マンションの安全性や機能性、資産価値を保つために大規模修繕は欠かせません。
外壁や給排水管などの共有部分を修繕することにより、建物の寿命も延ばせます。
そこでこの記事では、大規模修繕工事を行う周期や、回数について解説してきます。
工事周期や回数について知れば、効果的にマンションの劣化を防ぐことができるでしょう。
目次
マンションの大規模修繕は12年周期が一般的
分譲マンションの大規模修繕は12年周期で行うが一般的と言われています。
ただし、これはあくまでも目安です。
マンションが建つ場所などによっても周期は異なります。
例えば塩害のある海辺にあるマンションと、内陸部にあるマンションでは経年劣化の度合いが違います。
実際に大規模修繕が行われる周期については、次のデータが参考になります。
大規模修繕の回数と築年数の関係
工事回数 | 築年数 |
1回目 | 13~16年 |
2回目 | 26~33年 |
3回目 | 27~45年 |
参考:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(平成29年5~7月実施分)」
近年では、18年周期の修繕サービスも登場してきています。
18年周期だとメンテナンス性は落ちますが、住民の修繕積立金の負担が減るメリットがあります。
ちなみに商業ビルの場合は、必ずしも分譲マンションと同じ周期で大規模修繕を行う必要はありません。
建材の耐用年数を考慮しながらオーナーの判断で行います。
大規模修繕の周期は先延ばしできる
大規模修繕の周期は、ある程度なら先延ばし可能です。
例えば大規模修繕の費用が不足している場合、漏水がなければ屋上防水改修を3~4年先延ばしするケースもあります。
大規模修繕を先延ばししたい場合は、工事に優先順位をつけるのがおすすめです。
重要度が高い工事を先に行うようにする、ということですね。
劣化の激しい箇所を先に修繕し、あまりダメージを受けていない箇所は数年後に修繕します。
- 屋上防水の劣化
- タイルの補修
- 外壁の漏水
このような重要度の高い工事は先延ばししてはいけません。
一方、廊下の床シートの張り替えや、外観やエントランスのデザイン性を高めるための工事は、先延ばし可能です。
施工会社は「なるべく多く工事をして利益を上げよう」と考えがちなので、業者の言われるがままに工事をすると無駄な費用が発生してしまう可能性があるので注意しましょう。
大規模修繕工事の回数ごとの違いは?
大規模修繕工事は、回数を重ねるたびに改修するポイントが増える傾向があります。
これは1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが建物が古くなり、劣化度合いが進むことが理由に挙げられます。
ここでは大規模修繕の回数ごとの違いについて見ていきます。
大規模修繕工事1回目
1回目の大規模修繕は、マンションの外部を中心に行います。
まだ修繕箇所が少ない傾向にあるので、なるべく新築時に近づけるようメンテナンスを行います。
1回目に意識したいのは以下のような箇所です。
- 外壁塗装
- タイルの浮き
- シーリング
- 屋上防水
- バルコニーの防水
タイルの浮きなどは見た目では分からないので、打診でチェックします。
タイルの浮きを放置すると落下して危険です。
防水工事もしっかり行いましょう。
防水に問題があると、マンションの寿命が短くなってしまいます。
大規模修繕工事2回目
2回目の大規模修繕では、マンション内部の部位やパーツの改修も行います。
修繕費用は1回目よりも割高になる傾向があります。
2回目では1回目の修繕箇所だけでなく、次の箇所も修繕します。
- 給排水管
- 玄関のドア
- アルミサッシ(窓枠)
- オートロック
- エレベーター
場合によってはオートロックの、室内モニターや各部屋のキーの取替えが必要になることもあります。
管理組合の要望によっては、エントランスや集会室のグレードアップ工事を行うこともあります。
大規模修繕工事3回目
3回目の大規模修繕では、建物全体の工事が必要になってきます。
建物の主要設備や部材の交換も必要です。
3回目の大規模修繕では、2回目よりもさらに費用がかかる傾向があります。
- アルミサッシ、サッシ(窓枠)の交換
- エントランスのリフォーム
- 耐震補強工事、省エネ化など
3回目の大規模修繕をする頃には、築年数が30年以上になっているでしょう。
マンション住人のライフスタイルも変化してくるので、エントランスや集会室などをリフォームしないと、新たな入居者が減ってしまう可能性があります。
耐震補強工事や省エネ化など、その時代に合わせた工事も必要です。
大規模修繕の費用は?
大規模修繕では、おおよそ次のような費用がかかります。
一戸あたりの大規模修繕工事の金額
工事回数 | 平均金額 |
1回目 | 100万円 |
2回目 | 97.9万円 |
3回目 | 80.9万円 |
参考:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(平成29年5~7月実施分)」
ただし上記はあくまでも平均値です。
国内の大規模修繕の約25%は「一戸あたり100万円~125万円の費用がかかっている」、というデータもあります。
3回目の工事であっても、100万円以上の費用がかかるケースは多いです。
2回目、3回目と工事を行うたびに費用が増える場合も多いので注意しましょう。
ただし201戸以上の大規模なマンションの場合は、27%が30万円未満の費用で済んでいます。
各マンションの工事内容にはかなりの違いがあることにも留意しておきましょう。
大規模修繕で起こりがちなトラブル
大規模修繕では、さまざまなトラブルが起こりがちです。
ここではトラブルの例と解決策についてご紹介していきます。
大規模修繕の準備が間に合わない
大規模修繕をするには、少なくとも2年ほど前から準備しておく必要があります。
管理会社が準備が必要な時期に助言してくれることも多いですが、なんとなく放置してしまうと「いつのまにか大規模修繕が半年後に迫っていた」ということにもなりかねません。
焦って大規模修繕を行うと工事内容や費用が不透明になりがちで、後々トラブルに発展することがあるので要注意。
万が一大規模修繕に間に合わないような場合でも、1~3年ほどは着工時期を遅らせることは可能です。
修繕委員会に建築に詳しい人がいない
修繕委員会に建築に詳しい人がいない場合、なかなか話しがまとまらないケースがあります。
こんな場合は、大規模修繕に詳しい設計コンサルタントや建築士などの第三者に入ってもらうと、話しがまとまりやすくなります。
ただし、必ずしも修繕委員会に建築に詳しい人がいる必要はありません。
性別や年齢、家族構成などが、さまざまなタイプの人を選ぶほうが大切です。
またコンサルティング会社や施工会社、同じ管理会社を利用している別のマンションの管理組合などと情報交換をするのも良いでしょう。
追加費用が発生した
計画時よりも建物の損傷が激しい場合は、追加費用が発生することがあります。
追加費用の発生を防ぐには、事前に建物診断をしっかりと行なっておく必要があります。
ちなみに必要以上の費用を請求する悪徳な管理会社も存在しているので注意が必要です。
大規模修繕を管理会社に任せきりにしてはいけません。
こうした事態を避けるには、管理会社と関わりのない施工会社を選ぶなどの対策をとることが有効です。
工事後の仕上がりに満足できない
工事後に、施工箇所に不具合が見つかるケースもあります。
この場合は施工会社に速やかに連絡しましょう。
このようなトラブルを防ぐには、施工会社やコンサルティング会社に任せきりにするのではなく、管理組合が主体で大規模修繕を行うことが大切です。
また施工会社を選ぶ際には、契約前にアフターサービスについてもしっかりと確認しておくことが重要です。
まとめ
マンションの大規模修繕は12年周期で行うのが一般的ですが、建物の劣化状態によって変動します。
また回数を重ねる度に工事費用が増える場合もあるので注意が必要ですね。
多くのマンションでは築10年の時期に最初の建物診断を行います。
必要な費用の概算も出せるので、ぜひ建築診断をすることをおすすめします。
大規模修繕をお考えのかたは、まずは「どの箇所に修繕が必要なのか」「どこを優先して修繕すればよいのか」を把握することから始めましょう。