地下水槽・受水槽・高置水槽・防火水槽など、様々な水槽設備は建物に不可欠です。ウレタン防水やエポキシ樹脂などを使って徹底した防水対策を行って設置されますが、これらの設備も経年劣化を起こします。そのため、鉄板やコンクリート水槽の防水塗装による補修が必要です。
そこで本記事では、水槽防水工事が必要な種類・貯水槽の防水工事の流れ・高置水槽の防水工事を行う際のポイントなどを解説します。また、信頼できる防水工事業者の選び方についても触れます。防水工事に関する疑問を解決できる内容を掲載していますので、ぜひご覧ください。
目次
水槽防水工事が必要な理由
水槽に防水工事が必要だという認識をお持ちの方は少ないのではないでしょうか。
水槽設備は普段目につかない場所に設置されていることが多く、意識することも少ないでしょう。
水槽設備に防水工事が必要な大きな理由を2つ紹介します。
水槽防水工事が必要な理由|水漏れを防ぐため
水槽に防水工事を施す理由に、水漏れを防ぐためというものがあります。
水槽にしっかりと防水加工が施されていないと、水槽内部から水漏れが発生し、屋上の防水層では賄えないほどの水が溜まってしまうと、屋内への漏水に発展しかねません。
漏水は屋内の設備にも影響し、損害責任を問われる可能性も少なくないため、水槽、または水槽まわりのコンクリートへの防水工事はとても重要になります。
防水に対する意識の薄さが、重大な損害につながりかねないことは認識しておきましょう。
水槽防水工事が必要な理由|水槽内の水を汚染から守るため
水槽に防水加工を施すと、水槽内の水の汚染を防ぐことが可能です。
水を外部に漏らさないようにすることと、内部の水を汚染から守ることは紙一重なのです。
水槽内に雨水、汚染水が侵入するのを防ぐためにも、水槽への防水加工は必要です。
水槽防水工事をせず劣化を放置した場合のトラブル
水槽設備の防水加工は経年により劣化が進みます。
防水機能が低下した防水層を使用し続けると、漏水を引き起こし、設備によっては深刻な問題へとつながりかねません。
水槽防水工事の漏水
水槽設備の劣化を放置すると、まず漏水の危険性が高まります。
多くの場合、建物の水槽設備は屋上に設置されていることが多く、漏水による被害は計り知れません。
建物の躯体への損傷
水槽設備の劣化の放置による漏水は、建物の躯体に大きなダメージを与えます。
建物の躯体は、コンクリート部、鉄筋部が主ですが、漏水した水はコンクリート内部の微細なひび割れを伝って鉄筋にたどり着き、錆によって膨張させ、内部で爆裂を引き起こし、コンクリート内部に大きな空洞をつくりかねません。
漏水が長期に渡って発生した場合はさらに建物への影響は深刻なものになるでしょう。
建物の設備への損傷
水槽設備の劣化を放置による漏水は、建物の設備を損傷させる可能性があります。
例えば、エレベーター、エスカレーター、冷暖房システムが水の侵入により故障してしまうことが考えられます。
お金で済む問題だけではなく、夏場の冷房、冬場の暖房が使えないと健康への被害も考えられます。
エレベーターの故障はお年寄りが外出できない、病人が部屋に帰れない、など、多くの被害が予想されるのではないでしょうか。
水槽防水工事が必要な設備の種類
次に、防水工事が必要な水槽設備を確認していきましょう。
貯水槽|水槽防水工事で雨水をブロック
貯水槽とは、水をためることができる設備の総称で、受水槽・高架水槽も含められます。一般的によく見かける形状は、クリーム色で四角形のものが多いでしょう。
受水槽は主に建物の1階外部か地下に設置されているものを指し、マンションの屋上などに設置された貯水槽は、多くの場合、金属の架台によって支えられていて、これを高架水槽といいます。
この高架水槽は、架台と受水槽の両方が老朽化している場合、金属の架台が錆びて、錆の混ざった雨水が受水槽に侵入してしまうことが考えられます。
また、高置水槽というものもあり、高置水槽は架台を使用せずに直接設置されているものです。
防火水槽|貯水槽防水工事で火災時の備え
防火水槽は大きな火事や震災などが発生したときに使う、国や自治体が管理する設備です。
多くの場合、地下に設置されています。
多くの命が守られるはずが、防水層の劣化による漏水が進んで、中を開ければ空っぽ!という事がないよう、普段からメンテナンスが必須です。
プール|水槽防水工事で建物や環境を守る
プールは公共なものが多いイメージですが、一部の富裕層が所有する建物にも、ジャグジーなどのように、備え付けられているものもあるでしょう。
プールには常に塩素で消毒された水が貯められていて、防水加工の老朽化により外部に漏れ出てしまい、塩素による環境への影響をもたらすことが十分に考えられます。
また、大量の水が一般家庭から漏れると、近辺に大きな損害が出る可能性が考えられますね。
プールに防水工事が必要なことは認識しておきましょう。
貯水槽防水工事の流れ
貯水槽の一般的な防水工事の流れを紹介します。
貯水槽の外部、いわゆる塗装による防水施工の一例です。
貯水槽防水工事の流れ1.ケレン・清掃による下地調整
貯水槽は多くの場合、外気にさらされ、常に風や紫外線の影響を受けているため、その外部は汚れが付着している状態です。
よごれや、劣化した塗膜をケレンなどで除去し、下地調整を行います。
貯水槽防水工事の流れ2.プライマー塗付による下塗り
貯水槽の鉄部に、下塗りとして、腐食防止効果のあるプライマーを塗ります。
腐食効果のある塗料を塗ることで、被膜を作り、防水層の鉄の部分の酸化を防ぎ、防錆効果が得られます。
貯水槽防水工事の流れ3.中塗り
次に、中塗りとして、シリコン塗料を塗付します。
下地のプライマーとの相乗効果で、太陽光による劣化を防ぐことが可能です。
貯水槽防水工事の流れ4.上塗り
次に、シリコン塗料をさらに上塗りしていきます。
何層も重ね塗りをすることで強固な防水層を作り上げ、ひび割れや水漏れを防ぐことができ、地震による被害も最小に抑えることが可能です。
このように、貯水槽の防水工事は塗装によっての施工が可能です。
高置水槽の防水工事を行う際のポイント
高架水槽・高置水槽と呼ばれる貯水槽は多くの場合、屋上に設置されていて、自然にさらされているので、外側の定期的な点検、メンテナンスはとても重要です。
有効容量が10㎥を超える貯水槽は水道法で年に一回以上、水質も含めた点検と、水槽の掃除が義務付けられています。
防水の観点からの注意するべきポイントは、貯水槽のタンク部分はもちろんですが、鉄部の劣化程度の確認も重要になってきます。
タンク部の劣化の症状として、塗膜が剥がれてしまうことがあります。
塗膜が剥がれて、貯水槽に直接太陽光が当たると、内部の水に藻やコケを発生させてしまう要因にも。
また、鉄部は言うまでもなく、塗膜が剥がれると錆が進行し、タンク内部の水質に悪影響を与えてしまいます。
高架水槽・高置水槽など、タンクを支える架台も鉄製のものが多く、貯水層内部へ悪影響を及ぼすことは認識しておきましょう。
タンクを支える架台への防水工事は錆対策だけではなく、地震対策にもなりますので、ぜひ貯水槽の防水と同じ頻度でのメンテナンスをおすすめします。
出典:貯水槽水道に関するQ&A | くらしと水道 | 東京都水道局 (tokyo.lg.jp)
水槽防水工事業者の選び方
水槽・または水槽まわりのコンクリート防水を考えるにあたり、まず、防水工事業者の選定を進めていくことが最初のステップです。
防水工事業者の選定の進め方を紹介します。
水槽防水工事を専門とする業者に依頼する
水槽・水槽まわりのコンクリート防水は防水工事専門の業者に依頼しましょう。
防水工事専門業者とは、屋上防水・バルコニー防水を専門に行う業者のことを指します。
塗装業者でも水槽・水槽まわりのコンクリート防水は防水材の塗布がメインなので、施工は可能なのですが、
塗装業者に比べると、防水業者の方が防水に関する塗料の取扱いに慣れていて、知識も豊富です。
また、架台など、ひび割れなどが多数ある場合は、幅が細かいもの、広いものとでは補修方法も異なるため、
塗装業者では補修ができないことも考えられます。
水槽・水槽まわりのコンクリート防水を依頼するのは、他に補修すべき箇所を見つけるためにも、防水のスペシャリストである防水工事専門業者がベストだといえます。
水槽防水工事の施工実績を確認する
防水工事専門業者は多数存在し、どこに依頼するか迷ってしまうことが考えられます。
その場合は、それぞれの業者の施工実績を確認してみましょう。
所有されるマンション・建物の大きさに見合った実績を多く持つ業者を選びましょう。
水槽防水工事の前に現地調査を十分行っている
防水工事専門業者への依頼は最初は電話かメールでコンタクトを取る場合が多いと考えられます。
その際に、状況を耳で聞くだけではなく、必ず現地調査を希望してくる業者を選びましょう。
現地を見ないまま見積もりを行って、そのまま施工することになると、別の箇所で不良箇所が見つかった場合、追加工事に対して十分な準備がなされないままになってしまい、材料・工具の調達を再度してから別日での施工になりかねません。
同日に補修できるものを2日に分けて行うと、人件費・手間がかさばり、費用も膨れ上がります。
防水工事専門業者への依頼は、必ず現地調査を積極的に行い、こちらの意図を汲んだ補修計画を組んでくれる業者を選定しましょう。
また、見積もりを受け取り、疑問がある場合は担当者に質問をしてみましょう。
一つ一つの項目の見積もりには必ず根拠があるはずなので、担当者との信頼関係を築くためにも、少しでも疑問に感じたことは聞いてみて、納得できる費用で契約しましょう。
水槽防水工事の保証やアフターサポートの有無
防水工事業者と、塗料メーカーは工事内容・塗料の効果において、保証書を出してくれます。
施工後に施工不良が見つかった場合、保証書の期間内であれば無償で補修してくれる場合が多いので、業者から保証書の発行を提案をしてくれると安心ですね。
しかし、保証書の発行は施工方法、塗料メーカーによって保証の有無・期間が異なることは知っておきましょう。
次の防水工事のタイミングを考慮して耐用年数と保証期間を考慮した提案をしてくれる業者は今後長く付き合いたくなる業者だといっても過言ではありません。
また、業者独自で行っているアフターサポートの内容も確認しておきましょう。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
水槽防水工事のまとめ
これまで、水槽のコンクリート防水の必要性や、その施工方法、業者選びのポイントなどを解説してきました。
要点を以下にまとめてみました。
- 貯水槽の防水工事は水漏れを防ぐため以外に、タンク内への汚水の侵入を防ぐためでもある
- 水槽設備の劣化を放置すると、建物の躯体、または屋内の設備にまで損害を与える可能性がある
- 水槽設備の種類は、貯水槽・防火水槽・プールなどがある
- 水槽設備の外部の防水工事は架台にも気を配るべき
- 高架水槽・高置水槽まわりの防水工事は地震対策にもなり得る
- 貯水槽の防水工事は防水工事専門業者に依頼するべき
貯水槽や、その周りへの防水工事は日々、建物を管理する立場として、人々が安心な生活を送るため・または大切な資産を守るためにも、とても重要な工事です。
そのうえで、業者選定は信頼関係が築ける業者を選定したいものですね。
是非、費用・施工方法の両方に納得のいく防水工事を行ってください。