二回目のマンション大規模修繕工事について知りたい人
マンションの2回目の大規模修繕工事で注意すべき点は?
マンション大規模修繕二回目の実施時期は?
マンション大規模修繕2回目の費用はいくら?
築年数に応じて必要になる、マンションの大規模修繕。
2回目、3回目と数を重ねるごとに、費用や工事内容が変化していきます。
そこで今回は、2回目以降の大規模修繕のポイントや注意点について解説していきます。
1回目との違いを知ることで、効果的に大規模修繕が行えるようになりますよ。
目次
マンション2回目の大規模修繕工事はいつ行う?
国土交通省が2021年に発表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、2回目の大規模修繕工事を行うマンションの築年数は、築26〜30年が最も多いことがわかりました。また、1回目の大規模修繕工事は築15年以下、3回目は築41年以上の割合が多いという結果も示されています。
大規模修繕工事築年数 | 下位25%値 | 中央値 | 上位25%値 | 平均値 |
1回目 (n=344) | 14年 | 15年 | 18年 | 18.2年 |
2回目 (n=198) | 26年 | 28年 | 32年 | 29.4年 |
3回目以上 (n=242) | 31.5年 | 40年 | 46年 | 37.3年 |
さらに、2回目の大規模修繕工事の周期は14年が多い傾向があります。
大規模修繕工事の平均修繕周期 | 下位25%値 | 中央値 | 上位25%値 | 平均値 |
1回目 (n=511) | 12年 | 14年 | 15年 | 15.6年 |
2回目 (n=169) | 12年 | 13年 | 15年 | 14年 |
3回目 (n=56) | 12年 | 13年 | 14.3年 | 12.9年 |
上記の数値はあくまでも平均です。修繕が必要となるタイミングは、建物の劣化具合で判断するべきなので、国土交通省の調査結果は参考程度に捉えてください。
2回目の大規模修繕工事を行うタイミングは建物診断などの結果を元に判断するようにしましょう。
2回目のマンション大規模修繕で行う工事内容
2回目の大規模修繕では、以下のような工事を行うのが一般的です。
- 屋上防水
- 金物類の取替え
- エレベーターのリニューアル
- 給排水設備などの修繕
- 傾斜屋根の撤去や葺き替え
- 貯水槽の取替え
- 2回目では建物全体の補修が必要です。
国土交通省の「マンションの大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目よりも給水設備の工事が増える傾向もあります。
また2回目以降の大規模修繕では、特に「配管」や「エレベーター」「オートロック」周りに不具合が出やすいです。
日本の水道水はヨーロッパの水道水よりも塩素が多く含まれているため、配管が塩素で浸食されやすいのです。
エレベーターやオートロックなど電気系の設備も、家電製品と同じく長年使い続けていると使えなくなります。
ちなみにエレベーターを補修すると1台あたり2,000万円、オートロックの操作盤の補修には1,000万円ほどの費用がかかります。
かなり高額になるので、この場合も事前の計画がものを言います。
マンション大規模修繕工事2回目の費用相場
2回目の大規模修繕で必要な費用は、マンションの規模(戸数)によって異なります。費用の目安は以下のとおりです。
マンションの規模 | マンション全体の費用 | 一戸あたりの費用 |
小規模(30戸) | 2,700万円~3,600万円 | 90~120万円 |
中規模(60戸) | 5,400万円~7,200万円 | 90~120万円 |
大規模(100戸) | 9,000万円~12,000万円 | 90~120万円 |
ただし上記はあくまでも目安で、工事内容によって金額は大きく変わります。
また、建築系工事のみの内訳割合は次のとおりです。
費用を最小限に抑えるには、現在の建物の状況をしっかりと見極めることが大切です。
無駄のない工事が行えば、3回目の大規模修繕の費用も貯めておくことが可能でしょう。
マンション大規模修繕工事2回目の注意点
2回目の大規模修繕では以下のような、さまざまなポイントや注意点について考慮しましょう。
2回目の大規模修繕は1回目よりも規模が大きくなる
2回目の大規模修繕は、1回目よりも規模が大きくなる傾向にあります。
2回目の時期は築20年以上経過していて、マンションが本格的に劣化してくる時期です。
雨や風、紫外線などの影響が目に見えて現れてくるでしょう。
2回目の大規模修繕は1回目よりも費用が高くなる
2回目の大規模修繕では、1回目の1.5倍くらいの費用が必要になるケースもあります。
だからと言って、修繕が必要な箇所の工事を先送りするのはおすすめできません。
「まだ使えるから」と、本来なら修繕が必要な箇所の工事を先送りしてしまうと、マンション住人とのトラブルが発生したり、建物全体が脅かされます。加えて、退去率の増加・入居率の低下が起こる可能性が高く、それが原因で修繕積立金が集まりにくい状態になると、3回目の負担が大きくなります。
突然の故障への対応や修繕費用の増大、修繕積立金の値上げを防ぐためにも、工事内容の優先順位をきちんと見極めることが大切です。
また1回目の大規模修繕で学んだことを活かして、2回目の長期修繕計画を見直すことも必要でしょう。
1回目の大規模修繕の費用をできるだけ節約して、2回目の大規模修繕に備えることも有効です。
マンション大規模修繕工事2回目を成功させるポイント
2回目の大規模修繕工事を成功させるポイントは5つです。
- メンテナンス工事を定期的に行う
- 長期修繕計画を見直す
- 建物診断を行う
- 入居者のニーズを汲み取った工事を行う
- デザイン性や設備のグレードをアップさせる工事も検討する
これらのポイントを抑えて大規模修繕工事を行えば、成功が期待できます。
以下では、ポイントごとに抑えるべき理由について解説していきます。
メンテナンス工事を定期的に行う
建築基準法では、建物の半分以上を修繕・改修する工事を「大規模修繕工事」と定義しています。一方、緊急度の高い修繕や設備修理、メンテナンス工事は「小規模修繕」や「中規模修繕」と呼ばれます。
日常生活に支障をきたすような建築上・設備上の不具合が発生した場合、大規模修繕工事でまとめて行うのではなく、発見した段階で小規模修繕工事や中規模修繕工事の実施を検討しましょう。定期的な小規模修繕工事や中規模修繕工事の実施は、大規模修繕工事の費用削減に繋がります。不具合を放置すると、悪化して大掛かりな修繕・改修が必要になることもありえますし、重大な事故が発生する可能性も否めません。
小規模修繕工事や中規模修繕工事は、修繕費用の削減だけでなく、トラブル対策や安全性の向上にも寄与します。
長期修繕計画を見直す
1回目の大規模修繕工事が終了したら、長期修繕計画を見直しましょう。大規模修繕工事が完了すると、実際にかかった費用や工事内容が明確になります。これを基に、次回の修繕計画をより現実的なものに修正することができます。また、建物の劣化状況を再評価することで、次回の修繕時期や必要な工事内容を正確に見積もることができ、計画の精度が向上します。精度を上げるために、1回目の経験を計画に反映させることもおすすめです。改善の余地があった点を洗い出したり、1回目の修繕委員を務めた方からのアドバイスなど、反省点を活かすことで、より精度が高い修繕計画になるでしょう。
さらに、新しい技術や材料が登場したり、物価や人件費が変動することもあります。これらを考慮して計画を練り直すことで、効率的でコスト効果の高い修繕が可能になり、修繕積立金の適正な金額設定が可能になります。
2回目の大規模修繕計画を予定しているマンションの中には、修繕積立金の徴収が段階増額積立方式になっているにもかかわらず、徴収額が据え置きになっているところも少なくありません。そのようなマンションは大抵、資金不足で頭を抱えています。
長期修繕計画の見直しは資金不足対策につながるため、1回目の大規模修繕工事が終了したら、計画内容の見直し・再検討を実施することをおすすめします。
建物診断を行う
大規模修繕工事の前に、建物診断を行うことをおすすめします。建物診断は、建物の現状を正確に把握するための調査です。この調査を行うことで、どの部分がどれだけ劣化しているかを確認でき、修繕が必要な箇所の優先順位をつけることができます。また、建物診断の結果は長期修繕計画の見直しにも役立ちます。診断結果を基に、具体的な修繕内容や工事範囲を決定することで、無駄な工事を避け、必要な部分に集中することができます。さらに、修繕費用も正確に算出できるため、予算の計画も立てやすくなります。
建物診断の依頼は、できれば管理会社や施工会社とつながりがなく、客観的に調査できる第三者的立場の専門家に相談するとよいでしょう。工事費用をもらって稼ぐ立場ではないため、客観的で公平なアドバイスをしてくれるでしょう。また、診断結果をもとに、建物の安全性を確保し、長期的な維持管理を行うための具体的な対策を講じることができます。
入居者のニーズを汲み取った工事を行う
2回目の大規模修繕を控えるマンションの多くは築20年を超えています。当然、新築時のニーズと現在のニーズは異なります。また、居住者の年齢層も変わっているはずです。そのため、居住者のライフスタイルに合わせた改修工事の実施を検討することも、2回目の大規模修繕工事では重要です。
例えば、子育てを終えて車を手放すマンション住人が増えると、駐車場に空き区画が増えます。機械式駐車場を解体し、平置きの駐車場への変更が必要になるかもしれません。ちなみに駐車設備の交換には、1台あたり100万円ほどの費用がかかります。機械式駐車場や立体駐車場の寿命は25年前後と言われているため、2回目の計画を立てる前に機械式駐車場の今後について考えておく必要があります。
マンション住人の高齢化が進んでいる場合、バリアフリー化の工事もおすすめです。バリアフリー化することで住人の暮らしがさらに快適になり、マンションの資産価値を高めることも可能です。
さらに、「エントランス扉の自動化」や「防犯カメラの設置」などの新たな機能を追加することで、利便性や資産価値がさらに高まるでしょう。
大規模修繕の内容によっては、最新のマンションに負けないほどの住み心地を手に入れることも可能です。バリアフリー化やセキュリティ強化など、居住者のニーズに応えた工事を行えば、居住者の満足度も高まります。
これらの工事は居住者の負担が大きくなる反面、得られるメリットも大きいです。その点を丁寧に説明すれば、協力を得られるでしょう。居住者とのコミュニケーションを通してニーズを探り、居住者の積極的な参加を促して合意形成することが大切です。
デザイン性や設備のグレードをアップさせる工事も検討する
デザイン性や設備のグレードをアップさせることで、マンション全体の資産価値が向上し、将来的に売却や賃貸を考える際に有利になります。
さらに、新築マンションや他のリノベーション済み物件と比較して、競争力を維持または強化するためには、デザイン性や設備のグレードアップが必要です。これにより、マンションの魅力を保ち、新しい居住者を引きつけることができます。
2回目のマンション大規模修繕工事のまとめ
2回目の大規模修繕では、マンションの居住者のニーズやデザイン性も考慮して、居住者の生活水準を高めることも考えて工事計画を練りましょう。
3回目の大規模修繕では、設備の交換費用がかさみ、居住者の負担が増える可能性もあるので、長期修繕計画はしっかり見直しましょう。
修繕費用が不足すると、工事がどんどん先送りになってしまいます。マンションなどの建物の資産価値を維持するためには、時間も資金もゆとりを持った計画を立てることが重要です。
ぜひ、今回紹介した大規模修繕のポイントや注意点を参考に、大規模修繕への計画を始めてみませんか?