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中期修繕計画とは? 目的と工事内容や計画作成方法・費用・メリットを紹介

中期修繕計画とは、建物の維持管理を長期的に見据え、修繕や改修を計画的に行うための重要な指針です。
特にマンションやビルなど大規模な建物では、突発的な修繕費用や老朽化によるトラブルを未然に防ぐために、事前に計画を立てておくことが求められます。
この計画をしっかりと立てることで、長期的なコスト削減や建物の資産価値向上も期待できます。
本記事では、中期修繕計画の内容や作成方法・費用、さらに中期修繕計画がもたらすメリットについて詳しく紹介します。
これから修繕計画の策定を行う方は、この記事をぜひ参考としてお役立てください。

中期修繕計画とは?

中規模修繕計画とは、建物の劣化を防ぎ、安全かつ快適な居住環境を維持するために、定期的に行う修繕を計画するものです。
大規模な全面改修に比べ、対象範囲が限定されるため、修繕内容や費用の負担が軽減されることが特徴です。
しかし、修繕の必要箇所を的確に把握し、計画的に進めなければ、建物の劣化が進行し、大規模な修繕が必要となるリスクもあります。
そのため、中規模修繕は適切なタイミングで行うことが、建物の資産価値維持や長期的なコスト削減に繋がります。

中期修繕計画の目的

中期修繕計画は、以下の目的で策定されます。

建物の劣化を防ぎ、寿命を延ばす

マンションの建物の寿命を延ばすためには、定期的な点検と修繕が不可欠です。
中期修繕計画では、外壁のひび割れ補修や防水工事などを計画的に実施することで、建物の劣化を防ぎ寿命を長く保つことを目指します。

安全で快適な住環境を維持する

中期修繕計画では、住民が安全で快適に暮らせるよう、共用部分の修繕や設備の更新などを計画します。
例えば、共用廊下の手すり設置やエレベーターの改修などが挙げられます。

資産価値を維持・向上させる

適切な修繕がなされたマンションは、そうでないマンションに比べて、資産価値を高く維持することができます。
計画的な修繕は物件の評価を高められ、将来的な売却や賃貸の際にも有利に働くでしょう。

修繕費用の増加を抑える

中期修繕計画に基づいて計画的に修繕を行うことで、突発的な修繕工事による費用増加を抑えることが期待できます。
適切なメンテナンスは、結果的に将来行う大規模修繕工事にかかる費用を抑えることにもつながるでしょう。

修繕に関する合意形成を円滑にする

中期修繕計画を事前に作成しておくことで、住民間での合意形成を円滑に進めることができます。
さまざまな事態にあらかじめどのように対処するかが定められていることで、住民の安心や安全にもつながるでしょう。

中期修繕計画で検討すべき項目

中期修繕計画では、以下の項目について検討する必要があります。

検討すべき項目内容
修繕対象部位外壁や屋根・共用廊下・エントランス・駐車場など、どの部分を対象に行うか検討する
修繕内容ひび割れ補修や塗装・防水工事・設備の交換など、劣化状況や必要性に応じて検討する
修繕時期劣化の進行状況や建物の使用状況などを考慮し、適切な修繕時期を設定する
工法・仕様耐久性や安全性・コストなどを考慮し、最適な工法や仕様を選定する
費用修繕内容や工法・仕様に基づき、概算費用を算出する
資金計画必要資金をどのように調達するか、修繕積立金の残高や借入の可能性を検討する

いずれの項目も大規模修繕計画に基づき検討され、さらに住民の要望や緊急性も加味し策定されます。

中期修繕計画作成の費用と資金調達方法

中期修繕計画を作成する際には、建物の規模や状態・専門家の関与の度合いにより費用が変わります。
一般的には、建物の点検や診断に基づいて修繕の必要箇所を洗い出し、その結果をもとに計画が策定されます。
計画の作成は、一般的に建物の管理会社や専門コンサルタントに依頼するケースが多く、費用は数十万円から高額な場合で100万円以上になることもあります。
しかし、しっかりとした計画を立てることで、将来的な大規模修繕の費用やトラブルを抑える効果が期待でき、結果的にコスト削減につながることも少なくありません。
中期修繕計画を策定する際の資金調達方法は、主に以下の3つです。

修繕積立金を充てる

修繕積立金は、建物の維持管理のために定期的に積み立てる資金であり、特に中長期の修繕に備えて重要な役割を果たします。
この積立金は、建物の築年数が進むにつれて必要性が高まり、特に中規模修繕や大規模修繕を行う際には重要な財源となります。
適切な積立金の額を設定するためには、建物の規模や構造、修繕の周期などを考慮した中期修繕計画が必要です。
また、定期的に見直しを行い、修繕費用の不足を避けるために、適切な積立額を調整することも求められます。
十分な積立金があれば、修繕工事時の資金調達の手間が省け、突発的な出費を抑えることができます。

自治体の補助金・助成金制度を活用する

中規模修繕に際しては、自治体の補助金や助成金制度を活用することで、修繕費用の負担を軽減できる場合があります。
特に、耐震補強や省エネルギー対策を目的とした修繕工事には、国や地方自治体が提供する支援制度が豊富にあります。
各自治体のホームページや窓口で、該当する助成金の申請要件や手続き方法を確認し、条件に合致するものがあれば早めに申請することが重要です。
また、補助金を受けるための書類作成や手続きには時間がかかることがあるため、修繕計画を立てる段階でこれらの制度の活用を検討することをおすすめします。

金融機関から借り入れを行う

修繕費用が予想以上に高額になる場合や、修繕積立金が不足している場合には、借り入れを検討することも一つの方法です。
修繕工事のための借り入れには、金融機関が提供する修繕専用ローンや、マンション管理組合向けのローンなどがあり、比較的低金利で利用できるケースもあります。
また、自治体が提供する低利子の融資制度も存在するため、資金調達の選択肢として幅広く検討することが大切です。
借り入れを行う際には、返済計画をしっかり立て、修繕工事後の管理費や修繕積立金の影響を考慮して慎重に判断することが求められます。

中期修繕計画の作成手順

中期修繕計画は、一般的に以下の手順で作成されます。

  1. STEP

    現状把握

    建物の劣化状況・修繕履歴・設備の状況などを調査します。
    建物診断を実施し、専門家の意見を参考にしながら、客観的な視点で建物の状態を把握することが重要です。

  2. STEP

    長期修繕計画の見直し

    既存の長期修繕計画の内容を精査し、現状に合わなくなっている部分があれば見直します。

  3. STEP

    修繕項目・時期・費用の検討

    現状把握の結果に基づいて、必要な修繕項目、最適な修繕時期、概算費用などを検討します。

  4. STEP

    資金計画

    修繕に必要な資金をどのように調達するか、修繕積立金の積み立て計画や借入の可能性などを検討します。

  5. STEP

    中期修繕計画書の作成

    検討結果をまとめ、中期修繕計画書を作成します。

  6. STEP

    住民への説明・合意形成

    作成した計画を住民に説明し、合意を得るための話し合いを行います。

中期修繕計画作成のポイント

専門家の意見を聴取する

中期修繕計画を成功させるためには、専門家の意見を取り入れることが不可欠です。
建物の診断や修繕内容の決定において、建築士や施工業者などの専門知識を持つプロフェッショナルのアドバイスを受けることで、修繕の適切な範囲や優先順位を決定することができます。
専門家の協力により、より確実で効率的な修繕計画を立てることが可能です。

住民の意見を反映する

中期修繕計画を立てる際には、住民の意見を積極的に反映することが重要です。
修繕工事は、住民の生活に直接影響を与えるため、工事のスケジュールや内容に関して、事前に住民からの意見を集約し、共通の理解を得ることが求められます。
住民が納得したうえで修繕計画を進めることで、トラブルの防止や円滑な工事進行が期待でき、修繕後の居住環境の向上にもつながるでしょう。

将来の生活スタイルの変化も考慮する

中期修繕計画では、現在の状態だけでなく、将来的な生活スタイルの変化も視野に入れて計画を立てることが重要です。
たとえば、高齢化が進むことでバリアフリー化のニーズが高まる可能性もあり、環境問題に対する意識の高まりから、省エネルギー設備の導入も考慮する必要性が高いと言えるでしょう。
また、テレワークの普及に伴う通信インフラの整備など、今後のライフスタイルの変化に合わせた設備や設計の見直しが求められることもあります。
将来を見据えた修繕計画により、長期的に快適な居住環境を維持できます。

周辺環境にも配慮する

中規模修繕を行う際には、建物だけでなく周辺環境にも配慮することが大切です。
特に近隣住民への騒音や振動、工事による交通への影響など、周囲に与える負担を最小限に抑えるための対策が必要です。
事前に近隣住民へ工事のスケジュールや内容を説明し、理解を得ることが重要です。
また廃棄物処理やエネルギー効率に配慮した修繕を行うことで、社会的な責任を果たしつつ持続可能な建物管理を実現できるでしょう。

定期的な見直しを行う

一度策定した中期修繕計画も、時間の経過による建物の状況やニーズの変化に合わせて、定期的に見直すことが重要です。
修繕の必要性や予算状況を確認し、必要に応じて計画を修正することで、計画が現実的かつ効果的なものとなります。
また定期的な見直しにより、突発的なトラブルや急な費用の増加を避け、計画的な修繕も可能になるでしょう。
見直しを通じて、建物の健全な状態を維持し、長期的に住民の安心と快適さを保つことができます。

中期修繕計画を見直すタイミングとは?

中期修繕計画は、建物の状態や外部要因に応じて見直すことが重要です。
適切なタイミングでの見直しにより、計画が現状に合致し、無駄なコストやリスクを回避できます。
以下に、見直すべき具体的なタイミングを紹介します。

中期修繕計画の見直しは5年~10年に一度が一般的

中期修繕計画は、一般的に5年から10年に一度、定期的に見直すことが推奨されています。
建物の老朽化が進むと、予想外の修繕が必要になることもあるため、定期的な診断と計画の更新が建物の長寿命化に繋がります。

大規模修繕の実施後に行う場合も

大規模修繕が実施された後には、中期修繕計画も見直す必要があります。
大規模修繕によって一部の工事が完了しているため、計画の優先順位や予算配分を調整し、今後の中規模修繕を効率的に進めることが重要です。

法改正があった場合も見直しが必要

建築や設備に関する法改正があった場合は、中期修繕計画の見直しを行うべきです。
法令の変更により、建物の修繕や改修に新たな基準が設けられることがあるため、最新の基準に合わせた修繕が必要となります。

災害や事故が発生した場合は早急な見直しを

地震や台風などの自然災害や火災などの事故が発生した場合、建物の状態に大きな影響が及ぶ可能性があるため、中期修繕計画の見直しが求められます。
被害の程度に応じて、早急な対応や修繕が必要です。

管理状況に変化があった場合も同様に見直すことが大切

建物の管理体制や住民構成に変化があった場合、中期修繕計画の見直しを検討する必要があります。
管理費や修繕積立金の増減、管理組合の方針の変更により、修繕計画の内容や実行タイミングが影響を受けることがあるためです。

中期修繕計画を策定しないリスクとは?

中期修繕計画を策定しない場合、建物の維持管理が計画的に行えず、以下のようなリスクが発生しやすくなります。

建物の劣化の進行

計画的な修繕が行われないと、建物の劣化が加速します。
外壁や設備の不具合が放置されることで修繕範囲が拡大し、最終的には大規模な改修が必要になることがあるため、早期の修繕が重要です。

突発的な修繕費用の発生

中期修繕計画がないと、突発的な故障や劣化への対応に多額の費用が発生する可能性があります。
計画的に積立金を用意していない場合、住民全体で急な出費を負担することになり、経済的な負担が増します。

住民間のトラブル

修繕計画がないと、修繕の時期や費用負担について住民間で意見が分かれ、トラブルが発生することがあります。
事前に計画を立て、合意を得ておくことで、住民間の対立や不満を防ぐことができます。

資産価値の低下

定期的な修繕が行われないと、建物の外観や機能が低下し、資産価値が下がるリスクがあります。
特にマンションでは、資産価値の維持が住民全体の利益に直結するため、計画的な修繕が不可欠です。

中規模修繕を成功に導くポイント

中規模修繕を成功させるためには、事前準備や適切な対応が重要です。
以下では、修繕を円滑に進め、成功に導くためのポイントを解説します。

専門家による診断を受ける

修繕計画を立てる際には、建築士や施工業者などの専門家による診断を受けることが大切です。
専門家の診断によって、建物の劣化箇所や修繕の優先度が正確に把握でき、無駄な修繕を避けながら効率的な計画を策定できます。
建物診断に関する最新の研究や、建築劣化の診断手法に関するリソースを確認することで、より深い理解が得られるでしょう。

費用対効果を検証する

修繕工事の内容や費用を決定する際は、費用対効果をしっかりと検証することが重要です。
特に、修繕後の効果がどれだけ長期間維持されるか、費用に見合うメリットが得られるかを考慮する必要があります。
またこれらを明確に提示してくれる工事業者へ依頼することも、成功へ導くポイントと言えるでしょう。

住民の理解や賛同を得る

修繕工事を円滑に進めるには、住民の理解と賛同が不可欠です。
事前に修繕計画の説明会を開き、住民の意見を反映させながら安心できる情報提供を行うことが重要です。
計画段階からしっかりとした合意が形成されていれば、スムーズに工事を進められるでしょう。

まとめ

中期修繕計画を適切に立てることは、建物の長寿命化や資産価値の維持、そして住民が安心できる暮らしに直結する重要な取り組みです。
専門家による建物診断を受け、費用対効果を考慮しながら計画を進めることが、修繕の成功に欠かせません。
また、住民間の理解や賛同を得ることも、計画をスムーズに実行するための鍵となります。
さらに、修繕積立金や自治体の補助金・借り入れなどの資金確保の手段を事前に検討し、計画的な財源を確保することも重要です。
修繕計画を策定しない場合、建物の劣化が進行し、突発的な修繕費用の発生や住民間のトラブル、さらには資産価値の低下といったリスクが生じます。
また、5年から10年に一度の定期的な見直しや、大規模修繕後の法改正や災害発生時など、状況に合わせて内容を更新することで、修繕のタイミングを逃さず、効率的な管理を行うことが可能です。
中長期的な視点から、建物と住民のためにしっかりとした修繕計画を策定・見直しを行うことで、安心で快適な住環境の維持を進めましょう。

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