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歩行頻度に合わせた適切な防水工事の選び方|場所別に適した防水材も紹介

建物には、人の通行が多い場所と少ない場所があります。

人の通行の多さによって、床面が損傷する度合いも比例します。

常に人通りが多い場所には、適切な防水工事が必要です。

この記事では、歩行頻度の高い場所に対する防水工事の重要性を解説します。

また、歩行頻度が工事選定に与える影響や、歩行頻度を考慮した適切な防水工事の選び方について紹介していきます。

防水工法は歩行頻度も考慮して選ぶ

防水工事は歩行頻度も考慮して選ぶことが必要です。

歩行頻度が高い場所において、例えばアスファルト防水は直接歩行によって損傷しやすく、保護コンクリートまたは押さえコンクリートで保護する必要があります。

また、歩行頻度が低い場所では、露出防水でも問題ない場合が多いです。

歩行頻度を考慮しないと、防水層が早期に損傷することになり、修繕のための費用や手間がかかることになります。

歩行頻度が防水層に与える影響

歩行頻度が防水層に与える影響は以下の通りです。

歩行頻度が高い場所では、適切な保護措置を講じる必要があります。

防水層の摩耗

歩行によって防水層が摩耗し、表面が削れたり傷ついたりすることがあります。

また、防水層の表面が歩行によって磨かれ、防水層のコーティングが剥がれる可能性もあります。

これにより防水性能が低下し、水漏れのリスクが高まるのです。

防水層にかかる圧力

歩行によって発生する圧力は、防水層に負荷がかかります。

長期間にわたって高い圧力がかかると、防水層が破損したり変形したりする可能性が高いです。

防水層の亀裂

歩行による振動や衝撃は、防水層に亀裂が生じる原因となりかねません。

亀裂が発生すると、水が浸入して防水効果が損なわれる可能性が高いです。

磨耗: 防水層の表面が歩行によって磨かれることで、表面の保護層やコーティングが剥がれる可能性があります。これにより、防水層の耐久性が低下し、劣化が進むことがあります。

歩行頻度によって採用される防水工法

歩行頻度の高さによって、採用される防水工法は変わってきます。

大きく分けると、露出防水工法と保護工法の2種類です。

各工法は、防水層と下地の間に断熱材を挟むことで歩行が可能になる場合があります。

それぞれの施工する場所や用途によって、断熱材の有無が判断されているようです。

露出防水工法

露出防水は、防水面が露出している状態の工法です。

一般的には露出防水と保護防水があり、保護防水は防水層をコンクリートやモルタルで保護する方法です。

マンション屋上などでは露出防水が一般的で、アスファルト防水、シート防水(ゴムシート防水・塩ビシート防水)、塗膜防水(ウレタン防水、FRP防水、セメント)などの方法があります。

露出防水のメリットは、防水層が直接確認できるため、破損箇所の発見が容易なことです。

ただし、保護されていないため破損の危険性が高く、下地の水分が蒸発すると防水層が膨張しやすく破損の原因になることがあります。

保護工法(押さえコンクリート)

保護工法(押さえコンクリート)は、比較的歩行頻度が高い場所で採用されています。

一般的には、シート防水工法やウレタン防水工法で施工された防水層の上から押さえコンクリートを載せる工法です。

また、アスファルト防水は直接歩行に使用すると損傷しやすく、保護コンクリートまたは押さえコンクリートで保護する必要があります。

押さえコンクリートは紫外線から防水層を守り、屋上やバルコニーの防水層の上に施されます。

歩行レベル別の防水工法の選び方

歩行レベル別に防水工法の選び方を表をまじえて紹介します。

歩行レベル

歩行レベルとは、場所によって人の出入りの頻度を表すレベルです。

防水工法を選ぶ上での指標となっています。

歩行レベル内容
非歩行・基本的に人が立ち入ることはないが、屋上には点検や清掃などのメンテナンス時に人が立ち入る場合がある
・設備の点検など通路として使用する場合は、軽歩行仕様に準じる必要がある
軽歩行・屋上には特定数の人が立ち入り、防水層に負担をかけないゴム底の靴やスリッパを着用しての歩行が可能
・屋上利用は建物の所有者など限定的な人に制限され、歩行頻度も比較的少ない
歩行・屋上の利用には不特定多数の人が立ち入り、台車なども使用する可能性があるため、コンクリート保護仕様が必要
・利用の制限を原則として設けず、不特定多数の人の歩行に対応するため、露出防水は適さない
重歩行・不特定多数の人が立ち入る
・一般車両の走行が可能

歩行レベルに適した防水工法

歩行レベル別に適している防水工法は以下の通りです。

歩行レベル防水工法耐摩耗性
非歩行アスファルト防水(保護モルタル仕上げ)ゴムシート防水ほとんどない
軽歩行塩ビシート防水ウレタン防水低い
歩行重歩行FRP防水セメント防水高い

耐摩耗性とは

耐摩耗性とは、物質が摩擦や擦過によって摩耗する際に、その耐久性を示す性質のことです。

防水材料が摩耗に対してどの程度耐えられるかを表す指標です。

耐摩耗性が高い材料は、長期間にわたって使用されても劣化が少なく、寿命が長いとされます。

耐摩耗性が高いFRP防水は、国土交通省や建築学会JASS8仕様では露出防水の中で唯一「通常の歩行に適用可」に認定されています。

歩行頻度が高く防水工事が必要な場所

歩行頻度が高く、防水工事が必要な場所を表にまとめました。

また、歩行レベルに合わせて、適している防水工法も紹介しています。

場所歩行レベル防水工法
屋上非歩行
軽歩行
アスファルト防水
ゴムシート防水
ウレタン防水
ベランダ
バルコニー
軽歩行
歩行
ウレタン防水
FRP防水
開放廊下軽歩行
歩行
塩ビシート防水
FRP防水

屋上に関して補足をすると、デパートの屋上や、屋上に駐車場がある場合においては、歩行レベルが「歩行」または「重歩行」となります。

この場合、耐摩耗性の高いFRP防水やセメント防水での施工が適していると言えるでしょう。

歩行頻度が多い場所への防水工事のポイント

歩行頻度が多い場所への防水工事のポイントは以下の通りです。

防水層の厚み

歩行頻度が高い場所では、防水層の厚みを増やすことで、耐久性を向上させることが可能です。

厚みのある防水層は、表面の摩耗や圧力に対しても強く、劣化が進みにくいとされています。

歩行頻度が高い屋上などで防水工事する場合は、防水層を厚くすることで歩行可能になる場合があります。

ウレタン防水とFRP防水の複合による防水工事がその一例です

保護措置

歩行頻度が高い場所では、アスファルト防水は直接歩行によって損傷しやすく、保護コンクリートまたは押さえコンクリートで保護する必要があります。

防水層の上にコンクリートを打設することで、防水層を熱や衝撃から保護します。

これにより防水層の寿命を延ばし、耐久性を向上させることが可能です。

また、歩行面には表面の保護だけでなく滑り止め効果を高めることも重要です。

防水層の選定

歩行頻度が高い場所では、アスファルト防水ではなく、FRP防水望ましいとされています。

またシート防水や塗膜防水などは、単体で施工せずFRP防水との複合による防水層を形成することも効果的です。

まとめ

ここまで、防水工事において、歩行頻度の高い場所では適切な防水工法を選ぶ必要がある点について解説してきました。

歩行頻度に応じて採用される防水工法は、露出防水と保護工法の2種類に分けられます。

露出防水は防水面が露出しており、破損箇所の発見が容易ですが、保護されていないため破損の危険性が高くなります。

保護工法では押さえコンクリートなどを使用して防水層を保護します。

また、防水工法の選定には、耐摩耗性の高さで選ぶことが重要です。

耐摩耗性は、物質が摩擦や擦過によって摩耗する際の耐久性を示す性質です。

以下は歩行レベル別の防水工法の選び方です。

  • 非歩行: アスファルト防水(保護モルタル仕上げ)やゴムシート
  • 軽歩行: 塩ビシート防水やウレタン防水
  • 歩行: FRP防水やセメント防水、シート防水やウレタン防水との複合防水
  • 重歩行: FRP防水やセメント防水

これまでの内容をふまえて、適切な防水工事を施しましょう。

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