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マンション大規模修繕の施工前~施工後のポイントと工事の流れ

マンションは経年劣化で徐々に劣化していきます。

そこで必要になるのが大規模修繕です。

大規模修繕を行う際は施工前や施工中、施工後と、気を付けるべきポイントがあります。

そこでこの記事では、大規模修繕を進めるうえでのポイントや流れについてご紹介していきます。

なぜ大規模修繕が必要なのか

大規模修繕をすることでさまざまなメリットが得られます。

  • 建物の見た目が良くなる
  • 住人が快適に生活できる
  • 入居率が上がる
  • 家賃の下落を防げる
  • 資産価値を維持・向上できる

劣化が軽度のうちに大規模修繕を行うと費用も手間も少なくて済み、建物も長持ちします。

例えばコンクリートのひび割れを放置すると、その部分から水が侵入し、内部から劣化していきます。

大規模修繕を施工させるには長期修繕計画を立て、まずは十分に資金を確保しておくことが大切です。

大規模修繕の費用や工事期間は?

ここでは大規模修繕の費用や工事期間、周期、適した季節、工事内容について見ていきます。

大規模修繕の費用

大規模修繕では、一戸あたり75~100万円前後の費用がかかるでしょう。

大型マンションだと費用総額は数千万円~数億円になることも。

大規模修繕の費用には、マンション住人が毎月積み立てている「修繕積立金」が使われます。

修繕積立金の額は、毎月1万1,000円前後が相場です。

大規模修繕の工事期間

小規模なアパートなら1か月、大規模なマンションだと数か月は工事に必要です。

ただし、これはあくまでも「工事期間のみ」の話です。

計画から着工まで1~2年はかかる、ということも留意しておきましょう。

大規模修繕の周期

大規模修繕は12~15年に一度行うのが一般的ですが、特に決まっているわけではありません。

建物の劣化度合いや予算などによって、その周期は前後します。

また近年では修繕に使われる材料が進歩しているので、耐久性や防水性が高い材料を使えば、大規模修繕の周期を18年程度に長くできる場合もあります。

工事内容

大規模修繕では、一般的に次のような工事が行われます。

仮設工事施工を行う前の準備的な役割です。足場を組んだり、仮設の現場事務所を設置したりします。塗料が飛び散ったり物が落下したりするのを防ぐシートも張られます。
下地補修コンクリートのひび割れなどを補修します。下地補修工事がしっかりできていれば、建物の寿命が短くなるのを防げます。
タイル補修浮いた外壁タイルを補修します。浮いたタイルを放置すると落下して事故が起きます。タイルのチェックは目視や打診で行われます。
シーリングサッシや外壁のつなぎ目を埋めるために行われるシーリング工事。ペースト状のシーリング材を使って行われます。経年劣化でひび割れると、そこから雨水などが入り込んでしまいます。シーリングがきちんとできていると、断熱効果も期待できます。
外壁塗装外壁の塗装を塗り重ねて、建物を風雨から守ります。外壁塗装をすると建物の見た目も良くなります。
鉄部の塗装鉄部の塗装が剥がれると、内部の鉄がサビてきます。そこでサビをサンドペーパーなどで落としてから再塗装することで補修します。
防水工事屋上やバルコニーの、経年劣化が進んだコンクリートのひび割れや既存の防水層の劣化から水が侵入する可能性があります。そこで「シート防水」「アスファルト防水」「ウレタン塗膜防水」といった工法を使って、防水性能を回復させます。
その他の工事必要に応じて、エントランスの改修工事や、給排水管の更新なども行います。現代のニーズに合わせてバリアフリー化やオートロックの設置などを行う場合もあります。

大規模修繕の発注方式

大規模修繕では、主に次の3種類の発注方式から選択します。

  • 設計監理方式
  • 責任施工方式
  • 管理会社主導方式

大規模修繕を行う際は、チェックすべきポイントがさまざまあります。

ここでは「施工前」「施工中」「施工後」の3つの時期に分けて、ポイントを解説していきます。

施工前のポイント

施工前の時期は、以下のポイントに気をつけるとスムーズに大規模修繕を進められるでしょう。

挨拶回りを忘れずに

施工前の周辺住民への挨拶回りは、必ず行うようにしましょう。

工事の際に出る騒音やホコリ、車両や作業員の出入りなど、周辺住民には何かしらご迷惑をかけます。

工事が始まる一週間前には挨拶回りをしておきます。

挨拶回りでは、工事内容や工事期間、周辺に騒音などどんな影響があるかを伝えます。

予算に余裕があれば、菓子折りを持っていくと良いでしょう。

挨拶回りをしておくと、施工中のクレームが減る傾向にありますよ。

施工中のポイント

施工中は、大規模修繕の準備が終わり、ついつい油断してしまうタイミングです。

しかし施工中には、以下のポイントに気をつける必要があります。

防犯対策をする

大規模修繕の工事中は、防犯対策を徹底しなければなりません。

施工前に作る足場は、マンションの最上階まで組まれます。

つまり空き巣は、どこからでもマンションに侵入できるようになるのです。

しかも建物の周囲はシートで覆われていますから、外から見てもバレません。

空き巣が作業員と同じような服装をしている可能性も考えられます。

特に高層階の住人は、「ここまで空き巣は登ってこないだろう」と防犯意識が低くなりがちなので要注意。

説明会や掲示板、チラシなどで防犯を呼びかけ、不審者がいた場合は現場責任者に報告したり、通報したりしましょう。

施工後のポイント

施工後では、以下のポイントに留意しましょう。

竣工検査を行う

施工後は足場を解体する前に竣工検査を行います。

検査員の説明を受けながら、修繕箇所を丁寧にチェックしていきます。

万が一施工不良の箇所を発見した場合は、写真や図面、書面などでしっかりと証拠を残しておくと安心です。

書類の確認・保管も忘れずに

工事が完了しても、まだ油断してはいけません。

数か月~数年後に施工不良が発覚する場合もあるため、その時の証拠として効力を発揮する書類をきちんと確認し、保管しておきます。

「工事完了確認書」「施工写真」「打ち合わせ議事録」「材料などのカタログ」など、大規模修繕で関わった書類はすべて保管しておくと良いです。

また施工業者の連絡先や、瑕疵(かし)保険の保証額なども確認しておきましょう。

長期修繕計画を見直す

大規模修繕は、初期の計画通りにスムーズに進むことは、まずありません。

長期修繕計画では、次のようなことを重視して計画します。

  • 今度どんな工事が必要になるか
  • 修繕積立金がいくら必要になるか
  • 工事を行う時期はいつになるか

大規模修繕工事が終わり、残った修繕積立金を元に、今後の資金計画を立てていきます。

定期的に長期修繕計画を見直すことで、次回の大規模修繕で無理なく工事が行なえるようになるでしょう。

大規模修繕の流れ

ここでは大規模修繕を進める具体的な流れについて、順を追ってご紹介していきます。

  1. 修繕委員会の発足
  2. パートナーの選出
  3. 建築診断
  4. 基本計画の作成
  5. 施工業者の選定
  6. 総会決議
  7. 工事説明会
  8. 着工
  9. 完了

修繕委員会の発足

マンションの管理組合は、まずは修繕委員会を作りましょう。

修繕委員会とは、大規模修繕を遂行するための特別チームのこと。

5~10人ほどのメンバーで構成されます。

修繕委員会は施工業者を選んだり住人説明会を開催したり、さまざまなことを行います。

パートナーの選出

大規模修繕を一緒に行うパートナーを選びます。

  • 管理会社
  • 施工業者
  • コンサルティング会社

どのパートナーを選ぶかで、大規模修繕の結果が大きく変わることもあります。

建築診断

建物がどのくらい劣化しているか、どの箇所に補修が必要かを調査します。

建築診断では修繕費用の概算も算出できます。

基本計画の作成

工事内容は工事時期などを計画します。

資金が足りるかどうか、また足りない場合はどこから調達するか、といったことも検討します。

施工業者の選定

施工業者を選びます。

施工業者を選ぶ際は、複数の施工業者で相見積もりを取り、比較検討して決めましょう。

過去の施工実績や工事への意気込みなどもチェックします。

総会決議

工事の内容が決まったら、総会を開催します。

総会で承認された後は施工業者と契約を結びます。

工事説明会

着工の1か月ほど前に、マンション住人に対して工事説明会を行います。

工事の概要や、工事期間の生活などについて説明し、住人の理解が得られるように努めましょう。

着工

施工業者が建物全体に足場を設置し、工事が始まります。

工事中も住人が安全かつ快適に過ごせるように、工事の詳細を掲示板に貼り出すなど、住人が不安に思わないような配慮が必要です。

また施工業者に工事を丸投げせず、定期的に進捗を確認したり意見交換を行なったりしましょう。

完了

工事が完了したら、きちんと補修できたかどうか竣工検査を行い、工事内容を記録した「竣工図書」を受け取ります。

引き渡しの後も、施工業者による定期点検が行われるのが一般的です。

大規模修繕で良くあるトラブル4選

大規模修繕では、ここでご紹介するようなトラブルが起こりがちです。

事前にチェックしておき、未然にトラブルを防ぎましょう。

修繕積立金が不足している

コンサルタントにだまされた

近年、特定の施工会社との繋がりがあるコンサルタントが増えています。

コンサルタントが主導して入札や相見積もりを行なっても、実は初めから依頼する施工会社が決めてある恐れがあります。

悪質なコンサルタントに引っかかると、工事費用が高額になり、施工のクオリティも低くなる傾向にあります。

施工会社選びはコンサルタントに任せきりにせず、必ずマンション側が主導して施工会社の信頼性を見極める必要があります。

  • 大規模修繕の実績はあるか
  • 最近の工事の施工品質はどうか
  • マンション住人にきちんと配慮してくれるか
  • 建設業免許を持っているか
  • アフターサービスがしっかりしているか
  • 社歴はどのくらいか
  • 見積書は丁寧に書かれているか

このように、さまざまなポイントをチェックする必要があります。

施工期間中に業者が倒産した

施工期間中に、施工業者が倒産するケースがあります。

施工業者の選定時にいくら経営状態をチェックしても、施工業者が倒産する確率が0%になったわけではありません。

施工期間中に業者が倒産してしまうと、工事に支障が出てしまいます。

そんな特に役に立つのが「瑕疵(かし)保険」です。

施工業者が瑕疵保険に入っていれば、万が一施工業者が倒産しても発注者は保険金が受け取れます。

工期が延長した

大規模修繕工事は、施工中に新たな劣化箇所を発見することがあります。

その場合は追加で修繕を行う必要があるため、工期が延長する可能性があります。

また悪天候が続く場合も、その分だけ工期が延長します。

悪天候も考慮して工期を設定することが大切です。

マンション住人や周辺住民からクレームがあった

大規模修繕工事は数か月間に及ぶので、マンション住人や周辺住民からクレームが入ることも多いです。

まとめ

大規模修繕では、施工前・施工中・施工後と、それぞれ押さえておくべきポイントがあります。

きちんとポイントを押さえておけば、大規模修繕で起こりえる、さまざまなトラブルが防げます。

また工事の流れも理解しておくと大規模修繕の全体像を把握しやすくなるので、適切な計画が立てやすくなりますよ。

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