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マンション大規模修繕の標準仕様書とは?使用方法と記載内容について

マンションの大規模修繕工事は、区分所有者の共有財産を守るために不可欠な取り組みです。この重要な工事を効率的かつ効果的に進めるためには、標準仕様書の活用が鍵となります。管理組合が限られたリソースで適切に工事を実施するには、この文書が重要な指針となるのです。

標準仕様書は、マンションの大規模修繕工事における設計書の基礎となる文書です。これには、工事の範囲・使用する材料・施工方法などが詳細に記載されています。適切な書き方で作成された標準仕様書があれば、工事の品質確保や予算管理がスムーズになります。

本記事では、マンションの大規模修繕工事における標準仕様書の重要性について解説します。

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目次

大規模修繕工事の標準仕様書とは?

大規模修繕工事を適正に進めるためには、「標準仕様書」 の作成が不可欠です。これは、工事の品質を一定に保ち、発注者と施工業者の間で共通の認識を持つための重要な指針となります。仕様書があることで、見積もりの比較が容易になり、施工トラブルを未然に防ぐことができます。

標準仕様書の役割と重要性

標準仕様書は、大規模修繕工事の品質や施工基準を明確に定めるために作成される文書です。以下のような役割を持ち、スムーズな工事の進行を支えます。

  • 大規模修繕工事の品質を一定に保つための指針
    • 標準仕様書があることで、工事内容のばらつきを防ぎ、一定の品質を確保 できます。
    • 施工業者ごとの仕様や工法の違いをなくし、統一された基準で工事を実施できます。
  • 施工業者ごとの仕様のばらつきを防ぎ、適正な見積もりを取るための基準
    • 仕様書に基づいた見積もりを取ることで、業者間の価格差や工事範囲の違いを正確に比較できるようになります。
    • 不必要な追加工事を避け、費用の透明性を確保することが可能になります。
  • 発注者(管理組合・オーナー)と施工業者間でのトラブル防止
    • 施工内容や仕様が明確になっているため、「工事範囲の認識違い」や「追加費用の発生」 などのトラブルを防げます。
    • 施工後の品質検査の基準としても機能し、不良施工の指摘や保証請求がしやすくなる というメリットもあります。

標準仕様書を基に工事を進めるメリット

標準仕様書を活用することで、修繕工事の品質向上、コスト削減、施工トラブル回避 など、多くのメリットがあります。

  • 修繕工事の品質が安定し、耐久性を確保できる
    • 設計段階で適切な施工基準を定めることで、建物の耐久性や防水性が向上 し、長期的なメンテナンスコストを抑えることができます。
    • 施工業者ごとの「独自のやり方」に依存せず、標準化された工事を実施できるため、長期的に安心できる修繕が可能になります。
  • 工事の透明性が向上し、適正価格で発注が可能
    • 「工事の範囲」「使用する材料」「施工方法」 が事前に明確になるため、見積もり内容の比較が容易になります。
    • 過剰な工事や不必要な追加費用を排除し、適正な価格で発注できる ようになります。
  • 施工不良や手抜き工事を防ぎ、長期的なコスト削減につながる
    • 仕様書に基づいた工事が行われることで、手抜き工事や施工ミスを未然に防ぐことができる
    • 高品質な施工が実現することで、建物のメンテナンス周期が延び、長期的な修繕コストの削減につながる

標準仕様書は、大規模修繕工事の「品質・コスト・トラブル防止」に直結する非常に重要な資料です。適切に作成・活用することで、スムーズで安心な修繕工事の実施が可能 になります。

マンション大規模修繕工事での標準仕様書の使用方法

実際の現場では、標準仕様書はどのように使われているのでしょうか。

工事では、国土交通省が「公共建築工事標準仕様書」を公表しています。

各行政機関やゼネコンなどが「公共建築工事標準仕様書」をベースに独自の標準仕様書を作成しているケースが多いです。

民間では、日本建築学会が制定した「建築工事標準仕様書」(JASS)があり、「公共建築工事標準仕様書」とともに、仕様書に基づいて多くの工事が行われています。

「公共建築工事標準仕様書」に記載されているものは中グレードであり、デベロッパーはいくつかの建築グレードごとに標準仕様を定めています。

標準仕様書だけでは個々の物件に対応できないため、標準仕様書以外の仕様を盛り込んだ特別仕様書も使用することが一般的です。

ゼネコン、デベロッパーは、公共建築工事標準仕様書や建設工事標準仕様書をベースに、特別仕様書を作成します。

工事図書の優先順位

標準仕様書は、特別仕様書、図面などの設計図、現場指示書、質疑応答書などからなる設計図書に含まれる重要な書類です。

しかし、設計図書に誤りがあった場合、どの書類が正しいのか理解していなければ工事を円滑に進められません。

そのため、設計図書の優先順位は特記仕様書等で決められています。

設計図書の優先順位は、次の通りです。

①質問回答書

②現場説明書

③特記仕様書

④設計図

⑤標準仕様書

質問回答書には、見積り期間中にそれぞれの業者から受けた質問への回答を記載したものです。

すべての業者へ、同一の回答書を配布します。

現場説明書は、入札手順やスケジュール、工事の内容を業者へ説明するための書類です。

特記仕様書とは、標準仕様書に記載されている内容ではなく、大規模修繕工事の特記すべき内容を記載した書類です。

標準仕様書に記載された内容と同じ箇所は、標準仕様書記載の内容を消して特記仕様書の記載内容が優先されます。

さらに、標準仕様書には記載されていない内容や参考メーカー、取付方法、下地や施工方法、図面に記載できない仕様も記載します。

マンション大規模修繕工事で標準仕様書に記載する内容

標準仕様書で使用される「公共建築工事標準仕様書」の事項を記載します。

公共建築工事標準仕様書の目次

1章 各章共通事項

2章 仮設工事

3章 土工事

4章 地業工事

5章 鉄筋工事

6章 コンクリート工事

7章 鉄骨工事

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

9章 防水工事

10章 石工事

11章 タイル工事

12章 木工事

13章 屋根及びとい工事

14章 金属工事

15章 左官工事

16章 建具工事

17章 カーテンウォール工事

18章 塗装工事

19章 内装工事

20章 ユニット及びその他の工事

21章 排水工事

22章 舗装工事

23章 植栽及び屋上緑化工事

引用:https://www.mlit.go.jp/common/001472794.pdf

マンションをはじめ、建物に関わる必要情報がすべて記載されていることが分かります。

なお、公共建築工事標準仕様書には機械設備工事編、建築工事編、電気設備工事編があり、それぞれの公共建築改修工事標準仕様書も公開されています。

マンション大規模修繕工事の準備段階と修繕設計の基本手順

マンションの大規模修繕では、円滑に進めるための手順を踏むことが重要です。

しかし、どのように進めればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、大規模修繕工事の主な流れについて紹介します。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順マンション内で委員会を設置

大規模修繕工事の準備は、早ければ2年前、遅くとも1年前から始まります。

まず、大規模修繕を計画通りに実施するための体制づくりとして、マンション内に「修繕委員会」を設置しましょう。

修繕委員会とは、大規模修繕を実施するためのマンション住民で構成される専門委員会です。

修繕委員会の委員数に決まりはありませんが、公平性を確保するため、幅広い年齢層から概ね5~10名が選ばれます。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順建物診断・居住者アンケートの実施

大規模修繕工事着工の約3~4カ月前に、建物診断と居住者へのアンケートを行います。

建物診断とは、マンション各部の劣化・損傷・不具合等を確認し、現状を把握するために行う調査・診断のことです。

主に打診調査を含む目視調査と完成図面、修繕歴などの書類を作成します。

建物診断と合わせて、マンション居住者が日常生活で感じている住戸や共用部の問題点をアンケートで調査します。

居住者アンケートは、問題点を発見するための有効な情報源です。

また、大規模修繕工事に対する居住者の意識を高めるためにも活用できます。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順補修内容・工法・施工方法の策定

修繕設計は、建物診断や住民アンケートの結果をもとに、修繕項目や範囲、工法を策定します。

大規模修繕工事の工法、材料を検討する段階です。

検討の際、耐用年数や単価を考慮し、完成後のメンテナンス負担ができるだけ少ない材料を検討する必要があります。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順概算工事予算を計算

大規模修繕工事の内容、工法、材料が決まったら、概算工事予算の算出を依頼します。

一般的なマンション大規模修繕の業務範囲は、以下のとおりです。

外壁:下地補修工事、タイル補修・張替工事、塗装工事

屋上:防水改修工事

共用廊下・階段:バルコニー 床防水改修工事

鉄部:錆び部、塗装剥がれ部塗装工事

設備:電気、給排水、ガス

概算工事予算は、基本的に建物診断の結果である劣化状況や数、居住者アンケートによる要望も含めて計算します。

修繕内容別で工事の数量を割り出し、単価を加算することで概算工事予算を算出しますが、コスト削減案も検討しなければなりません。

各工事の工法や使用材料を見直すことで、コストダウンを図ります。

検討の際、長期修繕計画の資金計画、修繕積立金のチェックも忘れずに行いましょう。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順標準仕様書の作成

概算工事予算を算出し、大規模修繕の図面・標準仕様書を作成します。

図面・仕様書の作成は専門業者に委託しますが、基本的に次のような図面、標準仕様書を作成します。

  • 平面図
  • 立面図
  • 標準仕様書
  • 特殊仕様書
  • 仕上げ表

また、耐震補強やバリューアップ工事を行う場合は、そのための図面も作成します。

図面自体の良し悪しはマンション側(修繕委員会等)では判断が難しいですが、少なくとも必要な設計図書は揃えておきましょう。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順見積り手順書の作成

見積り手順書は、工事業者に見積りを依頼する際の公平性を確保するためのものであり、主に以下のような項目があります。

  • 工事名
  • 施工場所
  • 工事概要
  • 見積書の提出先と提出部数
  • 作業スケジュール、施工体制の書類
  • 質疑応答期限
  • 契約形態
  • 支払い条件
  • 共通特記事項

マンション修繕委員会は、作成した見積手順書の工事概要、支払い条件をよく確認しましょう。

マンション大規模修繕工事の準備と修繕設計手順工事業者の選定

すべての準備が完了したら、大規模修繕を依頼する工事業者を選定します。

マンション大規模修繕の施工業者は、大きく分けて3つのタイプから選ぶことが可能です

  • ゼネコン(総合建設会社)
  • マンション大規模修繕専門会社
  • 工事部門を持つ管理会社

マンション大規模修繕工事の施工会社選定の際には、最初に見積理をする業者を絞り込みます。

このプロセスが十分に議論されていないと、予算不足などの問題が発生する可能性があるため注意が必要です。

大規模修繕工事でよくある質問

ここでは大規模修繕工事に関する質問について回答します

Q

大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?

A

大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。

Q

工事中の生活にどんな影響がありますか?

A

足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。

Q

バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?

A

バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。

Q

工事期間中、エアコンは使えますか?

A

基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。

Q

大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?

A

塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。

Q

大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?

A

できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。

Q

修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?

A

築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。

Q

大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?

A

大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。

マンション大規模修繕や中規模修繕では共用部分と専有部分を正しく理解しよう

マンション大規模修繕や中規模修繕を計画するためには、共用部分と専有部分の違いを理解しておくことが非常に重要です。これらの区別を明確にしておくことで、修繕の対象範囲や費用分担がスムーズになります。

共用部分と専有部分の違いとは?

まず、マンションにおける共用部分と専有部分の違いを確認しましょう。共用部分とはマンション全体の住民が利用するスペースを指し、管理組合がその維持管理を行います。一方、専有部分は各住戸の居住者が専属的に利用するスペースで、その管理や修繕は住民自身が行う責任があります。

以下の表で、共用部分と専有部分を比較してみましょう。

項目共用部分専有部分
定義住民全員が利用する共有スペース各住戸の住民が専属的に利用するスペース
具体例エントランス、廊下、階段、屋上、外壁、駐車場室内の床、壁、天井、窓枠内側、専用庭
管理責任管理組合が責任を負う各住民が責任を負う
修繕費用管理費・修繕積立金で賄う住民自身が負担
修繕対象の例外壁塗装、防水工事、エレベーター点検室内の壁紙の張り替え、設備の修理

マンションの大規模修繕・中規模修繕を行う際には管理側、住民側双方がしっかりと共用部分と専有部分を把握しておきましょう。

大規模修繕や中規模修繕におけるマンション共用部分と専有部分の関係

マンションの大規模修繕や中規模修繕では、主に共用部分が修繕対象となります。具体的には、外壁や屋上の防水工事、廊下や階段の補修が該当します。一方、専有部分については各住民が自費で修繕を行うことが原則です。

ただし、バルコニーや窓枠など、一部の専有部分が特例的に共用部分とみなされるケースもあります。管理規約によって異なるため、修繕計画を立てる際には必ず事前確認が必要です。住民全員で協力し、計画をスムーズに進めることが、マンションの快適な生活を守るポイントとなります。

標準仕様書を活用したトラブル回避策

大規模修繕工事では、施工業者と管理組合・オーナー間の認識のズレや、追加費用の発生などのトラブルが発生しやすい ため、標準仕様書を活用して適切に管理することが重要です。ここでは、仕様書を活用してトラブルを回避するための具体的なポイントを解説します。

仕様書に基づく施工管理の重要性

標準仕様書は、工事の品質や施工方法を統一し、トラブルを未然に防ぐための重要な指針 となります。これを適切に管理することで、工事の進行がスムーズになり、品質の確保にもつながります。

仕様書通りに施工が行われているか定期的に確認

  • 施工の各工程で 仕様書に定められた内容通りの作業が行われているかをチェック することで、施工不良や手抜き工事を防ぐことができます。
  • 特に、使用する材料・塗装の膜厚・防水施工の方法 などは、実際の施工状況と仕様書を照らし合わせながらチェックが必要です。

施工業者との認識のズレを防ぐため、事前打ち合わせを徹底

  • 工事開始前に、施工業者と仕様書の内容を 細かく確認し、認識のズレがないようにすることが大切 です。
  • 事前に十分な打ち合わせを行うことで、施工途中での 「仕様と違う施工」や「追加費用の発生」 などの問題を防げます。

契約時に注意すべきポイント

標準仕様書を活用した契約を結ぶことで、施工業者とのトラブルを未然に防ぐことができます。契約時には以下の点を必ず確認しましょう。

契約書に「標準仕様書に基づいた施工」を明記する

  • 仕様書を基準にした施工を行うことを 契約書に明記 することで、後から 「仕様とは異なる施工」や「追加作業」 を強要されるリスクを防げます。
  • 例:「本工事は標準仕様書に準拠した内容で施工するものとする」 という一文を加えると、施工業者の遵守義務が明確になります。

追加費用の条件を事前に確認し、不明確な項目を削除

  • 見積もりや契約書に 「追加工事費用が発生する場合の条件」 を記載してもらい、曖昧な項目を削除することが大切です。
  • 施工中に追加工事を提案された場合、仕様書と照らし合わせて、本当に必要な工事かどうかを判断する ことが重要です。

標準仕様書を適切に活用し、施工管理を徹底することで、大規模修繕工事のトラブルを最小限に抑え、スムーズに進めることができます。

標準仕様書を把握し、手順通りにマンション大規模修繕工事を進めよう

マンションの大規模修繕工事を行う際には、入念な準備が必要です。

標準仕様書は記載事項が決まっており、ほかにも図面や特殊仕様書などの書類を作成しなければなりません。

日常生活で頻繁に目にすることはない書類ですが、大規模修繕工事を行うにあたって、記載内容や優先順位を理解することが大切です。

大規模修繕工事は資金がかかる大きなイベントのため、トラブルが起こらないように準備を進めましょう。

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