マンションの外壁塗装は、大規模修繕時に併せて施工するのが一般的です。
マンション管理組合の理事会で外壁塗装について議題に上がることもあると思います。
大規模修繕を行う際に15年以上の耐久性のある外壁塗装の工事をおこなってくれる業者を見つけることが重要です。
塗料の種類で耐久性がある程度判別できますので、見積もり内容を確認する際に参考になるように、
塗料の種類と耐久性・1平方メートルあたりの一般的な価格を紹介しています。
次に気をつけたいこととしては、
大規模修繕を行う前に、必ず相見積もりを取ってください。
繰り返しになるのですが、使用する塗料である程度工事の内容を判別することができます。
一般的な塗料の費用からどの程度乖離しているかを把握することができるので、値段交渉をするための知識つけておきましょう。
マンションの施工業者や、既存の管理会社から紹介をもらっている業者も、疑いたくはないので相見積もりを取ることで工事内容を確認することが重要です。間にマージンが入ることにより割高になることもよくある話です。
塗料の種類や工事方法など、見積もり書に詳細がない場合は、工事方法や塗料の種類を質問してください。
相見積もりを取ることで、既存の業者に対しての交渉材料を持つことが可能になります。
マンションに住んでいる全ての住人が大切に積み立ててきた修繕費です。
この記事を参考に、外壁塗装の工程や塗料の種類についての知識をつけていただき、より良い工事をしてくれる業者を探すため(お付き合いがあるのであれば既存の業者に工事内容を見直してもらうために交渉する予備知識)の参考になれば幸いです。
マンションで外壁塗装工事だけを行うことはあまり考えられません。
理由は足場工事や仮設工事をおこなって、外壁塗装工事のみを行うのは効率が悪い(費用体効果が合わない)からです。
仮にマンションの外壁の劣化が著しく、外壁塗装を依頼しないといけない状況になってしまった場合、既存業者を疑わないといけない状況です。
この記事では外壁塗装の見積もり単価や適正価格、注意点などについて解説していきます。参考にしてみてください。
目次
外壁塗装の必要性
マンションも一般住宅と同じように、定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスを怠ると汚れで見た目が悪くなるだけでなく、外壁が劣化していきます。
ひび割れが発生して雨漏りが起こったり、構造部分が腐食したりする可能性があります。
建物自体の寿命が短くなり資産価値も下がるので、マンションの外壁塗装が大切です。
外壁塗装のペースは?
国土交通省が平成16年6月に提示し、令和3年9月に改訂した、「改修によるマンションの再生手法に関する マニュアル」によると、
外壁塗装(大規模修繕工事)は12年前後を目安に行うと良いと言われています。
国土交通省 改修による(外壁塗装含む)マンション再生手法に関するマニュアル
工事期間について
マンションの外壁塗装には1~3か月ほどかかるのが一般的です。(シーリングや防水工事も含む)
ただしマンションの規模によっても異なります。
50戸以上のマンションなら4~5か月かかることもありますし、さらに大規模になると半年以上かかるケースもあります。
部位別の耐用年数
マンションでは、部位別に塗装の耐用年数が異なります。
外壁 | 外壁塗装は8~10年前後で塗り替えや補修が必要です。 |
鉄部 | 手すりなど鉄部の塗装の耐用年数は短く、5年に1度は塗り替えや補修が必要でしょう。 |
外壁塗装を検討すべきタイミングとは
建物の状況を見て、外壁塗装(大規模修繕)についての検討を開始します。
1,天井から雨漏りなどでシミができている
1,天井から雨漏りなどでシミができている
内部に浸透している可能性があります。屋根内部の鉄部の腐食などが進んでいる可能性があります。
2,コンクリートの剥離が進んでいる
鉄筋コンクリート住宅の劣化が進行すると、コンクリートが剥離します。雨にさらされている箇所が劣化しやすい箇所となります。内部の鉄部の腐食やコンクリート自体の膨張で剥離が進んでいきます。
3,目視でわかる外壁のひび割れ
低層階によく見受けられる症状です。1階目の大規模塗装が終了した後、8年以内に画像のような症状が多く出た場合は、大規模修繕業者を見直すタイミングかもしれません。
外壁塗装の費用相場は?
マンションの外壁塗装は、次のような費用がかかります。
3階建て | 130~410万円 |
5階建て | 450~670万円 |
7階建て | 630~950万円 |
「3階建ては300万円前後」「5階建ては500万円前後」といったふうに、大まかに計算することもできますよ。
もちろん上記の金額はあくまでも目安です。
マンションの規模や塗料の種類によっても費用は変わるでしょう。
塗料の種類で価格が変わる
外壁塗装に使われる塗料の種類によって、費用は変わってきます。
耐用年数や特徴も異なるので、ここでご紹介していきましょう。
塗料の種類 | 耐用年数 | 価格(1㎡あたり) | 特徴 |
アクリル系塗料 | 約4年 | 1,500円前後 | 価格は安いですが、こまめに塗り替えが必要です。 |
ウレタン系塗料 | 約6~8年 | 1,800~2,000円 | かつては主流だった塗料です。価格が安いので、塗装費用を節約したい場合に使うと良いでしょう。 |
シリコン系塗料 | 7~15年 | 2,300~3,500円 | 外壁塗装で最も多く使われる素材です。価格と耐久性のバランスが良いのが特徴です。 |
フッ素系塗料 | 12~20年 | 3,500~4,800円 | 紫外線や汚れに強く、耐久性が高いです。値段が高めですが、塗り替えの回数が少なく済むので、高層マンションではトータルコストの削減も可能です。 |
ラジカル系塗料 | 8~16年 | 2,200~4,000円 | 比較的新しい素材です。使用実績が少ないのでまだ実力のほどは未確認の面もあります。しかし耐用年数が長く、今後の主流になるのではと期待されています。 |
セラミック系塗料 | 10~25年 | 2,300~4,500円 | セラミックと樹脂を混ぜ合わせた素材です。種類によて断熱・遮熱効果や防汚効果などが付加されています。 |
無機系塗料 | 10~25年 | 3,500~5,500円 | 無機質の鉱物を使ってた塗料です。値段は張りますが耐久性が非常に高いです。 |
光触媒系塗料 | 10~20年 | 3,800~5,500円 | 光を浴びると化学反応で汚れを分解してくれる塗料です。空気を浄化させる採用もありますが、太陽の光が当たらない箇所では思ったような効果が得られません。 |
ちなみにアクリル系塗料やウレタン系塗料は、大規模修繕工事の周期よりも短い期間で寿命が来てしまいます。
基本的にはシリコン系塗料を中心に考え、それでも希望にそぐわない場合はフッ素系塗料などを使うのが良いでしょう。
足場の設置費用は?
マンションなど2m以上の高さで外壁塗装工事をする場合、必ず足場を設置しなくてはなりません。
足場の設置には1㎡あたり600~800円ほどの費用がかかります。
ただし最近では足場を使わずに外壁塗装を行う「無足場工法」を行う業者も増えてきています。
無足場工法を使うと費用が割安になるので、見積もりの際に無足場工法を使えるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
外壁塗装の工程は?
マンションの外壁塗装は、次のような工程で行われます。
- 足場の設置
- 養生
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 塗装
- 足場の撤去
1、足場の設置
まずは作業を行うための足場を、マンションの周囲に設置します。
マンションの規模にもよりますが、足場の設置には1~2日ほどかかります。
ちなみに足場設置のための費用は、大規模修繕全体の2~3割になるとも言われています。
2、養生
塗装工事では塗料が飛び散るので、塗装する箇所以外をビニールシートやマスキングテープなどで養生(保護)します。
養生の単価は1㎡あたり300円前後です。
また近隣住宅や道路へ塗料が飛び散るのを防ぐため、足場の周囲に飛散防止シートも設置します。
飛散防止シートの単価は1㎡あたり100円前後です。
3、高圧洗浄
外壁を高圧洗浄機を使って洗います。
この際にきちんと汚れや古い塗装を落としておかないと塗料が上手く付着せず、外壁塗装の寿命が低下してしまいます。
高圧洗浄には1㎡あたり100~300円ほどの費用がかかります。
また高圧洗浄には、1~3万円ほどの水道代もかかります。
4、下地処理
高圧洗浄でも取り切れなかった古い塗装を、電動機器などを使って取り除きます。
外壁にひび割れやシーリング※の劣化がある場合は補修します。
下地処理を行わずに塗装すると、外壁の劣化を上手く食い止められません。
シーリングの打ち替えには1㎡あたり1,000円前後の費用がかかります。
※シーリング…外壁のパネル同士の隙間を埋める充填剤
5、塗装
いよいよ塗装に入ります。
外壁塗装は、下塗り・中塗り・上塗りの3回行われるのが一般的です。
ただし外壁の状態によっては、下塗りや上塗りの回数を増やすケースもあります。
ちなみに下塗りは、下地と塗料の密着力を高めるために行います。
下塗り剤のことを「プライマー」「シーラー」と呼びます。
中塗りと上塗りには同じ塗料が使われます。
塗料を塗り重ねることで、塗料の実力が十分に発揮されます。
塗装は1層塗る度に乾燥させることが必要ですよ。
6、足場の撤去
塗装終了後は、養生を剥がしてから足場を撤去します。
足場撤去後は仕上がりの確認が難しくなるので、しっかりと施工できたかをチェックしてから足場を撤去します。
外壁塗装の注意点
外壁塗装をご検討中のかたは、次のことにも気を付けましょう。
費用の安さのみで施工業者を選ばない
工事費用のみで施工業者を選ぶのはおすすめできません。
極端に安い見積もりを出す業者は、値段が安く耐用年数が短い塗料を使うことが多く、結局は塗り替えペースが早くなるのでお得感がありません。
もちろん、それを知った上で施工をするのは問題ありませんが、耐用年数と費用を見比べながら、どの塗料を使うのが良いのか判断することをおすすめします。
ちなみに最もコスパと性能のバランスが良いのが、シリコン系塗料だと言われています。
塗装中はベランダで洗濯物が干せなくなる
外壁塗装中は、マンション住民がベランダで洗濯物を干せなくなります。
塗料の臭いやホコリなども発生するため、窓が開けられなくなることもあります。
塗料は数日で乾燥するので、長いあいだ窓が開けられないケースは少ないです。
しかしクレームを避けるために、事前にマンション住民に工事の告知をしておくことが大切です。
塗装中は騒音なども発生するので、近隣住民への配慮も必要でしょう。
日当たりが悪くなる
外壁塗装を行う際には、足場の周囲にシートを張るので日当たりも悪くなります。
洗濯物が干せないことについてもそうですが、事前の説明会などで十分に住民の理解をが得られるよう配慮しましょう。
2色以上で塗装すると費用が高くなる
2色以上で塗装すると、その分だけ手間が増えるので工事費用が高くなります。
塗装業者に2色の塗装を勧められても、「1色でも良いのではないか」と検討することをおすすめします。
もちろんデザインにこだわりたい場合は、2色以上の塗装を選ぶのも良いでしょう。
施工業者の選び方
施工業者を選ぶ際にも注意点があります。
施工業者によって費用も施工クオリティも変わってくるので、ぜひ業者選びにこだわってみましょう。
相見積もりを取る
良い施工業者を選ぶには、複数の施工業者で相見積もりを取るのがおすすめです。
見積り価格や見積内容の比較もできますし、対応の丁寧さもチェックできます。
アフターサービスが充実しているかどうかも比較できればバッチリですね。
直に施工業者に依頼する
ハウスメーカーを通さず、直に施工業者に依頼するのもおすすめです。
大手のハウスメーカーに外壁塗装を依頼すると、ハウスメーカーは下請け会社に工事を依頼します。
大手のハウスメーカーは安心感がありますが、この下請け業者に依頼する際に発生する「中間マージン」が、工事費用を高くする原因になります。
場合によっては5次下請けまであるので、工事費用を安くしたいなら、直に施工業者に外壁塗装を依頼しましょう。
中間マージンがなければ、場合によっては3~4割ほどの費用を節約できます。
まとめ
最後に、今回の記事内容をまとめてみましょう。
- 外壁塗装の費用の概算は「階数×100万円」で計算できる
- 塗料の種類で費用が変わる。シリコン系塗料が一般的
- 工事費用のみで施工業者を選ばない
- 複数の施工業者で相見積もりを取る
- マンション住民への告知を十分に行うとクレームを減らせる
予算と相談しながら塗料選びや施工業者選びを徹底し、ぜひ納得できる外壁塗装を行なってみてくださいね!