外壁塗装に使う塗料のなかで、最も安価に使えるのがアクリル塗料です。
値段の比較をすると、必ず安価なものとして紹介されますが、塗装の現場で使われることは少なくなりました。
なぜここまで安価なのにおすすめされないのか、使われなくなったのか気になりませんか?
この記事では、アクリル塗料の特徴やメリット、デメリット、費用を解説します。
外壁塗装にアクリル塗料の使用を検討しているときは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
アクリル塗料とは?
アクリル塗料とは、アクリル樹脂を主成分とした塗料です。
アクリル樹脂に顔料を配合して、さまざまな色を付けています。
非常にメジャーな存在で、多くの製品に使われてきました。
アクリル塗料は1950年頃に開発されました。
発色が良く、扱いやすかったことから、多種多様な業界で大人気になります。
時代のニーズに合わせ、新しいアクリル塗料も開発されました。
しかし、特性として残るデメリットも目立つようになり、新たな塗料も生まれたことから人気が薄れ、近年では外壁塗装には使われなくなりました。
アクリル塗装の特徴
アクリル塗料の素材であるアクリル樹脂は、合成樹脂を使い無色透明です。
温度変化や湿度に強いことから、加工のしやすいのが特徴です。
製品としてボールペンや電子部品など多岐にわたって使われています。
塗料としては扱いが簡単なことからも、ホームセンターなどで簡単に手に入る塗料です。
アクリル塗料の用途と適用範囲について
アクリル塗料は、コストの安さや発色の良さから外壁塗装にも利用されます。特に、短期間での塗り替えを想定した建物や、予算を抑えたい場合に適しています。速乾性が高く、作業時間を短縮できる点も魅力です。ただし、耐候性は他の塗料と比べて低いため、定期的なメンテナンスが必要です。
近年では耐久性を向上させた改良型アクリル塗料も登場しており、用途に応じた適切な選択が重要になります。
外壁塗装での活用
アクリル塗料は、コストが比較的安く、発色が良いという特徴から、外壁塗装にも使用されることがあります。特に、短期間での塗り替えを前提とした住宅や、予算を抑えたい場合に適した選択肢です。
また、速乾性があるため、作業時間を短縮できる点もメリットの一つです。ただし、アクリル塗料は耐候性がそれほど高くなく、紫外線や雨風の影響を受けやすいため、耐久年数は約5〜7年と比較的短めです。
そのため、一般的な戸建て住宅の外壁では、より耐久性の高いシリコン塗料やフッ素塗料が選ばれることが多く、アクリル塗料は部分補修や短期的なリフォーム向けの塗料として利用されることが一般的です。
アパート・マンションのメンテナンス用途
アパートやマンションの共用部や短期的なリニューアル目的で、アクリル塗料が使用されることがあります。コストパフォーマンスに優れるため、予算が限られている場合や、定期的に塗り替えを前提とする物件に適しています。また、カラーバリエーションが豊富なため、外観のデザインを変更する際にも有効です。
アクリル塗料のメリット
アクリル塗料のメリットを見ていきましょう。
メリット①施工費用が安い
アクリル塗料の最大のメリットが、塗料代を含む施工費用の安さです。
塗料として材料費を抑えられるので、工事費が安くあがります。
定期的に外観のイメージを変えたい人には、安価なアクリル塗料はおすすめです。
メリット②カラーバリエーションが豊富
アクリル塗料は長い歴史を持つことからも、さまざまなカラーが作られました。
選択肢の広さは、アクリル塗料のメリットになるでしょう。
ほかの塗料と比較しても、バリエーションの豊富さは圧倒的です。
メリット③ツヤ・発色がいい
アクリル樹脂の特性ですが、ツヤ感がよく美しい発色で仕上がります。
鮮やかな色合いのカラーとの相性がぴったりで、仕上がりにメリハリがつきやすい塗料です。
はっきりとした発色を目指したいときは、アクリル塗料が効果を発揮します。
メリット④扱いやすいため施工の失敗が少ない
DIYでもアクリル塗料が使われるケースが多いのは、1液型の製品が多いからです。
一般的な塗料は2液でできています。
2液型は施工前に指定された配合比で混合して使うのが一般的です。
2液になると配合によってはうまく固まらない、発色がおかしいなどの問題が出るため、すぐに施工はできません。
正確な配合が必要になるのです。
1液は缶を開ければすぐに塗装でき、施工の難易度が大きく下がります。
アクリル塗料は伸びも良く扱いやすいので、施工の失敗が少ないのも特徴です。
吸湿性が高く、下地処理をしなくても重ね塗りができます。
アクリル塗料のデメリット
アクリル塗装は、大きなデメリットがあります。
外壁塗装にもよく考えて使わなければいけません。
デメリット①紫外線に弱い
アクリル塗料は、紫外線によって合成樹脂としての結合が破壊されやすい塗料です。
つまり、太陽光に含まれる紫外線を受ける外壁塗装には不向きといえます。
外壁塗装にアクリル塗料を使うと、塗り替えの周期が短くなり、コストを累計すると増大するのです。
紫外線に当たらなければ使いやすいことはたしかなので、外壁塗装ではなく室内塗装で使われるようになりました。
デメリット②ひび割れが起きやすい
アクリル塗料には弾力性がありません。
そのまま使うと硬くなりすぎるため、ひび割れが起こります。
柔軟性を持たせるために、アクリル樹脂には可塑剤の添加が必要です。
この可塑剤も時間とともに効力を失います。
再びひび割れしやすい状態に戻るのです。
この時点では硬化しているため、可塑剤を再び添加できないため、塗料としての寿命を迎えます。
デメリット③耐用年数が短い
紫外線の影響を受けやすいだけではなく、アクリル塗料そのものの耐久性は高くありません。
吸湿性が高いため、湿気を取り込む問題を抱えます。
湿気はひび割れなどの劣化を引き起こす原因になり、耐久性を落とすのです。
耐用年数が短い塗料は、なんども塗り替えなければいけません。
いくら塗料本体が安くても、足場代や人件費が繰り返しかかるため高くつきます。
コストパフォーマンスが悪いことも、アクリル塗料のデメリットです。
他の塗料との比較|費用相場・耐用年数
アクリル塗料をほかの塗料と比較してみました。
費用や耐用年数も併せて比較してみてください。
塗料 | 費用相場 | 耐用年数 | 特徴 |
アクリル塗料 | 1,400~1,800円/㎡ 50~80万円 | 3~5年 | ・安い ・寿命が短い ・1液が多くDIYでもよく使われる |
ウレタン塗料 | 1,700~2,500/㎡ 70~110万円 | 8~10年 | ・塗料としては安い ・弾力性がある ・変色しやすい |
シリコン塗料 | 2,300~3,500/㎡ 80~125万円 | 10~15年 | ・費用対効果に優れている ・防汚機能がある ・重ね塗りしにくい |
フッ素塗料 | 3,500~4,800円/㎡ 110~165万円 | 15~20年 | ・耐候性に優れている ・色褪せにくい ・ほかの塗料に比べてまだまだ高価 |
費用予測は30坪程度の一軒家を想定
アクリル塗料の種類
アクリル塗料はさまざまな製品が作られてきました。
種類も豊富で、デメリットを解消するような製品も開発された歴史があります。
特徴もかなり違いますので見ていきましょう。
ピュアアクリル塗料
アクリル塗料のデメリットは、耐久性の低さです。
そこでアクリル樹脂のなかから不純物を取り除き、純度を上げ、耐久性を高めたのがピュアアクリル塗料です。
ピュアアクリル塗料はフッ素塗料と同じ耐久性を示すほどの製品で、高い防水性能があります。
メリットの反面、膨れやすい問題があります。
これは弾性塗料自体が持つ欠点です。。
ピュアアクリル塗料は従来型のデメリットを改善していますが、価格はフッ素塗料より高めです。
アクリルシリコン塗料
アクリル塗料の欠点をカバーし、製品としての精度を高めたのがアクリルシリコン塗料です。
アクリルの持つ特徴をシリコンに組み込んだというのが正確な表現といえます。
つまり、アクリルの名前を使っていますが、アクリル塗料とは別物です。
こういった組み合わせを変性樹脂と呼びます。
乾燥が早く低湿環境での塗装に向いており、外壁塗装に使うと光沢がはっきりするのが特徴です。
耐久性も12~15年と優れた性能を発揮します。
弾性アクリル塗料
弾性アクリル塗料もアクリル塗料の欠点をカバーする塗料です。
もともと硬くなりやすく割れやすかったアクリル塗料に、ゴムのような弾性力を持たせました。
割れにくくなる代わりに、湿度で内部から押し出され膨れ上がるような現象が起こります。
種類としてはアクリルシリコン塗料の一種で、塗料がひび割れやすいモルタル外壁などに使われている塗料です。
かなり特殊な塗料で費用もかなり高めになります。
一般的な住宅の外壁塗装にはあまり使わません。
アクリル塗料での塗装が向いている外壁とは?
メリットでもあげましたが、短期間で外壁のイメージを変えたい場合には、単価の安いアクリル塗装が向いています。
ですが、短期間で施工を繰り返すと、足場などの費用がかさむことになるでしょう。
そこで平屋で小さな建物、さらに足場材など最小限で済むことが現在でもメリットを生かせる条件です。
以下にアクリル塗料がおすすめな人の特徴をまとめました。
・小さな建物でイメージを変えて目立たせたい
・ここ数年で建て替えを検討している
・外壁塗装というより、付帯物の看板などの塗装に利用する
・DIYで狭い範囲の外壁塗装をしたい
アクリル塗料の環境への影響と安全性
アクリル塗料は、比較的環境負荷が低い塗料ですが、VOC(揮発性有機化合物)の排出や廃棄時の処理に注意が必要です。特に油性塗料は有害物質を含むため、水性塗料を選ぶことで環境への影響を軽減できます。
また、施工時の健康リスクを最小限に抑えるために、適切な換気や防護具の着用が推奨されます。安全性の高い塗料の選定と適切な取り扱いが、快適な塗装作業につながります。
環境負荷
アクリル塗料は、比較的環境負荷の低い塗料ですが、使用時や製造過程において一定の影響があります。
- VOC(揮発性有機化合物)の排出
油性のアクリル塗料にはVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)が含まれていることがあり、大気汚染の原因となる可能性があります。そのため、近年ではVOCを抑えた水性アクリル塗料が主流になっています。 - 水性アクリル塗料の普及
水性アクリル塗料は、環境負荷を軽減する目的で開発されており、油性塗料と比べて臭いが少なく、人体や自然環境に優しい選択肢とされています。外壁塗装でも、水性アクリル塗料を使用することで、施工時の有害物質の発生を抑え、周囲の環境への影響を最小限に抑えることが可能です。 - 廃棄時の処理
アクリル塗料の廃棄時には、自治体のルールに従って適切に処理する必要があります。特に油性塗料は一般ゴミとして処分できないため、専門業者に回収してもらうか、適切な方法で処理することが求められます。 - 塗料の耐久性による環境負荷
アクリル塗料は耐久性が比較的低いため、頻繁な塗り替えが必要となり、そのたびに資源の消費や環境負荷が発生します。長期的な視点で考えると、より耐久性の高い塗料を選択することで、環境への影響を軽減できる可能性があります。
安全性
アクリル塗料は比較的安全性が高い塗料ですが、外壁塗装で使用する際にはいくつかの点に注意が必要です。
- 健康への影響
塗装作業中に塗料の成分を吸い込むと、頭痛や喉の痛みを引き起こすことがあります。特に油性アクリル塗料は揮発性が高いため、作業者はマスクを着用し、十分な換気を確保することが重要です。 - 適切な換気と施工環境の確保
外壁塗装を行う際は、近隣住民への配慮も必要です。臭いの強い塗料を使用する場合は、施工前に周囲へ通知し、換気のために窓を開けるタイミングなどを調整することが望ましいです。また、施工中の塗料の飛散を防ぐため、適切な養生を行うことも大切です。 - 皮膚や目への影響
アクリル塗料が皮膚につくと、かぶれや炎症を引き起こす可能性があります。作業時には手袋を着用し、塗料が目に入らないようにゴーグルを装着するのが望ましいです。万が一目に入った場合は、すぐに水で洗い流し、必要に応じて医師の診察を受けることが推奨されます。 - 火気の取り扱い
油性アクリル塗料や、シンナーを使用する場合は引火の危険性があるため、施工中の火気使用は禁止です。特に、住宅密集地での塗装作業では、火の取り扱いに細心の注意を払う必要があります。
アクリル塗料は外壁塗装において、低コストで発色が良いというメリットがありますが、耐久性の面ではシリコン塗料やフッ素塗料と比べて劣るため、短期間のリニューアル向けの塗装に適しています。
また、環境への影響を考慮し、水性塗料を選ぶことでVOCの排出を抑え、より安全に塗装を行うことが可能です。施工時には適切な安全対策を講じ、周囲への影響を最小限に抑えることが求められます。
外壁塗装工事でよくある質問
Q
外壁塗装の費用はどのくらいかかりますか?
A
一般的には、40坪の住宅(塗装面積160㎡、シリコン塗料)で90万円〜120万円程度が相場です。塗装面積や使用する塗料の種類によって異なります。
Q
工事の期間はどのくらいかかりますか?
A
外壁のみの場合は約10日、外壁と屋根を同時に行う場合は約14日程度かかります。ただ、天候や建物の状態によって日数は変わることがあります。
Q
工事中の生活にどんな影響がありますか?
A
騒音や臭気が発生することがあります。また、足場の設置や養生シートのために窓が開けられないことや、洗濯物が干せないこともあります。事前に工事開始のご連絡はいたしますので、ご安心ください。
まとめ
この記事のまとめです。
・塗料としてのコストは抜群に安い
・ライフサイクルは極端に短く、外壁塗装には使われなくなった
・施工性の良さは、いまでも通じる
アクリル塗料は外壁塗装に使われることはまれな塗料になりました。
アクリル塗料自体は安くても、トータルコストがかさんでいくのが大きな問題になるからです。
ホームセンターなどで簡単に手に入ることから、DIYで使うならおすすめできます。
手軽ですし重ね塗りもしやすい塗料だからです。
しかし、本格的に外壁塗装を考えるなら、アクリル塗料はおすすめできません。
外壁塗装には、耐用年数が長い塗料のほうが向いています。