軒天(のきてん)とは何でしょうか?屋根の側面部分、いわゆる軒下や破風板(はふいた)と呼ばれる外壁からはみ出した屋根の裏側を指します。この軒天の役割は重要で、適切な防水工事が建物の寿命を左右します。
軒天塗装や補修は、外壁塗装と同様に定期的なメンテナンスが必要です。放置すると、劣化や剥がれが進行し、最悪の場合、雨漏りにつながる恐れがあります。
本記事では、軒天の防水工事の種類と方法、そして費用について詳しく解説します。塗装から張り替えまで、状態に応じた適切な施工方法をご紹介。さらに軒天の防水工事の流れまで触れています。ぜひ、最後までお読みください。
軒天の劣化を放置するリスクと、早めの対策の重要性を理解し、愛する我が家を長く美しく保つ方法を学びましょう。
目次
軒天とは|外壁塗装と一緒に防水工事
軒天とは、住宅を見上げたときに外壁から外側に飛び出している部分のことです。
軒天は屋根の裏側を覆っている部分で、雨水が流れる屋根の端を軒先と呼び、軒の裏にある天井を「軒天」といいます。
なお、バルコニーやベランダの裏側も軒天と呼びます。
付属部分は外壁塗装と一緒に防水工事(塗り替える)ことが一般的であり、軒天も外壁と同時に施工するケースがほとんどです。
防水工事の基礎|軒天の役割
軒天には、美観を良くするほか、外壁が劣化しないよう守る役割があります。
ほかにもいくつかの重要な役割があるため、それぞれ解説します。
軒天の役割1.美観の向上
軒天を屋根の裏側に出すことで、屋根板や垂木など屋根の構造部分を隠すことができ、すっきりとした外観になります。
日本家屋のなかには、軒天を取り付けた後に化粧垂木(けしょうたるき)を付け、デザイン性を高めるものも多いです。
軒天の役割2.雨水や日射による外壁の劣化を防ぐ
軒天が長いと、雨水や日差しを遮り、外壁材の劣化を予防します。
軒天がない建物はスタイリッシュですが、雨水の影響を受けやすいため、外壁材の経年劣化や雨滴による汚れには注意が必要です。
軒天の役割3.延焼を防ぐ
隣家から出火したり、窓から炎が上がったりした場合、軒天屋根でなければ火はすぐに屋根裏に燃え移り、屋根を焼き払ってしまいます。
そのため、軒先には不燃材を使用し、建物への被害の拡大を防ぐために重要な部分です。
軒天の役割4.屋根裏の換気
軒天や換気孔に、穴が開いているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
穴が開いている理由は、屋根裏に溜まった湿気を排出し、内部結露を防ぐためです。
換気については、棟側や妻側などの出入り口など2カ所以上で屋根裏換気を併用すれば、さらに大きな効果が期待できます。
防水工事の基礎|軒天の素材と種類
軒天は、ボードと外壁一体型の2種類に分類されます。
ここでは、素材の特徴と種類を紹介します。
軒天の素材
モルタルなどの塗り壁の場合は、外壁材と同じ材料で仕上げる外壁一体型が多いです。
外壁一体型は、外壁材と同じ工法を指します。
外壁がサイディング張りの場合は「軒天ボード」を使用します。
ボードの種類は主に3つに分けられるため、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
軒天の素材|カラー化粧板(ベニヤ板)
カラー化粧板は、築30年以上の住宅の軒先に使われることが多く、新築で使われることはほとんどありません。
しかし、施工性やコスト面では非常に優れており、リフォーム工事ではよく使用されます。
軒天の素材|スパンドレル
金属製の軒天には、主原料がガルバリウム鋼板のスパンドレルという仕上げ材があります。
スパンドレルは軒先だけでなく外壁にも使われており、ビルやマンションなど比較的大きな建物の軒先の仕上げ材として採用されることが多いです。
軒天の素材|ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
ケイカル板は、主流の軒天素材です。
カラーベニヤに比べ、ケイカルボードの価格はやや高めですが、ケイカル板は耐久性、耐火性、耐水性に優れています。
防火性能基準(軒下30分防火構造適合品)を満たした製品も多く、法的規制を気にせず使用できることが魅力です。
軒天が雨漏りしやすい理由|コーキングで防水工事
水は低い方向に集中するため、軒天への雨漏れが比較的多いです。
軒天から雨漏りしやすいといえる主な理由を2つ紹介します。
軒天と外壁の取り合い部分は雨漏りしやすい
軒天と外壁の取り合い部分は、構造的に雨漏りしやすい部分です。
接合部から雨が漏れる主な原因は、暴風雨時に下から吹き上げる雨水の侵入です。
軒天と外壁の接合部からの雨漏りの場合、水が浸入する箇所と排水する箇所が異なるケースがあります。
例えば、サッシ周辺に十分な防水処理を施してもサッシからの雨漏りが改善されない場合は、軒天井の接合部から雨水が浸入していることが疑われるでしょう。
軒天と外壁の接合部に防水処理を施すことで、サッシ廻りの雨漏りを改善できます。
防水工事は、コーキングで行うことが多いです。
しかし、コーキングの場合、施工後数年でコーキングが剥がれてしまい、再び雨漏りが発生してしまうため定期的な点検と防水工事が必要です。
排水能力が追いつかず軒天が腐る
台風などの大雨の際、雨水が軒どいの排水能力を超え、雨どいから溢れてしまうことがあります。
また、雨どいや集水器がゴミで詰まっている場合も同様です。
あふれた雨水は軒天を腐らせ、雨漏りの原因になります。
雨天時には、雨どいが十分に機能しているか、定期的にチェックしましょう。
軒天の劣化や雨漏りを放置!防水工事をしないリスクとは
多少の不具合があっても、軒天の防水工事や修繕をせずに様子を見てしまう方もいるでしょう。
しかし、軒天の防水工事や修繕をしなければ大きな問題に発展し、より費用がかかる可能性があります。
ここでは、軒天の劣化を放置する危険性を紹介します。
雨漏りが発生
塗装がはがれたり、穴があいたまま放置しておくと、水がしみこんで雨漏りにつながります。
水が内部に浸入して建物の骨組みである垂木にまで達すると、カビや腐食の原因となり、建物倒壊の危険性もあります。
台風や強風で軒天が剥がれる
傷んだ軒天が雨や風などの強い衝撃を受けると、軒天そのものが剥がれ始めます。
軒天が剥がれると内部に雨が吹き込み雨漏りの原因となるため、早急な対策が必要です。
小動物の侵入
軒先が傷んでいたり、穴が開いていたりすると、隙間から小動物が忍び込んで屋根裏に住み着く危険性があります。
小動物の尿で天井が汚れてから、小動物の侵入に気づくケースも多いです。
軒天の防水工事の種類
軒天の主な防水工事の種類は、塗装、カバー工法、張り替えが挙げられます。
防水工事の種類ごとの特徴を確認しておきましょう。
防水工事の種類1.軒天塗装
色あせやわずかな剥がれに気づいたら、再塗装による防水工事が効果的です。
塗装の際は、まず表面を磨いて汚れや剥がれを落とし、金属があれば防サビ剤を塗って下地を整えてから塗装します。
釘穴や小さなひび割れをパテなどで補修して下地を整え、耐水性が高く、防カビ・防サビ性・通気性に優れた塗料を下塗りと上塗りの2回塗ります。
塗装の際には、エマルジョン樹脂塗料やアクリル塗料が使われることが多いです。
防水工事の種類2.軒天増張り補修(カバー工法)
既存の軒天に、下から新しい軒天を貼り付ける工法です。
軒天の表面だけに不具合が起こっている場合に採用されることが多く、工期短縮とコストダウンができます。
劣化が軽度であれば、既存の軒先にケイカル板などを重ねてカバーする方法が有効です。
張り替えよりも費用が安く、軒を二重にすることで防水効果も高くなるでしょう。
防水工事の種類3.軒天張り替え工事
増張りができないほど傷みが激しく、雨漏りで防水シートの内側が傷んでいる場合などは、軒天の張り替えを行います。
軒天張替えは、既存のベニヤを解体し、新しいベニヤに張り替える工事です。
新しいベニヤは防水性を高めるために塗装で仕上げます。
なお、ベニヤだけではなく、ケミカルボード、ホワイトポリベニヤ、プリントベニヤなども使用されます。
軒天の防水工事の費用相場
軒天の防水工事の費用は、工事内容によって異なります。
塗装による防水工事:15~25万円
増張り補修(カバー工法):5~15万円
張り替え:15万円~45万円
また、軒天の防水工事を行う場合、2階以上の高さまで軒天を補修する場合は足場が必要になります。
足場代だけで平均15~25万円程度です。
雨漏りの発見時期によって、今後の修理方法や費用は大きく変わってきます。
もちろん、雨漏りを早期に発見し対処することで、被害の拡大を防ぎ、将来の修理費用を抑えることが可能です。
定期的に軒先を見上げ、軒天に雨染みができていないか確認しましょう。
なお、雨染みは雨漏りが原因ではなく、結露が原因の場合もあります。
目視だけでは判断が難しい場合は、屋根の専門業者に相談することが大切です。
軒天の防水工事の流れ
実際に軒天の防水工事をする場合、どのような流れで依頼や工事を行うのか、先に確認しておきたいと感じる方も多いでしょう。
ここでは、軒天の防水工事の工程を紹介します。
軒天の防水工事の流れ1.汚れの確認
軒先に汚れがある場合は雨漏りの可能性が高いため、汚れが見つかったら雨漏りしている箇所を特定し、表面処理を行います。
また、軒天の屋根に水が回って濡れている場合もあるでしょう。
屋根に水が回って濡れている場合、塗装をしても数年で塗膜が剥がれてしまう危険性が高いため、部分的な張替えが必要です。
外壁や屋根の塗装と合わせて軒天の洗浄を行う場合は、足場を組んだ後、洗浄前に作業を行います。
軒天の防水工事の流れ2.洗浄作業
外壁や屋根の塗装と同時に軒天の清掃を行う場合は、足場を設置します。
さらに、周辺に飛散しないようにネットを設置しなければなりません。
また、足場の内側にブルーシートを敷いて洗浄時の汚れの飛散を防ぐ方法もあります。
軒天は小さな穴や通気孔が開いているため、外壁や屋根と同じように高圧洗浄を行うと水が内部に侵入してしまいます。
そのため、水が浸入したり、建材そのものを傷めたりする恐れがあります。
水圧を弱め、軒裏のゴミやホコリなどの汚れを取り除かなければなりません。
洗浄後は、乾くまで長時間待ちます。
なお、洗わずに防水工事をすると塗膜の密着力が弱くなり、数年後に剥離する恐れがあるため、塗料との密着性を確保するためにも重要な工程です。
軒天の防水工事の流れ3.下地処理
洗浄作業が終わり、乾いていることを確認したら、色あせやひび割れ、破損がないか、下地を目視で確認します。
軒天に傷がある場合は、サンドペーパーやレザー用スクレーパーで汚れを落とします。
汚れを落とし、古い塗料をすべて取り除く作業です。
また、建材の状態によっては、サンドペーパーで表面に凹凸を作り、塗料の密着性を高めることもあります。
さらに、下地処理では対応できないほど傷みが激しい場合は、塗装ではなく張り替えが必要です。
軒天の板と板の間にシーリング(コーキング)と呼ばれる目地がある場合は、シーリングの打ち替えを行います。
軒天の防水工事の流れ4.下塗り
下地処理が完了したら、ローラーや刷毛を使って下塗りの工程に入ります。
外壁塗装の下塗りと同様に、軒天の下塗り材には建物と塗膜を密着させる作用があります。
建材や軒天の状態によって、どの下塗り材が適しているかを現場で判断しながら下塗りを進めることが重要です。
さらに、軒先の建材に損傷が少なく、旧塗膜に問題がなければ、上塗りを2回塗ることもあります。
軒天の防水工事の流れ5.中塗りと上塗り
中塗りと上塗り工事は、選択する塗料ごとに特徴があり、主に防水、防藻、防カビなどの効果が期待できます。
サビが発生しやすい箇所には防サビ効果のある塗料を使用し、塗装前に傷がある場合は補修の有無を確認しなければなりません。
さらに、十分な乾燥時間を確保し、乾燥させてから中塗り、上塗りを行います。
塗り残し、塗りムラ、ピンホールがないか確認し、軒天を塗装する場合は、塗膜で穴がふさがらないようにすることも重要です。
なお、材料や立地条件により塗り回数は異なります。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
軒天の防水工事は建物や屋根を守ることにつながる
屋根や外壁と同様に軒天も防水工事やメンテナンスを行うことで、きれいに保つだけでなく、軒裏の屋根の構造を守ることができます。
軒天の傷みは雨漏りにつながるため、定期的な目視チェックも大切です。
雨漏りをしている場合や、汚れや傷が気になる場合は、信頼できる専門業者に調査を依頼しましょう。