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1回目と2回目の大規模修繕について。工事内容や注意点は?

大規模修繕はマンションの寿命を延ばし、住人がマンションを快適に使うために欠かせません。

しかし初めて大規模修繕を行う場合、「何から手を付けて良いのか分からない」というかたも多いようです。

そこでこの記事では1回目(初回)と2回目の、大規模修繕の工事内容や注意点などを解説していきたいと思います。

ぜひ参考にしてみてください。

1回目の大規模修繕について

1回目の大規模修繕は、マンションを新築時に近い状態に回復させるのが主目的です。

ただし初めて大規模修繕を経験するかたが多く、何から手をつけて良いのか戸惑うことも多いでしょう。

提案する理事会も、提案される組合員も、不慣れなまま計画がスタートすることになります。

そこでまずは必要以上のトラブルが起こらないように、大規模修繕についての基礎知識を学ぶことが大切です。

1回目の特徴

1回目の大規模修繕は、2回目や3回目よりもコストカットしやすい特徴があります。

まだまだ建物の劣化度合いが少ないため、必要最低限の修繕で済むことが多いです。

施工会社が望む全体の修繕を、必ずしも行う必要はありません。

使用頻度の低い設備や、風雨の影響を受けない箇所などは、工事が必要ない場合もあります。

補修や改修があまり必要ない工事を、2回目に先送りすることもできるでしょう。

どの箇所の補修が必要なのか見極めることで、費用を削減しやすくなります。

1回目の工事内容

1回目の大規模修繕では、以下のような工事を行うのが一般的です。

外壁塗装

外壁を塗り替えると、見た目が良くなるだけでなく、雨水や紫外線などによる建物の劣化も防げます。

下地の塗料の付着力が弱い場合は、塗料を除去してから塗り直します。

タイルの補修

タイルは経年劣化で、下地から浮いたりひび割れたりすることがあります。

この部分から雨水が入り込み、コンクリートにダメージを与えてしまいます。

こうした事態を避けるには、目視だけでなく打診も使ってタイルの不具合を確認することが必要です。

鉄部の塗装

手すりや扉など鉄が使われている部分は、経年で錆が発生します。

錆びを放置すると見た目が悪くなり耐久性も低下し周りの接触部分にも影響するので、再塗装する必要が出てきます。

サンドペーパーやワイヤーブラシなどを使って錆びを落とした後に、錆止めを塗って上塗り二回塗り保護します。

シーリングの打ち替え

外壁の継ぎ目やサッシに使われるシーリング材は、経年劣化でひび割れてきます。

この状態を放置すると、雨が侵入してきて雨漏りの原因になります。

シーリング材を打ち替えると建物の気密性が高くなるので、断熱性能もアップするでしょう。

防水工事

シート防水や塗膜防水といった工法を使い、建物内部への水の侵入を防ぎます。

しっかりと防水されていないと建物内部に雨水が侵入し、マンションの劣化を早めてしまいます。

施工不良の改善

新築時の施工不良が原因で起こる不具合も、1回目の大規模修繕で改善させます。

例えば「コンクリートの打設不良」。

コンクリートが十分に充填されていないと、コンクリート内部に空洞ができてしまっている可能性が高いです。

この状態では建物の耐久性に不安が残ります。

また施工不良による「鉄筋露出」が見られる場合もあります。

鉄筋露出とは、施工時にコンクリートの厚さが足りず、コンクリートの中の鉄筋がむき出しになって露出している状態のことを言います。

鉄筋が錆びてマンションの劣化が早く進んでしまうので、こうした症状も大規模修繕の際に改善が必要です。

1回目の注意点

1回目の大規模修繕では、次の点に注意して計画を立てましょう。

マンションがある環境に合った修繕をする

修繕する箇所が少ない傾向にある1回目の大規模修繕でも、マンションがある環境によっては思わぬ不具合が発生している場合があります。

特に湿気の多い地域や海沿い地域、工場地帯では想像以上にメンテナンスが必要になる場合も。

結露や海風によって錆が発生していたり、排気ガスや向上の煙で外壁が汚れていたりします。

修繕プランを立てる際は、マンションがある環境も考慮してオーダーメイドのプランを立てることが必要です。

ただし1回目の大規模修繕では、そこまで深刻な劣化が発生しているケースは少ないので、心配しすぎる必要はありません。

マンション住人の協力が必須

組合員は必ずしも積極的に参加してくれるわけではありません。

1回目の大規模修繕は、積極的に参加する協力者を見つけるのが難しい場合が多いです。

そこでマンション住人と、できるだけ多くコミュニケーションを取りましょう。

マンション住人が協力しやすい雰囲気作りが大切です。

組合員の意見が多く集まれば、マンション住人の意見が反映されやすくなり、工事する箇所が把握しやすくなります。

また「修繕積立金が適切に使われているか」というマンション住人の不安を解消することも、マンション住人が協力しやすい雰囲気作りに役立ちます。

2回目の大規模修繕について

築20年を過ぎてくると、雨や紫外線などの影響で建物が本格的に劣化していきます。

2回目の大規模修繕は、1回目よりも広範囲の工事が必要になるでしょう。

ここでは2回目の大規模修繕の特徴や工事内容、注意点について見ていきます。

2回目の特徴

2回目の大規模修繕では、設備をグレードアップさせることでマンションの資産価値を上げられます。

バリアフリーやユニバーサルデザインなど時代のニーズに合った修繕を行うのがポイントです。

もちろん1回目と同じく、組合員の「もっと良いマンションにしよう」という参加意識も大切ですね。

2回目の大規模修繕は、1回目よりも管理組合での合意形成がしやすい特徴があります。

大規模修繕の経験者も増えてノウハウが蓄積しているので、スムーズに計画を立てやすいでしょう。

1回目と同じメンバーで大規模修繕が行われるわけではありませんが、1回目の大規模修繕で組合の土台をしっかり作っていれば、2回目は1回目よりもスムーズに進行できることが多いです。

2回目の工事内容

2回目の大規模修繕では、以下のような工事を行うのが一般的です。

屋上防水

屋上防水全体の修繕が必要になるでしょう。

屋根が付いている場合は、まず屋根材を撤去してから修繕するので、1回目の部分的な修繕よりも費用が高くなる傾向に。

駐車場

消えた白線を引き直したり、地面が陥没している場所を補修したりします。

また機械式駐車場の取り壊しをする場合もあります。

機械式駐車場はメンテナンスが大変だったり、入庫できる車のサイズに制限があったりします。

これらを解消するために、平置きの駐車場に変える工事を行うのです。

消防用設備

消火器やスプリンクラーなどの消防用設備は経年劣化で使えなくなる恐れがあるので、定期的な交換が必要です。

金物類

郵便受けや共用の掲示板、アルミサッシなどの金属部分は錆が発生している場合が多く、交換が必要になるケースが多いです。

2回目の注意点

2回目の大規模修繕では、以下のことに気を付けましょう。

工事箇所や費用が1回目よりも増える

2回目の大規模修繕は、1回目よりも工事する箇所や金額が高くなる傾向にあります。

マンションの寿命は60年前後と言われています。

2回目の大規模修繕を行う時期は大体、中間ポイントと言ったところですね。

場合によっては、思ったよりも劣化が激しい箇所が見つかるでしょう。

費用が不足しやすい

新築で販売されている時は、修繕積立金が「1回目の大規模修繕まで」と設定されていることも多いです。

マンションの販売価格が高く見えないように、できるだけ「修繕積立金」を少なく提示しているのが大きな理由です。

修繕積立金とは、マンション住人から集められる大規模修繕の費用のこと。

毎月1~1.5万円ほどを積み立てるのが一般的です。

物価や人件費が上がると、それに合わせて修繕積立金の金額も上がります。

修繕積立金は時代背景の影響を受けることも覚えておきましょう。

「大規模修繕の費用が十分に集まるかどうかは管理組合による」と言えますが、費用の不足を避けるには、定期的に長期修繕計画を見直すのが有効です。

  • 修繕積立金の額を上げる
  • 不足分を住人から徴収する
  • 金融機関から借り入れる

必要に応じて、上記のような対策をとることも考えてみましょう。

長期修繕計画とは

長期修繕計画とは、マンションの劣化を防ぎ、機能を維持するための長期的な修繕計画のことを言います。

管理組合が作成し、工事内容や費用、大規模修繕を行う時期など、さまざまなことを計画します。

長期修繕計画を作成する際は、一般論で内容を決めるのではなく、それぞれのマンションに適した長期修繕計画を立てることが大切です。

きちんと長期修繕計画が立てられていないと、いざ大規模修繕を行う時になってから焦り、費用にムダが出たり適切に修繕が行われなかったりする恐れがあります。

  • 建物の劣化度合いはどのくらいか
  • 大規模修繕を行う周期はどうするか
  • 修繕積立金の見直しは必要か

といったことを組合内で定期的に検討することが必要でしょう。

また2回目の大規模修繕の際には、3回目の大規模修繕も見据えて計画します。

2回目で修繕するのか、3回目まで先送りできるのか、見極めることが必要です。

マンションの大規模修繕の周期は?

マンションの大規模修繕は、12~15年に一度行われるのが一般的です。

ただしマンションの劣化度合いによっても変わります。

新築から10年経過したら建築診断を行い、大規模修繕の時期を検討しましょう。

建築診断では以下のように、さまざまな項目をチェックします。

  • 汚れ
  • ひび割れ
  • 鉄部の錆び
  • 屋上防水

建築診断では工事費用の概算も出せるので、より修繕計画が立てやすくなります。

まとめ

大規模修繕の工事費用が思ったよりも高く、悩む場合があるかもしれません。

しかし適切に大規模修繕ができれば、売却時の資産価値を高めることができます。

しっかりと長期修繕計画を立てて、無理なく工事が行えるようにすることが大切です。

また理事会や修繕委員会、組合員などが協力することも、大規模修繕の成功への鍵と言えるでしょう。

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