「雨漏り」と聞くと、多くの方が「屋上からするもの」とイメージするのではないでしょうか。確かに屋根は、雨漏りが発生しやすい箇所です。しかし外壁もまた、雨や風・紫外線・寒暖差から私たちの暮らしを守る重要な役割を担っています。
外壁からの雨漏りは、建物の劣化を加速させる深刻な問題です。サイディングの隙間やコーキングの劣化など、外壁のどの部分から雨漏りが発生しやすいのか、その原因とメカニズムを理解することが、効果的な防水処理の第一歩となります。
本記事では、外壁からの雨漏り対策と、雨漏りを防ぐための防水処理方法について詳しく紹介します。雨漏り修理やリフォーム・外壁塗装による補修など、様々な角度から雨漏り対策を解説していきます。また防水工事の具体的な方法や、サイディングの特性を考慮した修理方法についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
外壁の防水修理が必要な雨漏りの特徴
外壁から発生する雨漏りは、屋根から発生する雨漏りとは少し特徴が異なります。
屋根からの雨漏りであれば、雨の日に室内に雨水が落ちてきたり、雨の翌日に天井にシミができたりと、すぐに症状が表れやすいです。
しかし、外壁からの雨漏りは屋根からの雨漏りとは異なります。
最初に、外壁に発生する雨漏りの特徴を解説します。
外壁の防水修理が必要な雨漏りの特徴1.台風や強風のときのみの雨漏り
外壁が原因の雨漏りは、台風のときだけ雨漏りをします。
雨漏りは強風を伴う大雨の日にしか起こらないことが特徴です。
雨が降るたびに雨漏りするわけではなく、台風や強風時など限られた条件下でしか症状が現れない場合は、外壁に問題がある可能性があります。
真上から降ってくる雨を受け止める屋根が劣化していれば、雨が降って比較的短時間で室内側(屋根裏や室内の天井など)の雨漏りの症状が現れます。
一方、外壁は垂直方向からの雨が当たりにくく、風を伴わない少量の雨で外壁から雨水が浸入するとは考えにくいのです。
しかし、台風の日など大雨が降ったり、風で横殴りの雨が降ったりすると、当然ながら大量の雨水が外壁に当たり、外壁は濡れます。
外壁にひび割れやシーリング不良があると雨水が浸入し、室内に雨漏りの症状を引き起こします。
これが「台風の日に突然雨漏りする」「同じ雨の日でも、雨漏りする時としない時がある」理由です。
外壁の防水修理が必要な雨漏りの特徴2.時間差で雨漏りの症状が出る
屋根から屋内に侵入した雨水は、重力によって徐々に屋内に落ちていきます。
外壁の欠陥部分から侵入した雨水は、基本的に垂直方向に移動します。
例えば、外壁の高い位置から雨水が侵入したとしても、水平方向に移動して屋根の高さで雨染みになるケースは稀です。
さらに、外壁の内側に防水紙が張られているため、仮に外壁から雨水が浸入しても室内に雨水が侵入することはありません。
断熱材に水分が含まれていたとしても、室内に到達するまでには相当な時間がかかるのです。
屋根の雨漏りに比べれば、室内に雨染みができるなどの症状に気づくまでの時間はかなり遅いといえます。
しかし、防水紙に問題があれば、雨水が室内に侵入する可能性があります。
現在、目に見える雨漏りの兆候がなくても、以下のようなことがあれば、外壁からの雨漏りを疑い、屋根の雨漏り専門業者に点検を依頼しましょう。
- 晴れていても部屋の湿気が気になる
- 屋内のカビ臭さが気になる
- シロアリや羽アリがいる
外壁からの雨漏りは、外壁内部が長期間雨水に浸かり腐食が進行している可能性があるため、早めのメンテナンスが必要です。
外壁の防水塗装は修理前の予防措置
外壁塗装だけでは、外壁の雨漏りは直りません。
外壁塗装の目的のひとつは、外壁の防水性を高めることです。
外壁に使われている窯業系サイディングやモルタルは水に弱く、雪や風雨、湿気によって外壁に水がしみ込んでしまいます。
そのため、外壁塗装工事で外壁表面に塗膜を形成することで、防水性を向上させ雨漏りを防ぐことが目的です。
しかし、すでに雨漏りが発生している場合、雨水が外壁を貫通して室内に侵入しているということです。
外壁表面の防水性だけを高めても、穴やひび割れは補修されず、雨漏りは改善されません。
外壁から雨漏りした場合は、塗装よりも外壁の補修が優先です。
外壁のひび割れや亀裂を補修すれば、隙間を埋めることができ、雨漏りの根本的な原因を取り除けます。
外壁から雨漏りがしている場合は、外壁補修の専門業者に依頼しましょう。
ただし、外壁の内部構造は複雑なため、雨漏りの場所を特定しにくいことがあります。
そのため、補修技術だけでなく、点検に関しても知識と経験がある業者を選ぶことが大切です。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できるケース
塗装はあくまでも家の劣化を防ぐものであり、根本的に雨漏りを直すものではありません。
しかし、場合によっては塗装によって雨漏りが改善されることもあります。
ここでは、外壁塗装で防水処理ができるケースを紹介します。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できるケース1.施工時の塗装ミスや技術力不足による雨漏り
モルタルなどの外壁材は、現場で調合して職人が仕上げるため、職人の技術で仕上がりに大きな差が生じます。
新築なのに外壁にひび割れがあり、ひび割れ付近から室内に雨が漏っている場合は、施工時の塗料の量が不足している可能性が高いです。
さらに、ムラがあったりしてひび割れが生じているケースもあります。
塗装に問題がある場合の雨漏りであれば、塗り替えで直すこともできます。
しかし、塗装や外壁材の下には防水シートなど雨水を防ぐ材料があるため、塗装が直接の原因となって雨漏りすることは稀です。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できるケース2.鉄骨・鉄筋コンクリート造の建物
建物にはサイディングやモルタルなどの一次防水と、防水シートやアスファルトフェルトの二次防水で雨風から建物を守っています。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の多くは、一次防水しか施されておらず、外壁材の裏側に防水シートが貼られていないことが多いです。
そのため、その場合は雨漏り防止のために屋根の塗り替えが必要になることもあります。
しかし、すでに雨漏りがあり、防水層に水が浸入している場合は、塗装以外を検討しなければなりません。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できないケース
業者に雨漏り修理を依頼し、外壁塗装を勧められることがあります。
しかし、外壁補修後に塗装が必要になる可能性もあるため、業者の説明をよく聞いてから判断しましょう。
外壁塗装で雨漏りが直らないケースを紹介します。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できないケース1.塗装の裏側・内側部分に問題がある
塗装は建物の一番外側にあり、塗装と家の中の間には防湿・断熱構造があります。
塗装だけでなく、塗装の下や内側の部分も劣化していると、塗り替えだけでは雨漏りは直りません。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できないケース2.塗り替えた箇所以外にも雨漏りの原因がある
塗り替え箇所だけでなく、建物内の複数の箇所から雨水が侵入し、雨漏りしているケースもあります。
例えば、雨漏りの原因を探っていたところ、塗装部分の劣化を発見し、塗り替えをすることになったとします。
ただし、窓サッシやバルコニー・ベランダなど、補修箇所以外から雨水が浸入している場合は、その箇所も補修しなければ雨漏りは直りません。
また、塗装だけでなく、塗装の下や内側も劣化している場合は、塗り替えだけでは雨漏りは直らないでしょう。
外壁塗装の防水で雨漏り修理できないケース3.塗り替え時の施工不良
屋根を塗装する際、屋根材の隙間に塗料が詰まるのを防ぐために「縁切り」という作業があります。
縁切りが不十分だったり、工程が省略されていたりすると、塗料が水の通り道をふさぐ状態です。
結果、屋根から雨水が抜けなくなり、雨漏りにつながることもあります。
雨漏りを防ぐために塗装をしたにも関わらず、逆効果になってしまうケースもあるのです。
外壁の防水修理が必要な雨漏り侵入箇所
外壁からの雨漏りは、雨水が建物内に浸入する場所を特定することが重要です。劣化しやすい外壁の部分や雨漏りが発生しやすい箇所について、以下で紹介します。
サッシ周りのシーリング材
窓を取り付けるサッシ周りのシーリング材は、経年劣化や環境要因で傷んでくることが多いです。シーリングが割れたり隙間ができたりすると、雨水が浸入し、雨漏りを引き起こします。また、サッシを固定する釘やネジが緩んだり変形したりすると、雨水が侵入する原因になります。
サイディングボードの目地部分
窯業系サイディングボードの目地部分に充填されているシーリング材も、時間の経過と共に劣化して薄くなったり、割れたりします。シーリング材が剥がれ、隙間ができると、雨水が浸入しやすくなり、雨漏りを引き起こすことがあります。
幕板
幕板は外壁の目地を隠し、外観を美しくするために使用されますが、裏には目地があり、目地部分のシーリング材が劣化すると、雨水が侵入しやすくなります。幕板周辺も定期的に点検し、劣化が見られる場合は早急に修理を行う必要があります。
外壁の傷や変形
モルタル外壁に発生するひび割れや、窯業系サイディングボードの反りやひび割れからも雨水が浸入し、雨漏りの原因となります。さらに、釘が抜け落ちた穴や隙間からも雨水が侵入する可能性があります。外壁に傷や変形が見つかった場合は、早めに修理を行うことが大切です。
水切り金具
水切り金具は、異なる部材を接合する目地部分に取り付けられ、雨水の浸入を防ぐ役割を果たします。しかし、水切り金具が劣化したり、不具合が発生したりすると、雨水が浸入しやすくなり、雨漏りを引き起こす原因となります。金具の劣化や不具合も定期的に点検し、修理が必要です。
外壁の防水修理が必要な箇所は多岐にわたりますが、適切に修理を行うことで、雨漏りを防ぎ、建物の耐久性を保つことができます。各箇所の状態を定期的に点検し、早期に対応することが重要です。
外壁から雨漏りした場合の修理・防水処理方法
外壁から雨漏りした場合、どのように施工業者に修理してもらえばよいのでしょうか。
ここでは、外壁から雨漏りした場合の主な補修方法について解説します。
外壁から雨漏りした場合の修理・防水処理方法1.シーリング材の充填・打ち替え
雨漏りの原因がシーリング材の劣化にある場合は、シーリング材の充填や打ち替えが必要です。
シーリング材は、換気口、窓サッシ、カーテンパネル、目地、釘穴などあらゆるところに使われています。
換気口、窓サッシなどの古いシーリング材を取り除き、新しいシーリング材に打ち替えることで、雨水が侵入する隙間を埋めることが可能です。
また、外壁自体にひび割れがある場合は、その隙間をシーリング材で埋めることで、雨水の侵入経路を塞ぐことができます。
外壁から雨漏りした場合の修理・防水処理方法2.サイディングの張り替え
外壁材のひび割れや変形が激しい場合は、シーリング材を充填するだけでは補修が難しいため、外壁材の打ち替えが必要です。
窯業系サイディングの場合は、古いサイディングを撤去し、壁の内側に貼ってある防水シートを補修します。
その後、新しいサイディングに張り替えることで雨漏りの原因を取り除くことが可能です。
外壁から雨漏りした場合の修理・防水処理方法3.外壁の重ね張り(カバー工法)
外壁材が古く、複数の雨漏りが見つかった場合、一部の外壁材を張り替えるだけでは不十分です。
複数の雨漏りがある場合は、古い外壁材の上から新しい外壁材を施工し、全体を覆うように雨漏り補修を行います。
例えば、古くなった窯業系サイディングの上に、防水性・断熱性に優れた金属系サイディングを施工するなどです。
外観は大きく変わりますが、壁が増えるため雨漏りを直せます。
外壁の防水修理の費用目安
外壁の防水修理にかかる費用は、使用する材料や修理方法、施工する面積によって異なります。一般的な費用目安は以下の通りです。
- シーリング材の充填・打ち替え: 800円〜1,200円/平方メートル
- サイディングの張り替え: 13,000円〜/平方メートル
- カバー工法: 10,000円〜/平方メートル
外壁の面積により費用は変動しますが、サイディングの張り替えや屋根のカバー工法など、大規模な修繕工事では200万円以上かかることもあります。このため、工事前には火災保険や補助金の適用条件を確認し、適切な予算を立てることが重要です。
また、外壁の防水修理費用は、外壁材の状態、調査の種類、施工業者の技術力などにより変動するため、最初に信頼できる施工業者から見積もりを取ることが欠かせません。
外壁材別の防水修理方法
外壁材ごとに、雨漏りの原因や適切な防水修理方法が異なります。建物の外壁は、時間とともに様々な環境の影響を受け、劣化が進行します。ここでは、代表的な外壁材に応じた防水修理方法について解説します。
モルタルの場合
モルタル外壁からの雨漏りで最も一般的な原因は、ひび割れです。モルタル外壁は、乾燥収縮により小さなひび割れが発生しやすく、これが雨水の浸入を引き起こすことがあります。ひび割れは、経年劣化や地震などの外的衝撃でも発生することがあります。
修理方法としては、ひび割れ箇所をV字またはU字にカットし、補修材がしっかりと密着できるようにします。深いひび割れにはU字カットを行う方が効果的です。その後、下塗りを行い、補修材を埋めた後、上から塗装を施します。この方法により、防水機能が回復し、雨漏りを防ぐことができます。
サイディングの場合
サイディング外壁の雨漏りは、塗装の劣化やボードの浮き、反りによって引き起こされることが多いです。これらの問題は、外壁内部に雨水が浸入し、膨張・収縮を繰り返すことによって発生します。特に、外壁の塗装が剥がれると、サイディングボードに水が浸透し、反りが生じやすくなります。
修理方法としては、塗装工事やシーリング工事を行い、さらに外壁内部の下地や二次防水を修理します。また、金属製のサイディングにはカバー工法を用いることもあります。これらの作業により、外壁の防水性が回復し、長期的に雨漏りを防止することができます。
コンクリートの場合
コンクリート外壁は、肉眼で見える大きなひび割れに加えて、細かいひび割れが内部で発生することが多いです。これらのひび割れは、乾燥による収縮や力が加わることで発生します。また、ひび割れから水が侵入し、雨漏りを引き起こす原因となります。特にシーリング材の劣化が主な原因です。
修理方法としては、劣化したシーリング材を交換することが重要です。シーリングには、打ち替えと増し打ちの2種類の補修方法があります。打ち替えは、古いシーリングを取り除き、新しいシーリング材を充填する方法で、増し打ちは既存のシーリングの上に新たなシーリングを重ねる方法です。どちらも効果的な修理方法で、雨漏りの再発を防ぐことができます。
ALCパネルの場合
ALCパネルは、乾燥や経年劣化、外的要因によってひび割れや目地の隙間が生じることがあります。これが雨水の浸入を引き起こし、雨漏りを招く原因となります。ALCパネルの特徴は、気泡が多く含まれているため、塗膜の防水効果が時間とともに低下します。
修理方法としては、小さなひび割れをシーリング材で埋めることができます。塗料の伸縮性が高ければ、再塗装を行うことでひび割れをカバーできます。また、劣化した塗膜は再塗装を行うことで防水効果を回復させます。さらに、シーリングの増し打ちにより防水性を向上させることができます。
外壁材ごとに最適な修理方法を選ぶことで、建物の耐久性を保ち、雨漏りのリスクを最小限に抑えることができます。適切な補修を行い、定期的に点検を行うことが重要です。
外壁の防水処理・修理は業者に依頼する
雨漏りが発生する原因は一見単純に思えるかもしれませんが、雨水がどこから侵入しているのかを特定するのは、経験と知識を持った専門業者でないと非常に難しい作業です。原因を特定せずに修理を繰り返してしまうと、最終的には問題が深刻化し、根本的な解決には至らなくなります。
応急処置を繰り返すと、雨水の侵入経路が変わることもあり、その結果、再度の漏水箇所の特定が困難になることがあります。無駄に修理を行っても、根本的な原因が解決しない限り、再度雨漏りが発生してしまう可能性が高いです。このような事態を避けるためにも、最終的に外壁の張替えやカバー工事を行うことになる前に、問題の本質を見極めることが重要です。
雨漏りの修理方法を選ぶ際に最も優先すべきことは、原因の正確な特定です。適切な処置を行うためにも、外壁や防水に関する知識と豊富な実績を持つ信頼できる業者に依頼することが、無駄な修繕を繰り返さないための最も効果的な方法です。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
まとめ|雨漏りの原因によっては外壁の防水処理を検討しよう
雨漏りは突発的なことが原因の場合もありますが、多くの場合、メンテナンスを怠り、経年劣化による不具合を放置したために起こります。
外壁塗装は、防水性能の低下や塗膜の剥がれなど、劣化が見られるようになるため、新築から約10年でメンテナンスが必要です。
外壁の防水処理や、塗装以外の不安な箇所の修繕を行ったうえで、耐用年数に応じて適切なメンテナンスを行いましょう。