒時の衝撃吸収などの機能を持つ滑り止めシートも登場しており、マンションの環境やニーズに合わせて選べるメリットがあります。

マンション床防水工事ごとの作業内容

床防水工事は、主にウレタン塗膜防水、塩ビ滑り止めシート貼り付けが挙げられます。

それぞれの作業内容を簡単に確認しておきましょう。

ウレタン塗膜防水の作業内容

ウレタン塗膜防水とは、ウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する防水施工方法です。

ウレタン塗膜は液状の材料であるため、複雑な形状の部分にも塗布できるという利点があり、ベランダや廊下、階段の排水口、幅木などの大規模な床改修工事に用いられます。

滑り止めシートの剥がれた部分から水が染み込むのを防ぐため、防水ウレタン塗料を塗布し、滑り止めシートを貼り付ける部分に10cm以上の余裕を持たせて貼り付けます。

塩ビ滑り止めシート貼り付けの作業内容

塩ビすべり止めシートは、主にアパートやマンションなどの集合住宅の共用廊下や階段、バルコニーなどに使用されるシート状の床材です。

人の出入りが多い場所で使用されるため、耐久性に優れ、滑りにくく、汚れも落としやすいことから、大規模修繕の際にも多くのマンションで使用されています。

また、塩ビ滑り止めシートは様々なメーカーが製造・販売しているため、色やデザインも豊富です。

マンションの階段や共用廊下など、見た目も重視される箇所に適している床材といえるでしょう。

さらに、マンションではデザイン性だけではなく、防滑性能も欠かせません。

歩行音も抑えられることから、大規模修繕工事では塩ビ滑り止めシートを貼る工法が採用されることが多いです。

地域環境に合わせた配色やデザインを採用することで、住環境のイメージアップにもつながるでしょう。

マンション床防水工事をする際の流れと注意点

マンションの大規模修繕工事で床防水を施す場合、どのような流れで工事を実施するのでしょうか。

ここでは、床防水工事ごとの注意点を確認しておきましょう。

床防水工事開始までの流れ

大規模修繕の場合、一般的に着工前に説明会を行い、作業日程を住民へ共有します。

工事が始まると、一般的な工事会社では各家庭の都合に合わせてバルコニーの工事日程を調整するという流れです。

また、共用廊下や階段の工事スケジュールは各階ごとに計画され、エントランスやエレベーター内の掲示板にお知らせやスケジュールが掲示されます。

工事開始前には、各階ごとにお知らせを掲示するのが一般的です。

床防水工事の注意点

床防水工事の注意点として、ウレタン塗膜防水や滑り止めシート貼りに必要なエポキシ系接着剤には、独特の臭いがあります。

事前に告知しますが、工事中はサッシを閉めなければなりません。

また、共用廊下やバルコニーの防水工事をする場合、不要なものがあると工事ができません。

告知する工事日程に従い、ベランダのエアコン室外機以外の不要品の片付け、共用廊下に保管している自転車やベビーカーなどの家財道具の屋内への片付けの周知徹底が重要です。

既存がモルタルやタイル仕上げの場合

バルコニーや廊下、階段などがモルタルやタイルの既存仕上げの場合、大規模修繕の一環として塩ビ製の滑り止めシートに変更するマンションが多くなっています。

事前に下地チェックを行い、モルタルのひび割れや浮きがあればエポキシ注入で処理しなければなりません。

床防水工事の流れや工事が必要な場所を把握しよう

マンションの大規模修繕では、経年劣化した部分の修繕を実施しますが、バルコニー、階段などの床も工事範囲に含まれます。

床防水工事は、建物の躯体が浸水することを防ぐほか、住民が快適に過ごすためにも必要です。

防水工事の必要性、工事の種類を把握して、場所やマンションの状態に適した施工をしましょう。

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