ウレタン防水は柔軟性と密着性に優れた塗膜防水であり、屋上やバルコニー、外階段など幅広い場所で活用されています。しかし、施工後しばらくして発生する「浮き」や「膨れ」は、防水層の性能を損なう原因となるため注意が必要です。この記事では、ウレタン防水の基本から、浮き・膨れの原因、補修方法、費用相場、再発防止の対策などを解説します。
目次
ウレタン防水の基礎知識と代表的な施工工法
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を現場で塗り重ねて硬化させることで、継ぎ目のない防水層を形成する工法です。柔軟性があり、凹凸のある下地や複雑な形状にも適応できることから、改修工事にも多く採用されています。屋上やバルコニー、共用廊下など幅広い部位に対応できる汎用性の高い工法です。
密着工法と絶縁工法の違い
ウレタン防水には主に2つの施工方式が存在し、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 密着工法:下地に直接ウレタンを塗布する方式で、初期費用を抑えられます。ただし、下地の状態に影響を受けやすく、含水率が高いと浮きや膨れの原因になります。
- 絶縁工法(通気緩衝工法):通気緩衝シートを間に挟み、下地と防水層を物理的に切り離す方法です。下地の湿気や微細な動きの影響を受けにくいため、長期的な安定性が期待でき、浮き・膨れの再発リスクを低減できます。
他の防水工法との比較
ウレタン防水は万能性が高い一方で、他の防水工法にもそれぞれ特性があります。選定時には施工環境や目的に応じた比較検討が重要です。
- シート防水(塩ビ・ゴム系):工場で製造されたシートを接着剤や加熱によって固定する方式。施工スピードが早く、厚みが均一ですが、複雑な形状や細部の処理には不向きです。
- FRP防水:ガラス繊維を含んだ樹脂を塗布・硬化させることで、非常に硬く耐久性の高い層を作ります。歩行可能で強度がある反面、下地の動きに弱くひび割れしやすいため、用途が限定されます。
浮き・膨れが発生する主な原因とそのメカニズム
ウレタン防水層における「浮き」や「膨れ」は、防水層と下地との間に水分や空気が閉じ込められることで発生します。これらのトラブルは、施工段階の不備や経年劣化、外部環境の影響によって引き起こされます。以下に代表的な原因を解説します。
施工不良や下地処理の不備
施工前に下地の清掃や乾燥が不十分な場合、防水材が下地にしっかりと密着せず、接着不良が起きます。油分やホコリ、水分が残った状態でウレタン樹脂を塗布すると、施工後まもなく浮きや剥離が現れるリスクが高まります。特に古いコンクリート面では下地の吸水性や劣化状態にも注意が必要です。
含水率の過多と天候条件の悪さ
施工時の下地に多くの水分が含まれていた場合、その水分が硬化後に蒸気となって逃げ場を失い、防水層を内部から持ち上げるように膨らみを生じさせます。これは梅雨時や雨上がり直後の施工、あるいは湿度の高い環境下で多く見られる現象です。下地の含水率は6%以下が安全基準とされます。
経年による塗膜の劣化や構造的な動き
長年の紫外線や熱による劣化で、防水層の柔軟性が低下すると、建物の微細な動きに追従できなくなり、防水層にひずみが生じます。その結果、剥離や浮きが発生しやすくなります。また、地震や強風などによる構造的な揺れも、浮き・ひび割れの原因となるため、施工直後だけでなく定期的な点検とメンテナンスが重要です。
浮き・膨れの補修方法と再発を防ぐ対策
ウレタン防水層に浮きや膨れが見られた場合、放置せず迅速な対応が求められます。劣化の進行度に応じた適切な補修を行うことで、防水性能を回復し、建物の劣化を最小限に抑えることが可能です。
軽度な浮きへの対処法(部分補修)
浮きや膨れが局所的な場合は、部分補修によって対応できます。以下の手順が一般的です:
- 浮き・膨れ部分の切除と除去
- 下地の乾燥と清掃(含水率は6%以下が目安)
- プライマーを塗布して密着性を高める
- 新たにウレタン樹脂を塗布し、トップコートで仕上げる
この工程を丁寧に行うことで、防水層の密着性が回復し、再発リスクも低下します。
全体に及ぶ浮きへの対応(全面補修)
防水層全体に浮きが見られる場合や、複数箇所に深刻な膨れが発生している場合は、全面的な再施工が必要になります。
- 既存の防水層をすべて撤去
- 下地の状態を調査し、必要に応じて補修・再整備
- 絶縁工法(通気緩衝シート+脱気筒)による再施工を選択
絶縁工法を採用することで、下地の湿気や構造的な動きに対応しやすくなり、再発を防ぎやすくなります。
補修費用の目安と見積もりチェックポイント
補修費用は工事の規模や工法、建物の構造条件により大きく異なります。以下は目安です。
部分補修
- 単独の膨れ補修:20,000〜50,000円/箇所
- 小規模範囲(5〜10㎡):5,000〜8,000円/㎡
全面補修
- 密着工法:4,500〜6,500円/㎡
- 絶縁工法(通気層・脱気筒含む):6,500〜9,500円/㎡
見積もりで確認すべきポイント
- 使用される塗料のメーカー・製品名・性能
- 塗布回数と厚み(仕様通りか)
- ケレン・下地処理の方法と程度
- 保証期間と保証対象の範囲(例:浮きの再発にも対応か)
見積書は口頭説明だけでなく、書面での明記があるかも確認しましょう。
浮き・膨れの再発を防ぐために必要な対策
施工後に再発しないためには、工事中の管理だけでなく、長期的なメンテナンスも重要です。
下地処理の徹底が基本
- 下地の清掃・乾燥・脱脂を確実に行う
- クラックや段差があれば、樹脂モルタルなどで補修
- 含水率は測定器で計測し、基準を満たす状態で施工
絶縁工法+脱気筒の導入
- 下地の湿気を通気層で逃がす設計にする
- 膨れの原因となる水蒸気を脱気筒で外部に排出
- 絶縁工法はコストはやや高いが、長期的な耐久性が高い
トップコートの定期的な再塗布と点検
- トップコートは紫外線や風雨から防水層を保護する役割を担う
- 5年ごとの塗り替えが理想的
- 年1回の定期点検で劣化や浮きの兆候を早期に発見できる
こうした予防策を講じることで、ウレタン防水層をより長く安全に保つことが可能になります。
よくある質問(FAQ)
Q
浮きがあるが雨漏りしていない場合も補修すべき?
A
浮きや膨れは防水層の密着力が低下している状態であり、時間が経てば内部に水が侵入しやすくなります。早期対応が結果的にコスト削減につながります。
Q
DIY補修は可能?
A
ホームセンターで入手可能な簡易材料で補修もできますが、下地処理や乾燥管理が不十分だとすぐに再発します。特に共用部や大面積では専門業者に依頼しましょう。
Q
補修後にまた浮くことはある?
A
とくに下地の乾燥が不十分、適切な材料が使われなかった場合には再発しやすくなります。信頼できる施工業者に依頼し、再発防止対策を講じることが重要です。
まとめ|浮きを見逃さず、長期的な保護を意識した防水管理を
ウレタン防水における浮き・膨れは、施工不良や劣化により発生しやすく、建物の寿命や資産価値にも影響を及ぼします。再施工や部分補修にかかるコストを抑えるには、早期発見・早期対応が不可欠です。信頼できる業者選びと予防メンテナンスを徹底し、安心して長く使える防水環境を整えましょう。