マンションにお住まいの方にとって、建物の維持管理は重要な課題の一つです。特に、定期的に行われる修繕工事は、マンションの資産価値を保ち、快適な住環境を維持するために欠かせません。その中でも、中規模修繕工事について気になる方も多いのではないでしょうか。
中規模修繕は大規模修繕ほどの大きな費用負担はないものの、適切に計画し実施しなければ建物の価値を損なう可能性もあります。また、修繕のタイミングや範囲を適切に判断することで、将来的な大規模修繕の費用を抑えることにもつながります。
この記事では、中規模修繕の特徴や費用相場、大規模修繕との違いなどについて詳しく解説します。マンション管理組合の方々や、これからマンション購入を考えている方はぜひ最後までご覧ください。
目次
中規模修繕とは
中規模修繕は、大規模修繕と小規模修繕の中間に位置する修繕工事です。通常10~15年程度の周期を目安に行い、建物の一部や特定の設備を対象に修繕します。 大規模修繕に比べて一度の費用負担が少なく工事期間も短いため、居住者への影響を最小限に抑えられるのも特徴です。中規模修繕でできることの一例として、以下の項目が挙げられます。
- 屋根・屋上の部分的な修理・葺き替え
- 外壁の部分的な修理・塗り替え
- 配管の交換
- 電気設備の交換
- エレベーターの部分的な修理・交換
- 共有部分の床や壁の修理・交換
- 設備機器の交換
- 防水工事
- 入口や玄関周りの改修
- バルコニーの修理・交換
中規模修繕の費用相場
中規模修繕の費用は建物の状態や工事の範囲・選択する材料・工法など、工事の内容によって異なります。項目ごとの費用相場における目安は、以下の通りです。
防水工事 | 3,000円〜6,500円/㎡ | |
---|---|---|
外壁塗装工事 | 3,000円〜7,000円/㎡ | |
給水排水設備 | 1棟あたり70〜200万円 | |
ベランダ・バルコニー | 手すりの防錆塗装 | 約1,000円 |
配管工事 | 約5万円〜10万円 | |
床面FRP防止工事 | 約6,000円〜9,000円 | |
玄関ドアリフォーム | 玄関ドアの鉄部塗装 | 約1,000〜3,000円/㎡ |
玄関ドア表面の塗装 | 約3〜8万円/1戸あたり | |
ドア交換費用 | 約20〜35万円/1戸あたり | |
ドア付帯部補修費用 | 約5,000〜10万円 |
上記費用はあくまでも目安のため、具体的な見積もりや計画を立てる際は、専門業者へ相談しましょう。
中規模修繕以外の修繕工事
中規模修繕をはじめ大規模修繕や小規模修繕は、マンションの維持管理に欠かせない工事ですが、いくつかの重要な違いがあります。ここでは、両者の主な相違点を比較します。
大規模修繕
大規模修繕は10~12年に一度、マンションの共用部分を対象とした大規模な修繕工事のことです。 外壁や屋上・共用部分・設備など、広範囲に渡る修繕をまとめて行うため、費用も高額になります。また居住者への影響も大きく、安全対策や防犯対策などの配慮も必要です。
小規模修繕
小規模修繕は、日常的に発生する比較的小規模な修繕工事です。 例えば、共用部分の照明の交換やドアノブの修理などが挙げられます。
中規模修繕と大規模修繕の違い
マンションの修繕工事には、大規模修繕と中規模修繕の二つに大きく分けられます。どのような違いがあるのかをまとめましたので、参考にしてみてください。
項目 | 中規模修繕 | 大規模修繕 |
周期 | 10〜15年 | 10〜12年 |
対象範囲 | 建物の一部 | 建物全体 |
工期 | 数週間〜数ヶ月 | 数ヶ月〜半年 |
主な工事内容 | 外壁の部分的な修理や塗り替え バルコニーや開放廊下の防水工事 エレベーターの部分的な改修 給排水管の部分的な更新 共用部分の設備の部分的な更新 | 外壁塗装の全面的な塗り替え 屋上防水の全面改修 給排水管の一斉更新 エレベーターの全面的な改修 共用部分の設備更新 |
居住者への影響 | 中程度 | 大きい |
修繕積立金の活用 | 場合により必要 | 必要 |
大規模修繕のメリット
建物の構造に関わる部分の修繕を行うため、建物の老朽化を抑え、寿命を大幅に延ばせるメリットがあります。古い設備を新しいものに変え、外観や共用部分をきれいにすることで、建物自体の魅力も高まるでしょう。その結果、資産価値の維持や向上にもつながります。 大規模修繕は広範囲にわたる工事のため、費用が高額となり施工期間も長くなりますが、老朽化した箇所を修繕することで事故やトラブルを未然に防ぐことも可能です。
中規模修繕のメリット
大規模修繕のように一度に多額の費用が発生するのではなく、修繕費用を分割して支払うことができるため、修繕積立金の負担を軽減や赤字リスクを低減できます。工事期間も大規模修繕より短縮されるため、居住者の生活に対する影響も最小限に抑えられるでしょう。 また、 建物の劣化状況に合わせた修繕計画を立案し、変更できる柔軟性もメリットの一つです。
中規模修繕のメリット
大規模修繕のように一度に多額の費用が発生するのではなく、修繕費用を分割して支払うことができるため、修繕積立金の負担を軽減や赤字リスクを低減できます。工事期間も大規模修繕より短縮されるため、居住者の生活に対する影響も最小限に抑えられるでしょう。 また、 建物の劣化状況に合わせた修繕計画を立案し、変更できる柔軟性もメリットの一つです。
中規模修繕費を安く抑える方法
大規模修繕よりも費用がかからないとはいえ、できるだけ修繕費用を抑えて工事をすることは居住者への負担軽減にもつながる大切な要素です。ここでは複数の中規模修繕の費用を安く抑える方法を紹介します。
複数の業者から見積もりを取る
修繕費を抑えるには、まず複数の業者から見積もりを取る方法が挙げられます。最低でも3社以上から見積もりを取ることで、価格だけでなく工事内容や使用材料・アフターサービスなどの比較が可能です。
優良業者に依頼する
実績や施工事例・顧客満足度などをチェックし、信頼できる業者を選びましょう。 資格や許可の有無・アフターサービス・保証内容などの確認も重要です。信頼できる業者であれば、後々追加費用が発生してしまうケースを防げるでしょう。
補助金・助成金制度を活用する
修繕工事の内容が補助金や助成金制度の対象であれば、活用することで費用を安く抑えることができます。お住いの地域により制度の内容や金額は異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
新技術や省エネ製品を活用する
高耐久性材料や省エネ製品の導入を検討するのも、一つの方法です。初期費用は高くても、長期的に見れば維持費が安くなる可能性があります。
工事範囲を把握しまとめて修繕を行う
建物の状態を把握し、複数個所の修繕をまとめて行うことで、足場費用を削減できる可能性もあります。また、大規修繕とは違い必要最小限の修繕を効果的に行えるでしょう。
修繕積立金を活用する
修繕積立金を活用することで、一時的な金銭的負担を軽減できます。 日頃から計画的に積み立てておくことが重要です。
建物の状態に応じた適切な修繕計画を立てる
専門家による建物診断を行い、劣化状況などを把握したうえで、実際に必要な工事を見極めましょう。工事の優先順位を決めることで、費用対効果の高い計画を立てられます。
中規模修繕を安く済ませる際の注意点は?
中規模修繕を安く済ませる際には、いくつかの注意点があります。以下で注意点を解説します。
安全性を確保する
費用を抑えたいからといって、安全性を犠牲にしないよう注意しましょう。構造部分の修繕は専門家の意見を必ず聞き、法令や基準を遵守した工事を行うことが大切です。長く安全に住み続けるためにも、耐震性能の確保は最優先しましょう。
品質の維持を行う
過度な値引き交渉や安価な材料の使用は、修繕の品質低下につながる可能性があります。実績があり、信頼できる業者を選ぶことが重要です。また、使用する材料の品質や適切な工法が採用されているかなどを確認しておくとよいでしょう。
長期的な視点で見る
目先のコスト削減にとらわれず、長期的な視点で判断することも重要です。材料費が高くても耐久性に優れた素材であれば、修繕周期を延ばせるでしょう。また、省エネ性能を向上させることで、長期的な光熱費削減にもつながります。将来の大規模修繕や、建て替えを見据えた計画を立てることが大切です。
中規模修繕を行う際のポイント
ここからは、中規模修繕を行う際のポイントについて解説します。
修繕箇所を把握し計画を立てる
専門家に依頼して、建物における劣化状況の診断を行いましょう。中規模修繕が必要な箇所や緊急性の度合いを正確に把握することで、修繕計画が立てやすくなります。将来的に必要な大規模修繕を考慮した計画を立てることがポイントです。
工事費用を明確にする
中規模修繕をスムーズに行えるよう工事費用を明確にしておき、修繕積立金の残高や不足額を把握したうえで、資金計画を立てます。そのうえで必要があれば、長期修繕計画の見直しや住民への資金計画の説明などを行いましょう。
居住者への説明や配慮を行う
中規模修繕を行う場合は、工事内容や目的・費用・工期など、居住者への説明が必要です。連絡体制を整え、質問や要望には迅速に対応しましょう。また、工事期間中は騒音・振動・粉塵などが発生します。そのため、居住者への影響を最小限に抑える対策も重要です。居住者への配慮や同意を得ることは、信頼関係の向上にもつながります。
信頼できる業者を選ぶ
業者を選ぶ際は、中規模修繕工事の実績がある業者を選びましょう。また、施工経験・価格・アフターサービスなども確認し、信頼できる業者か判断することも大切です。長期的な修繕計画を行うため、スムーズな取引ができるように顧客への説明や対応が適切であるかチェックしておくのも業者選びのポイントです。
安全や品質の管理
工事現場の安全管理を徹底し、事故やトラブルの発生を予防しましょう。工事の品質を確保するためには、適切な施工管理が重要です。業者との連携を行い、必要に応じて管理組合によるチェックも行いましょう。工事完了後の保証期間やアフターサービスの内容は事前に確認しておき、万が一のトラブルにも対応できるようにしておくと安心です。
定期的な点検
中規模修繕の工事を終えた後も、定期的な点検を行いましょう。建物の状態を把握することで、次回の修繕時期や工事内容を検討する際に役立ちます。
修繕計画の立て方や流れについて
ここからは中規模修繕において、必要な修繕計画の立て方や流れについて解説していきます。
- STEP
修繕計画の目的を明確にする
修繕計画を立てる前に、目的を明確にしておきましょう。具体的には、以下のような項目を検討します。
- 建物の寿命をどれくらい延ばしたいのか
- 快適な住環境を維持するために、どのような修繕が必要なのか
- 将来的な修繕費用をどのように確保していくのか
- STEP
建物の現状を把握する
修繕計画は、建物の現状を正しく把握することから始まります。 専門家に建物診断を依頼し、外壁のひび割れ・塗装の劣化・屋上防水の劣化など、建物の劣化状況を把握しましょう。また、地震に対する建物の強度も診断しておき、修繕の必要性や緊急性を把握しておくことも重要です。建物診断の結果に基づき、必要となる修繕費用の概算も算出します。
- STEP
長期修繕計画を策定する
建物診断の結果を踏まえて長期的な視点に立ち、今後10~20年の間にどのような修繕をいつどれくらいの費用をかけて実施するのかを、具体的に計画します。専門家の意見を参考にしながら、長期的な修繕計画書を作成しましょう。計画書には、以下の内容を記載します。
- 修繕の実施時期
- 工事内容
- 工事費用
- 資金計画
- STEP
修繕業者を選定する
複数の業者から見積もりを取り、費用や技術力・実績などを比較検討します。信頼できる業者を選ぶことが大切です。
- STEP
住民への説明と合意形成
修繕計画の内容や費用について居住者へ説明し、理解と合意を得ましょう。そのためにも、 住民に対して説明会の開催が必要です。説明会では、以下のような内容を話します。
- 修繕の必要性と緊急性
- 修繕内容
- 修繕費用
- 資金計画
- 工事期間
- 合意形成
- STEP
修繕工事の実施
計画に基づき、修繕工事を実施します。 工事中は近隣住民への配慮も忘れずに行い、安全かつ円滑な工事を行えるように努めることも大切です。
- STEP
定期的な点検とメンテナンス
修繕工事完了後も建物の状態は定期的に点検し、必要に応じたメンテナンスを行いましょう。定期的な点検とメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばし、大規模修繕のタイミングを延長することができます。
まとめ
中規模修繕はマンションの寿命を延ばし、資産価値の維持・向上を実現する重要な取り組みの一つです。コストの削減も大切ですが、建物の安全性や快適性・環境性能の向上などもにも考慮しましょう。また修繕工事には中規模修繕のほかに、大規模修繕・小規模修繕があります。建物を長く快適に使い続けるためにも、これらの修繕を適切に組み合わせて計画的に実施することが大切です。
修繕工事を行う際は専門家のアドバイスを受け、建物の状態や居住者のニーズに合わせて最適な修繕計画を立てる必要があります。居住者への配慮も忘れずに行いましょう。