「大規模修繕工事を行いたいけど、どこから手を付けて良いのか分からない」
というかたはいませんか?
大規模な修繕工事に取り組む場合、実行に必要なステップを正しく行うことが重要です。
そこで今回は、大規模な修繕工事をうまく進めるために、実行に必要なステップをご紹介します。
流れとしては、まず、修繕工事の計画を立てる必要があります。
計画には、修繕する場所や工事方法などを詳しく記載する必要があります。
計画を立てるにあたり、修繕の必要性、必要な設備などを考慮して、適切な計画を立てる必要があります。
次に、工事を実行するために、必要な資材や作業員などを確保する必要があります。
材料や作業員などを把握した上で、必要な資材を確保するなど、正しい手順を踏んで行うことが重要です。
最後に、実行した修繕工事を報告する必要があります。報告内容には、実行した工事の詳細や、実行した工事の結果を記載する必要があります。
報告内容を整理し、正しい内容を提出することで、修繕工事を正しく進めることができます。
この記事では大規模修繕工事がどのような進め方で行われるのかを詳しく解説していますので、修繕計画がスムーズに立てられるようになるでしょう。
また記事の後半では大規模修繕工事の注意点についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
大規模修繕工事とは
大規模修繕工事とは、マンションなど大規模な建物を修繕する工事のこと。
外壁塗装や防水工事など幅広い施工を行うので、工事には数か月の期間を要します。
大規模修繕工事は以下の目的で行われます。
- タイル剥落などによる事故を防ぐ
- 漏水などを防いで建物の耐久性を高める
- 外壁塗装などで見た目を良くする
- 耐震性能や断熱性能、バリアフリー性能などを高める
- 建物の資産価値を高める
一般的には12~15年周期で大規模修繕が行われると言われていますが、建物の劣化状態によって周期は前後します。
大規模修繕の基本的な進め方(流れ)
大規模修繕は、一般的に次のような進め方で行われます。
- 理事会、修繕委員会の発足
- パートナー選び
- 建築診断
- 基本計画、実施設計の決定
- 施工業者選び
- 総会決議
- 工事説明会
- 着工
- 竣工検査
- 完了
1.理事会、修繕委員会の発足
まずは理事会や修繕委員会を発足させましょう。(修繕委員会を作らず、理事会が大規模修繕を主導する場合もある)
修繕委員会とは修繕計画の見直しや実施を行う、主にマンション住人から構成されるチームのこと。
修繕委員会のメンバーには、次のような人を選ぶのがおすすめです。
- 過去に大規模修繕を経験したことがある人
- 建築士などの資格や、知識を持った専門家
- 大規模修繕への意欲がある人
- 色々な年齢層や性別の人
建築に詳しいマンション住人がいるのは悪くありませんが、特定の施工業者との関係がある場合は参加させないほうが良いでしょう。
「外部の専門家を招くかどうか」といったことも検討しますが、まずは「今すぐ大規模修繕工事を行う必要があるのか」といったことから話し合う必要があります。
ちなみに発足時には、管理会社から大規模修繕工事の内容について提案を受けるケースも多いです。
2.発注方式の選択
大規模修繕をサポートするパートナー(専門家)を選ぶ際は、まずはどうやって大規模修繕を行うのか発注方式を選ぶことから始めます。
発注方式は「責任施工方式」と「設計監理方式」の2つが代表的です。
責任施工方式
信頼する施工業者をパートナーにします。
施工業者に設計~施工までを一手に依頼する方式です。
第三者によるチェックができないのがデメリットです。
設計監理方式
設計事務所、管理会社などのコンサルタントをパートナーに選ぶ方式です。
さらに別で施工業者も選びます。
設計と施工が分離しているので、透明性のある工事をしやすくなります。
ただしコンサルタントと施工業者が、裏で談合している可能性もあるので注意が必要です。
3.建築診断
どんな工事を行うかを決めるには、今の建物の状態を知らなくてはなりません。
そこで行うのが「建築診断」です。
建物が「どの程度劣化しているか」「修繕が必要な箇所はどこか」「次回の大規模修繕に延期できる工事はないか」といったことをチェックします。
建築診断の結果は、長期修繕計画を立てる際や、工事にかかる費用の概算を出す際にも役立ちます。
建築診断は、予備診断~3次診断まで行われるケースも多いです。
調査内容 | |
予備診断 | 目視での調査を中心に、不具合の早期発見を目指す。外壁や屋上などの診断が中心。マンション住人へのアンケートも行う |
1次診断 | 目視だけでなく、機器も使う。劣化の危険性も判断する |
2次診断 | 非破壊試験(コンクリートなどを壊すことなく調べる検査技術)や微破壊試験を行う。建物の共有部分を中心に行う |
3次診断 | 局部破壊試験を伴う、より詳細な診断や評価を行う。共有部分だけでなく専有部分も調査する |
4.基本計画、実施設計の決定
工事項目や工事スケジュール、概算費用などが書かれた「修繕基本計画書」を作成します。
- 工事金額は妥当か
- どの箇所を優先して修繕するのか
- どの時期に大規模修繕を行うのか
- 工事中は住人にどのように配慮するか
- 現時点で不要な工事はないか
- 修繕積立金の不足分をどうするか
上記のようなことを検討します。
次回の大規模修繕に延期できる工事で浮いた金額分を、オートロックの設置など、マンション住人の生活の質を向上させる工事に充てることも可能です。
ちなみにマンションの財政状況を知っている管理会社が、ギリギリの工事金額を提示してくる場合もあるので注意が必要です。
「不当に高額な工事項目はないか」といったこともきちんとチェックする必要があります。
5.施工業者選び
施工業者を選ぶ際は、複数の施工業者から見積もりを取り、比較検討する方法が良いでしょう。
インターネットや専門誌、マンションの掲示板などを利用して公募を行います。
複数の施工業者の候補が見つかったら、書類選考に移ります。
書類選考では、さらに数社まで絞ります。
- 建築診断の内容が反映された修繕計画になっているか
- 不要な工事項目はないか
- 施工業者の経営状態はどうか
書類審査では上記のようなことをチェックします。
その後は、書類審査を通過した施工業者を招いてヒアリングを行います。
ヒアリングとは施工業者によるプレゼンテーションのようなもので、工事の概要や業者の強みなどを組合員にアピールしてもらう場のことです。
また次のような方法で、施工業者を選ぶ場合もあります。
- 競争入札
- 特命随意契約
競争入札
工事の仕様書を元に、施工業者に価格を競わせます。
工事費用が安くなりやすいですが、工事のクオリティについては重視されません。
特命随意契約
信頼している1社に見積もりを出してもらう方法です。
マンションの管理会社や、前回の大規模修繕工事を行なった施工業者を指名するのが一般的です。
6.総会決議
大規模修繕についての内容が決まったら、総会を開きます。
総会では「どんな工事になるのか」「どの施工業者に依頼するか」「いつから大規模修繕を行うか」といったことを組合員に説明します。
総会で組合員の了解が得られれば、施工業者に工事を発注できるようになります。
組合員が誰でも工事内容を理解できるように、分かりやすく説明することが求められます。
また総会で決議された後も、臨時で総会が開催されることがあります。
できるだけ組合員とのコミュニケーションを欠かさないようにすることが大切です。
7.工事説明会
施工業者と契約を交わしたら、工事説明会を開催します。
工事説明会では、工事の概要や安全上の注意点などを組合員に説明します。
大規模修繕工事では騒音やホコリなどが発生するので、できる限りマンション住人に理解してもらえるように努めましょう。
工事説明会は、着工の1か月ほど前に行うのが良いでしょう。
8.着工
いよいよ工事が始まります。
工事が始まった後も施工業者に丸投げせず、その都度、施工業者と打ち合わせを行なっていきます。
また掲示板やチラシを使って、工事の進捗状況や注意点などをマンション住人や周辺住民と共有します。
工事中は、できる限りマンション住人や周辺住民が快適に生活できるように配慮しましょう。
9.竣工検査
工事が終わったら、竣工検査を行います。
竣工検査は足場を撤去する前に行います。
工事完了後に施工不良が見つかる場合もあるので、手抜き工事がないかどうか、念入りに調べる必要があります。
施工不良が見つかった場合は施工業者に手直しをしてもらい、再度検査を行います。
10.完了
竣工検査が終わったら、施工業者に「竣工図書」を作成してもらいましょう。
竣工図書は、のちに新たに工事の不具合が見つかった場合の裏付け資料となるので、大切に保管しておきましょう。
工事が完了したら施工業者から引き渡しを受け、大規模修繕の完了です。
大規模修繕完了後は次回の大規模修繕工事に向けて、「修繕積立金の見直しが必要かどうか」といったことを考えていきましょう。
大規模修繕工事の注意点
大規模修繕工事では、次の点に注意が必要です。
施工中のクレーム
工事による騒音や臭い、ホコリなどが原因で、マンション住人や周辺住民からクレームが入ることがあります。
また見慣れない作業員がマンション内を行き来することになるので、住人は不安になりやすいでしょう。
マンションの外壁が足場やメッシュシートで覆われることにもなるので、日当たりや眺めが悪くなります。
この状態が数カ月も続くので、マンション住人や周辺住民への配慮は必須です。
施工中のクレームを防ぐには、先ほども触れたように工事内容や時間帯、予想される騒音などを事前に告知するのが有効です。
できる限りマンション住人や周辺住民に納得してもらい、不安にさせないことが大切です。
施工業者に丸投げしない
管理組合は施工業者に工事を丸投げするのではなく、監視する意識が必要です。
工事の進み具合いの報告を受けるだけでなく、追加工事が必要かどうかなども常にチェックしましょう。
管理組合の監視の目が行き届いていれば、施工業者は手抜き工事もしにくくなります。
瑕疵(かし)保険が利用できる業者を選ぶ
大規模修繕工事が済んでから数か月~数年後に不具合が発生することも考えられます。
そんな事態に備えて、瑕疵保険を利用できる業者を選ぶのがおすすめです。
施工中や施工後に施工業者が倒産したら、続きの工事やアフターサービスを受けられません。
そんな時に施工業者が瑕疵保険に加入していれば、マンション側は工事費用が保証されるのです。
瑕疵保険では、工事着工前の検査と、完了時の現場確認も検査員に行なってもらえます。
施工のクオリティを保ちたい場合も、瑕疵保険が活躍するでしょう。
瑕疵保険の費用は、基本的にマンション側が支払う必要はありません。
まとめ
大規模修繕工事では、次の3つ事柄が最も重要です。
- 管理組合全体で合意形成をする
- 良いパートナーや施工業者を選ぶ
- 複数の業者や会社を比較検討する
大規模修繕工事を上手く行なえれば、マンション住人がより良く暮らせるようになるだけでなく、マンションの資産価値も高まります。
管理会社に施工業者の選定も任せてしまうケースも多いですが、管理組合側で業者の選定をする手間をかけることで、適正価格での工事が行いやすくなるでしょう。