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マンション大規模修繕工事の戸当たり単価とは?内容別の費用相場も紹介

「結局1戸あたり、どれくらいの費用がかかるの=?」 「工事項目ごとに費用の目安が知りたい」 とお考えの方はいらっしゃいませんか?

マンションを所有しているオーナーや管理組合にとって、大規模修繕工事は避けて通れない重要なイベントです。中でも「戸当たり単価」は、修繕計画や資金計画を立てるうえで欠かせない指標となります。

本記事では、大規模修繕工事における戸当たり単価の意味と、その内訳となる費用相場について詳しく解説していきます。また、費用に影響する要因や、見積もりの際に注意すべきポイント・コストダウンの可能性についても触れていきます。
今後の修繕計画をより現実的に進めるための参考として、ぜひ最後までご覧ください。

大規模修繕工事の「戸当たり単価」とは?

マンションの修繕工事費用の指標には「戸当たり単価」というものがあります。
工事費用を住民へ公平に割り振るために重要な指標ですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
以下では、戸当り単価の意味と活用方法について解説します。

戸当たり単価の定義と活用場面

「戸当たり単価」とは、マンション1戸あたりに換算した修繕工事の費用のことを指します。
これは、総工事費をマンションの戸数で割った金額で、工事にかかる費用を個々の住戸ごとに平等に分担するために用いられます。

例えば、修繕工事にかかる総額が1億2,000万円で、マンション全体の戸数が60戸であれば、戸当たり単価は200万円となります。
この単価を知ることにより、住民は実際に自分たちの負担額を把握でき、計画的な修繕積立金の設定や、住民同士でのコスト共有に役立てられます。

また、戸当たり単価は、同じ規模やエリアのマンションと比較する際にも利用されます。
例えば、同じ地域のマンションで過去に実施された修繕工事の単価と比較することで、自物件の工事費用が適正かどうかを判断する基準となります。

見積書には「戸当たり単価」は明記されない?

ゼネコンや施工業者が提供する見積書には「戸当たり単価」という表記はありません。
見積書には総工事費用や各工事項目ごとの単価、数量が記載されていますが、戸当たり単価を求めるためには、これらの数字を基に管理組合やコンサルタントが自ら計算する必要があります。

このため、住民説明会や予算案を作成する際には、事前に戸当たり単価を把握しておくことが非常に重要です。
住民への説明をスムーズに進めるためにも、予め戸当たり単価を算出し、工事費用がどのように分担されるのかを明確にすることで納得を得やすくなります。

大規模修繕の戸当たり単価の相場はいくら?内容別の費用目安を解説

マンションの大規模修繕工事における戸当たり単価は、工事内容・地域・マンションの規模によって大きく異なります。
ここでは、一般的な相場を解説し、工事項目ごとに目安となる金額を紹介します。

全体的な平均相場と目安

以下は、全国的なデータを基にした戸当たり単価の相場です。
築年数やマンションの規模に応じて、費用感が変動します。

築年数戸当たり単価の相場(目安)
築10〜15年70〜120万円
築20〜25年120〜180万円
築30年以上180〜250万円以上

上記の表に示すように、築年数が進むにつれて戸当たり単価が高くなる傾向があります。
特に、築30年を超えるマンションでは、設備の更新・配管交換・外壁補修などの大規模な工事が必要となるため、費用が膨らみやすくなります。

工事項目別の費用内訳

マンションの大規模修繕における主な工事項目とその費用目安は、工事内容やマンションの状態に応じて、費用は大きく異なることがあります。

外壁補修・塗装工事(戸当たり:約30〜60万円)

外壁の補修や塗装の塗り替えは、大規模修繕の中でもよく行われる工事です。
タイルが剥がれていたり、外壁の塗膜が劣化している場合、補修工事が必要です。
施工面積やマンションの高さ、工法(例えば、足場を使うのか高所作業車を使うのか)によって価格が大きく変動します。

屋上・バルコニー防水工事(戸当たり:約20〜40万円)

屋上やバルコニーの防水工事は、建物の寿命を延ばすために不可欠な工事です。
防水処理を適切に施していないと、雨漏りや腐食などの問題を引き起こします。
防水材の種類や工法によっても価格は異なり、ウレタン防水やシート防水など、選択肢があります。

給排水設備の更生・交換工事(戸当たり:約50〜100万円)

築年数が経過したマンションでは、配管の劣化が進行していることが多く、給排水設備の更新が必要です。
交換工事が必要な場合、1戸あたりの負担額が大きくなるため、工事の規模や交換範囲を見極めることが重要です。

共用部の改修(戸当たり:約10〜30万円)

共用部の改修には、以下のような工事が行われます。

  • エントランス・廊下・階段の床材の交換
  • 照明のLED化
  • 壁面の塗装

これらは外観や内装の美観を保つために重要な工事ですが、比較的費用が抑えられるため、予算内で行いやすい工事です。

仮設工事・足場設置(戸当たり:約10〜25万円)

大規模修繕工事を行う際には、足場を設置する必要があります。
マンションの高さや立地条件によって足場設置の難易度が変わるため、費用も異なります。
足場の設置が特に必要となる工事項目(外壁補修や塗装)に関連するため、予算内でしっかり抑えるべきポイントです。

大規模修繕の戸当たり単価に影響を与える要因とは?

同じ工事内容でも、マンションごとに戸当たり単価は異なります。
これは、建物の規模・地域・修繕内容など、さまざまな要因が影響しているためです。
以下に、戸当たり単価に影響を与える主な要因を紹介します。

物件の規模と構造

マンションの規模(戸数)や構造(RC、SRCなど)によって、工事費用が大きく変わります。
まず、規模に関しては、一般的に大規模なマンションほど、1戸あたりのコストは抑えられる傾向にあります。
これは、工事の際に発生する固定費(足場設置費や設計費など)を多くの住戸で分担できるためです。
また、構造によっても影響があり、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)や鉄筋コンクリート(RC)の建物では、工事の難易度や施工方法が異なり、その分施工費用が変動します。
例えば、鉄骨構造はRC構造よりも耐震性が高い一方で、工事に手間がかかることが多いため、コストが上がる場合があります。

さらに、建物の階数も費用に影響します。
高層階のマンションでは、足場の設置が難しく、作業にかかる時間や材料の搬入コストが増加するため、戸当たり単価が高くなる可能性があります。
逆に低層階であれば、作業が効率的に行われ、コストを抑えることができます。

地域性と物価

修繕工事の費用は地域によって大きく変動します。
都市部では物価が高く、人件費や資材費も高いため、同じ工事を行う場合でも地方と比較して高額になることが多いです。
特に、首都圏や大都市圏では建設業者の競争が激しく、施工業者の選定においても競争原理が働くため、都市部では価格が高騰しやすい傾向にあります。

一方で、地方では都市部よりも価格が安いことが多いですが供給が少なく、業者間の競争が限定的であるため、場合によってはコストパフォーマンスが低下することもあります。

また、地域ごとの労働市場も重要な要因です。
都市部では人件費が高い一方で、専門的な技術を持つ職人が多く、修繕工事の品質は高くなることが期待できます。
しかし、地方では技術を持った職人が不足している場合があり、その結果として費用が高くなる場合もあります。

建物の築年数と劣化状況

マンションの築年数が古くなるほど、修繕工事にかかる費用が増加します。
老朽化により、設備や配管の劣化が進行し、それに伴う交換や補修が必要となるためです。
古い建物では、外壁や屋根、バルコニーの防水工事も重要なポイントであり、これらの工事は通常、現代の基準に合わせた高い費用がかかります。

特に、構造的な劣化や設備の老朽化が進んでいる場合、修繕内容が増え、工事の難易度も上がります。
これにより、施工に必要な工数や材料費が増加し、戸当たり単価も高くなります。
また、マンションの「修繕履歴」が少ない場合や、これまで修繕が行われていない部分が多い場合も修繕工事が膨大な作業量となり、結果としてコストが上がる原因となります。

工事の内容

修繕工事の内容によって、費用は大きく変動します。
例えば、基本的な外壁補修や塗装工事に加えて、より専門的な工事が求められる場合、戸当たり単価が大きく上昇することがあります。
以下のような高額な工事が必要になる場合、その分費用が高くなります。

給排水設備の交換

マンション全体の給排水設備が老朽化している場合、すべての配管を取り替える必要があります。
これには多大な費用がかかり、1戸あたりの負担額が増えるため、戸当たり単価が大きく影響を受けます。
また、耐震補強工事や内装のリフォーム、共用部の改修などが含まれる場合、それぞれの工事内容に応じて戸当たり単価が増加します。

エレベーターの改修

古いエレベーターの交換や、耐震基準を満たすための改修工事が必要となる場合、コストは高くなります。
特に多層階のマンションでは、エレベーターの更新工事が必須となることが多く、これが戸当たり単価に大きく影響します。

防水工事

特に古いマンションでは、屋上やバルコニーの防水工事が必要です。
防水処理を施すことで、雨漏りのリスクを減らし、建物の寿命を延ばすことができますが、これにはかなりの費用がかかります。

大規模修繕のコストを抑えるためにできること

大規模修繕工事は、多額の費用がかかる一大イベントですが、適切な対策を講じることで、コストを抑えつつ、必要な品質を維持することが可能です。
ここでは、コスト削減のための具体的な方法をいくつか紹介します。

計画的な修繕積立金の増額

修繕工事の負担を軽減するために、修繕積立金の額を事前に計画的に増額することが非常に重要です。
マンションの大規模修繕に向けて、早い段階で積立金を増加させることで、急な費用負担を避けることができます。
特に、築年数が経過しているマンションでは、修繕工事の規模や内容が大きくなる可能性が高いため、事前に積立金の見直しを行い、将来的な負担を分散することが重要です。

修繕積立金を適切に増額することで住民の一時金負担を減らし、修繕工事がスムーズに進行します。
また、計画的な積立を行うことで、住民同士で納得しやすい説明ができます。

信頼できる施工業者の選定

施工業者の選定は、コストを抑えるための最も重要なポイントの一つです。
相見積もりを複数の業者から取得し、費用対効果をしっかりと見極めることが大切です。
しかし、最安値を追い求めるだけではなく、品質と信頼性も十分に考慮することが必要です。

施工業者を選ぶ際は業者の過去の実績や、過去のマンション修繕事例を参考にすることが有効です。
また、業者との契約時には詳細な契約書を交わし、工事内容や費用の詳細について確認を怠らないようにしましょう。
特に、価格が安すぎる業者には注意が必要です。
安さの裏に品質の低さや施工期間の短縮など、トラブルを招く要因が隠れている可能性があります。

設備の選定とランニングコストの見直し

修繕工事の際に必要な設備や素材の選定は、コストに大きく影響します。
特に、省エネ設備や高耐久材料を選択することは、初期費用は高くても、長期的に見てランニングコストが削減できる可能性があります。

また、素材の選定にも注意を払いましょう。
近年では耐久性が高く、メンテナンスの必要が少ない高品質な材料が増えており、これらを選ぶことで長期的にコスト削減を実現できます。

仮設費用や人件費の見直し

大規模修繕工事における仮設費用(足場設置費や仮設事務所設置費)は、意外と高額になることがあります。
特に、工事を実施するマンションの階数が多い場合、足場設置のコストが増加します。
このような場合、工事を段階的に進めることで、仮設費用を削減できる場合があります。

また、人件費についても作業時間を効率化するために、作業内容や工事の進行スケジュールを細かく見直し、無駄な工数を削減することが重要です。
効率的なスケジュール管理を行うことで、全体的な作業の進捗を早め、無駄な人件費を削減できます。

補助金や助成金の活用

マンションの大規模修繕工事には、自治体からの補助金や助成金が利用できる場合があり、省エネルギー化や耐震化に関連する工事では、補助金が支給されることがあります。
自治体や政府が提供する補助金を上手に活用することで、工事費用の負担を軽減できる場合があります。

また、税制優遇措置を受けられる場合もあります。
こうした制度については、事前に調査し、適用条件をクリアすることが重要です。

大規模修繕積立金との整合性をどう見る?

修繕積立金と戸当たり単価の整合性を取ることは、マンションの大規模修繕工事を成功させるために非常に重要な要素です。
修繕積立金が十分でない場合、住民にとっては急な一時金の徴収が必要になり、その際に不満や抵抗が生じやすくなります。
逆に、積立金が過剰である場合には、住民が不必要に高い負担を強いられることになり、こちらも問題です。
このようなバランスを取ることが、長期的なマンション運営の安定に寄与します。

修繕積立金の不足に対応するためのアクション

もし修繕積立金が不足した場合は、以下のような対策を行うことが大切です。

一時金の徴収

修繕積立金が不足していると、最も一般的な対応策は一時金の徴収です。
しかし、一時金徴収は住民にとって大きな負担となり、住民間での不平不満や対立を招く可能性があります。
そのため、できる限り修繕積立金を前もって十分に積み立て、事前に必要な資金を確保しておくことが望ましいです。

外部からの借入

もし、積立金が足りていない場合、次に考えるべきは外部からの借入です。
多くのマンションでは、大規模修繕工事に向けて管理組合が銀行から借り入れを行い、その返済を住民の修繕積立金から行う方法が取られています。
この方法は、住民一人ひとりの負担を分散させることができるため、一時金徴収のような大きな負担を避けることができます。

ただし、借入には金利の負担や返済計画の策定が必要なため、事前に慎重に検討し、全住民の理解を得ることが大切です。
金利が低い融資を選ぶこと、返済期間を長期に設定することなど、返済負担を軽減する方法もあります。

過剰な積立金とそのリスク

一方で、修繕積立金が過剰に積み立てられている場合、住民の負担が不必要に高くなり、住民の不満や積立金の使途不明確が問題視されることがあります。
過剰に積み立てられた積立金は、後々返還や税制優遇のための調整を行う必要が出てきます。

過剰な積立金が発生しないように、管理組合は定期的に修繕積立金の見直しを行うことが大切です。
これにより、将来的な大規模修繕の費用を精緻に見積もり、適切な額を積立てることが可能になります。
管理組合や住民間で積立金の使用目的や計画を共有し、透明性を持たせることが、住民の納得を得るためにも非常に重要です。

将来の修繕計画と積立金の見直し

修繕積立金は、単に現在の工事費用だけでなく、将来の長期的な修繕計画を視野に入れて見直す必要があります。
マンションが築年数を重ねるごとに、修繕費用が増加するのは避けられません。
そのため、長期修繕計画を策定し、今後必要となる修繕項目や工事費用を予測して積立金を積み立てることが求められます。

また、定期的な見直しが必要です。
年次点検やマンションの状況の変化に合わせて、積立金額の調整を行うことが、予算に適した積立金額を確保するために欠かせません。
こうした見直し作業は、住民に対しても適切に説明を行い、合意を得ることでスムーズに進行します。

まとめ

マンションの大規模修繕工事における「戸当たり単価」は、工事費用を住民間で公平に分担するための非常に重要な指標です。
その金額を正確に把握することで、適切な修繕計画を立て、住民の合意形成をスムーズに進めることができます。
住民全員の納得を得るためには、透明性の高い説明と明確な予算管理が不可欠です。

また、修繕積立金の適切な見直しや信頼できる施工業者の選定、省エネルギー設備や耐久性に優れた材料の選定など、コスト削減のために実行できる方法は多岐にわたります。
これらの施策を適切に行うことで、修繕費用の負担を最小限に抑え、マンションの資産価値を守りながら、住民の負担を軽減する修繕計画を実現できます。

将来の修繕計画を見据えて長期的な視点で積立金を管理し、計画的に修繕を進めることが、マンションの健全な維持管理に繋がるでしょう。

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