東京でビルやマンションを所有するオーナーや管理組合にとって、建物の中規模改修工事は重要な課題です。
建物の老朽化は避けられない問題であり、適切な時期に適切な修繕を行うことは、資産価値を維持・向上させるだけでなく、居住者の安全・快適な生活環境を守るためにも不可欠です。
本記事では、東京における中規模改修工事について、その定義やメリット・費用・業者選定のポイントまで詳しく解説していきます。
これから建物の修繕工事をお考えの方は、ぜひ参考としてお役立てください。
目次
中規模改修工事とはどのような工事?
中規模改修工事とは、建築基準法で定義されているように、「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」のことを指します。
壁紙の張替えや床材の変更といった小規模な修繕とは異なり、建物の構造部分に踏み込んだ、より大掛かりな工事となります。
中規模改修工事と小規模修繕・大規模修繕の違い
中規模修繕と大規模修繕の違いは、工事の規模や費用・実施タイミングなどです。
項目 | 中規模修繕 | 小規模修繕 | 大規模修繕 |
---|---|---|---|
工事の規模 | 部分的ながらやや大掛かりな修繕工事 | 部分的な修繕工事 | 建物全体の修繕工事 |
費用負担 | 工事内容により異なる | 管理費 | 修繕積立金 |
実施タイミング | 大規模修繕工事のタイミングに左右される | 必要に応じて随時実施 | 長期修繕計画に基づき、10~15年周期で実施 |
例 | 部分的な外壁塗装・防水工事・給排水設備の一部交換など | トイレの交換・壁紙の張替え・部分的な塗装工事・雨漏り修繕など | 外壁塗装・屋上防水・給排水管の更新・エレベーターの改修など |
中規模改修で対応可能な工事とは?
中規模改修工事では、さまざまな工事が行われます。
ここでは、代表的な工事内容を具体的に見ていきましょう。
外壁の補修・塗装
- ひび割れ補修: ひび割れの種類(ヘアクラック・構造クラックなど)に応じて適切な補修材を使用します。
- 塗装: 塗料の種類(アクリル系・ウレタン系・シリコン系・フッ素系など)によって、耐久性や耐候性・防汚性などが異なります。
防水工事
- 屋上防水: ウレタン防水・FRP防水・シート防水など、建物の構造や状況に適した工法の選択が重要です。
- バルコニー防水: バルコニーからの雨漏りを防ぐために、防水層の補修や改修を行います。
共用部分の改修
- 廊下・階段: 床材の張替え・手すりの設置・照明のLED化などを行います。
- エントランス: オートロックの設置・インターホンの交換・バリアフリー化などを行います。
設備改修
- 給排水設備: 給水管・排水管の更新、トイレの洋式化、節水型設備の導入などを行います。
- 電気設備: 配電盤の更新・照明のLED化・コンセントの増設などを行います。
- 消防設備: スプリンクラーの設置・自動火災報知設備の更新・避難設備の改修などを行います。
東京の物件状況に合わせた中規模改修事例
東京には、築年数の古い建物が多く存在します。
ここでは築年数別に、どのような中規模改修工事を行うべきか、具体的な事例を挙げて解説します。
築10~20年の建物
外壁のひび割れ補修や塗装、屋上防水の改修などを行うケースが多いです。
設備はまだ新しい場合が多いため、部分的な改修で済むことが多いでしょう。
築20~30年の建物
給排水管の更新や電気設備の改修など、設備の老朽化による大規模な改修・修繕が必要となる時期です。
外壁や屋上防水の劣化も進んでいる場合が多いため、大規模修繕計画に則った改修工事が必要となるケースもあります。
築30年以上の建物
建物の構造自体に問題が生じている場合もあるため、専門業者による詳細な調査が必要です。
耐震補強工事や、大規模な改修工事が必要となるケースも少なくありません。
中規模改修工事を行うメリット
中規模改修工事を適切な時期に行うことには、以下のようなメリットがあります。
建物の資産価値維持・向上
建物を良好な状態に保つことで、資産価値の低下を防ぎ、売却時や賃貸時の価格を維持または向上させることができます。
居住者の安全性・快適性向上
老朽化した設備を改修することで、安全性や快適性を向上させることができます。
建物の寿命を延ばし、大規模修繕費用を抑える
定期的なメンテナンスを行うことで建物の寿命を延ばし、結果的に大規模修繕工事の頻度を抑え、費用を削減することができます。
入居率アップ、空室対策
建物の外観や共用部分を魅力的にすることで、入居率アップや空室対策につながります。
中規模改修が必要なタイミングと見極め方
中規模改修工事は、劣化が軽度のうちに行うことが重要です。
以下の症状に当てはまる場合は、中規模改修工事を検討するタイミングであると言えるでしょう。
改修箇所 | 症状 |
---|---|
外壁 | ひび割れが目立つ・塗装が剥がれている・チョーキング現象(触ると白い粉が付着する)が起きている |
屋上 | 屋上に水が溜まっている・雨漏りがする |
設備 | 水漏れする・排水が悪い・電気設備が古い・給湯器の調子が悪い |
その他 | 建物の築年数が10年以上経過している・居住者から建物の老朽化に関する意見が出ている |
中規模改修費用を抑えるポイント
中規模改修工事の費用は、建物の規模や構造・工事内容によって大きく異なります。
費用を抑えながら工事を進めるには、以下のようなポイントがあります。
相見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、費用を抑えることができます。
またどのような部分に費用がかかるのか確認できるため、のちに行う大規模修繕工事の参考にもなるでしょう。
長期的な修繕計画を立てる
長期的な修繕計画を立てることで、計画的な修繕が可能となり、突発的な費用発生を抑えることができます。
助成金制度を活用する
東京をはじめ各市区町村では、中規模改修工事に助成金・補助金制度を設けている場合があります。
対象や条件がそれぞれ異なるため、あらかじめ各自治体に確認しておきましょう。
東京で中規模改修を行う際の注意点
東京で中規模改修工事を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
優良な修繕業者の選定
信頼できる業者を選ぶことが重要です。
実績や費用、アフターフォローなどを比較検討しましょう。
居住者・近隣住民への配慮
施工前に、どのような工事をどのくらいの期間で行うかを、居住者や近隣住民に説明しておきましょう。
工事期間中は、騒音や振動の発生へ配慮が重要です。
工事後のアフターフォロー
工事完了後も、定期的な点検やメンテナンスなどのアフターフォローが重要です。
あらかじめアフターフォローの内容についても確認しておきましょう。
優良な中規模改修業者を選ぶポイント
優良な中規模改修業者を選ぶことは、工事の成功に欠かせません。
成功のカギとも言える業者選びは、以下のポイントに注意しながら行いましょう。
会社の信頼性
会社の設立年数やこれまでの実績・各種工事に必要な許可の有無・保証内容や期間などを確認しましょう。
住所の記載があいまいであったり、保証に関する記述がない場合は必ず担当者に確認を行ったうえで契約を進めましょう。
お客様視点の提案力
顧客の要望を丁寧にヒアリングし、最適なプランを提案してくれる業者を選びましょう。
提案力を見極めるためには、相見積もりを行うことが効果的です。
施工品質の高さ
資格を持った技術者が在籍しているか、施工事例などを確認しましょう。
施工内容によっては有資格者による対応が必須のものがあるため、確認しておくことが安心につながります。
コミュニケーション能力
連絡が密に取りやすく、疑問点に丁寧に答えてくれる業者を選びましょう。
迅速に対応してくれる業者であれば、施工中のトラブルにも慌てることはないでしょう。
価格の透明性
見積もり内容が明確で、不明瞭な費用が発生しないか確認しましょう。
「◯◯一式」という記述では、何にどのくらいの費用が発生しているのかがわかりません。
中規模改修でよくある質問
Q
中規模改修工事とはどのようなものですか?
A
中規模改修工事は、建物の一部を修繕・改善する工事のうち、小規模改修・修繕工事の範囲を超えて行うものや、大規模修繕工事のタイミングでは安全性に問題が生じる恐れがある場合などに行われます。
Q
中規模改修の工事期間はどのくらいかかりますか?
A
工事の内容によりますが、一週間から数週間ほどが一般的です。
Q
中規模改修の工事中、住みながらでも問題ありませんか?
A
基本的に住みながらでも問題ありませんが、施工箇所によっては居室の近くで作業を行う場合や、共用部の使用制限が生じることもあります。
Q
どのようなタイミングで中規模改修が必要ですか?
A
小規模な改修では本来の機能が維持できない場合や、大規模修繕工事のタイミングでは安全性や利便性に問題が生じる恐れがある場合に行われます。
Q
中規模改修・中規模修繕工事で利用できる補助金や助成金はありますか?
A
場合によっては中規模改修・修繕工事の補助金や助成金を都道府県や市町村区が用意している場合があります。詳しくはお住まいの地域の行政ホームページなどで確認ができます。
まとめ
東京の中規模改修・修繕工事について解説してきました。
中規模改修工事は、建物の資産価値を維持・向上させるだけでなく、居住者の安全・快適な生活環境を守るためにも非常に重要です。
建物の老朽化を感じたら、早急に専門業者に相談し、適切な対策を取りましょう。
業者へ依頼する際は、信頼できるかを見極めたうえ、必要な工事を納得できる価格・工期で行ってくれるところを選択することが、中規模改修工事を成功へ導くカギになると言えるでしょう。