玄関の扉や手すりをはじめとしたマンションの鉄部は、定期的な塗装工事が必要です。
鉄部塗装を行わずにいると、マンションの耐久性や美観が損なわれるので要注意。
そこで今回は、鉄部塗装工事の周期や工事内容、注意点などを詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
鉄部ってどこ?
「鉄部」とは、一般的には次のような箇所のことを言います。
- 玄関の扉や枠
- エレベーターの扉や枠
- メーターボックス
- 消火栓ボックス
- 非常階段
- 手すり
- 駐輪場
- 防火扉
- 避雷針
- 給水管
これらの箇所には材料として鉄が使われていることが多いので、「鉄部」と呼ばれているのです。
なぜ鉄部塗装工事が必要?
鉄部塗装工事は、マンションの劣化を防ぐために大切です。
塗装の剥がれや欠けなどを補修して見た目を良くするのはもちろん、塗装にはサビ止めの効果もあります。
新築時には、しっかりと鉄部に塗装が施されています。
しかし経年劣化で塗装が剥がれると、内部の鉄がむき出しになってきます。
鉄は空気中の酸素や水分と反応して錆びるので、定期的な鉄部塗装工事が必要です。
サビを放置すると、その部分からさらにサビが広がり、最悪の場合は鉄部に穴が空いてしまうことも。
鉄部の交換が必要になるとメンテナンス費用も高くなってしまうので、なるべく早めに鉄部塗装を行うのがおすすめです。
鉄部塗装工事の周期
鉄部塗装工事は、基本的には大規模修繕よりも短い周期で行います。
一般的には4~6年の周期で鉄部塗装が必要だと言われています。
もちろんマンションがある環境によっても劣化度合いは異なるので、定期的な点検を怠らないようにしましょう。
鉄部の劣化を放置するデメリット
鉄部の劣化を放置することには、次のようなデメリットがあります。
見た目が悪くなる
鉄部の塗装の剥がれやサビなどを放置すると、見た目が良くありませんね。
鉄部の劣化が進むと、さらに見た目が悪くなっていきます。
見た目が悪いマンションでは、入居を希望する人も減ってしまうでしょう。
機能性が低下する
鉄部の劣化によって、その個所の機能性が低下することも問題です。
サビが広がると、サビ部分の体積が大きくなります。
例えば扉の枠にサビが発生すると、体積が大きくなった分だけ扉が閉まりにくくなり、扉の機能性が低下します。
扉の枠は摩擦が多い箇所ですから、さらに塗装の剥がれを進行させてしまうことも。
崩落の危険がある
いくら強度が高い鉄でも、劣化するともろくなり崩落の危険性が出てきます。
手すりが崩れたり倒れたりすると重大な事故が起こる可能性があるので、劣化が進んだ鉄部は放置してはいけません。
鉄部が劣化する過程
マンションの鉄部は次のような過程を経て劣化していきます。
艶がなくなる
まずは見た目に艶がなくなり、色あせてきます。
チョーキング現象が起こる
さらに劣化すると、指で触った際に手に粉が付く「チョーキング現象」が起こります。
チョーキング現象とは、太陽の紫外線や熱、雨水などによって塗料中の顔料が外に出てくることを言います。
これは塗装が劣化を始めたサインです。
この状態では、まだ内部の鉄に大きな影響はありません。
しかし徐々に塗装が剥がれていくので、鉄部塗装を検討する必要があるでしょう。
塗装が剥がれる
いよいよ塗装が剥がれてきます。
鉄部がむき出しになって空気と触れることで、サビが発生します。
軽度のサビなら、ヤスリなどを使って除去できます。
早めに対処をすれば、大きなダメージを受けなくて済みますよ。
鉄部塗装の工事内容(工程)
鉄部塗装は、次のような工程で行われます。
- ケレン
- 養生(マスキング)
- 下塗り
- 中塗り
- 上塗り
ケレン
ケレンとは、塗装前に塗装部分の異物を除去すること。
いわゆる「サビ落とし」のことです。
汚れを落としたりサビを削ったりして、塗装がきれいに塗れるような表面を作ります。
また塗装を施す部分に細かい傷をつけることにより、塗料が定着しやすくなります。
養生(マスキング)
塗料を塗る以外の部分に塗料が付着しないように、ビニールシートやマスキングテープなどで養生します。
ケレンを行う際もそうですが、屋外の階段などを施工する際は、足場の周囲にケレンカスや塗料が飛び散らないようにするシートを張っておきます。
シートではなくネットを張る業者もありますが、ネットでは塗料の飛散を防ぎきれない場合があるので注意が必要です。
錆止め
塗装を施す前に「プライマー」と呼ばれる下塗り剤を塗布することで、サビが発生しにくくなります。
下塗り~上塗りは、刷毛やローラーを使って行われます。
中塗り
下塗り剤が乾いたら塗料で塗装していきます。
1回目の塗装を中塗りと呼びます。
上塗り
中塗りが乾燥したら、2回目の塗装(上塗り)を行います。
完成
上塗りが乾燥すれば、鉄部塗装の完了です。
鉄部塗装工事のチェックポイント
鉄部塗装工事を行う際は、次のチェックポイントを意識しましょう。
手抜き工事が行われていないか
なかには悪質業者も存在します。
サビ止めを施さずに塗料を塗ったり、塗料を1回しか塗らなかったり。
信頼できそうな施工業者に工事を依頼する場合でも、どんな工事が行われるのかをマンション側で常に把握しておきましょう。
ケレンも非常に重要な作業なので、施工品質をチェックしておきたいですね。
塗布量が守られているか
塗料を塗る回数が少ないのも問題ですが、塗る量が多すぎても困ります。これでは塗料の耐久性能を最大限に発揮できません。
きちんと決められた量が塗布されているか、「塗布量試験」を行うことをおすすめします。
塗布量試験とは、塗布前の塗料の重量から、塗布後の塗料の重量を差し引いて計算する方法です。
1㎡あたりの塗料の使用量が把握できますよ。
長期修繕計画に合った材料が使われているか
長期修繕計画に合った材料が工事に使われるかどうかも大切です。質の低い塗料を使うと補修の周期が早まってしまいます。
一方、質の高い塗料を使えば、5年周期で行う予定の鉄部塗装を10年周期にすることも可能です。
一般的には大規模修繕とは異なるタイミングで鉄部塗装工事が必要になるので、計画通りに鉄部塗装が行えるような材料選びが大切です。
また長期的な修繕計画に基づいて鉄部塗装工事を行うことにより、費用の不足も避けられますよ。
鉄部塗装の費用は?
一般的な費用相場は1㎡あたり3,000~5,000円ほどです。
また施工箇所別では、次のような費用がかかります。
施工場所 | 費用相場 |
階段 | 8~30万円 |
フェンス | 3~10万円 |
ベランダ | 5~15万円 |
門扉 | 2~3万円 |
雨戸 | 2,000~5,000円(1枚あたり) |
ポスト | 5,000~10,000円 |
ただし上記以外に、足場の設置が必要な場合は足場代もかかります。
施工面積が多ければ多いほど施工費用が高くなることも、覚えておきましょう。
マンション住民が気をつけることは?
マンションの管理者だけでなくマンション住民も、鉄部塗装に関して気をつけることがあります。
十分な換気が必要
鉄部塗装を行う際には、塗料の臭いが広がります。
部屋の窓を締め切ると臭いが部屋の中にこもってしまうので、例えば玄関の扉に塗装を施す場合は、ベランダ側の窓を開けることが必要です。
消火栓ボックスの塗装をする際も臭いが気になったりするので、作業日前にマンション住民へ告知しておくことが大切です。
塗りたての箇所には触らない
塗料が塗りたての箇所には触らないよう注意が必要です。
「ペンキ塗りたて」といった注意喚起をする張り紙があると思いますが、塗料が塗りたての箇所を通行する場合は、服やバッグなどに塗料が付かないように注意しましょう。
車両の養生が必要なこともある
塗料が飛び散って車両に付着するのを避けるために、車やバイクにカバーをかけることもあります。
車両に乗る際はカバーを外す作業が必要なので、時間に余裕を持って外出することを意識しましょう。
在宅待機が必要な場合もある
玄関の扉を塗装する場合、その部屋の住人が在宅していることが必要になります。
事前アンケートで家にいる日を回答し、その日は家にいなくてはなりません。
また物置きスペースに鉄部塗装を施す際は、中に置いてある私物の移動が必要な場合があります。
まとめ
鉄部のサビは繰り返し発生するので、定期的な点検が大切です。
きちんとメンテナンスを行えばマンションの寿命を延ばすことができ、資産価値も高まります。
入居者がマンションを選ぶ際は立地や間取りだけでなく、見た目も重視されます。
築年数が多くても、きちんとメンテナンスがされているマンションは入居者からの評価が高くなるでしょう。
また施工の際は業者がきちんと工事を行っているかをチェックし、マンション住民とのコミュニケーションも忘れずに行なうことで、納得できる鉄部塗装工事が可能になります。