マンションの大規模修繕工事では、外壁、屋根のほか、階段や廊下などの共用部分、各戸のバルコニー、ベランダでも行われます。
ベランダにある植物やその他の私物は、入居者が片付けなければならないのか、工事への協力には手間がかかり不満を覚える方もいるでしょう。
そこで今回は、ベランダにある植物の取り扱いについてや、大規模修繕中に使用が制限される期間を解説します。
目次
大規模修繕について解説
大規模修繕とは、マンションやビルなどの集合住宅において、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、屋上の防水工事や設備の劣化など、建物全体の劣化を防ぎ、修繕するために行われます。建物全体の劣化を防ぎ、長期的な安全性と快適性を維持するために行われる大規模な修繕工事です。通常、10年から20年ごとに計画され、外観の美観を保つだけでなく、建物の構造や設備の性能を向上させることを目的としています。
新東亜工業の大規模修繕工事は最大25%のコストカットを実現!
マンション大規模修繕でベランダの植物は片付けが必要
マンション大規模修繕では、主にベランダ・バルコニーの床の防水改修工事を行います。
各居室のベランダ・バルコニーの工事を行う場合は、事前に各世帯にアンケート調査を行い、 工事日程を調整することが一般的です。
日程が決まったら、各部屋に工事を行う順番に植物や私物の片付け期限を求める通知を配布します。
通知を受けた世帯は、工事を円滑に進めるため、工事予定日までに荷物を屋内に移動させなければなりません。
通知が来ても、植物やその他の私物を片付けずにいると工事の進行に影響が出たり全体の工程が遅れたりするため、施工業者から通知が来たら、期限までに片付けましょう。
植物以外でマンション大規模修繕中にベランダから片付ける物
マンション大規模修繕では、植物以外にどのようなものを片付けなければならないのでしょうか。
マンションのベランダに置かれることが多い私物と、片付けが必要な項目を紹介します。
物置
ベランダ・バルコニーに物置(収納ボックス)を置いている方は多いですが、大規模修繕ではすべて片付けなければなりません。
室内に収まる大きさの収納であれば問題ないものの、室内に収まらない場合は、一時的に他の場所に移すか、撤去する必要があります。
ベランダの植物や物置を片付ける際の費用は、全額自己負担です。
そのため、マンション大規模修繕の周期が近い場合は、大きな物置は設置しないほうがよいでしょう。
ウッドデッキ
ベランダやバルコニーは無機質な素材でできているため、インテリアのひとつとしてウッドデッキを敷く方もいます。
ただし、敷いてあるウッドデッキが工事の邪魔になるため、一時的に撤去しなければなりません。
最近では、簡単に取り扱えるウッドデッキも市販されています。
マンション大規模修繕の予定がある場合は基本的に設置しない方が良いですが、設置する場合は自身で片付けることを念頭に置き、簡単に撤去できるデッキを利用しましょう。
ベランダタイル
ウッドデッキのように、ベランダやバルコニーを飾る「ベランダタイル」を敷く方も多いです。
おしゃれなタイルでベランダをコーディネートすること自体はよいですが、工事の際に邪魔になることもあるため撤去しなければなりません。
ベランダ用タイルは、設置・撤去は簡単ですが、大規模修繕の際に撤去して屋内に保管する必要がある点も留意しておきましょう。
人工芝
小さな子供がいる家庭では、ベランダに人工芝を敷いているところもありますが、工事中は撤去して屋内に保管しなければなりません。
なお、ベランダやバルコニーのコンクリートの上に人工芝を敷くと、雨による湿気でカビの温床となります。
室内での保管は不衛生なだけではなく、健康面でも不安が残るでしょう。
そのため、処分費用は自己負担となりますが、大規模修繕の際には処分についても考慮する必要があります。
BS・CSアンテナ
現在、多くのマンションでは共用BS・CSアンテナが設置されており、衛星放送を楽しむことができます。
しかし、共用アンテナの設備がないマンションでは、各家庭でがベランダの手すりにBS・CSアンテナを設置しているケースが多いです。
アンテナは大規模修繕工事に支障はないというイメージですが、工事の際に周囲には足場が組まれるため手すりに設置したアンテナが邪魔になり、一時的に撤去しなければなりません。
アンテナは入居者が撤去・再設置しなければなりませんが、自分でできない場合は大規模修繕の施工業者に連絡しましょう。
また、撤去は有料か無料かを確認し、有料の場合にはアンテナを設置したお店に依頼した方が安心・安全です。
物干し竿掛け
ベランダに物干しラックを設置しているマンションもあります。
物干しラックが設置されているマンションでは、塗装工事の際に物干しラックが邪魔になるため、業者が一時的に取り外して再設置します。
物干しラックの撤去・再設置は業者が行いますが、自分で設置した独立型の物干しラックやランドリーラックは室内に移動させなければなりません。
もちろん、ベランダ工事中は洗濯物を干すことができないため、施工期間中は乾燥機を使うか、室内で洗濯物を干すことになります。
網戸
ベランダ・バルコニー工事に伴い、私物の片付けや窓に設置されている網戸の撤去が必要になります。
網戸は工事するわけではないのに、なぜ取り外さなければならないのか疑問を持つ方もいるでしょう。
マンションに設置されているサッシや窓ガラス、網戸も「専用使用権がある共用部分」に該当するため、工事中は網戸を撤去しなければならないのです。
また、網戸は作業時の邪魔になるという理由からも、撤去が必要です。
マンション大規模修繕でベランダを使用できない期間
大規模修繕期間中、時期によっては洗濯物干しや換気のためにバルコニーに出られない日があります。
一般的には1~2週間程度バルコニーに出られなくなり、多くの場合は工事完了後3ヶ月程度で植物や私物を戻すことができます。
工事が終わっても数日間は立ち入ることができない場合があるため、必ず事前に工事日程やバルコニーの使用制限を確認しましょう。
また、管理組合も時期を周知徹底することが大切です。
ベランダの大規模修繕の注意点
マンションのベランダは、開放的な空間としてライフスタイルに合わせて自由にカスタマイズする方が多いです。
ただし、マンションの大規模修繕の範囲にベランダが含まれる場合は、私物はすべて撤去しなければなりません。
ここでは、大規模修繕の注意点のなかでもベランダに関連するものを紹介します。
ベランダの修繕は拒否できない
ベランダやバルコニーは個人の専有部分だと思っている方もいますが、実際にはマンションのベランダやバルコニーは「専用使用権のある共用部分」という扱いです。
そのため、すぐに移動できるものではない限り、基本的には置いてはいけないと決められています。
つまり、移動が困難な大きな植物や私物は置かないようにしましょう。
マンションのバルコニーは、火災時の避難経路として利用できるように設計しており、避難の妨げになるようなものを置くことは禁止されています。
マンションの管理規約にも明記されているため、あらかじめ確認しておきましょう。
植物の撤去は自分で行う
マンションの大規模修繕の範囲に各部屋のベランダやバルコニーが含まれる場合は、工事の邪魔になるため、私物はすべて自分で撤去する必要があります。
各世帯のバルコニーを清掃する場合、持ち物の撤去・処分は全て自己負担で行わなければなりません。
植物を屋内にいれられないときの対処法
ベランダにスペアタイヤなど屋内保管が難しいものがある場合は、トランクルームを契約するのもひとつの方法です。
また、定期的な水やりが必要な植物がある場合は、親戚や友人宅に一時的に預けるのもよいでしょう。
その他、仮置き場が見つからないものは、早めに施工業者に連絡が必要です。
品物によっては、足場に固定したり、適切な処置をしてくれる専門業者を紹介してくれる場合もあります。
自力で植物や私物を移動できない場合は、すぐに施工業者に連絡することも大切です。
専門業者を紹介してくれたり、オプション料金で引越しを請け負ってくれるなどサポートしてくれるところもあります。
特に、自分でフロアタイルを敷いていると、「タイルが剥がせない」「重くて運べない」などのトラブルが多いです。
自分で対処できない倍でも慌てずに施工業者に相談しましょう。
大規模修繕でベランダに関連する工事
大規模修繕の時、ベランダではどのような工事をするのか疑問や不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
事前に工事内容を把握すれば、適切でスムーズに対応できます。
そこで、大規模修繕ではベランダでどのような工事が行われるのか、詳しく解説します。
シーリング工事
シーリングとは、ゴム状の防水材です。
ベランダでは、サッシや建具(窓の開口部)の周囲に使用されます。
シーリング工事は、サッシの気密性や防水性を維持し、水漏れを防ぐ役割がある作業です。
シーリング工事は網戸が付いていると円滑に行えないため、あらかじめ網戸を外しておく必要があります。
高圧洗浄
外壁下地工事・タイル補修・シーリング工事完了後、ベランダの床・天井の高圧洗浄を行います。
汚れをしっかり落とすことで、塗料や防水剤の密着性を高めることができます。
ただし、高圧洗浄中はベランダに植物は置いておけないほか、洗濯物を干すことができないため注意が必要です。
外壁塗装
室内側の外壁にひび割れがある場合は、樹脂硬化型塗料で外壁を塗り替える必要があります。
塗料の臭いが気になるかもしれませんが、近年では比較的臭いの穏やかな塗料が使われることが多いです。
ただし、臭いが原因で気分が悪くなった場合、すぐに病院へ行き、管理組合や施工業者に対策をしてもらいましょう。
外壁下地やタイル補修
外壁のタイルやコンクリートの浮き、ひび割れを補修する工事で、次の塗装工事や防水工事の仕上がりにも影響する重要な工事です。
コンクリートを削る際には、粉塵・土埃・騒音が発生します。
また、工事期間中はベランダに洗濯物を干すことができません。
防水工事
床を防水することで、ベランダに雨が染み込むのを防ぎます。
工法には3種類あり、それぞれ耐用年数やコストが異なります。
- ウレタン防水
- FRP防水
- シート防水
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を使用する工法です。
FRP防水は、液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を添加し、ガラス繊維などの補強材と組み合わせる工法です。
硬化速度が速く、工期を短縮できる反面、コストは高くなる傾向にあります。
シート防水は床に直接シートを敷く方法で、素材はゴムや塩化ビニールなどがあります。
近年では、紫外線に強く耐摩耗性に優れる塩化ビニールが主流です。
大規模修繕工事でよくある質問
Q
大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。
Q
バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?
A
バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。
Q
工事期間中、エアコンは使えますか?
A
基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。
Q
大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?
A
塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。
Q
大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?
A
できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。
Q
修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?
A
築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。
Q
大規模修繕工事の費用相場は一般的にいくらですか?
A
大規模修繕工事の費用について一般的な相場としては、1戸あたり約100万円前後が目安です。マンション全体の規模が大きい場合には、修繕費用が1億円を超えることもあります。また、マンションの劣化が激しい場合や、質の高い塗装を希望する場合には、さらに費用が高くなることがあります。
マンション大規模修繕ではベランダを片付けておこう
マンション大規模修繕でベランダに置いている植物や私物の扱いについて解説しました。
まとめると、
- マンションのバルコニーは避難経路になるため基本的には何も置いてはいけない
- マンションの大規模修繕工事では各部屋のベランダの防水工事も含まれる
- ベランダの防水工事を行う場合は事前に私物を片付けておく
- 植物を処分できない場合は友人に一時的に預かってもらう
ベランダに植物を置く場合は、室内に置けるもの、すぐに移動できるものを選ぶことが大切です。
また、大型の収納やガーデニング、ウッドデッキ、タイルなどを設置すると、大規模修繕の際に余計な出費が発生する可能性があるため、バルコニーに物を置く際には注意が必要です。
マンションによっては共用部に一時的に置いておけるスペースがあるため、処分できない植物や移動が難しい私物がある場合は、管理組合や施工業者に相談をしましょう。