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マンションの大規模修繕工事にかかる費用相場の平均や改修のポイントを解説

大規模修繕は、マンションの資産価値を守るうえで非常に重要な工事です。
しかし、初めて大規模修繕に直面すると「費用がどれくらいかかるのか」「どのような点に注意すればいいのか」と、不安に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、マンションの大規模修繕工事にかかる費用の平均や内訳について解説していきます。
また費用を抑えるコツやトラブル事例・大規模修繕がマンションの資産価値に与える影響についても紹介いたしますので、ぜひ参考としてお役立てください。

マンションの大規模修繕とは?

マンションの大規模修繕とは、経年劣化によって傷んだマンションの外観や設備を定期的に修繕することです。 とくに、普段実施するのが難しい建物本体(躯体)を維持するための修繕や、共用部分の改修を指します。
大規模修繕は、約12~15年ごとに行われるのが一般的です。

なぜ大規模修繕が必要なの?

マンションの大規模修繕は、以下の2つの目的で行われます。

建物の劣化を防ぐため

建物は常に雨風や紫外線にさらされているため、経年とともに劣化していきます。
例えば、外壁のひび割れやタイルの剥落・屋上の防水層の劣化などが挙げられます。
これらの劣化を放置しておくと、雨漏りや躯体の腐食など、さらに深刻な問題を引き起こす可能性があります。
大規模修繕は、これらの劣化部分を補修・改修することで、建物を健全な状態に保ち、寿命を延ばすことが目的です。

資産価値を維持するため

大規模修繕が適切に行われているマンションは、そうでないマンションに比べて、資産価値が維持されやすい傾向にあります。
逆に、大規模修繕を怠り建物の劣化が進むと、見た目が悪くなるだけでなく、安全性や居住性が低下し、資産価値が大きく下がる可能性があると言えるでしょう。
例えば築年数が同じでも、大規模修繕が実施されているマンションとそうでないマンションでは、売却価格に数百万円単位の差が出ることも珍しくありません。

大規模修繕の工事内容

大規模修繕の内容はマンションによってさまざまですが、おもに下記のような工事が実施されます。

外壁工事

外壁工事は、建物の美観維持と構造保護の両面で極めて重要な工事項目です。
主な作業としては、ひび割れの補修や塗装(下地処理を含む)をはじめ、必要に応じてタイルの貼り替えなども行います。
ひび割れの補修は単なる見た目の問題だけでなく、水分の侵入を防ぎ建物の劣化を防ぐためにも重要です。
また塗装によって建物の美観を向上させるだけでなく、紫外線や雨水から外壁を保護する機能も果たします。
タイルの剥落の危険性がある場合や大規模な破損がある場合は、貼り替えも検討する必要があるでしょう。

屋上防水工事

屋上防水工事は、建物の最上部を雨水や紫外線から守る重要な工事です。
主な方法としてはシート防水や塗膜防水があり、建物の構造や状態に適した工法を選択すると良いでしょう。
この工事は雨漏りの防止だけでなく、建物全体の寿命を延ばす役割もあります。
通常10〜15年ごとに大規模な改修が必要となりますが、定期的なメンテナンスを行うことで、より長く防水性能を維持できます。

バルコニー防水工事

バルコニー防水工事は各戸のバルコニーの防水層を補修・改修する作業で、使用状況や劣化状態が異なる場合は個別の対応が必要です。
主な作業内容には、防水層の補修・更新や排水溝の清掃・改修が含まれます。
バルコニーは居住者の生活に直結する場所であるため、快適性と安全性の両面から適切な防水処理が求められます。
また上階のバルコニーからの水漏れは下階の住戸に影響を与える可能性があるため、建物全体の観点からも重要な工事項目といえます。

鉄部塗装

鉄部塗装は錆びの防止と美観の維持が目的で、階段や手すり・ベランダ格子・門扉などの金属部分が対象です。
金属部分は経年劣化や環境の影響を受けやすく、放置すると錆びが進行し、強度の低下や見た目の悪化を招きます。
通常5〜7年ごとに行うのが一般的ですが、建物の立地条件(海岸沿いなど)によっては、より頻繁な塗装が必要となる場合もあります。

共用部分改修

共用部分改修は、エントランスやエレベーターホール・廊下・階段室などの共用スペースを対象とする工事です。
主な作業内容には、床・壁・天井の塗装や張替え、照明器具の交換、郵便受けの交換などが含まれます。
共用部分は建物の第一印象を左右し、居住者や来訪者に快適な空間を提供するためにも重要な役割を果たします。
また適切な改修は、建物の資産価値を維持向上できるため、近年では省エネ性能の高い照明器具への交換やバリアフリー化など、機能性の向上も考慮した改修が行われる場合が多いです。

設備改修

設備改修は、建物の機能を支える重要な工事項目です。
主な対象としては、エレベーター(制御盤・モーター・かご内装の更新)や電気設備(受変電設備・配電盤の更新)・給排水設備(配管の交換・ポンプの更新)などが挙げられます。
これらの設備は建物の利便性と安全性に直結するため、専門性の高い工事となります。
事前の詳細な調査に基づいて、適切な改修計画を立てることが重要です。
また設備の更新に際しては、最新の技術を導入することで、省エネ性能の向上や利便性の改善といった付加価値を生み出せます。

大規模修繕工事にかかる費用相場の平均

ここでは国土交通省の調査データを参考に、一般的な費用相場について解説していきます。

引用元:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

1戸あたりの費用目安

国土交通省が令和3年に実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事にかかった費用は1戸あたり「100~125万円未満」が最も多く、全体の約27%を占めています。
なおこの調査では、共通仮設費は含まれていません。
共通仮設費とは、作業員が使う足場や安全柵・仮囲いなどを設置・撤去する際にかかる費用です。

床面積あたりの費用目安

床面積あたりの費用で見ると、1回目の大規模修繕工事の場合は、1㎡あたり平均約1〜1万5000円となっています。

回数ごとの費用目安

大規模修繕の費用は、一般的に回数を重ねるごとに高くなる傾向にあります。
これは、1回目の修繕では軽微な補修で済んでいた箇所が、回数を重ねるごとに大規模な改修工事が必要になるケースが増えるためです。
例えば、1回目の大規模修繕では屋上の防水層の補修のみで済んでいたものが、2回目・3回目には防水層の全面的な張り替えが必要になる、といったケースが考えられます。

マンションの大規模修繕工事にかかる費用相場を左右する要因

対象マンションの戸数

一般的にマンションの戸数が多いほど、1戸あたりの大規模修繕費用は割安になる傾向があります。
これは戸数が多いほど、足場設置費用や共用部分の改修費用などを多くの戸数で負担できるためです。

築年数や劣化状態

築年数が経過するほど建物の劣化が進行するため、大規模修繕の規模が大きくなる傾向にあります。
そのため築年数が古いマンションほど、大規模修繕費用が高額になる傾向があります。

大規模修繕の費用構成

建物の価値を維持し、居住者の安全と快適性を確保するためには、適切な大規模修繕が不可欠です。
その費用構成を理解することで、より効果的な修繕計画を立てられます。
主に「工事費用」と「コンサルタント費用」の2つの大きな柱で構成され、それぞれの内訳については以下のとおりです。

工事費用の占める割合

工事費用は大規模修繕の中核を成す部分で、建物の物理的な改修や修繕に直接関わる費用です。
これらの工事項目は、建物の状態や経年劣化の程度によって規模が変わってきますが、いずれも建物の機能維持と資産価値の保護に重要な役割を果たします。
工事費用の割合は、下記の通りです。

工事の種類工事費に占める割合
足場設置10-15%
外壁工事25-35%
屋上防水工事10-15%
バルコニー防水工事8-12%
鉄部塗装5-8%
共用部分改修10-15%
設備改修15-25%

コンサルタント費用の目安

コンサルタント費用は通常、総工事費の5〜10%程度ですが、建物の規模や工事の複雑さによって変動します。
この費用は一見高額に感じられるかもしれませんが、コンサルタントは建物の現状分析から工事完了後の検査まで、大規模修繕のあらゆる段階で重要な役割を果たします。
専門家の知識と経験を活用することで効果的かつ効率的な修繕ができるため、コンサルティングは工事の品質向上やコスト削減・長期的な建物の価値維持につながる重要な投資といえるでしょう。

大規模修繕の費用を抑えるコツ

大規模修繕の費用を抑えるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

複数業者から相見積りをとる

複数の施工会社から見積りを取り、比較検討することで費用を抑えられます。
相見積りを取る際は単に金額だけで判断するのではなく、工事内容や会社の信頼性なども考慮することが重要です。

補助金・助成金制度の活用

自治体によってはマンションの大規模修繕工事に対して、補助金や助成金制度を設けている場合があります。
これらの制度を適切に活用することで、費用を大幅に抑えられるでしょう。

大規模修繕を成功させるためのポイント

大規模修繕を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
これらのポイントを押さえることで、効率的かつ効果的な修繕を実現し、建物の価値を長期的に維持・向上できます。

早期の準備開始

大規模修繕を成功させるには十分な準備期間が必要で、修繕時期の3〜5年前から準備を始めることが理想的です。
この期間を活用して詳細な建物診断を行い、必要な修繕の範囲と内容を特定します。
また、資金計画の立案も重要な準備の一つです。
修繕積立金の状況を確認し、必要に応じて積立金の増額や借入れの検討を行います。
さらに、管理組合内での合意形成にも時間をかける必要があります。
大規模修繕は多額の費用を要し、居住者の生活にも影響を与えるため、丁寧な説明と議論を重ねることで円滑に工事を実施できるでしょう。

透明性の確保

透明性の確保はプロジェクトへの信頼を高め、円滑な工事の実施と、将来の修繕に向けた協力体制の構築につながります。
大規模修繕プロジェクトの透明性を確保するためには、定期的な進捗報告会の開催が効果的です。
これらの報告会では、工事の進捗状況や発生した問題とその対策・今後の予定などを詳細に説明する必要があります。
また、工事内容や費用に関する詳細な説明も欠かせません。
使用する材料や工法の選択理由をはじめ、各工事項目の必要性や優先順位・費用の内訳などを明確に示すことで、居住者の理解を深められるでしょう。

住民の理解と協力

大規模修繕工事は建物に住みながら行われるため、居住者の日常生活に少なからず影響を与えます。
そのため工事による生活への影響を事前に詳しく説明し、理解と協力を得ることが重要です。
具体的には、工事期間中の騒音・振動やバルコニーや共用部分の使用制限・駐車場の一時的な利用制限などについて、事前に周知を行いましょう。
また工事の進捗に応じて、定期的に情報を更新し、居住者に伝えることも大切です。
さらに必要に応じて個別の相談窓口を設置し、居住者の不安や疑問に丁寧に対応することで、工事への理解と協力を深められます。
居住者の協力が得られることで、工事をより円滑に進められるとともに、工期の短縮やコスト削減にもつながる可能性があります。

適切な業者選定

大規模修繕の成功には、適切な施工業者の選定が不可欠です。
適切な業者選定としては複数の業者から見積りを取得し、比較検討することが重要です。
しかし、単に価格の安さだけで判断するのではなく、業者の実績や技術力・提案内容なども総合的に評価する必要があります。
過去の類似案件での実績や保有する技術や資格・財務状況なども重要な判断材料となります。
また提案内容については、建物の特性を理解し、適切な工法や材料を提案しているかどうかを見極めることが大切です。
さらに、アフターフォロー体制が十分に整っているかも重要な要素です。
適切な業者を選定することで、高品質な修繕工事の実施と長期的な建物の維持管理が可能となるでしょう。

長期的視点での計画

大規模修繕は単なる原状回復ではなく、将来的な価値の維持・向上が目的となるため、長期的な視点で計画を立てることが重要です。
例えば、省エネ対策として高効率な設備への更新や断熱性能の向上を図ることで、将来的な光熱費の削減につながります。
また、バリアフリー化や防災機能の強化など、社会のニーズや法規制の変化を先取りした改修を行うことで、建物の長期的な価値を高められるでしょう。
さらに新技術や新材料の採用を検討することで、メンテナンス性の向上や耐久性の強化も図れます。
このような付加価値を考慮した計画立案により、単に建物を維持するだけでなく、居住環境の質を向上させ、資産価値を高められるでしょう。

大規模修繕工事でよくある質問

Q

大規模修繕工事の期間はどのくらいかかりますか?

A

大規模修繕工事の規模や建物の状態によりますが、およそ3ヶ月〜4ヶ月程度かかることが多いです。

Q

工事中の生活にどんな影響がありますか?

A

足場の設置やメッシュシートで覆うため、室内が少し暗くなることがあります。また、塗装や防水作業時には洗濯物が干せないなどの制限があります。

Q

バルコニーやベランダの利用はどうなりますか?

A

バルコニーやベランダの壁面塗装や床面の防水作業時には、使用が制限されることがあります。

Q

工事期間中、エアコンは使えますか?

A

基本的には通常通り使用できますが、場合によっては一時的に使用が制限されることもあります。

Q

大規模修繕での工事の騒音や臭気はどうなりますか?

A

塗装の臭気やドリルの騒音、粉塵などが発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。

Q

大規模修繕工事に対する費用が不足する場合はどうすればよいでしょうか?

A

できるだけ早い時期に長期修繕計画に基づき積立金を見直し、資金不足にならないようにするのが最善です。実際に資金が足りないことが判明した場合には、時期をずらしたり、工事の範囲を見直したり、一時金の徴収や借入の可能性を探ったりと、様々な方法で計画を調整できます。ご予算に応じて資産価値を損なわないベストなプランをご提案いたします。

Q

修繕工事の前に現地調査が必要なのはなぜですか。どういうことを行うのですか?

A

築年数、周囲の環境や場所によって劣化の度合いは異なりますので、各部の劣化状況を把握し、適切な修繕方法を見極めるためには現地調査が欠かせません。外壁タイルの浮きやコンクリートの中性化、鉄部の錆など、部位ごとに幅広くチェックします。

まとめ

本記事では、大規模修繕の費用について解説しました。

  • 大規模修繕とは経年劣化によって傷んだマンションの外観や設備を修繕する工事で、約12~15年ごとに行われるのが一般的
  • 大規模修繕では、おもに外壁工事や防水工事・共用部分改修などが行われる
  • 大規模修繕費用は、建物の規模や構造・築年数・工事内容によって異なる
  • 大規模修繕を成功させるためには、事前の準備や住民への適切な説明が重要

マンションの大規模修繕は、建物の寿命を延ばし資産価値を維持するためには欠かせないものです。
大規模修繕工事を適切に行うことで快適な住環境を維持し、将来にわたって安心してマンションに住み続けられます。
今回の記事を参考に大規模修繕に関する知識を深め、適切な対応を取るようにしましょう。

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