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マンション大規模修繕工事の保証期間はどのくらい?重要性と工事別の保証期間

マンション大規模修繕の保証・保険について知りたい人

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大規模修繕工事の保証とは?
大規模修繕工事の保証期間はどれくらい?
マンションの修繕工事を行う前に保険に入るべき?
大規模修繕工事の保証内容と保証期間を知りたい!

大規模修繕の保証を利用できれば、工事完了後に工事内容に欠陥が見つかったり、業者が倒産したりなどのトラブルが発生した場合でも対処できます。

マンションの大規模修繕を行う場合、保証期間と瑕疵保険を理解しておくことが大切です。

そこで、大規模修繕の際に瑕疵工事でトラブルにならないための保証期間と、瑕疵保険の内容について解説します。

大規模修繕の保証期間は工事内容により異なる

大規模修繕工事とは、建物に関する様々な種類の修繕工事の総称として用いられます。

従って、大規模修繕工事そのものに保証が適用されるのではなく、工事の種類ごとに保証が適用され、保証期間も異なる点を理解しておきましょう。

つまり、工事後に欠陥が発見された場合であっても、欠陥がどこにあるのか、どのような工事に該当するのかを十分に確認しなければなりません。

大規模修繕工事の内容別の保証期間の目安

大規模修繕では、工事内容によって保証期間の目安が異なります。

ここでは、一般的な大規模修繕工事の種類別の保証期間を紹介します。

工事名保証期間保証内容
基礎補修工事3~5年ひび割れ、沈下などの構造上の瑕疵に対する無償補修
シーリング工事3年~5年シーリング材の劣化、はく離に対する無償補修
外壁塗装工事5~7年塗膜の剥がれ、劣化に対する無償補修
鉄部塗装工事1~3年さび、剥がれに対する無償補修
防水工事
バルコニー防水工事
3~5年雨漏りなどの防水不良に対する無償補修
防水工事
屋上防水工事
7~10年雨漏りなどの防水不良に対する無償補修

基礎補修工事

基礎補修工事の標準的な保証期間は、3~5年です。

工事完了後に欠陥が発見されるのではなく、保証期間中に膨張や腐食によって壁が浮き上がるなどの問題が再発した場合に保証請求が行われます。

施工業者はこの期間内に発生した品質不良によるひび割れや沈下など、構造上の瑕疵に対して無償で補修を行う責任を負います。

一方、建物の老朽化や地盤沈下によって生じた基礎のひび割れなどは、施工業者の責任範囲外となることが多く、保証の対象外とされます。

マンション全体の劣化は避けられないためです。

発注者である管理組合側も、定期的に基礎の状態を確認し、異常の早期発見に努める必要があります。

基礎部分に何らかの異変があれば、すぐに施工業者に連絡を入れ、無償補修の対応を求めることが重要です。

シーリング工事

シーリング工事では、シーリング材の劣化やはく離に対する無償補修が5年間程度の保証とされるのが一般的です。

屋外に使用されるシーリング材は、日射や風雨による劣化が避けられないため、おおむね5年前後が適切な保証期間と考えられています。

シーリングとは建物の開口部の隙間をコーキング材(シーリング材)で埋める工事のことです。

窓周りやサッシ廻りなどに使われ、雨水の浸入を防ぎます。

そのため、シーリング材の耐久性が損なわれると、雨漏りなどの被害につながる恐れがあります。

定期的なシーリングの点検と手入れを行うことで、保証期間内の不具合を見落とすことなく、早期に補修を受けられます。

管理組合は専門家の助言を仰ぎながら、シーリング工事の品質を長期的に維持する努力が肝心です。

外壁塗装工事

大規模修繕工事の一環として行われる外壁塗装工事では、通常5~7年間程度の保証期間が設けられています。

この期間内に塗膜の剥がれや劣化などの不具合が発生した場合、施工業者は無償で補修を行う義務があります。

外壁の塗装は建物の美観を左右する重要な部位ですが、同時に外的環境にさらされることから、劣化も避けられません。

塗料の種類や使用状況によっても差がありますが、標準的な耐用年数が5年前後と見られているためです。

施工業者の責任範囲としては、主に以下のような不具合が該当します。

  • 塗料の密着不良による早期の塗膜剥がれ
  • 塗装ムラや色ムラなどの仕上がり不良
  • 塗料の劣化や変色が通常より早く進行した場合

一方、通常の経年劣化による退色や割れなどは、業者の責任範囲外とされるのが一般的です。

また、外壁の下地部分の劣化や塗り替え時期の遅れによる塗膜剥がれなども対象外となります。

塗装工事の保証を有効活用するには、発注者側である管理組合の定期的な点検と早期発見が重要です。

不具合に気づいた際は速やかに業者に連絡し、適切な対応を求める必要があります。

鉄部塗装工事

マンションの共用部分にある鉄製の手すりやフェンスなどの鉄部には、さびを防止するための塗装が施されています。

この鉄部塗装工事では、塗膜のはがれやさび発生に対する保証期間が1~3年間程度設定されるのが一般的です。

鉄は空気中の酸素や水分によって徐々にさびが進行する性質があるため、定期的に塗り替えを行わないと、やがて錆が剥がれ落ち、美観を損なうだけでなく構造面での劣化にもつながります。

塗装工事の施工業者は、自社の施工不備が原因で通常の耐用年数より早期に塗膜のはがれやさび発生が起きた場合、無償で補修する責任を負います。

ただし、経年劣化によるさびや塗膜の劣化は保証の対象外となります。

例えば、下地処理が不十分で塗膜の密着が悪かったり、塗料の品質が悪かったりした場合に、早期の塗膜剥がれやさびが発生すると、保証を受けられる可能性があります。

防水工事

防水工事の保証期間は、防水工事を行う場所によって異なります。

主にバルコニー防水工事と屋上防水工事の2つに分かれるため、それぞれ確認しましょう。

バルコニー防水工事

マンションのバルコニー部分の防水工事では、3~5年程度の保証が設定されています。

この工事の不備によって雨漏りなどの防水不良が生じた場合、施工業者は無償での補修を行わなければなりません。

施工業者は以下のような不具合に対して保証を負います。

  • 防水シート(ウレタン、FRP等)の接着不良や破損
  • 防水モルタルや塗膜の密着不良や亀裂、はく離
  • 雨水の浸入経路となる部分の施工ミス

一方で、防水層の経年劣化や、適切なメンテナンスの不備による雨漏りなどは、保証の対象外となります。

また地震による防水層の破損なども除外されます。

屋上防水工事

屋上防水工事の標準的な保証期間は、7~10年です。

マンション屋上の防水工事では、施工不良による雨漏りなどの不具合に対し、長期保証がつくのが一般的です。

屋上防水は建物の最も重要な防水部位とされ、構造体と同等の長期保証が設けられます。

屋上防水工事の施工ミスが原因で、以下のような不具合が生じた場合、施工業者による無償補修が保証されます。

  • 防水層(シート、塗膜)の剥がれ、ひび割れ
  • 立上がり部分や伸縮部の施工不良
  • 排水設備の不備による溜まり水の発生

しかしながら、防水層の経年劣化に伴う劣化や破損、メンテナンス不足による雨漏りなどは保証の対象外となります。

また地震や落雷などの災害を原因とする不具合も例外となる場合が多いようです。

大規模修繕工事の途中でも保証は存在するか?

大規模修繕工事は長期にわたるプロジェクトであり、工事の途中で何らかのトラブルが発生するリスクは決して小さくありません。

そのため、工事途中であっても、確実な保証があることが重要です。

結論から申し上げますと、大規模修繕工事の途中においても、一定の保証は存在します。

法令に基づく制度やマンション管理組合との契約に従って業者は責任を負うことになっています。

具体的な保証の内容としては、まず最も重要なのが「瑕疵担保責任」です。

施工業者に業務上の過失があった場合、業者はその瑕疵(欠陥)について無償で修補する責任を負います。

この責任期間は通常2年間です。

また、工事中の事故に備えて、業者は「請負業者賠償責任保険」に加入することが義務付けられています。

作業員の不注意やミスなどによって第三者に損害を与えた場合、この保険から賠償金が支払われます。

加えて、マンション管理組合と業者との契約書にも、業者の責任範囲が明記されています。

例えば工期遅延の場合の違約金、瑕疵への対応、アフターサービスの内容など、様々な事態に対する業者の責務が詳細に定められています。

実際の事例でも、足場の組み立て作業中に通行人にケガをさせた事故では、請負業者賠償責任保険から治療費が支払われました。

また、工事の瑕疵で雨漏りが続発したケースでは、業者による無償の修補が行われています。

このように、瑕疵担保責任や損害賠償保険などの制度があり、さらに契約にも細かく規定が設けられているため、大規模修繕工事の途中であっても、一定の保証は存在するといえます。

管理組合と業者の緊密な連携により、安全で品質の高い工事の履行を確保することができるのです。

大規模修繕工事の保証をするための保険

マンションで行う大規模修繕工事におけるトラブルは、主に3種類の保険で保証されます。

最初に、大規模修繕で加入する保険の種類とそれぞれの特徴を解説します。

瑕疵保険

瑕疵保険が適用されると、大規模修繕工事に瑕疵があった場合に業者は施主に対して瑕疵担保責任を負い、無償で修繕工事を行います。

例えば、瑕疵が発見されたときに業者が倒産していれば、管理組合が修繕費用を負担しなければなりません。

倒産のトラブルを避けるために、「瑕疵保険」に加入しておくことが大切です。

瑕疵保険に加入していれば、建設会社が倒産しても、管理組合が修繕費を負担する必要はありません。

瑕疵保険は、国土交通省指定の保険会社のみが取り扱うことができる保険です。

被保険者は建設業者であるため、管理組合は保険料を負担しません。

なお、建設会社は加入が必須ではなく、瑕疵保険に加入していない建設会社に大規模修繕を依頼した場合、工事に瑕疵があっても保証の対象外となります。

業者を選ぶ際には、必ず瑕疵保険に加入しているかどうかを確認しましょう。

また、瑕疵保険に加入している工事では、一級建築士の資格を持つ住宅瑕疵担保責任保険法人の検査員が工事前後に検査を行うというメリットがあります。

検査を実施することで、手抜き工事を抑止する効果も期待できるでしょう。

工事完成保証

施工会社が倒産して大規模修繕工事がストップしても、「工事完成保証」が適用されます。

工事完成保証は、主に2種類で構成されることが特徴です。

  • 工事現場や施工業者の状況を速やかに確認し、工事を請け負う建設会社を紹介・斡旋する「サービス保証」
  • 支払った前金に見合った工事品質が確保できない場合に管理業務を行う「金銭保証」

金銭保証は、管理組合が損失を被った場合の差額の保証です。

金銭保証については、保証金の上限が設定されている場合があるため、契約時に詳細を確認しましょう。

特約を付ける方法もある

外壁タイルは剥落の危険性があるため、特約保険に加入する方法が有効です。

瑕疵保険で気をつけたいのは、外壁タイルです。

保証期間中にタイルが剥がれたとしても、防水性があると判断されれば、「美装工事」であり保険対象外として扱われることがあります。

外壁タイルの剥落が心配な場合は、外壁タイルを対象とした特約保険に加入しておくと安心です。

保険会社ごとに保証期間は異なりますが、大規模修繕工事が完了した日から5年~10年程度保証を受けられます。

保証期間に伴う定期点検について

大規模修繕工事が完了した後も、確実に建物の性能が維持されるよう、定期的な点検が重要になります。

建物の構造部分や設備について、一定期間の保証がありますが、その保証期間中は特に綿密な点検が求められます。

一般的に、大規模修繕工事では以下の部位について法定の最低保証期間が設けられています。

  • 構造体部分(基礎、柱、はり、壁など)…10年間
  • 雨水浸入を防止する部分(屋根、外壁など)…5年間
  • 給排水・電気設備など…2年間

この最低保証期間内に建物に瑕疵(欠陥)が見つかった場合、施工業者は無償で補修を行わなければなりません。

そのため、保証期間中は定期的に点検を実施し、異常の有無を確認する必要があります。

点検の間隔は年に1回程度が一般的ですが、設備の種類によっては半年に1回など、さらに頻度を高める必要があります。

例えば給排水設備は使用頻度が高いため、建物の状況に応じて3〜6ヶ月毎の点検が求められることもあります。

点検項目は、部位ごとに細かく定められています。

例えば構造体では、ひび割れやコンクリートの剥離の有無、基礎の沈下状況などをチェックします。

給排水設備なら、排水や給水の状態、配管の腐食、水漏れの兆候などを点検します。

点検は管理組合が依頼した設計監理者や専門業者が行いますが、区分所有者自身による日常の監視も欠かせません。

異常に気づいた場合は、すぐに管理組合へ報告する必要があります。

このように、定期的な点検を保証期間中に行うことで、瑕疵の早期発見と未然防止につながります。

大規模修繕工事に多額の費用をかけた以上、きちんと保証期間を活用して、建物を健全に保つ取り組みが不可欠なのです。

保証期間は大規模修繕によっても違うのか?

大規模修繕工事の保証期間については、一般的な法定の最低基準があり、部位ごとに異なります。

ただし、実際の保証内容は、施工業者との契約によって変わる場合があります。

先ほどご説明した通り、法で定められた最低保証期間は、構造体が10年間、防水部分が5年間、設備が2年間となっています。

しかしこれは、施工業者が負う最低限の瑕疵担保責任を示したものです。

実際の保証期間は、発注者である管理組合と施工業者の双方で協議・合意の上、工事請負契約書に明記されます。

多くの場合、契約の中で法定の最低基準を上回る保証期間が設定されます。

例えば、給排水設備は法定保証期間が2年間ですが、5年間や10年間の長期保証を付ける契約もあります。

一方、構造体については10年以上の保証はほとんどないものの、防水性能に関しては10年を超える長期保証を付けるケースもあります。

保証期間の設定は、部位の重要度や工事の難易度、製品メーカーの保証内容なども考慮されます。

高額な製品を使用した場合、メーカーの長期保証に合わせて業者側も保証期間を延長するなど、柔軟な対応が求められます。

また、保証の内容自体にも違いがあります。施工業者の責任範囲の違いや、保証対象の細かい定義など、契約内容によってさまざまです。

つまり、大規模修繕工事における具体的な保証期間は、あくまでも発注者と受注者の合意によって決まるものであり、マンションごとに異なる可能性があるということです。

最低基準を上回る適正な保証を確保するために、管理組合と業者の綿密な打ち合わせが欠かせません。

大規模修繕工事に瑕疵保険が必要な理由

大規模修繕保険や瑕疵保険に加入することは、依頼主にとってはメリットが大きいですが、建設会社にとっては手間がかかります。

作業量が増えること、保険料が必要になることもあり、結果的に工事費が高くなります。

しかし、1,000万円を超えるような大規模修繕を行う場合は、工事費が多少高くなっても瑕疵保険に加入しましょう。

なぜ大規模修繕工事で瑕疵保険への加入が必要なのか、理由を解説します。

工事会社が信頼できるかどうかの判断材料

工事会社が信頼できるかどうかは、提出された書類から判断が可能です。

保険に加入する際、工事会社は保険契約書や設計図書の他に、次のような書類を保険会社に提出する必要があります。

  • 詳細見積書
  • 工事請負契約書
  • 工事工程表
  • 工事概要書
  • 工事仕様書・特別仕様書
  • 使用する材料のリスト
  • 施工図
  • 施工指示書

工事仕様書、使用する材料のリスト、施工図などは、どの会社でも作れるわけではありません。

小さな会社や、ずさんな工事をしている業者では、作成は難しいかもしれません。

もちろん、書類を作成しなくても、安く適切に修繕を行ってくれる会社もあります。

しかし、詳細な資料を作成し、保険会社に提出できる会社であれば、丁寧に工事に取り組んでくれることが期待できるでしょう。

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施工基準があるため工事の品質が高い

高額な工事に対して大規模修繕・瑕疵保険に加入する理由は、保険会社の施工基準が設けられ、工事の品質が高いレベルで保たれるためです。

一般的に、大規模修繕に関しては法律で定められた工事基準はありません。

しかし、大規模修繕瑕疵保険は、取り扱う保険会社が工事基準を定めています。

工事基準に従って、工事の事前検査で工事内容をチェックします。

さらに、竣工検査で計画通りに工事が行われているかを確認し、不備があれば保険契約は成立しません。

補修工事が適切かつ効果的な工法で行われているか、基準に沿って行われているかを保険会社がチェックするため、工事の品質は高いレベルで維持されます。

第三者交渉はトラブル発生時に有利になる

保険に加入していれば、万が一瑕疵があっても騙されることはなく、有利に交渉を進めることができます。

欠陥があるかないかは抽象的な問題であり、意見が分かれることも多いです。

そのため、建設会社は実際に欠陥があることを認めないかもしれません。

反対に、修理代を請求する業者もあります。

しかし、大規模修繕のトラブルに詳しい保険会社が介入すれば、欠陥の有無を中立的に判断してくれます。

加えて、瑕疵があれば第三者として業者と話をしてくれるため、面倒な交渉が不要になるという点もメリットです。

大規模修繕工事を依頼する業者の保証内容や保険を確認しよう

修繕工事を行った施工会社が倒産した場合に備えて、大規模修繕工事瑕疵保険に加入しておく方法が有効です。

また、施工不良やミス、大規模修繕時の施工による事故に備えるため、マンション管理組合やオーナーは、施工会社の瑕疵担保責任について理解しておく必要があります。

さらに、保証内容を理解し、竣工後に瑕疵がないように注意しなければなりません。

万が一瑕疵を発見した場合は、早急に適切な対応ができるように備えておきましょう。

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