防水紙(ルーフィング)は、建築物を雨漏りから守る重要な部材です。屋根や外壁の下に施工され、目に見えにくいものの、建物の寿命を左右する重要な役割を果たします。透湿防水紙や透湿防水シートなど様々な種類があり、それぞれの特性を理解することが大切です。
屋根の葺き替え時には、防水紙の選択と施工方法に注意が必要です。タッカーで固定する際の注意点や、雨ざらし状態での耐久性など、専門的な知識が求められます。
本記事では、防水紙とは何か、その種類や特徴、そして適切な施工方法について詳しく解説します。屋根材だけでなく、その下に隠れた防水紙の重要性を理解し、効果的な雨漏り対策を学びましょう。
目次
防水紙とは?必要性や役割を解説
防水紙とは、「下地材」「ルーフィングシート」と呼ぶこともある防水シートのことです。
防水紙は屋根材の下に隠れているため、普段は見ることができません。
新築や葺き替えでもしない限り、見ることはないでしょう。
防水紙は非常に重要な建材ですが、屋根の下に隠れているため、劣化や破損に気づきにくいといえます。
劣化に気づいたときには、すでに雨漏りや破損していることが多いです。
防水紙の必要性
普段目にすることのない防水紙ですが、屋根材以上に非常に重要な建材です。
屋根材の効果を調べたり、どの屋根材が良いかを深く検討する方は多いですが、防水紙に注目して屋根を考えている方は少ないといえるでしょう。
しかし、防水紙が適切に施工されていないと、雨漏りやルーフィングボードの腐食の危険性があります。
可能な限り耐久性が高く、丁寧かつ適切な施工をしてくれる会社を選ぶことが大切です。
防水紙は目立ちませんが、重要性を理解しておきましょう。
防水紙の役割
住宅における防水紙の役割は、屋根を雨から守ることです。
屋根材の下に敷くため、普段は見えません。
万が一、屋根材から雨水が侵入してしまった場合の防御線となります。
屋根は、上から屋根材(二次防水)→防水紙(一次防水)→ルーフィングボード(木部)の順に敷かれます。
防水紙がないと、屋根材で防ぎきれなかった雨水がルーフィングボードに染み込み、雨漏りや劣化、腐食の原因になるのです。
雨漏りや腐食は屋根の破損につながり、危険な状態になります。
防水紙は屋根材の一種で、雨水が屋根板に染み込むのを防ぎ、屋根の隅々まで雨水を排水できます。
特に、瓦屋根は通気性を確保するために隙間が多く、隙間から雨水が浸入する可能性が高いため、防水紙が重要です。
防水紙の性能
防水紙は、住宅を防水するためのものであり、防水機能には優れています。
しかし、防水紙はいずれ劣化します。
雨漏りが発生している場合は、築年数が数年程度でない限り葺き替えを検討した方がよいでしょう。
雨漏りをしているということは、屋根全体が劣化していると考えても大げさではありません。
屋根全体が寿命を迎えている場合は、部分的な補修で対応できます。
引っ越しや解体の予定がないのであれば、屋根全体の葺き替えが有効です。
防水紙の張替えにかかる費用
防水紙の張替え費用は約6,000~8,000円/㎡で、100㎡の防水紙を張替える場合の総費用は約120万円が相場です。
なお、防水紙の張替えには、防水紙の代金以外にも人件費や足場代などの費用がかかります。
防水紙の劣化チェック方法
防水紙が劣化しているかどうかは、屋根裏から屋根板の状態を確認することで判断が可能です。
屋根の種類ごとの、防水紙の劣化チェック方法を紹介します。
スレート屋根や金属屋根の防水紙
特にスレート屋根や金属屋根の場合、屋根材が重ねられ釘で固定されているため、屋根材を部分的に剥がして防水紙の状態を目視で確認できません。
屋根裏の裏側から見る方法で雨漏りの有無を確認し、防水紙が劣化している箇所を特定します。
屋根裏の裏側から見て、屋根板にシミや黒ずみがある場合は、その周辺の防水紙の不具合から雨水が染み込み、雨染みが屋根板に広がっている可能性があります。
瓦屋根の防水紙
瓦屋根の場合は、1枚ずつ剥がすことが可能です。
屋根裏から雨漏り箇所を特定した後、雨漏り箇所の瓦を剥がし、防水紙の不具合を直接確認します。
雨漏りの点検で防水紙の劣化が明らかになり、瓦にヒビが入ったり割れたりすることも少なくありません。
水切り金具が外れた付近の屋根材を剥がしてみると、防水紙が破れていたり、穴が開いていたりするケースも多いです。
雨漏り点検の際は、屋根表面の見た目だけではなく、防水紙やルーフィングボードなど内部の状態も確認してくれる業者を選びましょう。
防水紙の施工方法
普段目にすることのない防水紙は、雨漏りを防ぐ重要な建材であり、定期的な点検・メンテナンスが必要です。
次に、防水紙の施工方法を紹介します。
防水紙の施工方法1.タッカーで留める
タッカーと呼ばれるホッチキスのような道具で下地の木材に防水紙を貼り付けるため、防水紙に穴が空いてしまいます。
穴が空いてしまうと、雨水が漏れるのではないかと心配になる方もいるでしょう。
しかし、基本的にタッカーが下地を貫通することはないため安心です。
また、時間が経てば太陽の熱で防水紙の一部が溶け、タッカーの穴が塞がれます。
そのため、タッカーの穴から雨が漏れる可能性はそれほど高くはありません。
なお、屋根は傾斜があり水平ではなく、真下に打ち込むのは難しい作業です。
タッカーを直角に打ち込めず、穴の一部が浮いた状態になっていると、雨水が浸入する危険性があります。
さらに、タッカーを強く打ち込みすぎるとシートが破損する危険性もあり、防水紙を傷め、雨漏りにつながるでしょう。
つまり、タッカーを正しく使うには高い技術力が求められます。
防水紙の施工方法2.粘着防水紙を使用する
防水紙を設置する必要はありますが、穴を開けるのは得策ではないともいえます。
そこで、最初から片面に粘着テープが貼られている防水紙を利用する方法も有効です。
粘着テープが貼られている防水紙を使用すれば、シールのように貼るだけで防水紙を取り付けられます。
穴を開けずに施工できるため、タッカー留めよりも防水性能は高いでしょう。
また、穴が広がって破れる心配もなく、防水紙の長持ちも期待できます。
防水紙の一時的な補修方法
防水紙やルーフィングボードは、部分的に交換できる部品です。
防水紙全体が劣化しているわけではなく、一部にヒビ割れがある場合は、防水テープやシーリング材でヒビ割れを塞ぐことで補修できます。
しかし、あくまでも一時的な修理に過ぎないことを考慮しなければなりません。
不具合が局所的であっても、劣化が広範囲に及んでいる可能性があるためです。
専門家に詳細な検査をしてもらい、状況を詳しく把握したうえで、どのような補修が最適か相談しましょう。
防水紙の下の野地板の腐食が進行している場合は、腐食した野地板を部分的に撤去し、新しい合板と防水紙を貼り付けて補修します。
一方、経年劣化した防水紙は張り替える必要があるため、既存の屋根材で葺き直すか、新しい屋根材に葺き替えるかの選択肢があります。
「葺き替え」とは、屋根材と屋根下地をすべて取り替える工事です。
「葺き直し」とは、屋根材のみを再利用し、ルーフィングボードや防水紙などの下地のみを取り替えます。
葺き替えは、瓦屋根と天然スレート屋根にしか施工できません。
葺き替え、葺き直しともに部分的な補修に比べ高額になるため、屋根板や構造部分の腐食で家が弱くなる前に早めのメンテナンスをおすすめします。
防水工事でよくある質問
Q
防水工事の種類にはどんなものがありますか?
A
主な防水工事の種類には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などがあります。それぞれの工法にはメリットとデメリットがあり、適した場所や耐用年数も異なります。
Q
防水工事の費用はどのくらいかかりますか?
A
工法や使用する材料、建物の状態によって異なりますが、一般的には1㎡あたり4,000円〜7,000円程度が相場です。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
工法や天候、建物の規模によりますが、通常は数日〜1週間程度で完了することが多いです。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがありますが、できるだけ負担を軽減するよう配慮しております。また、バルコニーや屋上の使用が一時的に制限されることがあります。
Q
防水工事のタイミングはいつが良いですか?
A
一般的には10年〜15年ごとに定期的なメンテナンスが推奨されています。また、ひび割れや雨漏りが発生した場合は早急に工事を行うことが重要です。
防水紙の点検と必要な修繕をしよう
防水紙は雨漏りを防ぐ最後の砦であり、屋根材と同様に点検やメンテナンスをしなければなりません。
現在雨漏りで困っている方だけではなく、「数年前に少し雨漏りしていた」という方も注意が必要です。
万が一、防水紙が原因だったとしても、風向きや雨量によっては再び雨漏りが発生する可能性もあります。
さらに、数年前の雨漏りが気づかないうちに被害を広げている可能性も否定できません。
外からは見えませんが、防水紙は家を守る大切な要素です。
防水紙は15年程度で寿命を迎えるため、雨漏りをしていない場合でも、定期的な点検をしましょう。