マンションの大規模修繕工事を計画中の方、「確認申請は必要なの?」と疑問をお持ちではないでしょうか。建築基準法では、一定規模以上の「大規模の修繕」や「模様替え」に対して確認申請が必要と定められています。しかし、実際のマンション大規模修繕では、多くの場合、この申請は不要です。
では、いったい確認申請とは何なのでしょうか?そして、どんな場合に必要になるのでしょうか?
この記事では、大規模修繕工事における確認申請の必要性について詳しく解説します。建築物の定義と構造、そして過半の定義についてわかりやすく説明していきます。
さらに、確認申請の方法や必要書類、費用相場とかかる期間にも触れています。
マンション管理組合の方がや所有者の方々、大規模修繕を安心して進めるために、ぜひこの情報をご活用ください。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
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大規模修繕の確認申請とは
確認申請とは、「建築確認申請」と呼ばれます。
建築基準法で定められた建築物を新築・改築する際に、当該工事計画が建築基準関係規定に適合していることを確認するために必要です。
大規模修繕着工前に指定行政庁もしくは指定民間検査機関に申請書を提出し、設計図書を審査して指摘事項を是正します。
最終的に、建築基準法に適合していると判断されれば、建築確認済証が交付され、着工が許可される流れです。
また、工事完了後、図面通りに建築や改修が行われているかを確認する「完了検査」や、自治体が指定する特定建築物については工事中の「中間検査」を行います。
大規模修繕工事で確認申請が必要な条件
大規模修繕工事で確認申請が必要な条件は、建築物の規模が「建築基準法第6条第1号から第3号までの建築物」に該当し、かつ「主要構造部の過半を修繕するもの」です。
確認申請が必要なケースを詳しく解説します。
建築基準法第6条の「1号建築物~3号建築物」
1号建築物~3号建築物の定義は次のとおりです。
1号建築物:劇場、病院、映画館などの特殊建築物で、興行、医療、宿泊、教育、飲食、販売などの用途に供するもので、延べ床面積が200平方メートルを超えるもの
2号建築物:階数が3以上、または延べ面積が500平方メートル以上、または高さが13m以上、または軒の高さが9m以上の木造建築物
3号建築物:階数が2以上または延べ面積が200平方メートル以上の非木造建築物
4号建築物:1号から3号に該当しない建築物のほか、都市計画区域内、景観法区域内、都道府県知事が指定する区域内の建築物
大規模の修繕・模様替えの定義
「大規模修繕」および「大規模改造」の定義は、建築基準法第2条第14号及び第15号に規定されています。
「大規模修繕」とは、建築物の主要構造部の1種または2種以上について行われる修繕の過半を指します。
つまり、1~3号建築物の主要構造部の1種類以上の過半を修繕・リフォームする場合は、修繕・リフォーム工事確認申請が必要です。
主要構造部とは
主要構造部とは、建築物の構造上重要な部分です。
建築基準法第2条第5号では、壁・柱・床・はり・屋根・階段と定められています。
ただし、構造上重要ではない間仕切り壁、間柱、スタッド、最下階の床、外階段などは含まれません。
壁や屋根などの仕上げに使用される素材については、通常は構造耐力上重要な箇所とはみなされないものの、行政庁によって取り扱いが異なるため注意が必要です。
過半の定義
「過半」とは半分を超えることを意味し、過半の修繕や模様替えを行う場合=半分を超える修繕や模様替えを行うということになります。
大規模修繕の建築確認申請が不要なケース
一定の条件を満たせば、建築確認申請が不要なケースがあります。
確認申請が不要な6つのケースを見てみましょう。
大規模修繕において建築基準法で定められた建築物に該当しない場合
建築基準法で定められた「建築物」に該当しない場合は、申請は不要です。
柱、屋根、壁があり、屋内として使用できるものは建築物とみなされますが、小規模な倉庫や物置など、建築物に該当しないと判断された場合は、建築確認申請の必要はありません。
プレハブ建築物や車庫の場合、面積が10平方メートル以下、防火地域や準防火地域でないなどの条件が整えば確認申請は不要です。
建築基準法の適用を受けない建築物を大規模修繕するケース
「建築物」に該当しない場合と混同しやすですが、文化財保護法の対象建築物など「建築基準法」に該当しない建築物もあります。
文化財保護法の規定により、国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財等に指定された建築物については、建築基準法第3条は適用されません。
非常に特殊なケースですが、文化的価値の高い建物は建築確認申請が不要です。
大規模修繕の対象外な仮設建物
工事中の敷地内に事務所や資材置き場などの仮設建築物を建てる場合、建築確認申請は不要です。
ただし、仮設店舗や仮設演芸場などの仮設建築物の場合は、仮設建築時に建築確認申請が必要な場合があります。
マンションの大規模修繕で確認申請の際の注意点
大規模修繕で確認申請を行わなかったマンションは法律違反になります
確認申請が必要であるにもかかわらず、申請を行わなければ、マンションは違法建築物とみなされます。
違法建築物を売買することは可能ですが、行政からの是正指導に従わなければならず、罰金の対象となる場合もあります。
さらに、違法建築物を建て替えたい場合、同等のマンションを建てることはできません。
確認申請が不要であっても、工事届など必要な申請手続きが必要な場合もあります。
建築基準法や都市計画法の規定内容を理解することは難しいため、専門業者に相談し、手続きを確認しながら進めましょう。
大規模修繕の確認申請後は間取りや設備の変更ができません
注意点の一つとして、確認申請後は間取りや設備の変更はできません。
そのため、計画がまとまった段階で確認申請を出すようにしましょう。
大規模修繕における確認申請の方法と必要書類
実際に確認申請をして、検査機関の検査に合格するためには、建築士の資格や経験が必要です。
確認される項目は、建ぺい率、容積率、北側斜線制限などを満たしているかどうかであり、近年では新しい項目も追加されています。
依頼主が確認申請を行うことも可能ですが、確認申請には極めて専門的な知識が必要とされるため、設計者や施工会社が依頼主に代わって行うことが一般的です。
実際に依頼主が行わなければならないのは、建築士に申請を依頼することです。
大規模修繕のための建物調査、見積もりを出してもらう際に、確認申請の必要性についてもアドバイスをもらいましょう。
大規模修繕に欠かせない確認申請の必要書類
建築基準法で定められている書類は下記となります。
- 確認申請書
- 委任状
- 建築計画概要書
- 建築工事届
- 設計図書(意匠図、設備図、構造図)
- 構造計算書(地盤調査報告書含む)
- 安全証明書
指定確認検査機関などで申請書類が異なる場合があるので事前に確認してみてください。
大規模修繕の確認申請にかかる費用相場と期間
確認申請に必要な費用は、依頼主の負担です。
正確な金額は自治体によって異なりますが、基本的にはマンションの床面積によって決まります。
大規模修繕の確認申請で発生する費用相場の例
東京都を例にとると、確認申請手数料は床面積2,000㎡以下の建物では5万円以内、床面積2,000㎡を超える建物では約47万円です。
なお、中間検査申請と、最終検査申請の手数料は同じです。
大規模修繕の確認申請にかかる期間
確認申請にかかる期間は、申請から約7日、確認済証の交付まで約35日です。
構造計算適合性判定が必要な場合は、さらに期間を要します。
大規模な建築やリフォームの場合、確認申請には費用と時間がかかるため、事前に申請先の自治体や検査機関に問い合わせ、大まかな目安を把握しておくと良いでしょう。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
大規模修繕の確認申請が必要なのか専門業者に相談しよう
マンションの大規模修繕では、確認申請が必要なケースと不要なケースがあります。
建築基準法に基づいて判断されますが、自治体や施工業者によって判断が異なる場合があるため注意しなければなりません。
確認申請が必要であるにもかかわらず申請を行わないと、違法建築物となり懲役や罰則を受ける場合があります。
確認申請が必要か不要かの判断や、申請が必要だった場合の方法は専門家でなければ難しいものです。
大規模修繕を行う場合は、必ず自治体や業者に確認し、説明を受けたうえで工事を開始しましょう。