6 min

区分所有法で定める小規模修繕工事とは?決議方法や費用負担について解説

分譲マンションなどの区分所有建物では、定期的な修繕が不可欠です。特に注目すべきは、大規模修繕工事と小規模修繕工事の違いです。区分所有法に基づく小規模修繕とは、共用部分の軽微な修繕を指します。

これらの修繕工事は、マンション管理組合の総会で決議される必要があります。大規模修繕工事が特別決議を要するのに対し、小規模修繕は普通決議で実施可能です。しかし、工事の規模や内容によっては、区分所有者全員の同意が必要な場合もあります。

本記事では、区分所有法における小規模修繕の位置づけ、管理組合の役割、そして総会での議決方法について詳しく解説します。さらに、費用負担の仕組みや、大規模修繕との違いも明確にしていきます。

マンション管理に携わる方々にとって、今後の修繕計画立案の参考になれば幸いです。

区分所有法と小規模修繕工事の概要

まずは、区分所有法と小規模修繕工事の概要を説明します。

区分所有法とは

区分所有法とは、分譲マンションなどの区分所有建物の権利関係や管理運営について定めた法律です。

区分所有建物とは、分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことであり、通常の建物に比べて所有関係が複雑であり、所有者相互の利害関係を調整する必要があります。

区分所有法は、1962年に民法の特別法として制定され、その後、分譲マンションの急速な普及に伴い、1983年と2002年に改正されました。

区分所有法の主な内容は、以下のとおりです。

  • 専有部分・共用部分・建物の敷地に関する権利関係の明確化
  • 規約・集会に関する法制度の整備
  • 管理組合の構成
  • 多数決主義
  • 建替え制度
  • 敷地利用権と専有部分の一体化
  • 復旧決議における買取り請求規定の整備
  • 建替え決議要件の緩和
  • 団地内建物の建替え承認決議の創設

マンションの建て替え等に関しては、区分所有法に加えて、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」において、合意形成や権利調整についての特別の規定が定められています。

なお、区分所有法は、分譲マンションなどの区分所有建物を購入した際には、必ず知っておくべき法律です。

小規模修繕工事とは

小規模修繕工事とは、1件の設計金額が80万円以下で、かつ、内容及び履行の確保が容易と認められる修繕及び工事です。

具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 雨漏りや水漏れに伴う修繕
  • 階段・ベランダ等の鉄部の塗装
  • 共有スペースの電球交換
  • 共有スペースの壁やドア、階段などで発生した軽微な修繕工事
  • 消防設備の故障修理
  • 台風や突風、大雨などの自然災害が原因となる破損部分の修理
  • 異常がないかを確認する定期点検

小規模修繕工事は、日常生活に不具合がでないように行うものです。

鉄部の塗装については、5年に一度程度塗り替えることが望ましいとされているため、次の大規模修繕までの間に、小規模修繕としても行うことが多いようです。

建築から20年、30年、50年と年月が経つにつれ、老朽化がすすむため、細かな修繕はそれにともなって増える傾向があります。

小規模修繕工事は、大規模修繕のようにガイドラインによって定義づけされていないため、物件の状況に合わせて行うのが基本です。

また多額の費用がかかるときには修繕積立金を充てるケースもありますが、一般的には管理費から支払われます。

小規模修繕工事の決議|区分所有法

小規模修繕工事は、区分所有法第25条に基づいて行われます。

区分所有法第25条では、以下の要件を満たす修繕については、区分所有者総数の4分の3以上の多数決により決議されます。

  • 設計金額が80万円以下であること
  • 内容及び履行の確保が容易であること

また、小規模修繕工事の決議を行う場合、以下の手順を踏む必要があります。

  1. 管理組合の理事会において、小規模修繕工事の必要性や内容を検討し、工事計画を作成します。
  2. 管理組合の総会において、工事計画の説明を行い、区分所有者から意見を聴取します。
  3. 総会において、工事計画の承認決議を行います。

工事計画の承認決議においては、区分所有者総数の4分の3以上の多数決が必要です。

議決権の過半数を有する区分所有者の反対があった場合は、議案は否決されます。

工事計画は、具体的な内容や費用を明確に記載し、区分所有者全員に十分に周知することが必要です。

また、工事計画の承認決議は、区分所有者総会の議事録に記載する必要があります。

区分所有法に基づく小規模修繕工事のポイント

小規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持・向上させるために重要なものです。

小規模修繕工事を行う際には、以下の点に注意しましょう。

小規模修繕工事の必要性

分譲マンションでは、建物の老朽化や経年劣化に伴い、さまざまな修繕が必要となります。

小規模修繕工事は、そのうち、1件の設計金額が80万円以下で、かつ、内容及び履行の確保が容易と認められる修繕です。

小規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持・向上させるために重要なものです。

具体的には、以下の点において効果が期待できます。

  • 建物の安全性・耐久性の向上
  • 快適な住環境の確保
  • 資産価値の維持・向上

このように、小規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持・向上させるために重要なものです。

区分所有者全員で協力して、適切な時期に適切な工事を実施することが大切です。

小規模修繕工事の費用

小規模修繕工事の費用は、工事の内容や規模によって大きく異なります。

一般的に、小規模修繕工事の費用は、1件あたり10万円~100万円程度とされており、具体的な例は、以下のとおりです。

小規模修繕の種類費用相場
雨漏りや水漏れの修繕約10万〜100万円
階段やベランダなどの鉄部塗装約10万〜50万円
共有スペースの電球交換約1万〜5万円
共有スペースの壁やドアなどの軽微な修繕約1万〜50万円
消防設備の故障修理約10万〜50万円

小規模修繕工事の費用は、管理費や修繕積立金で賄われます。

管理費は、毎月区分所有者から徴収される費用で、修繕積立金は、将来の大規模修繕工事のために積み立てられる費用です。

小規模修繕工事の費用を計画する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 工事内容や規模を明確にする
  • 複数の業者から見積もりを取る
  • 予算内に収める

管理費や修繕積立金の予算内に収まるように、工事内容や規模を検討する必要があります。

小規模修繕工事は、定期的に実施することで、マンションの資産価値を維持・向上させることができます。

また、工事費用を予算内に収めることも重要です。

小規模修繕工事の業者選び

小規模修繕工事の業者を選ぶ際には、以下の点を参考にするとよいでしょう。

また、小規模修繕工事であれば、大手の業者よりも、地域密着型の業者の方が安い金額で対応してくれる場合もあります。

ただし、その場合は、大手の業者に比べて施工実績が少ない可能性があるため、慎重に選ぶ必要があります。

見積もりを取る

複数の業者から見積もりを取り、費用や内容を比較検討することが大切です。

見積もりは、工事内容や工期、使用する材料、保証内容など、項目ごとにしっかりと確認しましょう。

評判や実績を確認する

業者の評判や実績を確認することも重要です。

インターネットや知人からの口コミなどを参考にしてみましょう。

また、業者のホームページや施工事例をチェックするのもおすすめです。

施工実績を確認する

業者の施工実績を確認することも大切です。

小規模修繕工事であれば、過去に似たような工事を行った実績がある業者を選ぶとよいでしょう。

保証内容を確認する

業者の保証内容を確認することも重要です。

工事後に不具合が発生した場合に備えて、しっかりとした保証内容が用意されている業者を選びましょう。

担当者の対応を確認する

担当者の対応も重要なポイントです。

丁寧な対応で、疑問や質問にしっかりと答えてくれる業者を選びましょう。

区分所有法に基づく小規模修繕工事の問題点と対処法

小規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持・向上させるために重要なものです。

小規模修繕工事の問題点としては、以下のようなものが挙げられます。

問題点を理解し、適切な対処法を実践することで、より効果的な小規模修繕工事が行えます。

必要性の判断が難しい

小規模修繕工事は、1件あたりの費用が比較的低いため、区分所有者全員の合意を得ることが難しい場合もあります。

また、修繕の必要性が客観的に判断しづらいことも問題点の一つです。

小規模修繕工事の必要性を客観的に判断するためには、修繕計画を策定することが有効です。

修繕計画では、マンションの建物の状況や、今後の修繕の必要性を予測した上で、修繕の優先順位を決めます。

費用を予算内に収めるのが難しい

小規模修繕工事も、費用は積み重なると大きな金額になります。

管理費や修繕積立金の予算内に収めるために、工事内容や規模を慎重に検討する必要があります。

小規模修繕工事の費用を予算内に収めるために、修繕積立金の積み立てを増やすことも有効です。

修繕積立金の積み立てを増やすことで、工事内容や規模の選択肢が広がり、より適切な修繕が行えます。

工事品質の担保が難しい

小規模修繕工事では、大規模修繕工事と比べて、工事単価が低くなる傾向があります。

そのため、工事品質の担保が難しいという問題点があります。

小規模修繕工事でも、工事品質の担保が重要です。そのため、信頼できる業者を選ぶことが大切です。

業者を選ぶ際には、見積もりだけでなく、評判や実績、施工実績などをしっかりと確認しましょう。

また、管理組合が定期的に小規模修繕工事の講習会を開催することも有効です。

講習会では、小規模修繕工事の必要性や費用、業者選びのポイントなどを学ぶことができます。

区分所有法に基づく小規模修繕工事まとめ

ここまで、区分所有法に基づく小規模修繕工事について解説してきました。

この記事のポイントは、以下の通りです。

  • 小規模修繕工事は、区分所有法第25条に基づいて行われる
  • 小規模修繕工事とは、設計金額が80万円以下で、かつ、内容及び履行の確保が容易と認められる修繕
  • 具体的には、雨漏りや水漏れの修繕、階段やベランダなどの鉄部塗装、共有スペースの電球交換、共有スペースの壁やドアなどの軽微な修繕、消防設備の故障修理など
  • 小規模修繕工事の決議は、管理組合の総会において区分所有者総数の4分の3以上の多数決で決議を行う
  • 小規模修繕工事の費用管理費や修繕積立金で賄われ、一般的に、1件あたり10万円~100万円程度
  • 小規模修繕工事の業者選びは、見積もりを取理、評判や実績を確認する
  • 施工実績や保証内容、担当者の対応を確認することも重要
  • 小規模修繕工事の問題点と対処法について、必要性の判断が難しい場合は、修繕計画を策定する
  • 費用を予算内に収めるのが難しい場合は、修繕積立金の積み立てを増やす
  • 工事品質の担保が難しい場合は、信頼できる業者を選ぶ

小規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持・向上させるために重要なものです。

決議や費用、業者選びなどのポイントを押さえて、適切な工事を実施しましょう。

関連記事
公式サイト
施工実績344件突破!WEB割キャンペーン実施中!