マンションは長年住んでいると少しずつ劣化が進みます。快適で安全な住環境を維持するには、定期的なメンテナンスや修繕工事が欠かせません。とくに、外壁や屋上、給排水管などはトラブルが起きる前に対策を行うことが重要です。本記事では、防水工事や修繕工事の主な内容、費用の相場についてわかりやすく解説していきます。
目次
マンションの修繕工事とは?
修繕工事は、建物の劣化や損傷部分を補修し、安全で快適な住環境を保つために行われます。マンション全体で行う大規模修繕工事なども含まれ、建物の価値を維持するために定期的に必要な工事です。
マンション修繕工事の主な内容
修繕工事は、建物の劣化部分を補修し、機能や美観を維持するための工事です。主な内容には、ひび割れや剥がれの補修、外壁塗装などの外壁修繕があり、建物を保護しつつ見た目も整えます。また、錆びやすい手すりや階段の鉄部塗装、老朽化した給排水管の交換・修繕も含まれます。さらに、エントランスや廊下などの共用部分の改修も行われ、住民が快適に過ごせる環境を保つことを目指します。
マンションの修繕工事の主な内容は以下になります
マンションの修繕工事の主な内容|外壁修繕・塗装
外壁は時間とともにひび割れや剥がれが生じ、放置すると劣化が進んでしまいます。外壁修繕では、こうしたひび割れを補修し、さらに防水塗装を行うことで建物を保護します。外観を美しく保つためにも重要です。
マンションの修繕工事の主な内容|鉄部の塗装
マンションの手すりやフェンス、階段などの鉄部は、風雨にさらされ錆びやすい場所です。錆が進むと鉄部が腐食し、耐久性が下がるため、定期的な錆止めと塗装が必要です。鉄部の塗装をしっかり行うことで、長く安全に使用できます。
マンションの修繕工事の主な内容|給排水管の修繕・交換
給排水管は、年数が経つと内部に錆や汚れがたまりやすく、水漏れや詰まりの原因になります。劣化が進むと大きなトラブルにつながるため、点検や老朽化した管の交換などが行われます。
マンションの修繕工事の主な内容|共用部分の改修
エントランスや廊下、階段などの共用部分も劣化します。特にエントランスの改修は建物の印象を良くするため、住民や来訪者にとって大切です。また、廊下や階段の壁紙や床材の張り替え、照明の交換なども行われ、快適な住環境が維持されます。
マンション修繕費の相場とは?
修繕工事の費用は、マンションの規模や修繕内容で変わりますが、大規模修繕工事は数千万円から数億円に及ぶこともあります。積み立てられた「修繕積立金」を活用して計画的に行うことが多いです。
修繕積立金の目安例
マンションの修繕工事費用は、長期的な視点での計画が求められます。毎月の「修繕積立金」によって少しずつ費用を確保することで、将来の工事費用に対応できるようにしています。一般的な積立金の目安としては、専有面積1平米あたり200円から300円程度が一般的です。
総戸数100戸、1戸あたり70平米のマンションの場合:
- 毎月の修繕積立金総額 = 100戸 × 70平米 × 200〜300円 = 140万円〜210万円
修繕積立金は、建物の劣化状態や修繕内容に応じて、長期的に見積もることが重要です。
マンション修繕工事とリフォームの違いとは?
マンションの維持管理において、「修繕工事」と「リフォーム」は混同されやすい用語ですが、それぞれの目的や範囲は明確に異なります。
誤解があると費用負担や施工内容にトラブルが生じる可能性もあるため、違いを正しく理解しておくことが重要です。
修繕工事とは、経年劣化や損傷した箇所を元の状態に戻すための工事を指します。
共用部に対して行うケースが多く、建物の機能維持や安全確保が主な目的です。たとえば、外壁のひび割れ補修や屋上の防水工事、給排水管の取り替えなどが該当します。
一方、リフォームは機能や見た目の向上を目的とした工事です。主に専有部分に対して行われ、例えばキッチンや浴室の最新設備への交換、床材の張り替えなどがこれに当たります。
また、リフォームは入居者または区分所有者の費用負担で行われるのに対し、修繕工事は「修繕積立金」など管理組合が管理する予算で賄われるのが一般的です。
マンション修繕の防水工事とは?
マンションの外壁や屋上、バルコニーは日々雨風や紫外線にさらされるため、年月とともに劣化していきます。こうした部分の防水対策が弱くなると、雨水や湿気が内部に侵入して建物の劣化が加速してしまいます。防水工事は、こうした水の侵入を防ぎ、建物を長持ちさせるために行う工事です。
防水工事を行う箇所や内容
防水工事を行う箇所や内容を紹介します
屋上防水
屋上は、雨水が直接降り注ぐために劣化しやすい部分であり、建物を守るために特に重点的に防水処理が行われます。屋上の防水が不十分になると、雨水が建物内部に浸入し、構造体の腐食やカビの発生につながりかねません。
- ウレタン防水
屋上に液体状のウレタン樹脂を塗布して固める工法です。防水性が高く、シームレスに仕上がるため、複雑な形状の屋上にも対応でき、施工後は柔軟性もあるためひび割れしにくいのが特徴です。 - シート防水
防水シートを貼り付けて防水層を作る方法です。主に塩ビシートやゴムシートが使用され、耐久性が高く、比較的施工が早く完了するため人気があります。施工後のメンテナンスも比較的しやすいです。 - アスファルト防水
アスファルトを使用した防水層を設ける方法で、耐久性が非常に高く、しっかりした防水層を作れます。耐久性を重視する大規模な建物でよく採用されていますが、施工には専門知識が必要です。
バルコニー防水
バルコニーは屋外に面しているため、雨水や湿気にさらされやすい場所です。防水層が劣化すると、下の階の天井や壁に水漏れが生じ、建物内部に被害が及ぶ可能性があるため、定期的な防水工事が必要です。
- FRP防水
繊維強化プラスチック(FRP)を使った防水方法で、軽量で強度が高く、耐水性に優れています。耐久性が高いことから、バルコニーの床によく使われ、歩行による摩耗にも強いため安心です。 - ウレタン防水
ウレタン防水は、液体状のウレタンを塗布して防水層を形成するため、シームレスで継ぎ目がなく、バルコニーの細かい形状に対応できます。防水性能が高く、定期的にトップコートを塗り直すことで耐久性を保てます。 - 塩ビシート防水
耐久性の高い塩ビシートを用いる工法で、バルコニーに用いるときには、施工が早く耐久年数も長いため効率的です。摩耗にも強く、メンテナンス性にも優れています。
シーリング工事
シーリング材は窓枠やサッシ、外壁の目地といった隙間部分に充填され、水の浸入を防ぐために使われます。しかし、シーリング材は日々の気温変化や雨水によって少しずつ劣化し、硬化やひび割れが生じることがあります。
- 目地シーリング
外壁のつなぎ目(目地)にシーリング材を充填し、水の浸入を防ぎます。シーリング材は弾力性があるため、外壁の微細な動きにも対応し、雨水が浸入しないよう保護します。 - 窓枠・サッシシーリング
窓枠やサッシまわりの隙間にもシーリング材が使用されています。これが劣化すると隙間から水が浸入するため、窓やサッシ周りのシーリング工事も定期的に行われます。
マンション修繕で行う防水工事の費用相場
防水工事の費用は、工事を行う箇所や建物の大きさ、使用する防水材の種類によって変わります。以下では、主要な防水工事ごとの相場を紹介します。
マンション修繕で行う防水工事の費用相場1. 屋上防水工事の相場
屋上は建物の中でも劣化が激しい部分で、防水層をしっかりと施工する必要があります。屋上防水にはウレタン防水、シート防水、アスファルト防水などの方法がありますが、それぞれに特徴があり、費用も異なります。
- ウレタン防水:1平米あたり3,000〜5,000円ほど。工期が短く、複雑な形状の屋上にも対応可能で、一般的に使用されています。
- シート防水(塩ビシートなど):1平米あたり4,000〜6,000円程度。耐久性が高く、施工が比較的早く終わりますが、平らな屋上に適しています。
- アスファルト防水:1平米あたり5,000〜8,000円ほど。耐久性が非常に高く、長期的に安心ですが、施工に手間がかかり、費用も高めです。
たとえば、屋上の広さが100平米の場合、ウレタン防水で30万円〜50万円程度、シート防水で40万円〜60万円が相場となります。
マンション修繕で行う防水工事の費用相場2. バルコニー防水工事の相場
バルコニーは屋上と比べると狭いですが、居住空間に直結しているため、定期的な防水工事が推奨されます。バルコニーの防水にはFRP防水やウレタン防水がよく使われ、耐水性が高く、歩行にも耐えられる仕様が求められます。
- FRP防水:1平米あたり5,000〜7,000円程度。強度が高く、歩行による摩耗にも耐えやすいため、バルコニー向きです。
- ウレタン防水:1平米あたり3,000〜5,000円程度。継ぎ目がなく、シームレスに仕上がるため、複雑な形状のバルコニーにも適しています。
バルコニーの広さが10平米の場合、FRP防水で5万円〜7万円、ウレタン防水で3万円〜5万円程度が相場となります。
マンション修繕で行う防水工事の費用相場3. 外壁のシーリング工事の相場
外壁のシーリング(コーキング)は、目地や窓枠などの隙間にシーリング材を充填し、水の侵入を防ぐ工事です。シーリングは劣化が早いため、一般的に7〜10年ごとの定期的なメンテナンスが推奨されています。
- 外壁シーリング:1平米あたり500〜1,000円ほど。高所作業になる場合や外壁全体を施工する場合、足場の設置費用が必要です。
- 窓枠シーリング:窓枠1箇所あたり3,000〜5,000円程度が目安。大きさや取り付け位置によっても変わります。
外壁のシーリング工事全体では、マンション全体の大きさに応じて数十万円〜数百万円の予算が必要です。
長期修繕計画とは?管理組合が知っておくべきポイント
長期修繕計画とは、マンション全体の劣化に備えて、将来的に必要となる修繕項目やその時期・費用をあらかじめ見積もった管理計画のことです。
これは国土交通省が策定を推奨しているもので、マンションの資産価値を維持し、突発的な支出を防ぐうえで不可欠なツールとされています。
計画では、外壁や屋上防水、給排水設備、エレベーターなどの共用設備を対象に、10年~30年程度のスパンで必要な修繕の内容と費用を設定します。
また、その費用に備えるための修繕積立金の額も計算され、毎月の徴収額の根拠にもなります。
重要なのは、「一度作ったら終わり」ではないということです。建物の使用状況や社会情勢の変化に応じて、5年ごとの見直しが推奨されています。
この見直しを怠ると、実際の劣化状況とズレが生じ、資金不足や工事の遅れに直結するリスクがあります。
理事会や管理会社と連携し、プロの診断をもとに長期修繕計画を継続的に改善・実行していくことが、マンション経営の安定につながります。
マンション工事をスムーズに進めるためのポイント
マンションの修繕工事は、建物の長寿命化・資産価値の維持・住環境の快適さを保つうえで欠かせません。しかし、計画や進行に不備があると、工事の遅延や住民トラブルが発生する可能性もあります。ここでは、修繕工事を円滑に進めるために管理組合が意識すべきポイントを解説します。
合が意識すべきポイントを解説します。
マンションの修繕工事1. 定期的な点検で劣化を早期発見する
建物は経年とともに必ず劣化が進みます。定期点検を実施することで、小さな不具合を早期に発見し、深刻なトラブルになる前に対処することが可能です。特に屋上防水・外壁・給排水管などは目視で確認しづらいため、専門業者による定期的な劣化診断が重要です。
点検結果に基づき、長期修繕計画の見直しや早期修繕を行えば、将来的な修繕費用の増大も防げます。
マンションの修繕工事2. 信頼できる施工業者を選定する
修繕工事の品質とコストは、業者選びに大きく左右されます。過去の施工実績や評判、対応力、保証内容などを比較し、信頼できる業者に依頼しましょう。
また、最低でも2~3社から相見積もりを取り、工事内容・費用・工期の違いを確認することが、適正価格での工事実施につながります。
マンションの修繕工事3. 住民の理解と協力を得る
マンション修繕工事では、騒音・振動・共用部の使用制限など、住民への影響が避けられません。そのため、あらかじめ工事の目的や内容・期間・費用について丁寧に説明し、住民の合意形成を図ることが非常に重要です。
理事会主導で説明会を開催したり、質問への対応窓口を設けたりすることで、トラブルを未然に防ぎ、工事をスムーズに進める体制を整えましょう。
よくある質問(FAQ)
Q
修繕工事にはどれくらいの費用がかかりますか?
A
マンションの規模や修繕箇所によって異なりますが、一般的に大規模修繕工事では数千万円〜数億円規模の費用がかかるケースもあります。事前に修繕積立金を計画的に用意し、無理のない資金計画を立てることが重要です。
Q
防水工事はどの部分に必要ですか?
A
屋上・バルコニー・外壁・廊下などの外部に接する部分に防水工事が必要です。これらの箇所は雨水や紫外線に常にさらされており、劣化が進むと雨漏りやカビの原因になります。防水工事は建物全体の耐久性に直結する重要な工事です。
Q
修繕積立金の金額はどれくらいが適正ですか?
A
一般的には、専有面積1㎡あたり200〜300円前後が目安とされています。例えば、70㎡の住戸であれば月額14,000円〜21,000円程度となります。長期修繕計画に基づいて、適切な金額を積み立てていきましょう。
Q
修繕工事を行う際、住民の合意は必要ですか?
A
共用部分の修繕は管理組合の総会で議決を得る必要があり、住民の理解と合意が不可欠です。修繕計画や費用負担の内容を丁寧に説明し、全体の協力体制を整えることでトラブルを防ぎ、円滑に工事を進めることができます。
マンション修繕工事のまとめ
マンションの修繕工事は、建物の劣化を防ぎ、住民の安全と快適な暮らしを守るために不可欠な取り組みです。外壁や屋上防水、給排水管、共用部分などは、時間の経過とともに確実に老朽化が進行します。計画的な修繕を行うことで、突発的なトラブルや高額な修繕費用の発生を未然に防ぐことが可能です。
修繕工事には、長期修繕計画の策定・修繕積立金の管理・住民との合意形成・信頼できる業者の選定など、多くの要素が関係します。中でも、防水工事のように建物の寿命に直結する重要な作業は、適切な時期に実施することが求められます。
また、定期的な点検や日常的なメンテナンスも修繕サイクルを延ばすための有効な手段です。管理組合や理事会が中心となって、計画的かつ透明性のある修繕体制を築くことが、マンション全体の資産価値を維持するカギとなるでしょう。
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