マンションの長期的な維持管理において、大規模修繕工事は欠かせません。建築基準法では、これらの工事を「修繕」と「模様替え」の2種類に定義していますが、実際の現場では「改修」「補修」など類似した用語も使用され、混乱を招くことがあります。
大規模の修繕、大規模の模様替え、そして改修工事は、それぞれ異なる目的と手法を持ちます。特に、模様替えは建築確認申請が必要となる場合があり、法的な手続きの面でも重要な違いがあります。
本記事では、これらの用語の正確な定義と違いを解説し、特にマンションにおいて大規模修繕が推奨される理由を探ります。建築や法律の専門知識がなくても理解できるよう、分かりやすく説明していきます。マンション管理に携わる方々にとって、適切な工事計画を立てる上で役立つ情報をお届けします。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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マンション大規模の修繕とは|大規模模様替えとは違う?
マンションの大規模の修繕とは、経年劣化したマンションそのものや設備を一定期間に1度修繕する工事です。
特に、マンションの躯体を維持するための大規模修繕や、共用部分の改修など、定期的に実施することが難しい修繕を指します。
建築基準法では、以下のように定義されています。
建築基準法第2条第14号
大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
引用元:建築基準法
建物を美観上許容できる状態に戻すだけではなく、可能な限り元の状態に戻すために行われる工事です。
主要構造部とは
主要構造部とは、次の部分を指します。
- 壁
- 柱
- 床(最下階の床以外)
- はり
- 屋根
- 階段
建物を新築時の状態に近づける工事であり、使用する材料は基本的に修繕前と同じです。
例えば、外壁のタイルの緩みやひび割れを同じタイルに張り替えることなどが「修繕」といえるでしょう。
大規模の修繕と補修の違い
大規模修繕の場合、似た言葉で「補修」という言葉を使います。
言葉のニュアンスとしては似ていますが、厳密には違いがあるため、工事を検討している方は詳しく理解しておくことが大切です。
マンションの補修は、建物の劣化や破損した部分を、使用に支障がない程度に補う工事のことです。
現状回復ともいわれ、建物の損傷部分や劣化を補い、使用するうえで問題のない状態まで回復させます。
例えば、水が漏れている箇所のシーリングを打ち替えるのが補修工事です。
修繕は建物を元の状態に戻す目的で行われますが、補修は「一時的に使用できる状態にする工事」ともいえます。
修繕と補修という言葉だけを聞くと同じような工事だとイメージしますが、「修繕=新築時の状態に戻すこと」と「補修=一時的に問題ない状態にすること」であり、目的が異なるということを理解しておきましょう。
大規模の模様替えとは
建築基準法の定義では「模様替え」となっていますが、建築業界では「改修」と呼ばれます。
建築基準法では、以下のように定義されています。
建築基準法第2条第15号
大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
引用元:建築基準法
「模様替え」と「改修」は言葉が異なるため、工事内容も違うように感じる方も多いかもしれません。
しかし、「模様替え」と「改修」は基本的に同じ工事を指します。
意味としては、「模様替え」は屋内の模様替えを連想させるため、一般的には大規模修繕の際に「改修」が使われます。
模様替えや改修工事は、マンションなどの建物の機能や性能を現在の水準以上に向上させます。
結果、資産価値を維持するだけではなく、価値を高めることにもつながるでしょう。
修繕の場合は修繕前と同一の材料が使用されますが、模様替えや改修工事の場合は異なる材料や仕様のものが使われます。
具体的には、外壁を耐久性の高い塗料に塗り替える、玄関ドアを自動ドアにする、宅配ボックスを設置するなどです。
なお、マンションの機能・性能を向上させる工事を「改良」と呼び、模様替えや改修は、修繕と同時に改良をする工事全般を指します。
模様替えや修繕の大規模かどうかの判断基準
大規模の修繕とは、主要構造部のうち1か所、50%超の範囲を修復することを指します。
例えば、屋根の修繕をする場合、屋根の面積50%を超えた場合、建築基準法において「大規模」修繕となります。
大規模の修繕・模様替えに該当した場合の確認申請の要否
大規模の修繕で確認申請を出す必要があるケースは、「建物の主要構造物(壁・柱・床・はり・屋根または階段)の1種類以上の半分以上に対して行う修繕(原状回復)もしくは模様替え(改良)」です。
そのため、多くのケースでは確認申請は必要ありません。
確認申請の要否は建築基準法に基づいて判断されますが、施工業者や自治体によって判断が異なる場合があるため注意しましょう。
大規模の修繕・模様替えを依頼する業者に、確認申請について確認しておくと安心です。
マンションは大規模模な様替えではなく修繕工事がおすすめ
ここでは、マンションで大規模の修繕を行うことがおすすめの理由、大規模修繕のメリットについて紹介します。
大規模模様替えでなく大規模修繕な理由1.マンションの安全を守る
マンションの修繕工事では、建物の劣化状況を診断し、適切な修繕工事を進めます。
外からは見えなくても、建物の内部の見えない箇所で劣化が進んでいることは珍しくありません。
マンションの劣化状況を確認し、適した周期で大規模修繕を行うことで、建物の劣化を食い止め、安全性を保つことができます。
大規模模様替えでなく大規模修繕な理由2.居住性の向上
定期的なメンテナンスをせずに住み続けていると、マンションの劣化により不具合が発生します。
また、カビやシロアリの発生、階段や床がきしむ、ドアや窓の取り付け不良などによる居住性の低下も懸念されるでしょう。
さらに、新築時には新しかった設備でも、5年、10年と経つと古くなり、交換部品の調達が不便になることもあります。
さらに、高齢化や家族構成の変化によって、バリアフリーや防犯設備が必要になるケースが多いです。
修繕だけではなく、必要に応じて大規模な模様替えを行い、外観や機能も最新のものに更新することで、資産価値を高めて住みやすさを飛躍的に向上させます。
大規模模様替えでなく大規模修繕な理由3.資産価値の維持
建築当初はしっかりした造りのマンションでも、経年劣化などにより不具合が生じることがあります。
不具合の修正を先延ばしにしてしまうと、資産価値の低下につながるため注意が必要です。
例えば、マンションの場合は大規模修繕の状況によって販売価格が変動する傾向があります。
中古マンションの購入を検討している方がいたとしても、すぐに大規模修繕が行われる可能性があるとなれば、修繕積立金の値上げや追加徴収の可能性を考えて購入をためらうかもしれません。
分譲マンションや賃貸マンションの修繕工事を定期的に行うことは、マンションの安全性を守り、資産価値を守ることにつながります。
大規模模様替えでなく大規模修繕な理由4.新築マンションのような見た目になる
マンションは常に紫外線や雨などのダメージを受け、特に外壁はその影響を受けやすく、剥がれや浮きなどの劣化を引き起こします。
外壁の劣化を放置しておくと、見た目が悪くなるだけではなく、安全性にも悪影響を及ぼすでしょう。
大規模修繕を行い、建物を守り、美しい外観を保つことができれば、居住者も快適な生活を送ることができます。
外壁塗装工事でよくある質問
Q
外壁塗装の費用はどのくらいかかりますか?
A
一般的には、40坪の住宅(塗装面積160㎡、シリコン塗料)で90万円〜120万円程度が相場です。塗装面積や使用する塗料の種類によって異なります。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
外壁のみの場合は約10日、外壁と屋根を同時に行う場合は約14日程度かかります。ただ、天候や建物の状態によって日数は変わることがあります。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがあります。また、足場の設置や養生シートのために窓が開けられないことや、洗濯物が干せないこともあります。事前に工事開始のご連絡はいたしますので、ご安心ください。
工事の種類と目的を理解して大規模修繕や模様替えの計画を立てよう
建築基準法では大規模修繕の定義に「修繕」や「模様替え」という言葉を使用していますが、建設業者は「修繕」のほか「改修」という言葉を使っています。
大規模の模様替えと改修は同じ意味の工事ですが、修繕と改修となると理論的に工事内容に違いがあるため注意が必要です。
業者から提出された見積書を確認するためにも、用語の違いを理解しておかなければなりません。
工事の種類、言葉の意味を理解し、大規模修繕を進めましょう。