建物の屋根は、風雨や太陽光などの自然要因に日々さらされており、時間とともに劣化や損傷が生じます。劣化や損傷が生じた時、屋根葺き替え工事が重要な役割を果たします。
屋根の葺き替え工事とは、古い屋根材を取り除き新しい屋根材で覆い直し、防水シートの交換やルーフィングの設置も含んだ工事です。
この記事では、屋根葺き替え工事の重要性やメリット・デメリット、費用相場や工事のタイミング、注意点などについて詳しく解説します。カバー 工法との違いについても触れていますので、工法選びの参考にしてみてください。
雨漏り防止や建物の耐久性向上のためにも、適切な屋根葺き替え工事を検討してみましょう。リフォームや交換を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
屋根の防水工事に関わる葺き替えとは?
屋根の防水工事で屋根の葺き替えという作業があります。建物の屋根の表面材を古くなったものから新しいものに交換する工事です。
屋根は風雨や太陽光などの自然の要素にさらされるため、時間とともに劣化や損傷が生じることがあります。
屋根の葺き替えは、そのような劣化や損傷を修復し、建物を保護するために行われる工事です。
葺き替え工事は、古い屋根材を撤去し、新しい屋根材を設置する方法が取られています。
適切な屋根の葺き替えは、建物の耐久性と保護を確保するために重要な工事です。
屋根の重ね葺き(カバー工法)との違い
屋根の重ね葺き(カバー工法)との違いは、工事の方法にあります。
屋根葺き替えは、古くなった屋根材を完全に撤去し、新しい屋根材を設置する方法に対し、屋根重ね葺き(カバー工法)は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を追加する方法です。
どちらの方法が適しているかは、屋根の状態や構造、予算などを考慮して判断する必要があります。
判断がつかない場合は、業者など専門家の意見を仰ぎましょう。
葺き替え・重ね葺き(カバー工法)のどちらが適しているか
どのような場合に屋根の葺き替え・重ね葺き(カバー工法)が適しているのか、表にまとめました。
屋根葺き替え | ・屋根の劣化や損傷が進んでいる場合・屋根の寿命が終了している場合 ・外観の改善や価値向上を目指す場合・耐震性やエネルギー効率の向上を目指す場合 |
屋根重ね葺き (カバー工法) | ・屋根の劣化が軽度である場合 ・手間や費用を抑えたい場合・外観の変更を最小限にしたい場合 |
建物や屋根の状態によって最適な選択肢が異なる場合があります。
また、カバー工法はあくまで一時的な解決策であり、既存の屋根材の状態や下地の状態によっては適さない場合もあります。
屋根の専門家と相談し、最適な工法を選択することが重要です。
屋根葺き替え工事のメリット
屋根葺き替えのメリットは以下のようなものがあります。
- 建物を保護し、耐久性を向上させる
- 耐震性の向上
- 雨漏り問題の解決
以下で詳しく解説していきます。
屋根葺き替え工事によって建物を保護して耐久性を向上させる
古くなった屋根材を新しいものに交換することで、建物を外部の要素から保護することができます。
屋根は風雨や太陽光などの自然の要素にさらされるため、劣化や損傷が生じることがあります。
葺き替えによって、建物内部を雨水や風から守り、耐久性を向上させることが可能です。
古い屋根材から葺き替えて耐震性の向上
古くなった屋根材は劣化や損傷が生じる可能性があり、地震などの外部の力に対して弱くなることがあります。
屋根葺き替えによって新しい屋根材を設置することで、屋根の強度を向上させることが可能です。
また、新しい屋根材を従来のものから軽くすることで、地震時に建物の安定性を保ち、構造への負荷を分散させる役割を果たします。
葺き替え工事による防水性アップで雨漏り問題解決
屋根葺き替えの際には、古い屋根材を撤去するので下地を点検する機会が得られるため、雨漏り問題の解決につながります。
この点検の過程で、屋根の構造や補強箇所に問題がある場合には修理や補強を行うことが可能です。
また、下地の状況によっては、雨漏りの原因が分かることもあります。
屋根葺き替え工事のデメリット
屋根葺き替え工法には、以下のようなデメリットがあります。
- 費用の負担が大きい
- 工期が長い
- 周囲環境に影響が出る
デメリットを最小限に抑えるには、詳細な調査と計画立案を行うことで、効果的な屋根葺き替えを実施することが重要です。
葺き替え費用の負担が大きい
屋根葺き替えは、大規模な作業であり、専門的な技術や材料が必要です。
そのため、費用が大きいのがデメリットとして挙げられます。
特に、古い屋根材の撤去や下地の修理が必要な場合は、追加の費用が発生することがあるので大きな負担になるでしょう。
重ね葺き(カバー工法)の費用相場は、1平方メートルあたり8,000円〜10,000円ですが、葺き替えの場合は、1平方メートルあたり15,000円から18,000円ぐらいです。
葺き替えの工期が長い
屋根葺き替えは、屋根材の撤去や下地の修理、新しい屋根材の設置など、複数の工程が必要で、時間を要する工事です。
そのため、作業期間が長くなることがあります。
また、工事中は建物内部に影響を及ぼす場合もあるため、生活環境への影響も考慮する必要があります。
古い屋根材からの葺き替えによる環境への影響
屋根葺き替えには、古い屋根材の廃棄物や工事に伴う廃棄物が発生することがあります。
古い屋根材の撤去によって出た廃棄物の処理は、環境への影響を考慮する必要があります。
適切な廃棄物処理方法を選択し、環境への負荷を最小限に抑えるようにすることが必要です。
屋根葺き替え工事の費用相場
屋根葺き替え工事の費用相場は、様々な要素によって異なります。
屋根葺き替え工事の費用相場は、既存の屋根材の種類、新しく葺き替える屋根の種類、面積、形状、施工の難易度などによって左右されます。
一般的な費用相場は、1平方メートルあたり5,000円から15,000円とされています。
以下に、屋根材別、広さ別、葺き替え工事の内訳について表を用いて解説します。
屋根材別葺き替え工事の費用相場
屋根材別の葺き替え工事の費用相場は、以下の表の通りです。
屋根材の種類 | 費用相場 |
瓦屋根(和瓦・洋瓦) | 約7,000円〜15,000円/㎡ |
スレート屋根(コロニアル) | 約5,000円〜8,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板屋根 | 約6,000円〜10,000円/㎡ |
アスファルトシングル屋根 | 約5,000円〜7,000円/㎡ |
ジンカリウム鋼板屋根(天然石粒付き屋根) | 約8,000円〜20,000円/㎡ |
コロニアルは、ケイミュー株式会社が販売しているスレート屋根ですが、シェアが高いため一般的にスレート屋根のことをコロニアルと呼ぶことが多くなってきました。
また、ジンカリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛、シリコンを合金した鋼板です。
日本では、天然石の粒をコーティングしたものが多く出回っています。
坪数別葺き替え工事の費用相場
家の坪数別の葺き替え工事の費用相場は、以下の表の通りです。
家の広さ | 費用相場 |
20坪 | 約50万円〜80万円 |
30坪 | 約75万円〜100万円 |
40坪 | 約100万円〜140万円 |
50坪 | 約160万円〜250万円 |
これらはあくまで一般的な目安であり、具体的な価格は屋根の材料、形状、施工の難易度、業者によって異なることがあります。
また、地域差によっても価格が異なる場合があります。
屋根葺き替え工事費用の内訳
屋根葺き替え工事において、付帯される費用を内訳として以下の表にまとめました。
費用内訳 | 費用相場 |
既存屋根材の撤去費用 | 約1,500円〜3,000円/㎡ |
撤去した屋根材の処分費用 | 約1,500円〜3,000円/㎡ |
下地材の補修費用 | 約2,000円〜3,500円/㎡ |
新しい屋根材の施工費用 | ・瓦(和瓦・洋瓦)約8,000円〜15,000円/㎡ ・スレート(コロニアル)約5,000円〜8,000円/㎡ ・ガルバリウム鋼板:約6,500円〜9,000円/㎡ |
防水シートの施工費用 | 約500円〜1,500円/㎡ |
足場設置・撤去費用 | 約600円〜1,500円/㎡ |
アスベスト処理費用 | 約30,000円〜85,000円/㎡ |
アスベスト処理費用は、既存屋根が古いスレートでアスベストが含まれている場合のみです。
上記以外に、人件費、諸経費などがかかります。
屋根葺き替え工事の費用を抑えるコツ
屋根葺き替え工事の費用を抑えるためには、以下のようなコツがあります。
葺き替え工事で早めにメンテナンスを行う
屋根の劣化が進行すると、修理や葺き替えが必要になる場合があります。
早めにメンテナンスを行うことで、大がかりな工事を回避することが可能です。
葺き替え工事に向けて屋根材を選ぶ
屋根の材料によって価格が異なります。
価格だけでなく、寿命や耐久性も考慮して、適切な材料を選ぶことが大切です。
複数の業者から葺き替え工事の相見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取り、価格だけでなく品質や保証内容なども比較検討することで、費用を抑えることが可能です。
最低でも3社以上から相見積もりを取ることをおすすめします。
葺き替え工事に関わる補助金を活用する
国や自治体が募集している補助金を活用することで費用を抑えることが可能です。
自治体によっては、屋根葺き替え工事に補助金を出している場合があります。
補助金の有無を確認し、活用することで費用を抑えることができます。
屋根葺き替え工事で活用できる補助金
屋根葺き替え工事で活用できる補助金は、以下のようなものがあります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、国が行っている既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する 性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援等を行う事業です。
制度名称 | 長期優良住宅化リフォーム推進事業 |
補助金の割合 | 補助対象の工事費用の1/3 |
適用条件 | ・インスペクション(現地調査)を実施すること ・リフォーム後の住宅が 一定の性能基準を満たすこと ・リフォーム履歴と 維持保全計画を 作成すること |
対象の施工内容 | 屋根の軽量化による耐震性の向上 |
補助金の上限額 | 100~250万円/戸 |
住宅建築物安全ストック形成事業
住宅建築物安全ストック形成事業は、住宅・建築物の最低限の安全性の確保を図るため、住宅・建築物の耐震性などを向上させるための事業について、地方公共団体に対して国が必要な助成を行う制度です。
制度名称 | 住宅建築物安全ストック形成事業 |
補助金の割合 | 国と地方で工事費用の1/3 耐震診断費用は、国と地方で2/3または23% |
適用条件 | マンションを含む全住宅が対象 |
対象の施工内容 | 耐震診断および耐震改修 |
補助金の上限額 | 戸建住宅:83.8万円/戸 (多雪区域の場合:1,004,000円/戸) マンション:補助対象単価(50,200円/㎡)×床面積×交付率 倒壊の危険性が高いマンション:55,200円/㎡ |
自治体が行っている補助金
自治体が行っている補助金制度もあります。
東京都八王子市が行っている補助金事業を例に挙げていきます。
制度名称 | 八王子市居住環境整備補助金 |
補助金の割合 | 工事費用の20% |
適用条件 | ・補助の対象となる住宅の所有者であること ・八王子市内に住所を有する、または転入し八王子市内に住所を有する予定であること ・補助の対象となる住宅に改修工事等の完了後、引き続き居住すること |
対象の施工内容 | 長寿命化改修工事(屋根・外壁の塗装、屋根の葺き替えなど) |
補助金の上限額 | 上限5万円まで |
屋根葺き替え工事が必要な屋根の状態
屋根葺き替え工事が必要な屋根の状態には、以下のようなものがあります。
- 屋根材の耐用年数を経過している
- 雨漏りが頻発している
- 瓦やシートが割れている、または欠けている
- 屋根全体にカビやコケが生えている
- ほとんどメンテナンスがされていない
これらの状態が見られた場合は、早めに業者に相談することをおすすめします。
屋根材の耐用年数が葺き替え工事を必要な年数に達している
屋根材の耐用年数を経過している場合、劣化や老朽化、雨漏り、安全性の低下、美観の低下などの理由で屋根葺き替え工事が必要となることがあります。
住宅の築年数で言えば、30年〜40年が屋根葺き替えを検討する目安となるでしょう。
早めの対策が、建物の保護と美しさを取り戻すために重要です。
業者に相談して適切な対策を取りましょう。
葺き替え工事による防水が必要なほど雨漏りが頻発している
雨漏りが頻発している場合、屋根葺き替え工事が必要です。
雨漏りは、屋根材の老朽化や劣化、破損、施工不良などが原因となります。
雨漏りが頻発している場合は、一時的な修理では解決できず、根本的な原因の解消が必要です。
雨漏りが頻発している場合は、早めに業者に相談し、適切な対策を取ることをおすすめします。
瓦やシートの割れ・欠けで早急な葺き替え工事が必要
瓦やシートが割れている、または欠けている場合、屋根葺き替え工事が必要です。
その理由は、防水性の低下、強度の低下、美観の低下があるためです。
屋根葺き替え工事によって、これらの問題を解決し、建物の保護と美観を確保することができます。
屋根全体にカビやコケなどの葺き替え工事が必要な劣化症状
屋根全体にカビやコケが生えている場合、屋根葺き替え工事が必要です。
その理由は、防水性の低下、強度の低下、美観の低下が考えられます。
屋根葺き替え工事によって、これらの問題を解決し、建物の保護と美観を確保することが可能です。
葺き替え工事をはじめメンテナンスがほとんどされていない
屋根がほとんどメンテナンスされていない場合、屋根材や防水層の劣化によって防水性や強度が低下し、カビやコケの発生が促進され、美観も損なわれます。
このため、屋根葺き替え工事によってこれらの問題を解決し、建物の保護と美観を確保することが必要です。
早めに専門業者に相談し、適切なメンテナンスを行いましょう。
屋根葺き替え工事の注意点
屋根葺き替え工事を行う際の注意点は以下の通りです。
- 専門業者の選定
- 施工計画の立案
- 工事予算の確認
- 建物内部の保護
- 追加工事の検討
以上の注意点を遵守し、専門業者との密なコミュニケーションを図ることで、屋根葺き替え工事をスムーズに進めることができます。
屋根葺き替え工事の注意点1.専門業者の選定
屋根葺き替えは専門的な作業なので、信頼できる専門業者を選ぶことが重要です。
実績や評判、施工保証などを確認し、複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。
屋根葺き替え工事の注意点2.施工計画の立案
屋根葺き替え工事は建物にとって重要な作業ですので、事前に施工計画を立案しましょう。
工期や作業の手順、材料の選定などを明確にしておくことで、スムーズな工事が行われます。
屋根葺き替え工事の注意点3.工事予算の確認
屋根葺き替え工事は費用がかかる場合があるので、事前に予算をしっかりと確認しておきましょう。
複数の業者から取った相見積もりを比較したり、必要な費用を事前に把握することで、予算オーバーを防ぐことが可能です。
屋根葺き替え工事の注意点4.建物内部の保護
屋根葺き替え工事では、建物内部が作業によって汚れたり、損傷する可能性があります。
作業前に建物内部の保護措置を行い、作業中は安全対策を徹底しましょう。
屋根葺き替え工事の注意点5.追加工事の検討
屋根葺き替え工事を行う際に、追加で行いたい工事や改善点がある場合は、同時に検討することがおすすめです。例えば、断熱材の追加や屋根補強など、将来的なメンテナンスや効率性を考慮した工事を行うことができます。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
屋根葺き替え工事のまとめ
ここまで、屋根葺き替え工事について解説してきました。
屋根葺き替え工事のメリット・デメリットをふまえた上で、施工を検討することをおすすめします。
また、屋根葺き替え工事の費用相場は、様々な要素によって異なりますが、一般的には1平方メートルあたり15,000円から18,000円ぐらいです。
ただし、屋根の形状や材質、下地の状態、工事内容などによって費用は変動します。
詳しい見積もりは、複数の業者から相見積もりを取って比較検討することが大切です。
さらに、屋根葺き替え工事を対象とした補助金制度もあるので、補助金を活用してお得に工事を行いましょう。